面白いかどうかは分からん。
―――……夢を見た。数多の世界が滅びへと向かっていく夢を。
―――光が一切差さない地下世界、度重なる戦いで荒廃した大地、猛毒で汚染された空、赤い光によって焼かれた星系。
―――どの世界も秩序というものが無く、ただ力だけが全てを支配していた。
―――そんな世界で俺は一羽の鴉としてあらゆる戦場を飛び回り、あらゆるものを壊していった。
―――襲い来る敵を始め、知り合いも、仲間も、友も、恩人も、立ちはだかる者を全て。
―――後に残ったのは何もかも黒く焼き尽くされた世界と俺が壊した敵の残骸だけだった。
―――全てが終わった世界で俺は――。
―――
女性にしか反応しない世界最強の兵器「インフィニット・ストラトス」通称「IS」
この兵器の出現後、男女の社会的な立場が完全に一変、女尊男卑が当たり前になってしまった歪んだ時代。
そんな歪な世界で織斑一夏は第三アリーナで先ほど届いたIS【白式】に乗って敵と対峙していた。
何故そんなことになっているのかというと数週間前のクラス代表を決める際にイギリスの代表候補生セシリア・オルコットと揉めてしまったのだ。
正直、俺自身はクラス代表なんてなるつもりは無かったんだが、俺の姉である織斑千冬が模擬戦をすることを決めてしまった。
だから、急いでISに関する知識を学びながら幼馴染みである篠ノ之箒と訓練をしたのだがその効果があるのか未知数だった。
「あら、逃げずに来ましたのね」
目の前の敵、青色のIS【ブルー・ティアーズ】を纏ったセシリアが余裕な笑みを浮かべている。
「そんな蛮勇な貴方にチャンスを上げますわ」
「……チャンス?」
「そうですわ、今なら泣いて謝れば、許して差し上げてもよろしくてよ?」
「そんなものはチャンスじゃない」
「そうですの、なら仕方ありませんわね。徹底的に叩き潰してあげますわ」
セシリアの言葉と同時にレーザーライフル【スターライトMKⅢ】から閃光が走り、俺はそれを回避する。次々と襲い掛かる光弾を拙い動きながらかわし続ける。
「(ど、どうして一発も当たらないんですの!?)くっ、こうなったら。ブルー・ティアーズ!」
セシリアは業を煮やしたのか期待に搭載されたビット兵器を展開して俺を囲んでレーザーの雨を降らせる。
だが、一夏はまるで分っているかのように全てを回避する。
「何故・・・何故当たらないんですの!?」
セシリアは何か喚いているようだが、一夏は早く決着を付けるために白式の唯一の武器である刀を構えながら前に進む。
「掛かりましたわね!」
セシリアは、ニヤリと笑うとサイドスカートから二基のミサイル型のビットを射出した。
「ブルー・ティアーズは、全部で六基ありましてよ!」
セシリアはそう言ってミサイル型ビットを操作して俺に向かわせる。
(間に合わない!?)
回避は間に合わないと判断した一夏はとっさに左腕を掲げる。
その直後、二発のミサイルが直撃し、爆炎に包まれた。
―――
「ここは……」
爆発に呑まれた一夏は気が付くとあの夢の世界に居た。
黒く焼け焦げた大地、周辺に転がる鉄の残骸、血のように紅い空、幼い頃から見続けた死の景色。
そんな何もかもが終わった世界の中で周囲を見渡すと小高い山の麓に何らかの施設の入り口を見つけた。
(何だあれ?)
