黎の軌跡 異界から現れた少年   作:勝ち犬

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続きです。

どうぞ。


第2話

並盛中学校からの帰り道、ツナは深い溜息とともに肩を落としていた。

 

「学校の話題は10代目の話ばかりでしたね、10代目!」

「あはは、すげぇことになってたな」

「……もう、外を歩けないよ」

 

昨日のことだ。ディーノのペット、大亀のエンツィオが水分を吸って巨大化し、街で大暴れした。それを止めるため、ツナはリボーンに撃たれた死ぬ気弾の力で、**「死ぬ気でエンツィオを止める!」**とパンツ一丁で立ち向かったのだ。

その勇姿(?)の後ろ姿が今日の地元紙の一面を飾ってしまった。

 

「よかったじゃねーか。ボスとしての貫禄がついたじゃねーか」

 

歩く赤ん坊、リボーンが事も無げに言い放つ。

 

「よくないよ! 第一、俺はボンゴレのボスになんてなりたくないし!!」

 

ツナの絶叫が夕暮れの並盛町に響いた、その時だった。

 

――空間が、不自然に歪む。

 

ツナたちの目の前に、いつの間にか一人の人物が立っていた。顔全体を無機質な仮面で覆い、異様な気配を纏っている。

その者は、驚愕するツナたちを冷徹に見据え、低く、ノイズ混じりの声で呟いた。

 

「……ボンゴレ……」

 

殺気が膨れ上がる。仮面の人物が踏み出そうとした瞬間、

 

「10代目に近づくんじゃねぇ!!」

 

獄寺が咄嗟に懐から取り出したダイナマイトを投擲する。爆弾は仮面の人物の目の前で、轟音と共に炸裂した。

 

「ちょ、獄寺君!?」

 

あまりに突然の出来事に、ツナは動揺して声を上げる。

だが、爆煙は一瞬でかき消された。煙の中から、凄まじい速度で黒い鎖が飛び出し、真っ直ぐにツナの喉元へ向かう。

 

「っと、危ねぇ!」

 

山本が瞬時に刀(山本のバット)を抜き放ち、鎖を弾き飛ばした。

 

「いきなりすぎねーか、あんた?」

「てめぇ……何者だ!?」

 

山本と獄寺の表情からさっきまでの穏やかさが消え去る。ツナを守るように前に立ち、相手を鋭く睨みつけた。

 

山本が鋭い踏み込みで相手の動きを釘付けにし、その死角を縫うように獄寺が援護に回る。数多の死線を潜り抜けてきた二人の呼吸は、言葉を交わすまでもなく完璧に噛み合っていた。

獄寺が「そこだぁ!!」と叫び、できた一瞬の隙へロケットボムを放つ。二人の圧倒的な攻勢に、誰もが勝利を確信した、その瞬間――。

 

「……っ!? ……カハッ……!!」

 

突如として、山本の動きが凍り付いた。

目を見開き、喉を掻きむしる。肺は必死に空気を求めているが、まるで喉元を不可視の力で完全に塞がれたかのように、一切の息が通らない。

 

「山本……!? おい、どうしちまったんだ!!」

 

獄寺の注意が逸れた一瞬、仮面の人物が肉薄した。死ぬ気の炎を纏った拳が、獄寺の鳩尾を深々と抉る。

 

「カハ……ッ……10、代目……」

 

獄寺の体は木の葉のように吹き飛び、壁に激突して意識を失った。

 

「獄寺君!! 山本!!」

「……チッ。ただの暗殺者じゃねーな。ツナ、動揺している場合じゃねーぞ。死ぬ気で――」

 

傍らに立つリボーンが、冷静にツナを叱咤したその瞬間だった。

仮面の男が、先端に鋭利なナイフが備わった鎖を電光石火の速さで放つ。リボーンは最小限の動きでそれを難なく回避したが、男の狙いは肉体ではなかった。

 

ガキィィィン!!

