弾倉に祈りを込めます   作:覚め

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桜なんて見て終わり


満開

桜を見た日の夜は、自分の部屋がいかに殺風景かについて考えていた。あれが西洋にはない美しい木なのか、と若干の嫉妬もあったがそれでも部屋の殺風景っぷりは変わらない。あの木は年に一度だけ桜を咲かすらしい。博麗神社もその時は少しだけ人が集まると魔理沙が話していた。それ以外はかなり過疎らしい。よくわからないが、そう言うものなのだろう。いつもは妖怪がいるが春にはどこかへ行っていると言うことも。恐らくは妖怪のせいで人が居ないのだろうなと察する。

 

「桜、ね。魔法で良ければそこら辺に咲かせるけど」

 

「家庭菜園は門番の領分でしょう」

 

「中々に酷いわね」

 

「そうですか?」

 

首を傾げながら魔導書に目を落とす。桜を見て、猟銃とナイフを片付け、それでも私は死なない。老いる風には思えない。長命と言えばそれまでだが、私にはどうもそれに耐えられる気配がない。妖怪だと言うのなら自分はどの種族かとか、どんなことが出来るのかとか。そう言うものが知りたいと言うのは、なかなかに正直なところだろう。でも私は気にしない。する気がない。私がどんなものかはどうでも良くなったから。力勝負で言えば咲夜にまだ勝てるかどうかと言ったところ。妖怪と呼べる力はほとんどないし。

 

「現にこうですから」

 

「パチュリー様に腕相撲で負ける…?」

 

「咲夜も加減して負けたのね。私勝てたことないから。」

 

「猟銃を持ち出すのもかなり久しぶりでしたからねぇ」

 

「好戦的ですよね、マレンさんって」

 

「そう?私には気狂いに見えるけど」

 

魔導書のページをめくる。そこに書かれている魔法のほぼ全てを無視してもう一度めくる。何度も。正直に言えば、魔法を新しく覚えるつもりはなかった。何かすることがあれば、それが退屈をなくしてくれると思っての行動を繰り返している。何度も。恐らくはパチュリーは気が付いていて、小悪魔の方は気がついていない。気にもしていないようだ。まあ、どちらにしろ魔導書を雑に扱っていない限りは何も言われないはずだ。それに関してはかなりうるさいからな、この二人は。

 

「…どうかしましたか、フラン」

 

「私がそばにいて、パチュリーも小悪魔も少し固まってるのに。マレンは全然だなぁって」

 

「会話に参加してこないから無視すべきかと思ってました」

 

「何も言わなければ私も何も言わないわ」

 

「…ね?」

 

「はあ。」

 

魔法使いが増えてきた。厄介だな。などと思考を巡らせていたところ、咲夜が出現。レミリアが来るから机と椅子を空けておいてほしいとのこと。渋々と机の上にある魔導書を閉じる。小悪魔に渡して本棚へ。パチュリーも同様。が、しかし。フランは魔導書を閉じる気配がない。まあ彼女がしまうことはないと思っていたのだろう。咲夜が咎める気配はなく、それを見たフランは何やら不貞腐れたように机に肘をついた。しかし、そうなるとこの場に紅魔館の主要なメンバーが揃うことになる。門番は除いてだが。

 

「…美鈴は中華料理作ってます」

 

「へぇ」

 

「大人数の料理は美鈴の得意分野なので。チッ」

 

「本音。咲夜もまだまだね」

 

「うわっ」

 

「お嬢様…時間を止めれば私に分野の差などありませんから」

 

「ふぅ」

 

息を吐きながら立ち、門へと向かう。嫌な予感がしたと言えば格好が付くが、実際はあの集団の中にいるのが嫌になったからだ。と言うか無理。門に向かうのも、門番がいないのは不味かろうという理由付けでしかない。もちろん真面目にどうこうするつもりもない。本当に立ってるだけになる。門番とは名ばかりで、ただの時間潰し。門前に立ってみるとなるほどこれは退屈だ。立って数秒、若干部屋で眠りたいと思っている自分がいる。ついてきたフランがいなければそうしたかもしれない。

 

「何してるのよ」

 

「時間潰しですね」

 

「じゃああの集まりに参加すれば良いじゃない」

 

「そんなことをするような人間に私が見えましたか?」

 

「あっそ」

 

何がしたいんだこの吸血鬼は。日傘まで出して。レミリアの話ではフランの分はないと話されていたが、咲夜が調達したのか。…帰らないな。今の私は猟銃もナイフもない。それを考えれば門番なんて出来ないなと今思い至ったが帰るつもりもない。帰ってくれない吸血鬼が何と言うのか分からないためだ。美鈴が参加する集まりは紅魔館では久しいが、フランも参加するとなれば私は立ち会った事がない。希少なのだから参加してくれば良いのに。

 

「それなら私は貴女が参加するよう要求するわ」

 

「却下。嫌です」

 

「最初の頃から変わったからね。その変化でも眺めたいなって思っただけよ」

 

「つい最近見せたと思いますが」

 

「…まさか、私に刃向かった時のこと?何も変わってないでしょ」

 

「だから嫌われるんですよ」

 

「貴女からね」

 

まあ、実際のところ私以外が嫌っている雰囲気はない。面倒だ。よく分かっている。そうやってぼんやりとしていると、咲夜がフランを呼びにきた。一体何をするのか。いかんせん私は集まりに加わるつもりもないため知ることはない。今度はまともな静寂。春になれば生物が出てくると魔理沙から聞いたが門前には何もいない。かなり退屈。でも今はこれくらい退屈な方が良い。やる事がないと苦痛であることがわかれば、何か別の目的を探すことができるはずだ。そうなると元教会から出て行くことになる。…猟銃とナイフか。

 

「…もういっそ、このまま行きますか」




終わり
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