普通すぎる男が聖杯戦争を壊すまで   作:笑嘲嗤

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第36話 チャリティコンサート

 教会にご招待された。信徒じゃないんだけどなんかイベントらしい。聖堂内に入ると置くの説教台当たりにオーケストラが並んでいた。

 

「オーケストラ?なんで?」

 

 とりあえず空いている席に座って始まるのを待つ。そして時間になり指揮台に黒人の美しい青年が立って優雅に一礼した。

 

「本日はチャリティーコンサートに来てくださってありがとうございます。では教会音楽の深い歴史を堪能していただけたら幸いです」

 

 よく見るとオーケストラの中に舌打ちシスターがいやがる。トランペット構えてる。そして黒人の青年の指揮と共に音楽は始まった。優雅なそして幽玄な美しい旋律。

 

「ほぇ」

 

 おもわずため息が漏れてしまった。それくらいにすごいものだったからだ。何曲もやって数時間くらいだったけどあっと言う間に感じるくらいに密度の濃い快い時間だった。そして全部が終わってオーケストラの面々が礼をすると拍手が巻き起こった。俺も立ち上がっていっぱい拍手してしまった。だからだろう。廻ってきたがきんちょの寄付袋に持ってた札全部調子に乗って入れちゃったぜ。泣き。

 

 

 

 

 

 

 コンサートが終わって俺は聖堂内で神に祈っていた。

 

「帰りの電車賃をお恵みください。…えいめん!」

 

「教会とはそういう俗っぽいものを願い乞う場所ではありませんよ」

 

 舌打ちシスターが俺のこと見て舌打ちしてる。

 

「じゃけん!金がなかとよ!!おいはかなしかばってん!」

 

「っち!それは何処の方弁ですか?全く……いいですわよ。帰りの電車賃くらいは恵んであげましょう。ちょっとお待ちになっててください。取ってくるので」

 

「ありがとうシスター!神様万歳!オタクの神様マジ太っ腹」

 

「ウチの神は唯一神なのですがねぇ……まあいいですけど」

 

 舌打ちシスターは奥の方のドアを潜っ手聖堂内からいなくなった。

 

「あはは。クラリッサが感情をむき出しにするのはとても珍しい。君は一体どんな魔法を使ってるんだい?」

 

 指揮をしていた美しい黒人の青年が声をかけてきた。

 

「え?うーん。まあなんかこう。ねぇ?あわせてるつもりはないんですよねぇ。むしろ向こうがこう俺に合わせようとして空廻ってる感じします」

 

「あはは。それはそれは。彼女が人に合わせるかぁ。ふふふ。とてもいいことだなぁ」

 

「あの。あなたはシスターと仲いいの?彼氏?」

 

「いや。私は彼女のサーヴァントだ」

 

「はぁ?ええ?!でもサーヴァントって七騎ですよね?八人目ってどういうことです?」

 

 俺がそう言うと黒人の青年が面白そうに笑った。

 

「違う違う。この聖杯戦争の八人目ではないよ。以前別の聖杯戦争でクラリッサが参加して私を召喚して、優勝したんだ。そしてクラリッサの願いは叶ったんだけど、まあ私は特段願いがなくてね。それ以来クラリッサと組んで各地の聖杯戦争の監督役と外付けルーラーを務めさせてもらってる。もともと私はあんまり既存のクラスに当てはまるタイプの英霊ではないからね。この聖杯戦争でもう7回くらいルーラーやらせてもらってるよ」

 

「ベテランルーラーですか。なるほどなぁてかあのシスター聖杯戦争の優勝者だったんかい。すご」

 

「彼女は有能な代行者だからねぇ。サーヴァントいなくても真祖と殴り合える教会の傑作だよ」

 

「ふーん」

 

 代行者とか言われてもよくわかんない。俺は話をスルーした。

 

「くくく。型月的には君はクラリッサの重い過去に憤りを覚えるような瞬間なんだけどねぇ。つくづく期待を外してくるよねぇ」

 

「なんすか型月って?お菓子?」

 

「あはは!それは売れそうなお土産になりそうだねぇ」

 

 ともかく舌打ちシスターは強いらしい。怒らせないようにしないとねぇ。

 

「彼女が聖杯に何を願ったのか知りたくはないのかな?」

 

「え、別に。それ知って俺になんかメリットあるんですか?本人が話すなら聞きますけど、そうでないならどうでもいいかな」

 

「うふふふ。そうか。そういうところがよかったのかもしれないなぁ。だって君のことはクラリッサの思い通りにならないからね。それはきっと……」

 

 恋とかに似てるんだろうねぇ?みんなもそう思わないかい?シスターヒロインなんてfateも月姫も重要キャラじゃないか。それならもちろんヒロインになれるわけだ。だけど困った。うちのクラリッサは初心で男性経験がないからねぇ。シスターらしくヴァージンを神に捧げているらしい。そんなものをあの火の山の神から進化した愛の神が欲するかねぇ。地に満ちよって言ってるんだからむしろ恋愛しろって推奨してると思うんだよ。私はそう思う。

 

「ルーラー。佐藤三郎に何を吹き込んでるのですか?」

 

 俺がルーラーさんと話している横から舌打ちシスターがやってきた。質素な財布のマジックテープをべりべりぃっと剥がして俺に千円札を渡した。

 

「サンキュー!今度絶対に還すから!」

 

「それならいいですよ。今日のチャリティーでの寄付をいっぱいしてくださったのでしょう?ならそれでいいですから」

 

「そんなわけにいくか!しっかり還すさ!」

 

「ならこうしたらどうかな?」

 

 これはいいチャンスだと思ったのだよ。私はルーラーだからね。裁定は得意なんだ。君たちが望むような展開に持っていくさ。

 

「実はここにお芝居のチケットが二枚あるんだ。あの有名歌劇団の全国公演のものだ。転売ヤーが欲しがる一品だ」

 

「あら?それで?」

 

 クラリッサが珍しく反応した。トランペットを吹くように音楽は好きな子だ。面と向かって言うと否定するがね。

 

「三郎君、クラリッサをエスコートしたまえ。観劇後にはカフェに行って感想を語り合うだろう。その時は君がちゃんとレディの分まで払うんだ」

 

「あーなるほど。じゃあ行こうか!楽しみだ。ははは!」

 

 三郎君が笑っている。クラリッサはその顔を見て少し目を丸くして、だけど優し気に微笑んだ。よかったよ。嘗て彼女と最初の聖杯戦争を駆け抜けた甲斐があった。あの頃の彼女はまさに教会が保有する兵器人形そのものだったからね。

 

 

 

この確証された幸せの世界はいつか三郎君が壊すだろう。だけどそれまではクラリッサに楽しい思い出を作って欲しい。私はサーヴァントである前に一人の英雄としてそう祈った。

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