ヒロアカ世界にグランドキャスターもどきを叩き込んだだけ。
別に本人って訳でもないし転生してる訳でもない。
ただひたすら人間の真似をするロクデナシなのです。

気分次第に更新予定。

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FGOサントラVIII配信記念。

1年ぶりなので駄文です。



はじまり

 茉莉花・グッドフェローは問題児である。

 

「ふわぁ、今日もよく寝たね。素晴らしい朝だ。こんな日は二度寝に限る。学校なんて行かなくたっていいじゃないか、人間だもの」

 

「おや、宿題を忘れてしまった。うーん、取りに帰るのは時間がかかるから……ま、明日出せばいいだろう。走ってボクの髪が乱れるなんて真っ平御免だ」

 

「志望校なんて無いとも。ボクの物語はボクが決めるんだからね。他人に強制された物語なんて面白くないじゃないか」

 

 ──ハッキリ言おう。ロクデナシなのである。

 

「グッドフェロー!!!何をやってる貴様ァ!!!」

「はて、ボクは学校に来ただけなんだけどな。どこか怒られるような謂れはあるだろうか?先生の言う通り私服は着てないし、荷物だって持ってきている。そうだ見ておくれよ、宿題だってやってきたんだ。これ以上文句のつけようがあるのかい?」

「そうかそうか、偉いなーグッドフェロー。でもなー学校ってそれ以外にも規律を学ぶためのところでもあるんだよ今が何時何分か言ってみろグッドフェロー!」

「ふぅむ、11時32分……昨日よりも3時間も早く登校してきたじゃないか。これはボクが優等生たる証だね?なにせ指摘されたことを訂正できるのが、真の人間というものだからさ」

「その自称真の人間は聞き飽きたぞグッドフェロー」

「げぇ、教頭先生」

「もう我慢ならん、これから職員室に──」

 

 ふわり、と。怒り心頭、真っ赤な顔の教師たちが目にしたのは白い花。払い除けたその先に立っている高身長が、中性的な顔立ちを微笑ませていた。男性か女性か、中学生になっても分からないという特殊な体質を持つ生徒でありこの学校で一番の問題児。

 

「茉莉花ちゃん!」

「茉莉花様!」

「こっち見てー!!」

「ああ、今行くよ学友達。でも残念ながら先生たちが離してくれなくて。ボクはこんなにも真面目で勤勉だっていうのに、なんて理不尽なんだろう」

「あ、こら!このやり取りが嫌なら始業時間に間に合うように登校しろグッドフェロー!」

「ははは、残念だけど今日のボクは真面目に授業を受けに来てるんだよ?早く授業を受けに行きたいに決まってるじゃないか」

「まだ話は終わってないぞぉ!」

 

 それが茉莉花・グッドフェローである。中学生3年生にも関わらず身長は178cmにまで到達し、スラリと伸びた長い脚と甘いマスクは男女を問わず視線を釘付けにする。あまりに人間離れした美貌から、彼が歩けば萎れた花も咲き誇る、という伝説を打ち立てたほどの男なのだ。それ故にアイドル事務所からの勧誘は数知れず、その全てを面倒だからと切り捨て追い返すまでがロクデナシと呼ばれる一因かもしれない。

 それだけではない。このロクデナシ、出席率は留年ギリギリラインの平行線を描いているクセにやたらと頭がキレるのだ。その上身体能力だって高い。日焼けがすると体育の授業をサボる割には動きに無駄がない。教員と言い争いをしてもヒラヒラと煙に巻いて教室へたどり着くあたり、彼もまた■■■■■なのだろう。

 

「やあ先生、呼ばれた通りにやって来たよ」

「おおグッドフェロー。お早う、と言うにはもう遅いか。──まあ座れよ、疲れているんだろう?」

「ボクが言うのは違うと思うけど、先生も慣れてきたね」

「注意するのは俺の役目ではないからな」

「そういうところがボクの担任に回される理由だと思うよ」

「自覚はある」

 

 ニコニコと笑いながら扉を開くと、20を超える視線が一身に注がれる。遅れてきた負い目を微塵も見せることなく、手にした鞄の中から取り出すのは真新しいA4プリント。進路希望調査票と記されたそれを片手に彼は教室へと一歩踏み出そうとして、やめた。

 

「そういえば先生、雄英希望ってボク以外にも居る?」

「いるぞ。爆豪と緑谷だな」

「ん?」

「あァ!?死ねクs」

「じゃあ帰らせてもらおうかな!」

 

 そのまま扉を閉め……られなかった。ぬっ、と伸びた担任の腕が力強く扉を受け止め、満面の笑みを浮かべながら首だけを突き出してきた。万力か何かで固定されているような重さの扉に手をかけながら、それでもロクデナシはヘラりと笑ってみせる。細く見える腕は同世代とは比べ物にならないパワーを秘めているというのに、力負けしている?