 

放たれたナイフが突き刺さったのは、リボーンの足元に伸びる「影」だった。

 

「リボーン、どうしたんだよ!?」

「……ちっ、動けねーな」

 

世界最強のヒットマンが、苦々しく毒突く。影を物理的に縫い止められたリボーンは、まるで見えない壁に固定されたかのように、指一本動かすことができない。

仮面の人物は、邪魔者を排除したと言わんばかりにツナへと歩み寄る。

絶体絶命の窮地。だが、ツナの瞳は倒れた獄寺と山本を捉えていた。

 

(みんなが……みんながやられてるのに、俺だけ逃げるなんて……そんなの、死んでも死にきれない!!)

 

その瞬間、ツナの精神が極限の「覚悟」に達した。

装着した手袋がまばゆい光を放ち、硬質な輝きを放つ黒のレザーへと変貌する。手の甲に刻まれた「27」の数字は、ローマ数字の「X」へと形を変えた。

 

――ボンゴレ10代目の証。

 

ゴォォォッ!!

額に灯る大空の炎は、激しくも静謐な純度を誇っていた。凛々しく引き締まったその顔つきに、もはや「ダメツナ」の面影はない。

 

「……そこから先へは、行かせない」

 

仮面の人物が鎖を放つが、死ぬ気化したツナは最小限の動きですべてを見切り、回避する。炎の推進力を爆発させ、一瞬で懐に潜り込むと、相手の鳩尾を殴り抜いた。

 

ドォォォン!!

 

吹き飛ぶ襲撃者。だが、相手も空中で体勢を立て直し、死ぬ気の炎を纏った鎖を猛然と振るってくる。ツナは超直感によってその軌道を読み、ことごとく回避しては反撃を叩き込む。

圧倒的な優勢――そう思われた瞬間、ツナの動きが止まった。

 

「……っ!? ……はぁっ……がはっ……!!」

 

突如として襲いかかる、肺の痛み。息ができない。

ツナは瞬時に距離を取ったが、超直感が告げていた。相手が「空気そのもの」を操作していることに。直後、ツナの周囲の大気が急激に圧縮され、爆発を起こした。

 

(イクスバーナーなら……! いや、ダメだ。炎圧が強すぎて、この街じゃ被害が出すぎる……!)

 

ツナは自らの指に嵌まった**「大空のアニマルリング」**に意志を込めた。

 

「ナッツ!!」

 

リングから噴き出した炎が形を成し、大空のライオン――ナッツが戦場に躍り出る。

 

「ガゥゥゥゥッ!!」

 

その咆哮が空間を震わせた瞬間、襲撃者の鎖が石像のように白く固まり、粉々に砕け散った。

 

「ナッツ、カンビオ・フォルマ(形態変化)!!」

 

ナッツが光り輝くエネルギー体となり、ツナの右手の手袋へと同化した。

 

「これで……終わりだ!!」

 

ツナは爆発をすり抜け、襲撃者を空中へと蹴り上げた。逃げ場のない上空で、右手に凝縮された極大の炎が渦を巻く。

 

「ビッグバン・アクセル!!!」

 

ゼロ距離から放たれた白熱の光弾が、仮面の人物を飲み込んだ。

地上に叩きつけられた襲撃者は、仮面を砕かれ、もはや指一本動かすことなく沈黙した。

 

ゼロ距離から放たれた白熱の光弾が、仮面の人物を飲み込んだ。衝撃波が並盛町の夕闇をオレンジ色に染め上げ、凄まじい勢いで地上へと叩きつけられた襲撃者は、激しい轟音と共にアスファルトを砕いた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

ツナが着地し、肩で息をしながら倒れた相手を見据える。爆炎が晴れ、露わになったその姿に、ツナは息を呑んだ。粉々に砕け散った仮面の下にのぞいたのは、血の通った人間の顔ではない。火花を散らす精密な電子回路と、剥き出しになった鈍色の金属骨格。それは、現代の科学力を遥かに凌駕する技術で造られた、異質な「自動人形(オートマトン)」だった。

 

「……えっ!? ロボット……だったの……?」

 

