バッドエンドが好きなワイ、鬼滅の刃で鬼になる   作:#どんぐり

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柱合会議と柱と初戦闘

 初めての鬼殺隊士との戦いから約二年が経ち、何百人何千人と人を喰い、鬼殺隊の中で霧の鬼の存在が徐々に認知されて行っていた。当の本人は出会った鬼殺隊士から霧の鬼としての危機を聞いていたため、知名度が上がっていっていることを自覚していた。

 

 そんな中、産屋敷邸では柱合会議を行っていた。

 

 

 

「よく集まってくれたね、私のかわいい子供たち」

 

 その一言から跪いている柱の中の一人がねぎらいの言葉を掛け、議題が進んでいく。

 

 最近隊士の質が落ちていることや人員不足、それぞれの管轄内で起きた出来事を話し合っていく。

 

 そして最後の議題は産屋敷の口から発せられた。

 

「最近、物騒なことが起きていてね」

 

 温かみのある声の奥に少し怒気の感情が入っていることに気付く。お館様がそのような感情を晒すことは初めてなのでその場にいる柱達は一斉に身構える。

 

()()()を倒すために任務に赴いた可愛い子供たちが、幻覚によってわざと残酷な最期を迎えるために廃人となって殺されている」

「おそらく、そういうのを楽しんでいる鬼なんだろう」

「その鬼について、各自調べてほしいんだ。これ以上被害を増やさないために」

「その鬼は背丈が高く、彗色の目、白色の着物を着ている」

 

「そして、左目に()()()()()()()が入ってある」

 

「みんな気を付けて臨むようにね」

 

「「「「「「「「「御意ッ!!!」」」」」」」」」

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 柱合会議を終えた悲鳴嶼行冥は一人、帰路の中隠の背中に背負われながら、最後に話した鬼について考えていた。

 

 あぁ可哀そうな子供たち。幻覚によって悲惨な最期を迎えるとはさぞ苦しかっただろう。許せぬ。

 

 自身の手にある数珠を強く握りしめると、乾いた音が夜気に染みた。盲いた目には景色は映らぬが、空気の揺らぎと匂いが、嫌というほど真実を語っている。祈りが踏み躙られた残滓。

 

「……幻覚で、心を壊す、か」

 

 呟きは吐息と共に消えた。戦いの末に斬られるならば、まだ救いはある。だが、廃人となって死に逝く。それは、人の尊厳を根こそぎ奪う行為だ。

 

 遠くの山が風で揺れる。その音が、まるで泣き声のように耳に届いた。

 

「南無阿弥陀仏……」

 

 嘆く様に呟いた言葉が暗闇に溶ける。まるで祈りそのものが、夜に拒まれたかのようだった。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 夜が、ひとつ息を吐いた。

 

 山々を撫でる風が止み、虫の声さえ遠のく。世界が一瞬だけ、耳を塞いだように静まり返る。

 

 その静寂の、さらに奥。

 

 人の営みから隔てられた深山の中で、霧が生まれていた。

 

 月明かりを拒むように、地を這い、木々に絡みつき、ゆっくりと濃さを増していく。風はなく、霧は散らない。ただ在るだけで、周囲の気配を喰らっていった。

 

「……ふふ」

 

 低く、楽しげな声が霧の中に溶ける。

 

 白い着物が、闇の中で僅かに揺れた。

 彗色の片目が、愉悦に細められる。

 

「もう二年、か」

 

 鬼は指先で霧を自由自在に動かし、ゆっくりと息を吸った。

 

「ついに……下弦として名指しされるようになったか」

 

 くすり、と喉が鳴る。

 

 鬼殺隊が動く。

 柱が来る。

 

 予感が旋律となって自身を駆け巡る。迫りくる人間の脅威が、音のない圧となって霧を震わせた。

 

「面白い。この感覚は、鬼になってしばらく感じることが無かった」

 

