界渡りの不確定な切り札 作:アルフレッド
◇ ◇ ◇
ウズミ・ナラ・アスハside
「…………」
異世界。
そう説明されていた。
理解したつもりでもいた。
だが――
「これが……ヴェルト」
実際に目の当たりにすることと、理解することはまるで違うらしい。
◇ ◇ ◇
キョウスケside
数時間前格納庫
「キョウスケ、お帰りなさい」
「ああ」
「そちらの方は?」
「オーブの国家元首だ」
「…………」
「ウズミ・ナラ・アスハです」
「…………」
「レモン?」
「あなた」
「なんだ?」
「ちょっと出かけてる間に国家元首を拾ってきたの?」
「拾ってない」
「今回は招待よ♡」
「今回はって言うな」
「ところでナンブ殿」
「はい」
「ヴェルトの代表者にもご挨拶したいのですが」
「…………」
「キョウスケ?」
「なんだ」
「言ってなかったの?」
「聞かれなかった」
「何をです?」
「こいつがヴェルトの皇帝だってこと♡」
「…………」
「…………」
「…………」
「ナンブ殿?」
「はい」
「皇帝?」
「一応」
「一応!?」
「キョウスケ、それ国家元首同士の会談だったって最初に言いなさいよ!」
「肩書きで話をしたくなかった」
「そういう問題ではないと思いますぞ!?」
「……しかし、なるほど」
「何がです?」
「ようやく腑に落ちました」
「?」
「ナンブ殿。あなたが何故、あれほど大きな判断をその場で下せたのかです」
「…………」
「部下としては、あまりに裁量が大きすぎると思っておりました」
「本人が一番偉かったのよね♡」
「そういうことになる」
「なぜ少し不満そうなのです?」
「好きでなったわけではないので」
「…………」
「皇帝とは、そのような理由でなれるものなのですかな?」
「……消去法ですか?」
「そうなる」
「皇帝を消去法で決めたのですか!?」
「他に方法がなかった」
その時いた男連中はムラタとアルジャンチーム……。
レモンとエクセレンは、色んな意味で危ない。
シャインなら任せられたが本人が拒否。
結果俺しか残らなかった。
「…………」
「それに俺がなった方が、後で議会制へ移行しやすかった」
「ほう?」
「俺自身が皇帝の権力に固執していないからな」
「…………」
「必要がなくなれば権限を議会へ移せばいい」
ウズミはしばらく俺を見つめた。
「……なるほど」
「なんだ?」
「少なくとも、あなたが選ばれた理由の一端は理解できました」
「?」
「権力を欲しがらぬ者に権力を預ける。皮肉ではありますが、理には適っております」
「そういうものか?」
「そういうものです」
「レモン、悪いが現在のヴェルト帝国の案内を頼む」
「私が?」
「ああ。俺は少し片付ける仕事がある」
「国家元首を連れてきて、自分は仕事に戻るの?」
「だからお前に頼んでいる」
「……まあいいけど」
「ウズミ殿」
「はい」
「レモンならヴェルトのことは俺以上に詳しい。聞きたいことがあれば何でも聞いてくれ」
「承知しました」
「それでは行きましょうか、ウズミ代表♡」
「よろしくお願いいたします」
「まずは――そうね」
レモンが少し考える。
「外に出てみましょうか」
「外?」
「ええ。説明するより、見てもらった方が早いわ」
◇ ◇ ◇
ウズミ・ナラ・アスハside
「…………」
レモン殿に案内され、建物の外へ出る。
そして――
私は言葉を失った。
「これが……ヴェルト」
異世界。
そう説明されていた。
理解したつもりでもいた。
だが――
実際に目の当たりにすることと、理解することはまるで違うらしい。
まず私たちは格納庫を出た後、リニアシャトルへ案内された。
ヴェルトにおける主要な移動機関らしい。
シャトルは専用の軌道チューブへ入り、凄まじい速度で走り始めた。
しばらくすると、窓の外に広がっていた光景が変わった。
「……これは」
森だった。
いや――森などという言葉では足りない。
見渡す限りの大森林。
