ゴジラ対キリスト ~ゴジラマイナス2000~ 作:ホラ吹きウス・ヨセフス
原作:聖書
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怪獣の王にはユダヤの王をぶつけろ。
紀元29年、古代ユダヤにゴジラが現れた。
当時の世界最強・ローマの軍隊も、ゴジラの息ひとつで吹き飛ばされる。
エルサレムは避難民で溢れかえった。
メシアと噂される男・イエスはエルサレムに向かうが、陰謀に嵌められた挙句、ゴジラと戦うことになる。
自他ともに暴力を厳しく禁ずるイエスは、逆転の発想、ある奇策に賭ける。
イエスの、そして世界の運命やいかに?
そして歴史は、神の予想さえ上回る超展開を迎える。
紀元29年11月、ゴジラ出現。
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ゴジラはユダヤ属州の『ガリラヤ湖』から現れた。
手始めに領主の宮殿を破壊し、そのままエルサレムの方角へ向かって行った。
当時の歴史書によると、「その獣、身の丈30キュビト、重さ2000タラント」と記録されている。
つまり、大型恐竜のサイズだ。
太古の生物、さしずめゴジラザウルスと言ったところか。
しかしユダヤは、世界最強・ローマ帝国の属州である。
ローマの兵隊レギオンはゴジラを迎え撃つ。
だがゴジラザウルスは規格外の生物だった。
投石はいとも簡単に弾かれ、太矢もゴジラの表皮で砕け散った。
兵士たちは恐怖し、隊列は乱れに乱れる。
トドメとばかりにゴジラザウルスは、火傷するほどの熱い息を吐き、兵士たちを木っ端のように吹き飛ばした。
レギオンの防衛ラインは、いとも容易く突破されてしまった。
最強国家の軍隊を、一匹の怪獣が壊滅させる。
この大事件に世界は震撼。
このゴジラは怪獣王と呼ばれた。
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ゴジラはついにエルサレムに到達。
しかし、ローマ兵たちの決死の防衛戦と、エルサレムの外壁に阻まれる。
ゴジラは暴れ飽きて、エルサレムを前に引き返し、再び湖の底に消えた。
「エルサレムは守られた!神の証だ!」
避難民はエルサレムに殺到した。
エルサレム神殿の商人はこのチャンスを逃さなかった。
「ゴジラの到来は神の怒りだ!神に供物をたっぷり捧げなさい。さもないと、この街もゴジラに潰されるぞォ!」
商人は恐怖を煽り、供物、食料、あらゆる物価を釣り上げた。
ゴジラ出現を機に、エルサレムの腐敗と民の不満は頂点に達していった……。
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紀元30年3月、過越祭の時期。
避難民を追うように、エルサレムには別の集団が入場していた。
その中心にいるのは、ナザレのイエス。
巷で「メシア」、すなわちユダヤの王を意味する称号で呼ばれる、元・大工職人。
彼は避難民を救うべく使命感を帯びていた。
イエスは奇跡の力でパンを増やし、水をぶどう酒に変え、避難民に分け与えた。
エルサレム神殿に入ると、そこでは悪徳商人たちが店を開いていた。
イエスの怒りに火がつく。
「ゴジラの被害で人々が苦しんでいる。それなのにお前たちは、この祈りの場で、人々から金を巻き上げている!」
イエスは屋台をひっくり返し大暴れ。
神殿は大混乱となった。
「神殿がめちゃくちゃだと?怪獣か!?ゴジラがもうここまで来たのか?」
「あいつは噂のお騒がせ男、ナザレのイエス!」
「祭司は何をやってる!ローマの兵を呼んでくれー!」
しかし祭司たちは手を出すことができなかった。
避難民たちの不満がいまにも爆発しかけていたからだ。
「いいぞ、ぶち壊せ!」
「イエスこそユダヤの王だ!」
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そして嵐が過ぎ去った。
祭司たちは緊急会議を開いた。
「あの長髪の男は何だったんだ?商売の邪魔…いや、聖なる神殿で暴れおって!」
「扇動家のイエスだ」
「ゴジラ騒ぎに乗じて、国家転覆でも起こす気か?」
「民衆は奴に熱狂している。奴のトリックに騙されて、"神の子"などと信じている」
