フェアリィ・ダンス編、第九話へも閲覧ありがとうございます。
光が収束して、目が慣れるとそこは何処かの通路だった。
ここは、どこだろう。首を傾げていると、アルゴとキリト、ユイも同じように周囲を見渡している。
「・・・ユイ、MAP情報取れる?」
ユイが首を振る。
「まったく存在しません。」
「世界観無視ダネ。この通路」
アルゴの言う通り、ファンタジーの世界観から離れた通路。システムロックがかけられていたことからも、やっぱり空中都市なんて存在しないんだろうか。
「アスナの居場所はわかる?」
ユイは少しだけ目を瞑ると「こっちです!」と駆け出した。僕たちもそれに続く。
そうしてユイに導かれ、歩くと外に出た。そこは世界樹の頂上。
「ほんとうに・・・空中都市なんて存在しないじゃないか。何がグランドクエストだ、全部ウソじゃないか」
キリトの唸るように零した言葉に肯きながら、周囲を見渡す。上の方に、アスナが撮影されたと思われる鳥籠が見えた。
「アスナはきっとあそこだよね、ユイ」
鳥籠を指さすとユイは肯く。
「僕たちは別にやらないといけないことがあるから、二人でアスナの元へ行くんだ。大丈夫だね?」
キリトとユイを順番に見て、二人が肯き、上へ歩き出すのを見送る。二人が小さくなったのを確認して、横にいるアルゴに顔を向けた。
「行こう」
僕は彼女の手を取り、
そうしていくつかの通路を通った先に、今度はまるで普通のオフィス通路が現れる。
「入られる前提になってないのか、さっきの通路より酷い。隠す気ゼロね」
「本当に、ね」
互いに渋い顔をしながらオフィスをいくつか過ぎ、大きなホールへと出ると、そこには絶句する光景があった。
「人間の・・・脳髄!」
複数の列に並べられた脳髄たちは色こそ本物ではなかったけれど、その形は本などで見る脳そのものだ。
「悪趣味過ぎる・・・」
アルゴは口元を抑えて嫌悪感を露わにしている。
「実物に近いものを置くことで作業イメージを明確にしたかったのでしょう」
苦い顔をしている僕たちの横にいつの間にかアウラがふわりと現れていた。彼女は一度僕たちの顔を伺うと、すぐに正面を向き直った。
「あまり気持ちの良い光景ではないけれど、作業を始めましょう。―――カイト、貴方は彼女を護ってあげて。邪魔が入ってきたわ」
アウラがアルゴの手を引いて歩き始め、後ろに視線を移した。
釣られるように僕も視線を後ろに向けるとそこには巨大ナメクジのようなモンスターがいて、目線があった。
「なんだ!お前らは!」
「なんだ!コイツら!」
喋ると思っていなくて、驚いて武器を構える。
「ここの研究者たちよ」
「侵入者が三人も!」「なんだ!その格好は!そんなものは実装していないぞ!」「こないだのことといい、イレギュラーなことが起きすぎだろ!あの人がまたキレるだろうが!」
三匹―――三人は口々に僕たちを見て喋りだす。特にアウラの格好がALOのモノでないことに大きく動揺しているようだ。
「クソ!一体どうやってここに・・・!」
一人がコンソールを弄る操作を見せた。僕は持っていたダガーの片方を投擲する。
「うわぁ!」「こいつ!抵抗するのか!」「こっちは運営だぞ!」
「非人道的なことをしておいて、まだ運営を名乗るか・・・!」
もう片方のダガーで彼らに斬りつける。
「早くコイツをどうにかしろよ!」「今やってる!」「クソ!俺が時間を稼ぐ!」
一人がナメクジの姿から人の姿に変化して、武器を持って向かってきた。でも、そんな動きじゃ僕は止められない!