遥か彼方まで緑が続き、その中には巨大な河川らしきものまで見える。
そして、その森林の中からも何本もの軌道チューブが伸びていた。
「一つ、よろしいですかな?」
「はい?」
「この軌道チューブが地面へ潜っているのは、なぜですかな?」
「ああ、それですか」
レモン殿は何でもないことのように答えた。
「ヴェルトの居住区は、大きく上部と下部に分かれていまして。主に上部が森林と居住区、下部が海と島になっています」
「上部と……下部?」
「ええ」
「しかし……」
私はもう一度、窓の外を見る。
「この軌道チューブは地下へ潜ったはずです。それなのに、今こうして森林が広がっている」
「はい」
「まさか……」
嫌な予感――いや、もはや何を聞かされても驚くまいと思っていたのだが。
どうやら甘かったらしい。
「説明が遅れました」
レモン殿は微笑んだ。
「ヴェルトは、惑星規模のコロニーになっています」
「…………」
「先ほどまでいた格納庫は外郭部ですね。そこから軌道チューブを通って、今は内部の居住区へ入っています」
「…………」
私は再び窓の外を見る。
森。
山。
河川。
遥か彼方には街らしきものまで見える。
これらすべてが――
惑星の内部。
「……つまり」
「はい?」
「我々は今、地下を走っているのではなく……」
「惑星内部を走っています♡」
「…………」
またしても言葉を失った。
「……レモン殿」
「はい?」
「先ほど、居住区は上部と下部に分かれていると仰いましたな」
「ええ」
「この上部居住区は、どれほどの広さなのです?」
「そうですね……」
レモン殿が少し考える。
「単純な面積でしたら、地球の地表面積に近いと考えていただければ」
「…………」
「下部も同程度です」
「…………」
「ウズミ代表?」
「少々お待ちいただきたい」
「はい」
「理解が追いついておりません」
「でしょうね♡」
「せっかくですから下部も見ていきます?」
「下部……」
「さっき説明した海洋区画です♡」
「……お願いします」
「では次の分岐から下層線へ入りましょう」
「すぐ着くのですかな?」
「いえ」
「?」
「一時間くらいですね」
「…………」
高さもあるのか。
下部へ降りると、そこには一面の海が広がっていた。
やがて軌道チューブは海中へ潜っていく。
透明度の高いきれいな海だ。わがオーブの海にも勝るとも劣らない。
「しばらくヴェルトの海をお楽しみください」
チューブの周りを魚が泳ぎサンゴがきらめいている。
「……」
これは時間を忘れるな。
「それでは居住区上部へ戻ります」
軌道チューブは海中から抜け、そのまま空へと登っていく。
「…………」
改めて見れば奇妙な光景だ。
海の上には青い空が広がっている。
雲まで浮かんでいる。
先ほどまで私は、それを何の疑いもなく空だと思っていた。
だが、ここは惑星の内部なのだ。
「レモン殿」
「はい?」
「あれは……空ではないのですな?」
「ええ」
レモン殿が上を見上げる。
「人工天蓋です」
「人工……」
「照明だけじゃなく、昼夜や天候もある程度制御できます。ずっと同じ空じゃ味気ないでしょう?」
「…………」
さらりと言われたが、とんでもない話ではないか。
海がある。
森がある。
空がある。
雲がある。
魚が泳ぎ、珊瑚まで生きている。
それらすべてが、この巨大な人工惑星の内側に作られた環境なのだ。
「……一つよろしいですかな?」
「どうぞ」
「この天蓋は、上部居住区にも?」
「もちろんありますよ」
「では先ほど見た森林の空も……」
「人工です」
「…………」
私はてっきり、地表へ出たものだと思っていた。
「分かりませんでした?」
「まったく」
「それなら環境設備を作った甲斐がありますね♡」
「褒めていることになるのでしょうな……」
「もちろん♪」
「次はどちらへ?」
「居住区を見ていただこうと思います」
「人々が暮らしている場所ですな」
「ええ。国を見るなら、兵器より先に国民を見た方がいいでしょう?」