「もし奴がこのまま本当に王にでもなったら……」
「われらの王はローマ皇帝ただ一人。ユダヤの王など許されるはずがない!」
皇帝を差し置いて王を名乗る。
それはすなわち、ローマへの反逆。
「このままだとこの国はローマに見放される。奴のせいで、この国はゴジラに滅ぼされる!」
恐れおののく祭司たちは、イエスを処刑するために、秘密裏に逮捕してローマに引き渡す事を決定。
イエスの弟子ユダを買収し、イエスを捕らえる計画が話し合われた。
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こうしてイエスはユダの密告によって逮捕された。
ローマの総督・ピラトの要塞に連行される。
ピラト「不遜にも王を名乗って、国家転覆を企んだのは本当かね?」
イエス「ユダヤの王なんて、あなた達が勝手にそう言ってるだけだ」
祭司長「他にも、『地上に火を投ずる』と発言した記録があります。これは宣戦布告の証拠ですぞ!」
イエス「あれはそういう意味じゃねえ!」
しかしこれは結果ありきの裁判、イエスの主張など通らない。
ピラト「貴様のような反逆者を生かしておく理由は無い。見せしめとして、十字架の刑に…」
その時だった。
「うおおおおおおお!」
街の方から大勢の男達が大騒ぎしながらこちらへ向かってくる。
祭司「祭司長、神殿が破壊されました!!」
祭司長「何だと!暴動か!?イエス信者が決起したのか!?」
そう思って見ると、男達の後ろからゴジラが迫ってきていた。
ついにゴジラがエルサレムに侵入してきたのだ。
イエス「あれがゴジラか…!」
ピラトの要塞は大混乱。
ゴジラは裁判の野次馬を吹き飛ばし、中まで入ってきた。
神聖な裁判は地獄絵図となった。
ピラト「イエスを閉じ込めておけ!」
ピラトは兵に命じ、ゴジラ対処に走った。
ゴジラとローマ兵の戦いが始まった。
牢に連行されるイエス。
その時、どさくさに紛れて弟子たちが乱入し、イエスを連行するローマ兵を殴り倒した。
ペトロ「今です、お逃げ下さい!」
イエス「馬鹿者、暴力はいかんと言ったはずだ!」
自由になったイエスは、ペトロにゲンコツをお見舞いしつつ言った。
それにイエスは、自分が十字架にかけられる歴史を過去に予知していた。
それは神が定めた運命なのだと信じつつ、これまで活動してきたのだ。
ゴジラも神の計画なのだろうか?
ペトロ「あなたがいなければ、ゴジラに襲われた人たちは誰が救うんです!?」
ペトロは頭を抑えながら叫んだ。
イエス「ペトロ…」
マグダラのマリア「それに、ゴジラを止められるのはアンタだけだよ。」
要塞にはゴジラに倒されたローマ兵たちが転がっていた。
ゴジラを放っておけば、この地獄がユダヤ中で…いや、世界中で繰り返されることになる。
イエス「うむ、確かに民を見殺しには出来ん…!」
イエスは意を決して、要塞を抜け出してゴジラの後を追った。
他の囚人も一斉に逃げ出した。
エルサレムは、大災害が過ぎ去った後のようになっていた。
過越祭の羊が片っ端から食い荒らされていた。
ゴジラはこの肉を狙ってきたのだろうか。
イエスは怪我人を癒しつつゴジラの足跡を追う。
ローマ本国からも大勢の援軍が来た。
ピラトに率いられたその大軍は、ゴジラを追って来た。
そして一同はガリラヤ湖に集結した。
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ピラトたちはイエスをとっくに見つけていたが、しばらく泳がせることにした。
イエスたちを囮に利用し、ゴジラに猛攻をかけて倒すためだ。
ピラト「こういう時のために、新型のバリスタをローマから取り寄せておいたのじゃ」
各国からも、ゴジラの事を聞きつけた物好き……いや、命知らずな人々が集まっていた。
やがてゴジラが湖面から顔を出し、人々を睨みつけた。
イエスが神に祈る。
すると湖はみるみるうちに赤く染まっていった。
イエス「酔い潰れよ!」
ガリラヤ湖をまるごとワインに変える、カナのヤシオリ作戦が実行された。
湖全体が真っ赤に染まる光景は、モーセがナイル川を血に染めた奇跡の再来を思わせた。
「まさか、本当に奇跡が起こるなんて!」
「信じられません、全く信じられません!」
