トリノコシティのヤチヨカバーを聴いて衝動的に書き上げました

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最初から一つの素晴らしい作品なのに、ヤチヨを思うと別の景色が見える...
この景色を誰かと共に見たくて書きました
ひとまずヤチヨカバーか原曲、もしくは両方か、とにかく聴いてきてください


トリノコシティ

 無機質なデータの海(0と1が交差する地点)の中を揺蕩う。

 

 実体を持たない私にはこの数字を直接知覚することができるこの世界。

 

 沈んだ意識を浮かび上がらせ、人の見ることのできるレイヤーに顔を出す。

 

「ぷはっ」

 

 インターネットが普及し始めて、少しずつ言葉を交わす人が増えている。

 

 黎明期ならではのアングラじみた空気。嘘と本当が入り混じった言葉。

 

「『8000年前から地球見守ってるけど質問ある?』っと...」

 

 掲示板は賑わいレスが飛び交っている。

 

 そのどれも私の言葉を信じいるわけではない、面白がって連ねられただけの言葉(間違いだらけのコミュニケーション)

 

 けれど、科学を信じ、超常を否定するようになった今、私の本当の私をさらけ出せる数少ない場所でもある

 

「本当の私...か」

 

 人と話すために掲示板に訪れた時を思い出す。

 

 IDが必要で入力を求められた(アナタの名前はなんですか)

 

 その名前が

 

 

  yachi8000(十文字以内で答エヨ)

 

 

 私がヤチヨなのは分かってる。

 

 8000年を生きたというあの頃聞いた設定もしっかりと私は体験してきた。

 

 私は、彩葉と最高に楽しい日々を過ごした天真爛漫なお姫様で、彩葉の心を救った最推しの電子の歌姫のどちらでもあるはずで(過去と未来の交差する地点)

 

 だけどもう、今の私にはあの純粋さもあの完璧さもない(行く宛を失った現在地)

 

 黒い幻影が後ろから囁く。

 

アナタはどうして生きているの?(アナタはどうして生きているの?)

 

 ...答えはずっと前から決まっている。

 

 死ぬこともできない私に選択肢はないんだ(百文字以内で答エヨ)

 

 

 元々月の技術力を持っていた私がその気になれば今の環境でもツクヨミの再現はすぐだ(過去最高速の夜が明ける)

 

 でも、私はまだ『月見 ヤチヨ』にはなれなくて(バランス取ることもできないまま)──

 

 

 鏡面のように反射する水面の上で一人、足を抱えて座り込む(自分だけどこか取り残された)

 

 まだまだ技術力の発達していない中で人を入れることはできない(音の無い世界)

 

 けれど、これは『月見 ヤチヨ』によって造られた世界(造られた世界)

 

 8000年時の流れで変わった私(傷んだ果実)()もういない証明なんだ(捨てるだけなら)

 

 この世界にかぐやは二人もいらない(二人もいらない)。きっと貴女なら彩葉を笑顔にできるから(一人でできるから)

 

 

──────

 

 

 常に明るいけれど、日が出ることはない(昼と夜が交差する)場所(地点)

 

 ようやっとこの世界に人が入り始めたんだ。

 

 けど、そこにはまだ彩葉の姿はない(誰かに会いたくて会えなくて)

 

 彩葉が『月見 ヤチヨ』のことを知ってるのは確認した。

 

 私の配信を見てくれてるのも知ってるんだよ?

 

 だから、彩葉は私の名前を知ってるんだ(ワタシの名前はなんですか?)

 

 それだけで今の私には十分なんだ(十文字以内で教えて)

 

──────

 

 作った頃と変わらない水面の上に私は立っている。

 

 ログインユーザーの名前を見て、迷いなく飛んできた。

 

「ほ、本当にヤチヨがいる...」

 

 ...感涙を流して私の名前を呼ぶ彩葉を見る。

 

 この私は本体だけど、変な行動はできない(嘘と本当が交差する地点)

 

「そんな格好じゃつまらな〜い」

 

 必死に”私”を演じる(呼吸が止まりそうな閉塞感)

 

 本当に私は、私の知る未来に行けるのかな?(ワタシはどうして生きているの?)

 

「いってらっしゃ〜い!」

  

 彩葉の腕を、熱の感じられない体を、ツクヨミの世界へと送り出す。

 

 どうか、お願い(百文字以内で教えて)

 

 

──────

 

 

 天守閣の上で過去のことを想う。

 

 人の笑顔(好き)人の醜い面(嫌い)人の良い面(好き)、...たくさんの人が死ぬところ(嫌い)を見てきた(の繰り返しで)

 

キラキラのかぐや姫は(疲れ切った愛は)もうおばあちゃんです(もういらない)

 

 目の前にいる彩葉は悲しいような、怒ったような顔をしている。

 

 ごめんね彩葉、そんな顔をさせたかったわけじゃないのに。

 

 やっぱり私じゃ──

「聞かせてよ」

 

「え?」

 

「八千年、あったこと全部聞かせてよ」

 

「ええ?」

 

「私、寝ないから!」

 

──────

 

「江戸時代は娯楽が発達してきてね...」

 

 八千年の旅路、その中でも楽しくて笑えたお話を話していく。

 

 未来を心配する必要もない穏やかな時間(時間だけいつも通り過ぎていく)

 

 今まで彩葉にだけは知られちゃいけなかった過去を少しずつ彩葉が知っていく(一秒ごとに崩れていく世界)

 

 この世界でも月人は訪れて、勝手に飛び出てきたかぐやを連れていってしまった(歪んだ景色に塗りつぶされた)

 

 ハッピーエンドには連れて行けなかったけど(真実はいらない)彩葉ともう一度あって話せるだけで十分だ(偽りでいいの)

 

 いつか一緒に暮らしていた部屋で話しているけど、私に体はなくて(自分だけどこか取り残された)パンケーキの味もわからない(色のない世界)。それでも、私が目指した未来(夢に見た世界)まで来れた。

 

「ネムッテ!ネムッテ!」

 

 この体の活動時間の限界が訪れた。

 

 彩葉も限界そうだしちょうど良いや。

 

「じゃ、お休み〜」

 

──────

 

「私、やりたいことができた!」

「本当のハッピーエンドまで付き合ってよね!」

 

──────

 

 ()()でライブの舞台裏で待機する。

 

 ここにいる未来を諦めてしまったかぐやも一緒だ(傷んだ果実を捨てることすら)

 

 今日のライブは有名なボカロ曲のカバー。

 

 その締めをみんなで歌いあげる(一人じゃできない)

 

 

「「「傍にいて欲しくて」」」




できれば、あなたの見た景色もお教えください
歌詞コード:N00036774

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