「……まったくですな」
キサカは先ほどから感動しているのか、一言も話さない。
皇都の駅に着いた。
いや、正確には皇都の地下駅なのであろう。
シャトルが速度を落とすにつれ、いくつもの軌道チューブが見えてくる。
駅を中心として、放射状に各地へ伸びているらしい。
「ここが皇都の中央駅になります」
「中央駅……」
「上部居住区の各都市だけでなく、下部居住区や外郭部にも繋がっています」
「なるほど……」
先ほど通ってきた距離を考えれば、この交通網だけでも我が国とは比較にならない規模なのだろう。
レモン殿の案内で駅を出る。
「…………」
そこには、美しい街並みが広がっていた。
巨大な建造物ばかりが立ち並ぶ未来都市を、どこかで想像していた。
だが、違った。
緑がある。
道路沿いには木々が植えられ、その間を人々が歩いている。
店が並び、子供たちの姿も見える。
頭上には青い空。
それが人工の天蓋だと教えられたばかりなのに、そう意識しなければ本物の空としか思えない。
「……普通ですな」
思わず、そんな言葉が出た。
「意外でした?」
「正直に言えば」
レモン殿が小さく笑う。
「もっと機械だらけの都市を想像していましたかな?」
「……否定はできませんな」
「ここを作った目的は、人が暮らすためですから」
「人が暮らすため……」
「技術を見せつけるために街を作っても仕方ないでしょう?」
「…………」
なるほど。
私は少し、この国を勘違いしていたらしい。
惑星規模の人工コロニー。
異世界を渡る技術。
あれほど巨大な格納庫。
それらを見せられ、ヴェルトという国をその技術力だけで測ろうとしていた。
だが――
街を歩いている人々の姿は、オーブと何も変わらない。
笑う者がいる。
買い物をする者がいる。
子供の手を引いて歩く親がいる。
ここもまた、人間が暮らしている国なのだ。
「…………」
人々が行き交い、商店が並び、緑も多い。
惑星規模のコロニー、その皇都。
その言葉から想像していたものより、ずっと人の生活を感じる街だった。
「レモン殿」
「はい?」
「皇都ということは、皇宮もこちらに?」
「ありますよ」
レモン殿が前方を指差した。
「あちらです」
「…………」
その先に見えたものを見て、私は目を疑った。
星形。
巨大な堀に囲まれた、見覚えのある形状の城郭。
「……五稜郭?」
「ご存じですか?」
「我々の世界にも、よく似た城郭があります」
「へぇ……」
「まさか、あれが?」
「ええ。ヴェルト帝国の皇宮兼政庁です」
「…………」
皇宮。
そう聞いていたので、豪華絢爛な宮殿を想像していた。
だが目の前にあるのは、星形の城郭を中心として造られた巨大な行政施設だった。
「ナンブ殿があちらに?」
「普段は執務していますね」
「では、住居も?」
「ええ」
「……なるほど」
皇帝本人から受けた印象を思い出す。
妙に納得できてしまった。
「あら、驚かないんですね?」
「ナンブ殿が豪華な宮殿に住んでいると言われるよりは納得できますな」
「ですよねぇ♡」
我々はレモン殿が事前に呼んでおいたのだろう、エアカーで皇宮へ向かった。
ずいぶん静かな車だ。
振動もほとんどない。
おそらくバッテリー式なのだろう。
車窓から皇都を眺めながら、三十分ほど走ったところで皇宮の正門へ到着した。
「…………」
近くで見ると、改めて大きい。
遠目には五稜郭によく似た星形の城郭としか分からなかったが、その規模は私の知るものとはまるで違う。
正門には衛兵が立っていた。
レモン殿が話しかけると、衛兵が敬礼する。
「お帰りなさいませ、レモン様」
「ただいま。こちらはオーブ連合首長国のウズミ・ナラ・アスハ代表と、レドニル・キサカ殿よ。キョウスケから話は?」
「伺っております」
衛兵がこちらへ向き直る。
「ヴェルト帝国へようこそ。アスハ代表、キサカ殿」
「出迎え、感謝します」
やがて正門が開き、エアカーが皇宮の敷地内へ入っていく。
