その時歴史がまた動いた   作:dwwyakata@2024

5 / 5




全てが片付き。

違う形ではありますが。

宇宙の覇者となったラインハルトが、最後の飛躍の土地に戻ってきました。

原作の野心で自分を燃やし尽くしてしまったラインハルトと違い。

其処にはかけがえのない友に支えられた、穏やかな覇者の姿がありました。





4、帰ってきた英雄

幼い頃、ハンナは見た。

 

空から降りてきた人たちが、貴族の軍をやっつけたのを。

 

貧しい中、生きていくすべを教えてくれたのを。

 

それからしばらくは、ひどい時間が続いたけれど。

 

大人達は信じていた。

 

助けてくれた人。ラインハルトという人が、必ず戻ってくると言っていた。

 

それを希望にし頑張ろうと。

 

そしてハンナは、希望を信じた。

 

そのラインハルトという人の映像も見た。

 

見たことがないくらいきれいな人で、でもとても怖い目をしていた。

 

すごい人だなと思ったけれど、天使というよりは悪魔に思えた。

 

でも、悪魔でもなんでもいい。

 

勝手なことばかりする貴族達よりはましだからだ。

 

それから時間がたって。

 

貴族の軍隊がまた追い払われて。

 

同盟というところの軍隊が来た。まだ幼くて前に来たときのことはよく覚えていなかったけれど。

 

記憶の奥底から思い出す。

 

確かに、この制服を着ていたと思う。

 

それから、ここに昔住んでいたという人たちが来て、色々と支援してくれた。

 

昔は農奴だったというおじさんは。

 

今では色々なことを知っていて、聞けば何でも答えてくれた。

 

そして少しずつ住んでいる土地がよくなっていって。

 

ハンナが十五になった頃には、国が「自由惑星同盟」になったことを理解した。現在は同盟の駐留財務官という人が統治しているのだけれど、とても親切で、貴族とは大違いだった。

 

今まで貴族に取り上げられていた作物も、だいたいは自分のものにできた。しばらくは貴族から取り上げたお金で皆の生活を支援してくれるので、税金はいらないと言う話だった。

 

これは元々不当に取り上げられていた税金だから、気にすることもないと言われた。

 

ただ、ずっと言われたことを覚えている。

 

生きていく力を自分で身につけるように、と。

 

だから、補助されたとしても。

 

自分で生きていくことを、忘れてはいけなかった。

 

ある日、ハンナが果樹園の手入れをしていると、きれいな女の人が来た。元は貴族だったらしいけれど、同盟になった時に貴族を捨てたらしい。

 

ヒルダというその女性は、いくつかの質問をして。

 

ハンナが全てに問題なく答えると、頷いていた。

 

「ラインハルト議長がここを視察に来ます。 もしも不満や、足りないことがあったら何でも言って良いそうです」

 

「わかりました。 それでは遠慮なく色々言わせてもらいます」

 

「ふふ、失礼がないようにしてください」

 

女性としてはいわゆる女盛りだろう。

 

だけれども、子供を産んだことのある体だと、ハンナは一目で見抜いていた。

 

相手は誰だろう。

 

ただ、とても聡明そうな人だった。

 

それに不幸そうには見えなかった。

 

きっといい人が相手だったのだろう。

 

ほどなくして、三つ首の竜みたいな艦が惑星上空に飛来する。それを村に設置されている立体テレビで見て、アジ=ダハーカだと大人達が騒いでいた。

 

ラインハルト議長が、軍人時代に乗っていたものであるらしい。

 

今では同盟軍の殊勲艦であり。

 

この艦が来ると、ジークカイザーと叫ぶ大人と。

 

いや、議長万歳だという突っ込みが入り交じる。まだ、人々は民主主義というのをよく理解していないのだ。

 

ラインハルト議長がシャトルで降りてくる。

 

護衛を連れているが、若い頃の姿から全く衰えがない。

 

充溢していて、人生を静かに楽しんでいる雰囲気だ。

 

ただ、目の苛烈な光は衰えているように思う。

 

悪魔みたいだった昔と違って。

 

今は年老いた獅子王みたいだなとハンナは思った。

 

まだ三十路の筈だろうに。

 

不思議な話である。

 

議長は、昔カストロプとかいうろくでなしの貴族が屋敷にしていた場所で、会談をする。

 

あまり長くはなかったが、ハンナも時間をもらったので会う。

 

丁寧に礼をすると、落ち着いた雰囲気でラインハルト議長は言う。

 

「何か不安や足りていないものはあるか」

 

「はい。 私は良いのですけれど、村の東の川が荒れ放題で、このままだと近いうちに氾濫すると思います。 大人達は気づいていませんけれど、大雨の時とかは堤がぎしぎしいっていて」

 

「ほう、よく気づいてくれたな。 即座に測量官を派遣させよう。 聡明なお嬢さん、私にも最近息子ができてな。 お嬢さんのように聡明に育つことを願うばかりだよ」

 

「ありがとうございます。 私は幼い頃、あなたに救われました。 また今回も救われることになりそうです。 救われてばかりですね」

 