 大人しく諦めて手を離すと、担任は口をへの字に曲げてこちらを見ていた。最初からするなと言いたいらしい。それはその通り、彼の言い分が100%正しい。相手がロクデナシでなければ通る道理だが、残念ながら今回はそうはいかない。そのまま爽やかに踵を返そうとしたロクデナシだが、その襟首が容赦なく掴まれる。

 

「まあ待てグッドフェロー。いいじゃないか、一緒にヒーロー目指したって。切磋琢磨できる相手は大切なんだからな」

「え?雄英に受かるのはボクだけでしょ?ボクが言っても説得力ないけど、少なくとも倫理観も一緒に爆破しちゃった爆豪君は面接で弾かれたりするんじゃない?」

「だからって帰るのは違うだろう」

「やっぱり彼が居るとやる気出ないんだよね。すぐ爆破してくるし。ボクの髪、煤が着いたら目立っちゃうし嫌なんだけど」

「離せクソ担任ッ!!」

「お前の評定、俺にかかってるぞ」

「クソァ!!!」

 

 心底嫌そうな顔をしながら担任にアピールするロクデナシ。中学生同士の口喧嘩でもなかなか聞かないワードセンスに、爆豪はこれ以上ないほどキレていた。両手を爆破しながら突撃しようとしているが、担任のもう片腕で掴まれているので動けないようだ。おかしい、この担任の個性は書類仕事にしか使えないハズなのだが。

 

「その点緑谷クンのが見込みがあると思うよ?無個性でもヒーロー科に合格した前例が無いわけじゃないし、彼の前向きな姿勢は評価に値する。ま、無個性だからそもそも実技試験に合格出来るかどうか……」

「うぐっ」

「それじゃ先生、ボクはこれで帰」

「ははは、せっかく登校したんだ、もっと一緒に授業を受けようじゃないか。午後は体育の授業だってあるんだ、入試まで頑張ろうなグッドフェロー」

「このゴリラ担任め、ボクを騙したのか!?」

 

 騙してはいない。昨日の電話越しに進路希望調査票を出さなければ留年させるから登校して直接手渡ししろと伝えただけである。流石のロクデナシでも留年は嫌だったらしい。作戦が綺麗にハマって清々しい気分の担任は、爆豪を離してロクデナシを教室へと連れ込んでいく。

 

「おはよう茉莉花、今日も腹立つくらいイケメンだな」

「やあ齋藤君、今日も辛気臭い顔だね?」

「茉莉花様、おはようございます!」

「松ヶ谷ちゃんかな、もうこんにちはじゃない?」

「茉莉花、今日は予定あんの?」

「ふふ、秘密だけど君の趣味には付き合えないよ酒巻君」

「こ、こんにちはグッドフェローくん!」

「ははは、キミは今日も緊張してるのかい緑谷クン?もう3年の付き合いなんだからいい加減慣れておくれよ」

 

 すれ違いざまに片手を上げて挨拶したロクデナシが座るのは、緑谷の隣。挙動不審の緑谷だが、さもありなん。このロクデナシ、夏も冬も汗をかかない。その上花の香りまで漂わせている性別不明の美形とあればこうもなる。元々女性免疫の低い緑谷が中学で出会ったとんでもない存在こそ茉莉花・グッドフェロー、何年経ってもマトモに話せるようになるとは思えなかった。実際こうなのだが。

 

「ガガガガガガガガガ、ピー」

「壊れたロボットかな?叩けば直るかも」

「おい、ちょっとツラ貸せや」

「あー、爆豪君?それって今じゃないとダメかな?ボクはこれから用事があってね、そうでないなら断らせてもらうけど」

「テメェじゃねぇ思い上がんなクソエルフ!テメェの横のクソナードだクソ!」

「わぁ、人間とは思えないほどの口の悪さ。まるで侵略者だね?もしかして民族大移動でもしてきた別言語の人?それとも宇宙人?」

「喧嘩か買うぞクソエルフ!」

 