「……これは」
城郭というからには、もっと物々しいものを想像していた。
だが、内部には緑が多い。
広い庭園。
整備された道路。
その先にはいくつもの建物が見える。
「皇宮だけではないのですな?」
「ええ。ここは皇宮であると同時に、ヴェルト帝国の中央政庁でもあります」
「なるほど」
「各省庁の主要部署もこの敷地内にあります。全部じゃありませんけどね」
そういうことか。
皇帝の権威を示すためだけの城ではない。
この国を動かす中枢そのものなのだ。
「それにしても……」
「何か?」
「警備は厳重ですが、ずいぶん開放的ですな」
「キョウスケが嫌がったんですよ」
「何をです?」
「皇帝だからって国民から隔離されるのを」
「…………」
またナンブ殿か。
「ただし」
レモン殿が笑う。
「あいつの希望を全部聞いてたら警備にならないから、そこは無視しました♡」
「……賢明ですな」
「でしょう?」
キサカが初めて大きく頷いた。
「そこは私も全面的に賛成します」
「キサカ?」
「代表というものは、自分の警護を軽く考えすぎる傾向がありますので」
「…………」
「ウズミ代表?」
「いや、なんでもない」
レモン殿が笑っている。
どうやらどこの世界でも、護衛する側の苦労は変わらないらしい。
「お待ちしていました」
「……ナンブ殿」
「どうでした?」
「正直に申し上げれば」
「はい」
「聞きたいことが、来た時より増えました」
「……そうですか」
「キョウスケ、そこで困った顔しないの♡」
「しかしレモン殿ともずいぶん気やすい関係のようですがレモン殿はどういう役職の方なのですか?」
「レモンは古い友人でエクセレンの双子の姉妹になります。現在は技術省のトップをやってもらってます」
「なるほど、エクセレン殿の……」
妙に納得した。
◇ ◇ ◇
「さて」
ナンブ殿が席につく。
先ほどまでと何も変わらない。
だが、ここが皇宮であり、目の前の男がこの巨大な国家の皇帝だと知った今では、見え方が少し違っていた。
「ヴェルトを見てもらいましたが、どうでした?」
「……正直に申し上げても?」
「そのために招待しました」
「では」
私は少し考える。
「想像していた以上です」
「そうですか」
「技術力も、国土も、何もかもが」
「…………」
「ですが、一番安心したのはそこではありません」
「?」
「街です」
「街?」
「ええ」
あれほどの力を持ちながら、街で暮らしている人々は我々と変わらなかった。
家族がいて、働く者がいて、子供がいる。
笑っている者もいた。
「ヴェルトもまた、我々と同じ人間が暮らす国なのだと分かりました」
「……そうですか」
「それを確認できただけでも、来た意味はありました」
「それが一番のほめ言葉です」
「では改めて伺いましょう、ナンブ殿」
「はい」
「ヴェルトはオーブと、どのような関係を望んでおられるのですかな?」
「我々の国は、あくまで人ありきです」
「人ありき……」
「幸い、この星を手に入れたことで国民の生活にも余裕ができました。そして異世界への転移技術を持つこともできた」
「だから、いずれは他の世界とも交流を持ちたいと思っています」
「なるほど」
「ですが――」
一度言葉を切る。
「今、あなた方の世界は戦乱に満ちている」
「…………」
「この状況でヴェルトの存在を公にすれば、どうなるか分かりません」
「地球連合、あるいはプラントが接触してくると?」
「それだけならいい」
「……それだけなら?」
「俺たちの技術を欲しがるでしょう」
私は否定しなかった。
「異世界への転移技術。こちらにはない機動兵器。ニュートロンジャマーの影響を受けない技術。そして――この星そのもの」
「…………」
「連合にもプラントにも、それらを戦争へ利用させるつもりはありません」
「だから存在を隠す?」
「少なくとも、この戦争が終わるまでは」
「では、なぜ我々には?」
「それを確かめるために、今までこの世界を見てきました」