それでいいとラインハルト議長は言う。

 

昔、ラインハルト議長は、弱い者は弱い立場に甘んじていれば良いと思っていたそうである。

 

自分が弱い立場から這い上がったからだそうだ。

 

だが、今では弱い者のことがわかるようになってきたのだとか。

 

帝国と同盟を見て。

 

荒れ果てた地球に降りたって。

 

銀河系で、人間が版図にしている隅々まで回って。

 

結婚して、子供もできて。

 

大事な盟友と姉が結婚して、甥と姪ができて。

 

それで色々と思うところもあったそうだ。

 

「問題があったらいつでも頼るように。 頼られて、それでしかるべき存在であることが、私たちの仕事だ。 指導者がそれをできなくなったときは、お嬢さんが立ち上がるといい。 そしてそんな情けない指導者を打倒するのだな」

 

「わかりました。 そのときは頑張ります」

 

「うむ……」

 

やはり、優しくなったようだ。

 

昔の苛烈な瞳とは、全く違った。

 

ハンナは戻ると、すぐに来てくれた測量官に、堤を示す。確かに問題が発生していたらしく、すぐに手を回してくれるそうだった。

 

大人でも気づけなかったのに立派だ。

 

そう褒めてくれた。

 

だけれども、これからは。

 

ハンナが自分の足で歩く番だ。

 

きっと、あのラインハルトという人は、皆がそうすることを今は望んでいる。

 

そういう気がした。

 

 

 

(終)







はいというわけで短編、その時歴史がまた動いた終わりです。

ラインハルトがヤンと共闘する話はいくつか見たことがあるのですが、ラインハルトが同盟に亡命するパターンはあまりみないので、いっそ自分で書いてみました。

原作でもラインハルトは自分の血統にこだわっている様子もなく、おそらく権力を生涯保持することにも興味がなかったと思います。実力がない覇者が打倒されるのは当然で、生きている間でも構わないとまで言っていますので。

そういう意味では、意外とラインハルトに同盟の最高評議会議長は向いているかもしれません。

ちょっと変わったifですが、楽しんでいただけたのなら何よりです。




最後に。感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

その時歴史がまた動かなかった(作者:dwwyakata@2024)(原作:銀河英雄伝説)

原作にて、ヤンが言っていることがあります。自分がいなかった時のifについてです。▼同じようにラインハルトがいないifも想定できるかと思います。▼どうも原作ファンの一部から露骨に侮られているラインハルトですが、もしも運命のいたずらで早々に命を落とした場合はどうなるのか。▼これはそういう悲劇から生じるifの物語です。▼銀河英雄伝説二次創作短編小説▼その時歴史がま…


総合評価:286/評価:8.45/完結:5話/更新日時:2026年01月24日(土) 19:15 小説情報

IF〜亡命者(作者:名無し名人)(原作:銀河英雄伝説)

もしもあの人物が亡命したら……というIF話です。


総合評価:248/評価:8.5/連載:6話/更新日時:2026年05月07日(木) 22:34 小説情報

その時歴史が動いた(作者:dwwyakata@2024)(原作:銀河英雄伝説)

原作銀河英雄伝説において、三大勢力の一角自由惑星同盟を事実上瓦解に導いた最大要因、帝国領侵攻作戦。▼その帝国領侵攻作戦の前に、とある事故が起きたら……という内容の短編コメディ二次創作小説です。▼評価、感想などよろしくお願いいたします。▼励みになります。▼※2024/8/27に章単位で再編制しました。▼※自分の個人HPであるD・W・Wの館に掲載している作品の出…


総合評価:567/評価:7.68/完結:5話/更新日時:2024年08月27日(火) 20:45 小説情報

深淵の門—銀河英雄伝説異聞(作者:でてこ@子(dc1394))(原作:銀河英雄伝説)

宇宙暦796年、帝国暦487年。▼アスターテ会戦の直後、帝国と同盟の首都を直結する“門”が開いた。▼だがその内部は、火器も長距離センサーも通じない暗黒空間。大艦隊は安全に通れず、両軍は主力を首都防衛に縛りつけられる。しかも均衡は対称ではない。帝国にはなお、イゼルローン回廊という“もう一本の矢”がある。▼ラインハルトはこの異変を帝国再編の好機と見なし、ヤンは新…


総合評価:34/評価:-.--/連載:24話/更新日時:2026年05月06日(水) 19:58 小説情報

帝国宇宙軍#1 接触領域(作者:ZENINAGE)(原作:銀河英雄伝説)

宇宙歴七九五年、帝国歴四八六年。銀河に進出した人類が、ゴールデンバウム王朝銀河帝国と自由惑星同盟の二大陣営に分かれて戦い始めて百五十年。ただひとつの要素が現れたため、戦況は膠着から自然停戦の様相を呈していた。▼その年の八月。ヤン・ウェンリー中佐は、自由惑星同盟大使館の駐在武官として、『銀河帝国』の『帝星』にいた。▼※らいとすたっふルール2015年改訂版に従っ…


総合評価:1032/評価:8.74/連載:12話/更新日時:2026年02月17日(火) 17:44 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>