「お、おもってたよりも近未来だ……」
見たことある邪神が見たことある導入で宣告してきたような夢をみたと思ったらコレだよ。
見渡すかぎりに広がる発展した都市。街中には人とポケモンが共存しており、なんかホログラムみたいな青色の人とかもいる。僕の知ってる世界と文明力が違いすぎている。
「というかアレってこっちの世界だったんだ……」
自分の身に降りかかった災厄から図らずも考察が進んでしまった。僕はてっきりダイパ時空から過去に飛ばされたものだと思っていたのに、まさか現実時空から超ワープされるとは。さすが時空と空間を司る神を創った神だ。世界線とかは関係ないらしい。
「服装は寝たときのまま。す、スマホは……うわぁ……」
とりあえず状況を把握しようと手持ちを確認してみたが、結果としてはゴミ以下だった。見渡すかぎりおしゃれな人ばかりの都心部だというのに半袖短パンの部屋着に利便性をダストシュートしたかのようなフォルムに改造されたスマホ、清々しいまでの既視感だ。なお、勿論のことスマホの機能は改変済みである。
切実に思う。こんな近未来に投げ出すならせめて現金くらいは欲しかった。
ピピピッ──
確認したと同時、まるで図ったかのように僕の元スマホがなにかメッセージを受信する。
アル──ジガルデフォンと しめいをたくす
『すべてのポケモンとであえ』
「なに他所のポケモンに擦り付けてんだ!!」
後頭部のトゲ見えてんだよこっちは!あと最後にチラッとあっ……て聞こえてるからな!絶対ミスったろ!ミスって責任違うとこの神様に擦り付けてんだろ!
「というかジガルデフォンって……じゃあなに、ここカロス?」
日本モチーフですらねえのかよ。せめてカントーとかジョウト、ホウエンとかシンオウであってほしかった。嘘、ホウエンは嫌だ。偏見でしかないが全部の街が住みにくそうだ。
「と、とりあえず誰かに話を聞いて情報を集めないと……」
なぜかラベン博士枠が現れてくれないせいで開幕ピンチである。仮にも今の僕は主人公枠だろうに、FF10くらい主人公に厳しいぞ今の状況。
とりあえず周りを確認して話しかけやすそうな人に目星をつけるべしか。さすが暫定カロスだけあってどいつもこいつもイケイケ激マブ、人選を誤ればどくどくだまとか投げつけられるかもしれない。
狙うは同年代。話しやすそうで明るくて土地勘のありそうな人物。個人的に髪とか染めてそうなのはマブすぎて話しかけらんないし、もしもに備えていざとなったら僕の腕力でどうにかできそうなタイプというのも追加しておこう。
「えーっと、弱そうで土地勘ありそうでかつちょっと芋臭いヤツ……あ、ちょうどいい!そこの君!」
「すっごい失礼な話しかけられかたされた!?」
わりと必死に周りを探しているところに、いいタイミングで同年代くらいの少女が前を通りかかってくれた。黒髪のシースルーバングでスポーティな服の上からダボッとしたパーカーを羽織った装い、うん。半分くらいは条件に一致しているな。連れているポケモンもヒトデマン、絶妙に殴り合いになっても対処できそうだ。
ちょっと条件を口に出していたせいで心なしかヤバい奴に声をかけられたみたいな顔をされているけど、まあいいや。
「すいません突然話しかけて。少し尋ねたい事がありまして」
「えぇ?ただ尋ねるだけの人の独り言に聞こえなかったんですけど……」
「いやぁ親切な人だ!何でも聞いてくれなんて!」
「は、話聞いてくれない……。ヒトデマン、スピードスターの準備だけお願い」
いけない。多少強引でも無理やり会話させる方がいいと踏んでの行動だったんだが藪蛇だったかもしれない。この世界の住人は思ったよりもトレーナーへの直接攻撃に抵抗がないらしい。
このままでは危険だ。プランB、紳士路線でいこう。
「あ、申し遅れました。私こういうものでして」
「……?えっと、ごめんなさい。その、どういう……?」
「はい?いや、見ての通り…………えと、旅人です」
「滅茶苦茶言い淀んだ!?その淀みは信じれないよ!」
まずい、口を開けば開くほど相手の警戒が増している気がする。
「……そもそも、旅行客にしては身軽すぎません?カバンとかないし、その服装も、その……アレだし」
ほら、もう旅人というなんの信頼性もなく真偽もどうでもいい肩書すら怪しまれている。おまけに軽く服装を貶された。もう涙が出そうだ。遠慮して言葉を濁しているところがまた心にきた。
「まぁ、その……旅人といっても、迷子の旅人というか」