驚愕するツナ。その静寂を破るように、ゆっくりとした、品のある拍手の音が路地裏に響いた。

 

――パチ、パチ、パチ、パチ。

 

「実に見事な手際です、ボンゴレ10代目。敬意を表しましょう」

 

影から滑り出すように現れたのは、色鮮やかな衣装を纏ったピエロだった。しかし、その立ち振る舞いは道化のそれではなく、まるで貴族のように洗練されており、言葉遣いも極めて紳士的だった。

 

「流石はボンゴレ10代目」

 

その言葉が終わるより早く、リボーンが動いた。影の呪縛はいつの間にか解けており、リボーンは跳躍しながらレオンが変化した銃口をピエロの眉間へと正確に向ける。

 

「……動くな。その作り物の笑顔に風穴を開けるぞ」

 

同時に、ツナも再び手袋に激しい大空の炎を灯し、鋭い眼光でピエロを射貫いた。

 

「お前、何者なんだ……!?」

 

リボーンが低く、射抜くような声で尋ねた。リボーンが低く、射抜くような声で尋ねた。同時に、ツナも再び手袋に激しい大空の炎を灯し、鋭い眼光でピエロを射貫く。臨戦態勢を整えた二人を前にしても、ピエロは紳士的な笑みを崩さない。それどころか、スーッと優雅に手を前へ差し出し、静かに制した。

 

「おやおや。私は構いませんが……お仲間様方は、よろしいのですか?」

 

ピエロが視線を向けた先――倒れている獄寺と山本のすぐ傍らに、いつの間にか色鮮やかな風船が置かれていた。

 

「ちなみに、こうなります」

 

ピエロが指を鳴らす合図を送った瞬間、離れた場所にある別の風船が、耳を裂くような轟音と共に爆発し、周囲の壁を粉砕した。

 

「……っ!!」

 

仲間の命を人質に取られ、ツナとリボーンは苦渋の表情で武装を解除した。リボーンが低く、冷徹な声で問いかける。

 

「……お前らの目的は何だ。なぜツナを狙った?」

 

ピエロは僅かな間を置いて、恭しく答えた。

 

「主人の望み……『ボンゴレの復活』、ですよ」

 

その言葉と同時に、破壊されたはずのロボットの残骸から禍々しい藍色の光が溢れ出した。地面に巨大な魔法陣が浮かび上がり、ツナを逃れられぬ檻のように囲む。

 

「我が主人は、この世界のボンゴレ10代目の力と肉体を欲している。……謹んで、頂戴いたします」

 

「ふざけるな……!!」

 

ツナは再度ハイパー死ぬ気モードとなり、脱出しようと炎を最大出力で噴射するが、魔法陣の拘束は緩まない。ツナの体が、底なしの闇へと飲み込まれていく。

 

「……連れて行かれて……たまるかぁぁ!!」

 

最後の抵抗として、ツナは右手に全エネルギーを凝縮し、至近距離から**「X BURNER(イクスバーナー)」**を放った。ピエロの想定をも超える爆発的な推進力が結界を内側から食い破り、周囲を白銀の閃光が包み込む。

 

「……くっ、これは予想外の……!」

 

爆煙が晴れた時、そこにはもうツナの姿はなかった。

ピエロは一瞬、忌々しげに「ちっ」と舌打ちをしたが、すぐに元の紳士的な表情を取り繕った。

 

「……転移先が逸れましたが、まぁいい。我々の世界へ連れて行くことだけはできました」

 

ピエロがその場を立ち去ろうとした時、背後からリボーンが再度尋ねた。

 

「お前ら……ボンゴレを復活させると言ったが、どういう意味だ。ボンゴレならここにあるだろうが」

 

ピエロは足を止め、振り返らずに答えた。

 

「この世界とは異なる世界があります。……では、ご機嫌よう」

 

その言葉を残し、ピエロの姿は陽炎のように掻き消えた。

 

 




小説って書くのが難しいですね。

次回もよろしくお願い申し上げます。
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