一閃。武器を持った手が宙を舞う。
「くっ!コイツ!」
けれど特殊なボディなのか、ダメージによる怯みを無視して、僕に掴みかかってきた。
「そのまま掴んでろ!今そいつを動けないように・・・!?」
掴んだ一人を振り払っていると、コンソールを弄っていた一人が驚いている。
「おい!何やってんだ!」
「やってる!行動不能を付与したんだ!なんで効かない!」
―――SAO基盤である”ここ”じゃ僕には状態異常は効かないからね。
「なら強制ログアウトさせろ!」
「それもやった!何も受け付けない!」
「はぁ!?どうなってる!他の二人は!?」
大慌てで騒いでいる三人を横目にアウラ達を見る。アルゴからデータを引き出しているようで、光やウィンドウが展開されていた。それを見て、三人はさらにあわてるように声をあげる。
「おい!アイツらもなにかしてる!どうにかしろ!」
「わかってる!・・・どういうことだよ?!」
「どうした!」
「いない!あの白い女!プレイヤー一覧にあの女がいない!」
「はぁ!?じゃあれはなんだよ!」
「それに・・・もう一人の女!ここから居なくなったやつだ!」
パニックとも言える状態の彼ら。ま、理解不能な状況にはなっているよね。ただ、これ以上騒がれて、さらに増援を呼ばれても困るから―――少し大人しくしてもらおうか。
僕は振り払った一人の両腕を斬り、投げたダガーを拾って、そのままの勢いで残り二人に接近。隣の相手に”どうにかしろ!”と叫んでいる一人の触手を切断。最後にコンソールを弄っていた一人を蹴り上げて、触手と恐らく口と思える場所を斬りつけた。
「システムコマンド―――ブベッ!」
「少し、静かにしててもらおうか」
座り込んだり、立ち尽くしたり、動けない彼らに念を押して威圧する。
諦めたように項垂れる三人を一瞥して、僕は視線を後ろに送る。目を瞑るアルゴから幾つもの光が出て、それぞれの脳幹へと向かっている。作業は順調みたいだ。
そう思って視線を戻した、その直後だった。
諦めたはずの三人から”黒いナニカ”が吹き出して、咄嗟に後ろに下がる。
―――AIDAだ。感染の可能性は示唆されていたわけだから、これは予測の範囲内。
「お前たちはなんだんだぁ!」「調べさせろ!」「未知の事象!調査する必要が!!」
人の形に変わった彼らは頭を抱えたりしながら、感情を爆発させる。意外にも、彼らの強い感情は、
「知りたいと思うこと、そのものは悪いことじゃないと思うけどね。君達は踏み込んじゃいけないところまできたんだ」
双剣を構える。AIDA感染者である彼らを、アルゴたちの元へ向かわせるわけにはいかない。ここで、足止め―――いや、データドレインする必要があるね。
向かってきた一人の脚を狙い、転ばせる。けれど、切断した脚は直ぐにAIDAによって、バッチン!とくっついて修復されると、すぐに立ち上がる。
細かくデータドレインで解体する必要があるかな。そう考えたのも矢先に残りの二人が僕に掴みかかってきた。無茶苦茶な力で僕を掴み、まるで中身を開くように、無理やり引き裂こうとしてくる。
「・・・ッ!」
幸いと言うべきか、転んだ一人もこっちに向かってきて、僕に掴みかかってきた。僕一人に集中することは、最悪の状況じゃない。
でも、正直状況は良くない。これじゃゾンビに襲われてるみたいだ。筋力パラメータに任せて彼らを振り払う。
転がった三人。そう三人のはずだった。けれど彼らは、転がった反動でAIDAが広がったかと思うと、綺麗に3分割されて、九人に増えた。
「
掴みかかってくる腕を双剣で受け流そうとするけれど、PoHとの決戦の時のように、物量の多さに再び掴まれてしまう。攻撃をしても直ぐに修復されてしまうのもマズイ。このまま彼らの無茶苦茶な力で掴まれたり引っ張ったりされ続ければ、僕のPCボディが持つか不明だ。
でも、こう人数で掴まれてしまうとデータドレインを使う暇もない。ほんの少しでいい。隙がいる。
「カイト。手を貸すわ―――スリープ解除。データ、ロード。プレイヤー二名をアクティベート」
後ろからアウラの声が聞こえてきた。―――二名のプレイヤー?