一夏はその施設が妙に気になり、確かめようと歩きだす。
『駄目』
「え?」
突然後ろから誰かに声を掛けられ、思わず振り向くとそこには見知らぬ白い少女が居た。
「君は?」
『そっちに行っては駄目』
一夏は少女に問いかけるが彼女はそれを無視して警告する。
「行くのは駄目って何でなんだ?」
『あそこはあるものを封印する場所』
「封印?どういうことだ?」
『あの中には獣が居る。秩序を、世界を破壊する、災禍の獣を。故に貴方を行かせるわけにはいかない』
彼女はおもむろに手を上げると何処からか鎖が出現し、一夏の身体を拘束する。
「な、何を!?」
『大丈夫、貴方を化物にさせないから』
「さっきから言っている意味が分からないんだが!?」
さっきから会話が成り立たない。彼女の言う災禍の獣や世界を破壊するなど聞かされて何もかも分からず戸惑っていると突然、鎖が黒く変色して崩壊した。
『っ!?何故……まさか!』
少女は今の現象に心当たりがあるようだがこれはチャンスだった。一夏は目の前の彼女から逃げるように件の施設の入り口の方へ向かう。
『待って!』
少女の静止を振り切り、一夏は目の前の施設に入った。何故だが分からなかったがこの先に答えがある気がした。幼い頃から感じ続けた周囲とのズレ、馴染めない日常、常に感じた謎の虚無感、それらの原因が分かるかもしれない。
そんな思いが彼を突き動かす。
どれくらい走ったのか、長い長い通路をただひたすら走り続けた。何もないのかと思い始めた時に目の前に光が見えた。
そして通路から出ると目の前に鉄の巨人が佇んでいた。
「これは……」
一夏は目の前の巨人を見て、脳裏に様々な映像と誰かの言葉が流れ始める
『力を持ち過ぎる者は全てを壊す』
『これで満足か?世界を、秩序を破壊する。それがお前の望みなのか?』
『私はただひたすらに強くあろうとした』
『ここが!この戦場が!私の魂の場所よ!』
『自らを滅ぼすと知りながら、それでも争うことを止められない。卑小で愚かな存在』
『あなたは恐ろしい人ね何もかもを黒く焼き尽くす。真っ黒に』
『その力で、お前は一体何を望む?』
『好きなように生きて、好きなように死ぬ、誰の為でもなく』
『人は人によって滅びる。それが必然だ』
『レイブン…それでも…私は…人と…コーラル…の…』
『…そうか…621…お前にも…友人が出来た…』
『イラつくぜ…野良犬に…憧れたんだ…』
『生き延びるがいいレイブン。私とお前、どちらが本当に正しかったのか。お前にはそれを知る権利と義務がある』
(ああ、そうか。俺は・・・”俺達”は・・・)
一夏は脳裏に流れる映像を見て、自分がどんな存在なのかを思い出した。そして納得した。今まで感じてきた違和感と虚無感に。確かに自分はこの世界にとっては異物そのものだったからだ。
『ああ・・・そんな・・・』
全てを思い出した一夏の様子に少女は絶望したかのようにへたり込む。
「……」
一夏は座り込んだ少女に近づき、そのまま―――
―――
観客が鎮まる中、セシリアは余裕な笑みを浮かべながら正面を見ていた。
(ふふ、今のは確実に直撃でしたわ。これで私の勝ちですわ)
誰もがセシリアの勝利だとそう思った瞬間、突然煙の中から極太の光線がセシリアに襲い掛かった。
「な、何が」
突然の攻撃にぎりぎりで回避したセシリアは光線が来た正面を見る。煙が晴れると其処には一機の黒いISが佇んでいた。
「……え?」
今、この場に居た者達は目の前のISに戸惑っていた。全体が鋭利な形状を持つ黒い装甲、装甲の隙間から血管の様に張り巡らされた紅いエネルギーライン、背部には鳥の翼の様な形状をした大型化されたスラスターユニット、武装も変わっており、右手に大型エネルギーライフル、左腕に大型のエネルギーブレイドが追加されている。
「何ですの!?ま、まさか一次移行?いえ、それにしても姿が全く別に変化するなんてありえませんわ!」
セシリアが目の前の一夏のISの変化に驚愕の表情を浮かべている、そしてハイパーセンサーから伝わる情報に更に戸惑う。
機体名 レイブン
和名 鴉
型式 ?
世代 第?世代
国家 日本
分類 高機動型
武装 右腕武器 KARASAWA
左手武器 MOONLIGHT
背中武器 SALINE05×2
単一使用能力 黒死鳥
(な、何ですの……これは)
一部の情報だけ分からないのもそうだが見たことも聞いたことも無い未知の装備に更に警戒心を上げる。
それに対して一夏は何も言わずに武器を構えながらセシリアに向かっていく。
「くっ!」
セシリアはビットを使って一夏に攻撃するが尋常じゃないスピードで全て躱し、両手の武器を使って全てのビットを破壊する。
「そんな!?」
セシリアは残ったスターライトMKⅢで狙いを定めるが一夏は高速で縦横無尽に移動する事で狙いを絞らせずに一気にセシリアの元へ向かい、MOONLIGHTでスターライトMKⅢを破壊する。
「っ!?インターセプター!」
全ての射撃武器を破壊されたセシリアは残った近接武器を呼び出すが、その前に一夏がセシリアに勢いを乗せた蹴りを叩きこみ、地上に叩き落した。
「げほっ、がはっ!?」
一夏はセシリアを踏みつけて拘束するとKARASAWAを至近距離で連射する。
「がっ、あああ!!」
SEエネルギーが尽きるまで砲撃をされ続けたセシリアは意識を失い、決着を告げるブザーが鳴り響き試合終了となった。