表の顔はリサイクルショップ。裏の顔はハンター御用達の呪われた品を引き取る店だった。
その店主のリクのハンター生活の記録である。
とある街の片隅にある裏路地。そこに目立たない様に一件のリサイクルショップ『ローカル』が看板をぶら下げていた。
やる気があるのかすら怪しく思える店構えに、くたびれた看板。店頭のウインドウに飾られた古びたオモチャや絵画は店と共に街の発展と衰退を見て来たのだろう。それくらいに古く、年季が入った代物だった。
そこへ来たのは店の雰囲気に馴染まぬ奇術師だった。
「やあ、来ちゃった♡」
「ヒソカ?お前、ハンター試験に行くって言ってたばかりじゃないか。なんでもう帰って来たんだ?まさかもう合格したのか?」
奇術師ヒソカが店の扉を開けにこやかに挨拶をすると店のカウンターで新聞を読んでいた店主リクが驚きながらもヒソカを出迎える。
「いや、まいったね。落ちちゃったよ♣︎」
「お前が不合格になるって、そんな厳しい事件……って訳はないか」
リクは読んでいた新聞を畳むと慣れた手つきでカップを棚から出すとコーヒーポットを手に取り注ぐ。
ヒソカも勝手知ったる他人の家かの様にカウンターに設置されている複数の椅子に腰を掛け、リクからカップを受け取った。
「うん、美味しい♡実はさ、弱いクセにあれこれ偉そうな試験官が居たから半殺しにしちゃった♦︎そしたら失格になっちゃった♣︎」
「そりゃ失格にもなるだろ……」
ヒソカからハンター試験の事を聞いたリクは呆れ半分、納得半分と言った様子で自身のカップのコーヒーに口を付けた。
ヒソカは所謂バトルマニアであり、戦いを愉しむタイプの人種である。それは男女年齢問わず様々な者がヒソカの標的となる。
ヒソカはその中でも強者やこれから強くなる見込みのある者に強く関心を持つが、口先だけの弱者やこれから先の見込みが無い者は暇潰しついでに潰されてしまう。
「あんなのでもハンターになれるんだからハンター試験そのもののレベルが低いと思っちゃった♣︎案の定、試験官は弱かったし♦︎」
試験官も仮にもプロのハンターであるのだが今回ヒソカの試験官を勤めたハンターはヒソカのお眼鏡には適わなかったらしい。尤もヒソカの標的となれる程の人物は少ないのだが。
「それで試験官半殺しにして失格か……どうするんだ?」
「今年は失格になっちゃったけど来年また試験を受けても良いそうだから来年また受験するよ♠︎」
呆れた様子のリクにヒソカはやれやれ、と肩をすくめながら来年の話をする。試験管半殺しにして失格になっても来期に試験は受けられるのだからハンター試験も侮れないな……とリクは空になったカップをヒソカから受け取りシンクですぐに洗い始めた。
「それでさ、一つお願いがあるんだけど♦︎」
「戦ってくれってんならお断りだぞ」
ヒソカは目を細めながら洗い物をするリクを見つめた。リクは『嫌な視線向けてるなー』と思いながらも洗い物を継続する。
「それは残念♠︎でも、お願いしたいのは別の事でね♦︎来年のハンター試験を一緒に受けて欲しいんだ♡」
「はぁっ!?」
ヒソカのお願いにリクは洗っていたカップを落としそうになるがギリギリでキャッチした。
「来年もツマらない試験だったらまた試験官半殺しに……いや、もしかしたら殺しちゃうかもだから、そうなりそうだったら僕を止めて欲しいんだ♡」
「半殺し前提で話を進めるなよ」
ヒソカはニコニコと話すがリクはある程度魂胆が見えていた。ハンター試験を受けても不合格になってダラダラと何度も受験するよりもリクに付き添って暴走しそうな自分を止めてもらう。それは即ち、ヒソカと戦うと言う事に他ならない。
ヒソカはツマらないハンター試験だったら面白くなる様にスパイスとしてリクを誘った。ハンター試験が面白くなかったとしてもリクとの戦いは約束された様なものだし、止めてくれるリクが居るならハンター試験に合格する確率も上がる。
つまりはヒソカの楽しみとメリットだけの為にリクをハンター試験に誘ったと言えるだろう。
「勿論、キミにもメリットはあるよ♦︎だってキミ念能力者なのにハンターライセンス持ってないだろ?このお店の後継としてハンターライセンスは持っておいた方が箔もつくし、そっちの界隈の人達にも名が知れ渡るからお客さん増えるかもよ♣︎」
「それを言われるとな……親父もハンターライセンスは持ってた訳だし」
ヒソカの提案にリクは少し思案してしまう。リクの経営しているリサイクルショップは表向きは古ぼけたリサイクルショップだが裏の顔が存在し、ハンターが顔を出す店となっている。先代から店を継いだリクだがハンターライセンスを持っていない事は少なからず営業に影響が出ており、ヒソカの言うメリットも確かに魅力的ではある。
「それに僕としてもキミの所に持ち込まれる呪いの品の数々は見ていて面白いんだ♠︎もっと見てみたいんだよ、キミの特殊な除念も含めてね♡」
「そっちが主な目的だろ……しかしハンターライセンスか……確かに持ってた方が都合が良いかも」
ヒソカの言う呪いの品々とはまさにこの店の裏の顔である除念の事である。リクの一族は特殊な除念の力を持っており、所謂呪われた刀や掛け軸、絵画等の呪われた品を引き取る店として有名なのだが先代が引退し、リクが店を継いだのだがハンターライセンスを持たない若造に任せるのは不安だからと客足が遠のいていたのだ。
「ハンターライセンス……取りに行くべきか」
「そうそう♡これから先、必要になるでしょ♦︎」
ヒソカに乗せられた形とはいえど確かにハンターライセンスは持ってた方が都合が良いのも事実。
「取り敢えず来年の試験までに色々と準備しなきゃかな」
「リクなら合格するでしょ♦︎ああ……来年のハンター試験が楽しみだよ♡」
仕事の都合上も含めて来年のハンター試験を受けに行くと決めたが恍惚とした表情をしたヒソカを見て少し後悔したリクだった。
『リク=ヒビキ』
リサイクルショップ『ローカル』の店主。24才。
スーツに開襟シャツといった服装が普段着であり、仕事中・プライベートでも同じ服装をしている。
特殊な除念師であり、刀や絵画といった武具や骨董品に付加された念を喰らう能力の持ち主。制約の都合上、生物の除念が使用出来ず『無機物』の除念しか出来ない。
元は放出系の念使いだが一子相伝と言える『無機物に付加された念を喰らう能力』を持つ。
ヒソカ曰く『数少ない僕の友達♡』との事。