 久しい激情に心が沸き立つ。鬼としての闘争心が身体に浮き出るように現れる。血走った目、滾った唾液、鋭利な爪。

 

 一般隊士との戦いには飽きていた中で柱との予感が麻薬の感情となって駆け巡る。

 

 いつかくる強敵()との死闘に備え、今日も人間を喰う。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 一般隊士の飯岡こと俺は、同じ隊員の三浦と伊藤と一緒に任務に就いていた。

 

 その任務の内容というのは、ある町で夜な夜な子供が家出し、神隠しにあっているというものだ。外道な鬼の仕業に違いないと踏んだお館様は俺らに鎹鴉を通して任務をあてたのだ。

 

 端から端まで見えない程の町を捜査していく。三手に分かれ、捜査を開始。

 

 町の人々に聞き込み調査を開始し、栄えている場所に向かう。が、聞き込みは、思った以上に難航した。

 

 戸を叩けば怯えた目で見られ、事情を話せば言葉を濁される。子供が消えた事実は誰もが知っているが、夜の出来事となると口を噤む者が多かった。

 

 何も収穫がなく、数日が経過した。仲間との定期連絡でも収穫無し。捜査は早くも手詰まりした。そんな中、一人の老婆に出会った。

 

「ご老人。最近、夜中に子供が消えていると噂で聞いたんだが、何か知っていることはないか? 知っていたら教えて欲しいんだ」

 

 老婆は一瞬、こちらを見上げてから、ゆっくりと視線を逸らした。

 

「……知らんよ」

 

 か細く掠れた声で言う。

 

 明らかに嘘だ、と直感が告げる。

 

「夜の話はな……」

 

 老婆が、独り言のように続ける。

 

「聞かん方がええ。知ったら最後、夢と現の境がわからんようになる」

 

「どういう意味だ?」

 

 思わず声を低める。老婆はゆっくりとこちらを振り返り、歯の抜けた口で微笑った。

 

「子供達は、自分から出ていくんじゃ。それも笑いながら、歌いながら、夜の霧について行く」

 

「……は?」

 

 背筋に、冷たいものが走った。

 

「霧……だと?」

 

 老婆はそれ以上語らなかった。首を横に振り、追い払うように手を振る。

 

「もう行ってくれ。今日は……今日はまだ、霧が出とらん」

 

 その言葉の意味を問い返す前に、老婆は戸を閉めてしまった。

 

 子供を誘う霧が発生し、夜な夜な家出をさせるように仕向ける血鬼術か。なかなか強力だな。

 

 その後、同じように探索するも、老婆に聞いた情報以外何も集まらなかった。

 

 調査を開始し、ほとんどを見尽くした頃、町を覆うほどの霧が漂っている事に俺たちは同時に気づく。

 

 鬼の仕業だと確信し、俺たちは背中を合わせるように刀を構える。

 

 警戒していると遠くの山から更に濃い霧が漂っていることに気付き、一斉にそちらの方を見やる。

 

 ……来るッ

 

 けたたましい爆音と地面に何者かが降り立った衝撃で後ろに吹き飛ぶ。すぐに体勢を立て直し、鬼と思われる、砂に塗れるぼやけた黒い影に殺気を飛ばす。

 

「鬼狩り共、お前らが俺を探すの遅いからこっちから出向いちゃったよ」

 

 そう言った鬼の目には下弦の壱と書かれていた。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 最近ちょこまかと探っている鬼狩り共がうるさいから、わざわざこちらから出向いたというのに、弱そうな鬼狩り三人だな。やる気が無くなった、早く殺して場所を移そう。

 

 そう考えながら目の前の鬼狩り三人を血鬼術で瞬時に殺して喰い、町を離れようとする。

 

 とその時、丸い鉄球のようなものが此方に投擲される。徐々にデカくなっていく鉄球を瞬時によけ、投擲されてきた方を凝視する。

 

「…南無阿弥陀仏……」

 

 現代最強の柱が不倒の霧(幻惑)の鬼と対峙した。

 

 

 

 

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