「…………」
「連合を見た。ザフトを見た。プラントについても調べた。そしてオーブも見た」
「その結果が、我が国ですかな?」
「はい」
「では――」
私がナンブ殿を見る。
「ヴェルトはオーブに何を望まれる?」
「友人です」
「…………」
「同盟国ではなく?」
「今のところは」
「技術供与を条件とした協力関係でもない?」
「それも違います」
「では、本当に……」
「ええ」
「俺たちは、オーブと友人になりたい」
私はしばらく何も言わなかった。
「……ナンブ殿」
「はい」
「友人というものは、一方が望んだだけでなれるものではありませんぞ」
「分かっています」
「互いを知り、時には意見を違え、それでも付き合いを続けることで初めてそう呼べる」
「はい」
「それでも?」
「だからこそです」
「…………」
「最初から同盟や条約で縛るより、まず互いを知るところから始めたい」
思わず笑みがこぼれた。
「なるほど」
そして右手を差し出す。
「では、まずは友人になるところから始めましょう」
「ありがとうございます」
その手を握る。
「もっとも――」
「?」
「国家間の話となれば、友人だからで済まないことも多々ありますぞ?」
「その辺りは外交担当に任せます」
「キョウスケ!?」
「エクセレン?」
「そこで丸投げするの!?」
「俺より適任だろう」
「せっかくいい雰囲気だったのに!」
「現在、外交担当はエクセレンがやっています」
キョウスケ殿は笑いながらそう言った。
「私が!?」
「今までそうだっただろう」
「そうだけど! 正式に任命された覚えはないわよ!?」
「今した」
「今!?」
「適任だ」
「もう……そういうこと急に決めるんだから」
文句を言いながらも、エクセレン殿はどこか嬉しそうだった。
なるほど。
この二人の関係も少し分かってきた気がする。
「それと、正式な交渉となれば――」
「?」
「おそらく経済担当も立ち会うと思いますので、覚悟だけはされた方がよいかと」
「……覚悟?」
キョウスケ殿が、意地の悪い笑みを浮かべた。
初めて見る表情だった。
「ナンブ殿?」
「俺から言えるのはそれだけです」
「ちょっとキョウスケ。ウズミさんを怖がらせないの」
「事実だ」
「どのような人物なのですかな?」
「ミツコ・イスルギという女性です」
「イスルギ?」
「経済省のトップを任せています」
「優秀な方なので?」
「非常に」
「ならば何故、覚悟が必要なのです?」
「非常に優秀だからです」
「…………」
同じ言葉が返ってきた。
どうやら、それ以上説明する気はないらしい。
「あら、キョウスケったら楽しそう♡」
「たまには俺以外が相手をすればいい」
「やっぱり根に持ってるのね」
「何のことだ?」
「その顔でとぼけても無駄よ」
「…………」
私はキサカを見る。
キサカもこちらを見た。
どうやら異世界との外交は、思っていた以上に苦労することになりそうだ。
◇ ◇ ◇
キョウスケside
「それと、ウズミ殿」
「なんですかな?」
「大使館の一室を借ります」
「構いませんが……何に使われるので?」
「ポータルを置きます」
「ポータル?」
「ヴェルトと直接繋ぎます」
「…………」
「キョウスケ」
「なんだ?」
「また説明を省略したわね?」
「必要なことは言った」
「国家元首相手に『大使館と異世界を直結します』で済ませないの♡」
ウズミ殿が額を押さえた。
「……つまり、あの大使館からヴェルトへ直接行けるようになる、と?」
「はい」
「シャトルも必要ない?」
「必要ありません」
「…………」
「便利でしょう?」
「便利という言葉で片付けてよいものなのですかな……」
そして俺たちはあの大使館の地下にポータルを設置した。
こうして俺たちは、オーブという国と最初の繋がりを持った。
同盟でもない。
条約を結んだわけでもない。
まして、この世界の戦争に介入すると決めたわけでもない。
ただ、友人になっただけだ。
今は、それでいい。