疑問に思ったその瞬間、僕を掴んでいた腕が斬りつけられて、僕を引っ張り出した。
引っ張られたまま、尻もちを付き、顔を上げるとそこには見知った顔が居る。
「ディアベル!?それにキバオウ!?」
格好はSAOの時と少し違うけれど、そこに居るのは間違いなく、第一層から共に戦ってきた仲間だ。
「状況はよくわからんが、お前を手伝えばいいんだよな?」
ディアベルが盾を構えて、ニヒルに笑った。
「ワイらの力見せてやるで!」
キバオウがいつもの調子で声を大きく言う。思わずアウラを見れば、こちらを見る様子もなく、作業を続けている。―――ありがとう。それに二人も。
「AIDAを除去する!データドレインの隙を作って!」
「了解!」「おう!」
息ぴったりに動く二人に合わせて、僕も動く。
盾を構えたディアベルが接近を防いで、その隙に僕とキバオウで彼らを攻撃する。
「なんや!鈍い動きやな!」
キバオウが余裕の声をあげて、加速した彼に合わせて、僕も斬りつける。
「「「うがぁ!!」」」
九人、もとい三人は四肢を斬りつけられて、大きく怯む。けれど傷は即、修復される。でも、その隙で十分。そう判断して、データドレインを構えようとしたその時。
「三人とも避けて!」
後ろからアルゴの声が聞こえて、僕たちは咄嗟に後ろにステップした。それと同時、僕たちの居た場所には大きな腕が通り抜けた。
「あぶっないな!」「なんや!?」
ディアベルたちの言葉を聞きながら、向き直ると、振られた腕は何処かに消えていて―――九人居た彼らは一つに
「何が起きて・・・!」
眼の前の状況は理解できなかったけど、良くない状況だと判断して、僕はデータドレインをしようと腕を突き出す。けれど、再び、何もない所から大きな腕が振られた。
「ちっ!」
僕たちはまた、数歩後ろに下がる。そこに並ぶようにアルゴが、そしてその後ろにアウラがやって来た。
「カイト、未帰還者たちの記憶の修復は完了したわ。そして彼らに寄生したAIDAは今、あそこに全て集まってる」
アウラは一つになった、形状が安定しない、彼らを指す。”ソレ”は手や顔のような物が、いくつもできては、消え、うめき声をあげていた。
「じゃあ、アレをデータドレインできれば、ひとまずは任務完了ってわけだね」
「ええ。それで彼らも解放されるはず。でも気をつけて。アレは未帰還者達から、SAOでの記憶を読み取った―――SAOのモンスターで攻撃をしてくる」
「どおりで記憶にある腕だなと思ったら・・・さっきの50層のボスか」
ディアベルが正面を向きながら言う。そうか、さっきのは金属仏像・千手護法王の腕。つまり―――僕の考えを肯定するように巨大な鎌が飛んでくる。
ヤバい!あれはスカルリーパーの・・・!