「迷子の旅人?」
「その……ここがどこか分からないといいますか」
「あっ、そういう!ここはベール5番地ですけど、どこ行きたいんですか?」
納得がいったというように純朴そうな瞳でこちらに問いかけてくる少女。すごく親切だ。これだけで僕の人選に間違いはなかったと言えるが、想像よりもなんの情報も得られなかったことに軽く絶望している。
「いや、あの〜」
「???」
「まず、ここが何地方かから聞きたくて」
「そこから!?想像以上の迷子だ!?」
どういうこと!?と驚愕の声を張り上げる少女を脇目にどう説明したものかと頭を巡らせる。いったいどうしたものか、いっそラベン博士よろしく空から落ちてきたところを目撃して貰うとかしてたら手っ取り早かったのに。
「え、えーと、ここはカロス地方だけど……それも分からないならどうやってここに?」
なるほど、やっぱりカロス地方か。普通に認めたくなかった状況が現実になって膝から崩れ落ちそうになった。気合でこらえた。まさかツイッターの嘘松しか言わない台詞を現実で体感する日が来るとは思わなかった。
なんて、半ば現実逃避した考えは一旦置いておき、いよいよ疑惑の目を隠さなくなり、最初の敬語も取れつつある少女に向きなおる。
「じゃあ、あれはプリズムタワー?」
ここがカロス地方というのなら、意識を取り戻してからずっと気になっていたバカでかタワーについても考えが及ぶ。
「あ、プリズムタワーは知ってるんだ」
「一応、存在するとは思ってなかったけど」
「そんな知る人ぞ知るみたいな場所じゃないと思うけど」
「は、はは……」
ビンゴ、じゃあここはミアレシティってことで間違いなさそうだ。なるほどね、だいたい立地に関しては掴めてきた。問題は僕がカロスの事をマジで大まかにしか覚えてないってことだ。いったいXYを何年前の作品だと思ってるんだ。
「あ、あの……大丈夫?」
「ん?ああ、教えてくれてありがとう。おかげでだいたいわかったよ」
「いや、そうじゃなくて」
「???」
「顔、FXで全部溶かした人みたいになってるけど……」
「そこまで!?」
たしかに目の前の光景に軽く絶望はしているけれど、そこまで酷くはないやい!いや確かに所持金とか今0だけど!!
というかこの世界にもFXとかあるのか。やったことないから分からないけど、どうしようもなくなったら知識チートとかできないだろうか。シルフカンパニーとか買えば一儲けできないかな。
「それでだけど、行く宛とかはあるの?」
「……ん?」
無駄な思考の最中、少女からそんな質問が飛んできた。行く宛、そんなものは勿論ない。僕にあるのは邪神から託された使命だけである。
返答に困っているのを察してか、目の前の少女はさらに言葉を続ける。
「ここが何地方かも分かってなかったし、そもそも知り合いとかっているの?」
「……さあ?」
「さあって……やっぱり不安だなぁこの人」
まずいぞ、もしかして今ものすごく怪しまれているんじゃないか?警察、いやジュンサーさんにでも通報されたら身分証明とかできない僕は一発アウト、それだけはなんとしても避けなくては!
「ま、待った!確かに僕は怪しいけど、話を聞いてほしい!」
「いや怪しいなんて言ってないけど!?」
どうにか、どうにかこの現状を打破せねば……!と、とりあえず有名で認知度のある人の名前とか出そう!えと、カロスのミアレの有名人……そうだ!
「そ、そう!僕はプラターヌ博士の親友で!遠路はるばるこうして彼を訪ねに来たのさ!」
「……プラターヌ博士って何年も前に研究所やめてミアレ離れてるよ?」
「えっ」
どういうこと!?プラターヌ博士いないの!?ポケモン恒例の博士枠の不在なんてことある!?というか博士不在で誰が主人公にポケモンくれるっていうんだ!?とにかくまずいぞ、緊急で方向転換だ!
「と、いうのは冗談で!ホントは……ほら!シトロン君!プリズムタワーにジムを構えるジムリーダーの!」
「……ミアレジムはもうないよ。プリズムタワーも入れないし、シトロンさんはもうジムリーダーじゃなくて今発明王だし」
「……」
「ひ、膝から崩れ落ちた……」
畜生、本当にどうなってるんだ!唯一の頼りの原作知識が微塵も通用しないし、もう完全に万策尽きた!!
「なんだかあなた、知識がありそうでなにもないね」
「発言に気をつけてね。効果はバツグンだよ」
ほとんど瀕死の人間になんてこと言うんだろう。もしかして死体蹴りが趣味なんだろうか?