 お察しの通りであるが、この2人やたらと相性が悪い。もはやコンビではないか、と思えるほどの掛け合いにクラスメイトも慣れたもの。ロクデナシが登校した昼休みのBGMは大抵がこの会話だ。飄々と暴言を流し、貼り付けた笑顔でペラペラと爆豪を煽り散らかすのがロクデナシの日常である。

 煽られた本人はキレ散らかしているが、ロクデナシはロクデナシらしく相手のことを音の出るおもちゃ程度にしか認識していない。担任はサッサと職員室に戻って行ったし、爆豪とその取り巻きが引き起こす問題に首を突っ込めば厄介事になること間違いなし。クラス名物になりつつある口論を経て、やって来たのは放課後であった。

 

「──ん?そんなところで何をしてるんだい緑谷クン」

「あ、グッドフェローくん……ちょっと色々あって、ノートを落としちゃって。うわ、べちょべちょだコレ」

「ふーん」

 

 普通の人間であれば心配の声をかけてやるのだろう。明らかに黒く焦げたノートが水に投げ捨てられているのだから。ほぼ犯人は決まっているようなものだ、気遣いの一つや二つ、見せて彼を慮るのだろうが……

 

「災難だったね、それじゃ」

「あ、うん。それじゃあねグッドフェローくん。……雄英、僕も絶対諦めないから」

「ははは、その意気だ」

 

 残念ながらここに居るのはロクデナシ。薄っぺらい上っ面だけの同情を並べ立てて去っていく。彼の歩みとともに生まれた白い花が、ふわふわと風に流れて解けて消える。3年間、その香りを間近で浴び続けた緑谷出久の意識が僅かに前向きになっている、というのはロクデナシの意図しない影響だったのだろう。

 

「うん、やってみせる……僕も、オールマイトみたいな最高のヒーローになってみせるんだから」

 

 あれ、ちょっと前向きすぎやしませんか?

 

 

「いやーしかし大変だったなぁ、まさかあんなにボクを目の敵にしてくるなんて。何か悪いことでもしたっけな」

「……あれ、前から来てるの、グッドフェローじゃね?」

「あァ?」

「おっと、これ以上の厄介事はご遠慮だぞ」

 

 靴で軽く地面を叩くと、舞い上がった花が広がって爆豪達とロクデナシを覆う。瞬き一つを挟んだ時、爆豪達の視界にロクデナシの姿は無かった。いつも通り、何の変哲もない帰り道だ。きっと花を見間違えたのだろう、と謝罪する取り巻きにキレ散らかして歩く爆豪と擦れ違う。

 

「ふう、これでよし。個性の無断使用だって?いやいや、仕方ないじゃないか。自分の身を守るために必要なことなんだからさ」

 

 彼、茉莉花・グッドフェローはロクデナシだ。生まれてこの方、何か情熱を抱いて1つの目標に向き合ったことなんて1度たりとも無い。友人関係も進級すればすぐに忘れてしまう。友人との会話だってどこか空々しいし、常に笑顔なせいで胡散臭さもある。そのせいでトラブルに巻き込まれることは多いが、その度に自分の個性でどうにかしてきた。

 慣れたものだ、と空を見上げる。なんてことはない、学校に行った帰り道だ。そもそも学校に行くこと自体が珍しいという問題は別として、どことなく胸騒ぎがするなんて自分にしては珍しいと自己分析。今までには無かった不思議な感覚を抱いて彼はのんびり歩いていく。着崩した制服は年齢不相応の色気を漂わせていた。巻き込まれる厄介事の中には彼が無意識に発露させている人たらしな性格も含まれているのだが、それが分かればロクデナシではないのだ。

 

「ん?」

 

 なんとなく見上げていた空を何かが横切った。あまりに一瞬で捉えきれなかったが、鳥にしては随分大きい。しかしヒーローでは無いはずだ。このあたりで事件が発生したという話は聞いていない。あんな速さで飛び回れるのはそれこそオールマイトくらいのものだろうが、彼がこんな町にやってくるとは思えない。

 

「けれど、なんだろうね。この胸のざわめきは」

 

 見上げる空は、憎たらしいほど青かった。




見切り発車なので続かないかもしれませんね。

ほなまた会えますように。

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