「データロード。ユニークスキル【神聖剣】」
その脅威を一番知っている僕たちが咄嗟に回避しようと動いた瞬間に、アウラが前に出て、見覚えのある盾を、宙に構えて大鎌を防いだ。
「貴方達にシステム的破壊不可能を付与することはできない。代わりに私がこの”盾”を使って、できるだけ攻撃を防ぐわ。隙を見てアレにダメージを与えて、データドレインをして」
アウラは言いながら、宙に浮いている盾を高速移動させ、連撃を防いで見せる。
「わかった!―――アルゴ!アレの動きは見える!?」
「任せロ!」
「ディアベル!キバオウ!」
「わかってる!」「いつものどおりってわけやろ!」
僕たちはアウラの左右から駆ける。
「”ノダチ”の攻撃が来るゾ!」
アルゴの警告通り、コボルドロードの腕とノダチが飛び出して来たのを―――アウラがスカルリーパーの鎌を防ぐのを横目に―――ディアベルが盾で受け止め、僕とキバオウで弾く。
本来なら体勢を崩して、攻撃チャンスになるこの連携も、形が定まらず、何も無いところからボスの腕が出くる今の彼らには意味を成していない。これは受けるのは得策じゃない。
「回避不可能以外は受けないで!弾いても意味がない!」
「インチキ野郎が!」
キバオウが上手くすり抜けて、片手剣を振ったけど、彼らは形状を変化させて避けた。当たると確信したキバオウの攻撃は大きく空振って―――その隙を僕とディアベルで埋める。
「アリなんか!あれ!」
「SAOのスライム系モンスターもそんな動きしないぞ・・・!」
本気で驚いた、といった声色のキバオウに、苦く言うディアベル。伸びてきた触手を双剣で捌きながら、今度は僕が一撃を振るう。
避けられることも考慮して振った、僕の双剣は意外にも直撃した。
「え?!」
思わず、数歩下がる。左右にキバオウとディアベル。後ろにアルゴが来て、皆で固まる。
「なんでカイトの攻撃は通った?」
「触手伸ばしてたからかいな?」
「たぶん・・・―――いや、きっとそうダ。全身の操作が上手くできてなイ―――来るゾ!」
顔をあげたアルゴの警告に反応して僕たちは四方に散る。
僕たちが居た場所を、叩き潰すようにドラゴンの脚が踏みつけた。
「なら、触手は受ける意味はありそうだな。ここは盾持ちの俺に任せてもらおう」
ディアベルはわざとらしくニヤリと笑うと、剣と盾を叩いて音をたてる。
その音に反応してか、大鎌がディアベルを襲おうとしたけど、アウラがそれを受け止めた。
「女神の加護ってヤツだな。―――さぁ、こいよ。動きが鈍そうなやつがここにいるぞ」
盾を構えて並んだ二人の左右から、僕とキバオウは、同じ軌道を描いて飛び出し、加速する。
「キバさん!左に避けロ!カイトはそのまま突撃!ディアさん!触手来るゾ!」
アルゴの指示が聞こえて、それ通りに動くと、狙い通り素早く動く僕やキバオウを避けて、触手がディアベルへ向かった。
後ろで何かが踏みしめる音を聞きながら、触手が伸び切ったタイミングで、連撃を浴びせる。僕とキバオウの攻撃を受けた”それ”は大きく呻く。
「よく喚くのぉ!」
「触手が戻るゾ!」
「キバオウ!下がろう!」
もう一度、ディアベルたちの所まで下がる。触手を閉じた”それ”は口々に呟く。
「痛い」「忌々しい」「未知の事象」「イライラする」「舐めやがって」「俺を誰だと」「苦しい」「あの女」「だから嫌だったんだ」「癇癪」「あmおstえい」「rいおs」
「・・・カイト!データドレインを!」
”それ”が浮かんでいた顔を引っ込めて球体になったと同時。アウラの声に反応して咄嗟に右腕を構えた。
データ羅列の閃光が部屋を支配して―――でも手応えは無かった。
視界が戻ると、そこにはデータドレインを避けるために、胴体に孔が空いた―――言葉にするならSAOのモンスターが合体した、巨大な人型が居た。