「オイオイ、湖こんなにして漁できるのかよ」
各国の野次馬から驚きの声が上がった。
(なお、後にこの話は日本にも伝わり、八塩折之酒とヤマタノオロチ伝説として語り継がれることになる。)
しかしゴジラはまだ倒れず、イエスの方へ向かって来た。
イエス「もっとだ、もっと酒を強く…!」
ガリラヤ湖のアルコール度数、80%…85%…90%…
怒涛の"アルハラ"の末、とうとうゴジラにも酔いが回り始めた。
イエス「弟子たち!今だ!ローマ軍と一緒にゴジラを…」
しかしゴジラは怒り上戸だった。
怒り狂うゴジラは高熱の息を吐く。
その瞬間、熱風はワインに引火した。
ガリラヤ湖は大爆発炎上。
この日、ガリラヤの全住民が、巨大なきのこ雲を目撃した。
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それは人類が未だかつて見たことのない、破滅の光景。
周囲は、何が起きたか理解できなかった。
イエスも唖然としていた。
やがて、ローマ兵の一人が口を開いた。
「あのユダヤ人の妖術だ!キリストの炎だ!」
ローマ兵、各国の来訪者は大恐慌に陥り、一目散に逃げ出した。
ピラトは白目を剥いて失神していた。
一方、弟子たちは狂喜乱舞し、力に酔いしれた。
ヨハネ「見てたかローマの野郎ども!」
ヤコブ「俺らがその気になりゃ、いつでもそっちを火の海にできるぞ?」
イエス「やめんか、バカモン!」
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この大事件はローマ本国に伝わり、国中にパニックが広がっていった。
かつてイエスはこう言っていた。
「わたしが来たのは、地上に火を投ずるためである」
そして今や、この言葉は独り歩きして、ローマ中を恐怖に陥れている。
「俺たちの国も焼け野原になるのか…!?」
一方、追い風に乗るように、ユダヤでは熱心党を中心に反ローマ運動が激化。
それを皮切りに、各地で連鎖的に抗ローマ運動が勃発した。
「くたばれ皇帝!」
「イエス様こそメシアだ!」
もはや東地中海全域は皇帝ではなくイエスを崇拝するようになっていた。
皇帝の権威は失墜してゆく。
事態はイエスの意図を離れて、もはや彼の手には負えなかった。
そして半年以上が経過。
ついにローマ帝国は、ユダヤを開放した。
紀元30年12月、ユダヤ独立達成。
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ゴジラは現れなくなった。
きのこ雲の傘のもとで世界は"平和"になった。
十字架どころではない。
世界中がイエスを担ぎ上げていた。
もはや後戻りできない。
イエスは正式にユダヤ王として即位し、聖別の油を注がれた。
イエス王「これが…神の国…なのか???」
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『メシア(=キリスト)』の条件は全て満たされた。
全ユダヤ人が、何百年も待ち望んだ預言が、まさに今成就した。
正真正銘の『イエス・キリスト』爆誕。
紀元30年12月25日の出来事だった。
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イエス王政のもとで神殿評議会は解体され、悪徳商人は厳しく取り締まられた。
神殿は復興・改築され、質素な祈りの場となった。
ガリラヤ湖は普通の湖に戻った。
しかし不可解なことがある。
あのゴジラの姿が跡形もなく消えていたのだ。
死体どころか肉片さえ、いくら捜索しても見つかることはなかった。
人々は噂した。
「ゴジラは生き返って、姿を隠したのではないか?」
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数年後、ローマにて。
あるユダヤ人が『使徒』を名乗って、新しい教えを熱心に広めていた。
男の名はサウロ。
以前イエスを迫害していた、元・律法学者。
「もうすぐゴジラは再臨する。世界に終末が訪れる…!」
『怪獣王の復活』を喧伝する新興宗教は、密かに勢力を伸ばし始めていた。
■ゴジラがGood News (福音)をBad Newsに塗り替えてしまった……!