「あ、いや!そういうことじゃなくて!今のはミアレについての知識っていうか、ほら!そういうの!」
「あ、ああ。そういう……」
びっくりした。急にアイツ頭いいふりしてるけど普通にバカだよね〜みたいなこと言われたのかと思った。本当に気をつけてほしい。男子とは時として女の子の何気ない発言で致命傷を負う弱い生き物なのだ。
「えっと、それで。知り合いもなし、行く宛もなし。すごく困ってるみたいだけど、そもそも生きていけそう?」
「改めて言わないで欲しいな。せっかく立ち上がったのにもう一度崩れ落ちそうだ」
少し話して分かったことだけど、もしかしたらこの少女は言葉を包み隠すってことを知らない可能性がある。
みて、僕の足。生まれたての子鹿のようにプルプルと震えているよ?
「でも、そっか……よし!決めた!」
僕がそんなことを考えているうちに、少女も考えをまとめたらしい。むんずを拳を握って、どうやらなにかを決意したようだった。
いったい彼女はなにを決めたんだろう。今までの発言から察するに、僕を言葉のナイフで刺し殺す決意だろうか?
「うん、困ってる人を見捨てるわけにはいかないし!ダンスの練習も終わったところだし。ね?ヒトデマン?」
ひと!
「!?!?!?」
!?!?!?!?!?!?!?!?
「えっなに。なんだかすごく驚いてるけど?」
「ひ、ヒトデマンが……」
「ヒトデマン?あ、この子はあたしのポケモンで──」
「ヒトデマンが『へアッ』て鳴いてない……!?」
「どういうこと!?ヒトデマンはそんな鳴き声じゃないよ!?」
そんなバカな。じゃあ僕の慣れ親しんだヒトデマンはなんだったんだ。あれか、そういう個体だっただけかマイステディ。
「あ、ごめん。ちょっと衝撃すぎて話に割り込んじゃった」
「何がそんなに衝撃だったのかよく分からないんだけど……」
まったく、この世界に来てから驚くことばかりだ。知識は頼りにならないし、場所は分からないし。ヒトデマンは変な鳴き声だし。とにかく色々総括してろくでもないことばかりだと思ってたけど。
「まあいいや。とにかく、困ってる人を見過ごすわけにはいかないし、何でも聞いてよ!」
最初にこの少女と出会えたことだけは本気で幸運だと思う。イヤホント見事な人選だ数分前の僕。この子いなかったからガチで詰んでた。もうすっごい優しいこの子、一歩誤ればうっかり惚れそうだ。カロス地方のラベン博士とはこの子のことだったんだな。
「……ホントにいいの?見ての通り、結構怪しいと思うんだけど」
「まあ、ちょっとそういう人かな〜とは思ったけど、ホントに不安そうだったし。それに、私も困ってるときこうしてタウニーに助けてもらったし、言わば恩返しですよ恩返し」
顔も知らぬタウニーさん、心から感謝を。いつか出会ったら絶対に抱きしめさせてもらおう。そして、僕はこの幸運の糸をうまく手繰り寄せてみせる!
では、早速──
「じゃあ所持金ゼロの身元不明で職歴もない半袖短パンでも泊まれる場所とか教えて欲しいんだけど」
「思ってたよりすごい不審者だ!?お金なくて身元不明の職なしなの!?」
身も蓋もない言われように思わず涙が出そうになった。
「あ、でもスマホはあるよ」
「あ、スマホはあるんだ」
「うん。えっと……コレなんだけど」
どうやらこの世界でもスマホとは言うらしい。バカ正直にアルセウスフォンと言っても通じないだろうと思ってたけど、さすが近未来だけあって案外普及してたりするのかもしれない。みんながこんな刺々しいスマホ持ち歩いてたらヒくけど、なんて考えつつ、実物をポケットから取り出す。
「えっ、なにこのスマホロトム……趣味わるいね」
「失敬だなキミは。コレでもちゃんとメールとか届くんだからな。発信先とか不明だけど」
「余計不審者度合いが増したよ!!」
「あとポケモンも持ってないからバトルとかで稼ぐのも無理だね」
「つぎつぎにお先真っ暗な事実が飛び出してくるよ!?うわーんヤバい人と知り合っちゃったよー!?」
「いやぁ助かった!一時はどうなることかと!」
「もう助かったつもりでいる!?」
今更気づいたところでもう遅い!さっきの発言、絶対に取り消させないからな!!僕は絶対、宿を見つけてみせる!
「と、とりあえず今日はホテルZに連れて行ってAZさんに話を通してみる……?」
「ホテル?あの、この状態の僕がホテルで泊まれるとは思えない…………AZ?」
AZって、もしかしてあのAZにゃん!?
って、てことはこの子やっぱり……
「原作キャラだ!!」
「うわぁ今度はなに!?やっぱ連れてかないよ!?」
ヘビボディアンシー