「コイツぁ・・・!」
大きな腕にはスカルリーパーの鎌。人や獣の腕が混ざり、脚も同様に骨と獣の多脚。そしてデカい尾を持ち、ドラゴンの翼を広げていた。
「SAOで、強く記憶されたモノの再現よ」
アウラの声色には、少し焦りが感じられる。彼女は深く考えるように目を閉じた。
「・・・・・・・・・今なら気づかれないわね。少しの間だけ時間を稼いで。AIDAに汚染されている以上、私から彼らに干渉はできないけど、それ以外はできるわ。突破口を作る」
開いた彼女の瞳には、焦りは無かった。だから僕は直ぐに肯く。
「わかった!」
アウラが少し下がったのを確認しながら、僕たちは振られた大鎌を避ける。
「動きはSAOの時と一緒みたいダ!記憶に古いヤツも混ざってル!焦るなヨ!三人とも!」
アルゴの言葉通り、形こそチグハグの巨人は、見知った動きを見せる。
「スカルリーパーは受けるべきじゃない!弾けそうなのは・・・」
「獣の腕や!アレ、コボルドロードの腕やろ!」
「他の腕と連動してル!その腕だけ受けるのは難しいゾ!」
巨人の周りを駆けて、攻撃を躱しながら言う。突破口はアウラが作ってくれる。ならこのまま時間を稼いで―――そう思った矢先。僕たち四人に平均的に攻撃してた行動を辞めて、一直線に僕とへと来た。まぁそうだよね、狙うなら僕だよな・・・!
一直線に向かってきたに合わせて、僕も下がる。けれど直ぐに距離を詰められて、攻撃が降り注ぐ。
「カイト!3歩左前!」
アルゴの助言でなんとか直撃は避けたけど、ディアベルやキバオウの攻撃は無視。変わらず、僕を見続けている。
「ち・・・!」
「その場から逃げて!」
ロールの消えたアルゴの声に、全力で駆け出す。巨人は大きく振りかぶって、その一撃を叩きつけた。
振られた攻撃の衝撃に、僕は簡単に宙に浮き、転がる。
「ぐッ!」
地面をバウンドした衝撃で、身体から空気が抜けて、吐き出そうな感覚を堪える。
それでも転がる身体を止めるために地面にダガー突き刺そうした。けど、突き出したダガーは地面には刺さることなく、伸びてきた巨人の手に刺さって、その手は僕を掴んだ。
―――まずい、これはまずい。
巨人は刺さったダガーを無視したまま、僕の事を握り絞めだした。
「あ”ぁぐぁぁ!」
「う”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
一心不乱に、突き刺していた左手のダガーを振る。何度も、何度も。それでも手は緩まず、ますますキツく握り絞めてくる。
僕を助けるためにディアベルたちが近づいてきたけど、他の腕と脚に阻まれていた。
「カイト!!!」
アルゴの、悲鳴に近い声が聞こえてくる。ここでやられるわけにはいかない。ここが仮にデスゲームじゃなくても、このままAIDAを放置すれば、残った皆に危害が加わる。
なら一か八か。右腕が自分の身体と重なっていて、危険はあるけどデータドレインで―――腕輪を起動すると、それに反応してか、さらに強く絞めてきた。HPがレッドゾーンに入る。猶予はもうない。
このままデータドレインで纏めて―――そう覚悟を決めた時だった。
(ったく無茶が過ぎるぜ、先輩ょ)
何かが僕の眼の前を通り抜けて、拘束が緩んだと思ったら、巨人の腕が切断された。僕は浮遊感を感じながら、その通り抜けたナニカを眼で追う。
それは鎌だった。見覚えのある、鎌。あれは間違いなく―――スケィスの―――そう結論つけた時、鎌は見事に、僕の右手に収まった。再び声が聞こえてくる。
(八咫に言わせれば、オレ専用のユニーク武器らしいが、アンタなら使えんだろ)
ハセヲの声だ。いったいどうやって・・・。
