グリーン・シークレット・ハウスでの朝。
前夜に俺が持ち帰った尋問の情報をもとに、作戦机の上の地図にはダークエルフたちの活動圏がかなり具体的に絞り込まれていた。
南方、特定の河川を越えた先、巨大な樹木群、狩人たちが使う経路、そして特定の魔獣の縄張り。
アウラは地図を覗き込み、自信ありげに頷いた。
「うん。ここまで分かれば、たぶん探せるよ」
「だろうな。ここから先は俺よりお前の方が向いてる」
俺が素直に言うと、アウラはちょっと意外そうな顔をした。
「へぇ。素直に認めるんだ」
「適材適所だ。森の中でお前に張り合うほど自信過剰じゃねぇよ」
俺の潜入術は「人の痕跡を読む」ことに優れているが、アウラは「森そのものを読む」絶対的な専門家だ。餅は餅屋に任せるのが副官の基本である。
アインズ様が正式に命を下す。
「アウラ。南方を捜索し、ダークエルフの村を発見せよ。ただし、発見しても独断で接触する必要はない。まず場所と周囲の状況を確認し、報告せよ」
「はいっ!」
マーレが「ボ、ボクも一緒に……」と遠慮がちに申し出たが、アインズ様は首を振った。大人数で動けば警戒される。アウラはフェン一頭と同行するだけで十分だ。
問題は、俺だった。
アインズ様は少し考えてから言った。
「八幡。お前はアウラを追うな。一定の地点で救援待機だ」
「よろしいので?」
「うむ。アウラが予定時間を過ぎても帰還しない場合のみ、捜索に入れ」
アウラの能力を全面的に信用し、ここで俺を同行させて「結局八幡に任せた」という形にしないための、アインズ様らしい配慮だ。
俺が「了解しました」と答えると、アウラがニヤッと笑った。
「心配だからってこっそり尾けてきたら駄目だからね、お兄ちゃん」
「誰がするか」
「八幡ならやりそう」
「信用なさすぎだろ」
マーレが横から小さく「ボ、ボクもちょっと思います……」と追撃してきて、俺は肩をすくめた。
――アウラ視点。
大樹海の南方は、完全に私の領域だった。
八幡のような足跡探しのプロじゃなくても、折れた枝、獣道、鳥の鳴き声、糞、爪痕、樹皮、植物の踏まれ方、風向き、虫の動き……それら全てが、私には森の生態系の地図として明確に読み取れた。
「この辺、人が定期的に通ってるね」
フェンが地面の臭いを嗅ぎ、同意するように短く鳴く。
しばらく進むと、巧妙に隠された人工物の痕跡が見つかった。枝を自然に戻し、踏み跡を消している。狩人が使ったと思われる小さな印。
「なるほど。ちゃんと森で生活してる人たちなんだ」
少し嬉しくなる。同族。しかも、私と同じレンジャーの技術を持っている。
しかし、途中で空気が変わった。
フェンが低く唸り、周辺から小動物の気配が完全に消えた。巨大な爪痕と、強烈な縄張りを示す臭い。
「この辺のボスかな?」
現れたのは、巨大な熊のような魔獣――アンクルウルサス・ロードだった。
フェンが臨戦態勢に入るが、私は「フェン、待って」と止めた。
魔獣が咆哮し、私へ突進してくる。私は真正面からそれを受け止め――ほとんど動かなかった。
「え?」
巨大な魔獣の方が、戸惑ったような間抜けな声を上げた。
私は「はい、そこまで」と、軽く力を解放してみせた。殺さない。
痛めつけすぎない。ただ、「お前は私には絶対勝てない」と理解させるだけ。
アンクルウルサス・ロードは恐怖で完全に服従の姿勢をとった。
「この辺の生態系のトップなら、殺すと森のバランスが崩れるかもしれないしね」
私は森の管理者として判断し、そして……この魔獣を見て、ある作戦を思いついた。
「……この子、使えるかも」
ただし、八幡との約束(報告・連絡・相談)がある。私は独断で動かず、拠点へ《伝言》で連絡を入れた。
『アインズ様。ちょっと面白い子を見つけました』
(拠点側にいた八幡が「その言い方でまともだった試しがないんだが」と頭を抱えたことなど、私は知る由もなかった)
その後、私はアンクルウルサス・ロードの行動範囲と狩人の痕跡を重ねて調査し、ついに森の奥にダークエルフたちの村を発見した。
高い木の上から観察する。自分と同じ肌、同じ耳を持った人々が、そこで普通に生活し、子供たちが遊んでいる。
「……本当にいるんだ」
アインズ様が言っていた、「友達」。
私は飛び込んでいきたい衝動を抑え、まず正確な場所を記録して、拠点へと引き返した。
挿絵のリクエストです。
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おまかせ
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八幡+シャルティア
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八幡+アルベド
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八幡+デミウルゴス
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八幡+コキュートス
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八幡+アウラ
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八幡+マーレ
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八幡+アインズ様
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八幡+メイド達