ラオウ×ONE PIECE   作:トテミくん

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第五章 拳王と四皇

その夜、ガルム島では宴が開かれた。

 

ルフィたちは当然のように食べまくっていた。

 

ラオウは町の外れで、ひとり海を見ていた。

 

そこへゾロが酒瓶を持ってやって来た。

 

「飲むか」

 

ラオウは受け取る。

 

「酒か」

 

「嫌いか?」

 

「嫌いではない」

 

二人は並んで海を見た。

 

しばらく沈黙。

 

先に口を開いたのはゾロだった。

 

「お前、王だったんだろ」

 

「拳王だ」

 

「似たようなもんだ」

 

ラオウは酒を飲む。

 

「我は恐怖で人を従えた。敵も味方も、我を畏れた」

 

ゾロは言う。

 

「ルフィは違うな」

 

「ああ」

 

「でも、あいつのためなら命を懸ける奴は多い」

 

ラオウは宴の方を見る。

 

ルフィが肉を奪い合い、ウソップが嘘をつき、チョッパーが信じ、ナミが怒り、ロビンが笑い、ブルックが歌っている。

 

「なぜだ」

 

ラオウが問う。

 

ゾロは少し考え、酒を飲んだ。

 

「あいつが真っ直ぐだからだろ」

 

「真っ直ぐ」

 

「あいつは支配しねぇ。命令もしねぇ。でも、自分のやりたいことは絶対曲げねぇ。だからこっちも、勝手についていく」

 

ラオウは目を伏せた。

 

勝手についていく。

 

かつての拳王軍とは違う。

 

恐怖ではなく、信頼。

 

支配ではなく、自由。

 

ラオウは低く言った。

 

「海賊王とは、奇妙な王だな」

 

ゾロは笑った。

 

「だろうな」

 

その時、空気が変わった。

 

島の港側から、強大な気配が近づいてくる。

 

ゾロが立ち上がる。

 

「敵だな」

 

ラオウも立つ。

 

「強い」

 

港には、一隻の船が着いていた。

 

黒い帆。

 

その船から降りてきたのは、異様な気配を纏う男たち。

 

黒ひげ海賊団の傘下。

 

ティーチの名を背負い、新世界を荒らす連中だった。

 

そのリーダー格の男が笑う。

 

「ゼハハ……じゃねぇが、聞いたぜ。麦わらがこの島にいるってな」

 

ルフィたちも宴を止め、広場へ出てくる。

 

ルフィの目が鋭くなる。

 

「黒ひげのとこの奴らか」

 

男は笑った。

 

「本命は麦わら、お前だ。だが……そっちのでけぇ男も面白そうだな」

 

男の視線がラオウへ向く。

 

「聞いたことねぇ顔だが、強そうじゃねぇか。黒ひげ提督への土産に――」

 

言葉が止まる。

 

ラオウが一歩前に出たからだ。

 

「黒ひげ」

 

その名を、ラオウは低く繰り返した。

 

「この海の強者か」

 

ジンベエが答える。

 

「四皇の一角。危険な男じゃ」

 

ラオウの目に火が宿る。

 

「四皇……この海における王の一人か」

 

ルフィが拳を鳴らす。

 

「あいつはおれがぶっ飛ばす」

 

ラオウはルフィを見る。

 

「因縁があるのか」

 

「ああ」

 

ルフィの声には珍しく重い怒りがあった。

 

「絶対にぶっ飛ばす」

 

ラオウはそれ以上聞かなかった。

 

その目を見れば十分だった。

 

男たちは武器を構える。

 

「四皇の麦わらに、謎の巨漢。まとめて潰せば名が上がる!」

 

ルフィが前へ出ようとする。

 

だがラオウが片手で制した。

 

「麦わらの小僧」

 

「ん?」

 

「雑兵は我が払う。貴様は己の因縁を濁すな」

 

ルフィは少しだけラオウを見た。

 

そして笑った。

 

「じゃあ頼む!」

 

ナミが驚く。

 

「あのルフィが譲った……」

 

ゾロは笑う。

 

「あいつなりに分かってんだろ。ラオウが今、何か確かめたがってるってな」

 

黒ひげ傘下の男たちは一斉に襲いかかる。

 

銃。

 

剣。

 

悪魔の実の能力。

 

武装色。

 

新世界の荒くれたち。

 

だが、ラオウはゆっくり歩いた。

 

「この海には、王を名乗る者が多い」

 

銃弾が飛ぶ。

 

ラオウは闘気で弾く。

 

剣が迫る。

 

拳で砕く。

 

能力者が巨大な獣へ変身する。

 

ラオウの拳が、その顎を撃ち抜く。

 

「だが、真に王たる者は少ない」

 

ラオウの闘気が広がる。

 

敵たちの足が止まる。

 

覇王色ではない。

 

しかし、魂そのものを圧する拳王の気。

 

「うぬらの覇、軽い」

 

男たちは震えた。

 

「な、何だこいつ……!」

 

ラオウは拳を天へ掲げる。

 

「北斗剛掌波」

 

夜の港に、見えぬ衝撃が走った。

 

敵の船が大きく揺れ、男たちがまとめて吹き飛ぶ。

 

それでも、ラオウは殺していない。

 

だが、完全に戦意を砕いていた。

 

ルフィはじっと見ていた。

 

「ラオウ、変な奴だな」

 

ウソップが叫ぶ。

 

「どこが!? 変どころじゃねぇよ! 災害だよ!」

 

ルフィは笑う。

 

「でも、悪い奴じゃねぇ」

 

ラオウは港に倒れた敵たちを見下ろす。

 

その胸の内に、かつての自分の影がよぎる。

 

力で奪う者。

 

恐怖で支配する者。

 

自分もまた、そうだった。

 

だが今は違う。

 

少なくとも、この拳で無意味に命を奪う必要はない。

 

ラオウは静かに呟いた。

 

「ケンシロウよ」

 

海風が吹く。

 

「この世界にも、我の知らぬ拳があるようだ」

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