(細けぇことは何だっていいだろ。とっとと終わらせて帰ろうぜ)
そうだね。力を借りるよ、”死の恐怖”。
(ハッ、”蒼炎のカイト”サマに頼られるのも悪くねぇな)
着地した僕に、再生した腕が向かってきた。
鎌を振り、一閃。
腕を再び切断すると、巨人は漸く反応を見せた。アルゴたちが僕の周りに集まる。
「大丈夫か!?」
「なんとかね。アルゴ、回復魔法使える?」
「うん―――すぐに―――」
巨人が翼を使って飛翔したことで、突風が吹き、アルゴの言葉を遮った。
「おいおい、飛ぶのアリか」
キバオウの忌々しいそうな声を聞きながら、僕は確信を持って彼女を呼ぶ。
「アウラ」
「ええ、作業終わったわ。―――オートリカバリー起動、飛行限定解除、全攻撃属性を付与」
僕たちのHPが一気に回復していき、背中の羽が広がる。
「不死属性は変わらず付与できないわ。代わりにHPの常時回復を付与、攻撃属性も付与、飛行も可能にした。高度制限もない」
「ありがとう。―――先に僕とアルゴでいくから、二人に飛行のレクチャーしてあげて。行こう、アルゴ」
「ええ!」
羽を使ってふわりと浮くと、ディアベルたちは驚いたように目を開いている。
「飛行速度の限界も解除してある、速度に気をつけて」
アウラの言葉に肯くと、加速を始める。
「カイト、私に気にせず飛んで。必ず隣に並ぶから」
アルゴは僕の手を軽く握ると、決意に満ちた凛々しい顔を見せてくれた。
「頼りにしてるよ、”相棒”!!」
「アイヨ!”相棒”!!」
ここ数日で慣れた速度を超えて、一気に加速、飛翔する。速度で圧倒してやろう、そう思ったけれど勢い余って、軽く当たる程度に通り抜けてしまった。
隣で飛んでいるアルゴも目をパチパチとしながら驚いている。
「ちゃんとコントロールしないとね」
「そうね。―――来るわ!」
重なるように、アルゴと一緒に同じ方向へ避ける。
アルゴの動きに合わせて、飛んで来る攻撃を避けて、反撃を繰り出す。ハセヲの鎌は切れ味が抜群で、斬った端から綺麗に切断できた。
けれど、巨人も斬った端から再生を繰り返す。
どうするべきか―――そう考えていた時、アウラの声が耳元に聞こえてくる。
「表面だけを削っても意味はないわ。核となる場所に一撃を入れて怯ませる必要がある。核の場所はわかるわね?」
「うん、大丈夫」
「ハッハッハッ!!空を飛ぶのは気持ちがエエなァ!!」
「あんまりはしゃぐなよ、キバオウ!」
下から二人が声を上げながらやって来た。ディアベルも、キバオウを諌めながらも少し声が高揚しているのがわかる。
「ディアさん!キバさん!両腕を抑えて!」
アルゴの指示に、二人は直ぐに両腕の周りを飛び回って、攻撃を始めた。―――というか二人も飛行に慣れるの早いね。
攻撃が集中されないのは勝機だ。
さっきより勢いが減った攻撃を避けながら、一気に懐に飛び込む。狙うは胸元。
「せぁらぁぁああ!!!」
鎌を大きく横に振った一撃。巨人は大きく仰け反る。
(さ、終わりにしようぜ。先輩)
ハセヲの声が聞こえたと思うと、鎌がバラバラになって
右腕を前に突き出して、腕輪を起動させる。それは大きく、大きく展開されていく。
それを見てか、ディアベルとキバオウがダメ押しと言わんばかりに、巨人の胸元を斬り抜けた。
左右からアルゴとアウラに支えられながら、僕も左腕で右腕を支える。
「ドレインハート―――ファング!!いけぇぇ!!」
いつも閲覧、感想、評価、ありがとうございます。
一ヶ月くらいと言いながらお待たせしました。
色々やることが重なって全然執筆できていませんでした。
次がフェアリィ・ダンス編最終回の予定ですが、投稿には少し時間がかかるかもしれません。
最後までお付き合いいただけると幸いです。