「……ふむ、明らかに分解スピードが上がってますね」
「分解穴の分解するレベルを5まで上げてみたんです。恐らくですが一時間にレベル分のキログラムを分解するみたいですね」
分解穴に入れた死体の分解スピードが目に見えて早くなったのを確認出来た午後、俺は更にリソースポイントを機能拡張に注ぎ込んだ。
リソースポイントは分解スピードを上げて処理すればするほど加速度的に増えるので随時ポイントを分解力向上に入れながら少ないポイントで手に入る機能を拡張していく。
分解力向上レベルを15まで拡張し、1時間15キロの死体を分解
出来るようになる。
分解穴の広さを直径1メートルから3メートルに拡張。
穴の深さも10センチから60センチに拡張。
入る容積が飛躍的に増えたので俺と真鍋さんは汗と腐敗と汚泥にまみれながら死体を次々と穴にぶち込んでいった。
休憩込みで小休止を挟むとはいえ朝の9時から夕方18時までの死体処理は想像を絶する重労働である。
最初の処理を考えても50キロ程度の処理しか進まず、歩合としては500円程度と渋い結果に終わった。
「……これを二人だけでやるんですか?」
「いえ、もう数日すれば日雇いでこういった処理の専門家が来ますのでその人頼みですね」
そう言われて3日後、死体山脈の処理の専門家がやってきた。
「始めまして、
「環境復興課の真鍋です。今回は灰本さんにお世話になります」
二人の大人が名刺を渡し合い、ペコペコと頭を下げつつ自己紹介している。二人ともガスマスクをつけているのでシュールな光景である。
「しかしすごい匂いと光景ですな……君も呼ばれてきたのかい?」
「はい、自分は臨時ではなく一定期間の雇い入れです。」
「ああ、君が……システムの力が弱いが火気厳禁のここでも使える能力だって?」
「そうですね。灰本さんもそういったシステムなんですか?」
「ああ、そうなんだ。まあ見れば分かるよ」
そう言って灰本さんは両手を死体の山脈に向けると手のひらから強い風と地面が瞬時に凍るほどの冷気が噴射された。
モンスターの死体達に浴びせられたそれらは死体を瞬時に凍らせ、そして急速に干からびて砕けていく。
「私のシステムは氷嵐と名付けた。冷気と風を操るんだがシステムを育てているうちにこういった事が出来るようになってね」
「凄い……凍って砕けていってる……」
「冷凍粉砕だよ。粉に近い状態まで砕いて軽くし、アイテムボックスの袋に入れて焼却できる場所まで運んで焼却処分するんだ」
それを聞いた俺はピンときたので分解穴を目の前に展開する。
直径は据え置きだが穴の深さを2メートル、分解力向上レベルを40まで上げたそれは直径3メートル深さ2メートルの穴青白く光る液体で満たされた穴が一分ほどで出来上がった。
「この穴にその死体の粉を入れてもらえますか?運ぶ手間が省けますから」
「ふむ、話に聞いてたより立派なシステムみたいだし、物質処理に特化してるみたいだね……成長するシステムみたいだし今後が楽しみだ」
そう言いながらも灰本さんは凍った粉になった死体を風を操って分解穴に入れていく。
粉状の死体はそのままよりも処理しやすいせいか、いつもより分解するスピードが速い。
そして案の定リソースポイントもジャンジャカ入ってきた。
「これなら私が君のシステムで作った穴に入れればわざわざアイテムボックスに入れて運ばなくてすむな」
「粉状だと分解効率も段違いなんでドンドン放り込んで下さい」
そう言って一日を使って灰本さんと俺は上手く噛み合ったシステムのお陰で昨日俺と真鍋さん二人でやった量よりも数百倍どころか数千倍のスピードで死体の処理に成功することになる。
「いやーこれだけの処理をしたのは久しぶりだよ」
灰本さんはホクホク顔で帰っていった。作業中の雑談で聞いたが死体の処理でも成長するタイプのシステムらしく、こうやって死体の処理を請け負うのも低いリスクでシステムの成長が行えるからだそうだ。ついでに出される報酬も破格で一石二鳥なんだと。
システムの成長は大体異界橋頭堡からやってくるモンスターを倒すのが基本として特定行動での成長もシステム毎に複数ある。
こういった死体処理もそうだがモンスターを食べたりモンスターの素材で物を作ったりなどがある。稀にだが交尾をやったりやられたりで成長するシステムもあるらしい。
システムの成長はとても奥が深い……逆に非成長タイプは成長しないデメリットを打ち消すだけのメリットがある。
最初からシステムの能力がとても強いのだ。
水を操作できるシステムの成長タイプと非成長タイプを比べるとよく分かる。
水の成長タイプは最初コップ1杯の水しか生み出せないし操作できない。
逆に非成長タイプは最初から雨を呼び、津波を操れたりするらしい。
成長タイプもシステムが成長すれば非成長タイプを超えた力や応用力があるらしいが、やはり長い時が必要なので一長一短と言えるだろう。
成長タイプはいかに上手く成長させるか。非成長はいかに今の力を習熟させていくかに頭を悩ませていくんだろう。