高校生にダウナー系の良さは分からないか 作:朝食はパン派
…………入学式が終わって、自由時間になった。因みに校長先生の話はクソ長かったけど、ちゃんと聞いておいた。だってこの学校聞いてる人少なそうだし。可哀想じゃん?
それと、Dクラスの方見たらしっかりと綾小路いた。もしかしたらいないとか、あるかも………って思ってたけど、バリバリいたね。残念。
そもそも、なんで俺がここまで綾小路ってヤツを気にしてるのかを言うと、コイツがまあ端的に言うととち狂ったヤバい奴だからだ。一応原作の主人公なんだけど、説明すると長くなる。
まず、この怪物はホワイトルームっていう『凡人の遺伝子から天才を作る』っていう大層ご立派な思想を掲げた非政府組織兼教育機関で育てられた被験者だ。で、そこのカリキュラムがそれはそれは酷いもので、常人なら脳が負荷に耐えられないレベル。けど元々適応能力が優れていた綾小路はちゃっかりそのカリキュラムを突破しちゃったわけである。
で、誕生したのが幼児期に軍人数人を警棒一本(確か)で制圧する戦闘能力と、常人が一生をかけて学ぶ量を遥かに凌駕した知識量と、自分が最後に勝ってればいいとかいうイカれた思想を抱えた人型AIってわけ。
自分が物語として『よう実』を読んでた時は「コイツと同じ世代の奴は可哀想だな笑」とか思ってたけど、まさか自分がその立場になるとは思ってもみなかった。
綾小路は担任の茶柱佐枝っていうどエ〇い先生に脅されながら、特別試験っていうイベントを通してDクラスをAクラスに導いていくっていう王道チックなストーリーだけど、俺はもしこの世界も原作通りに進んでいくなら干渉するつもりはない。
「椿。コンビニ行かない?」
「行く。アイス食べようよ」
「ありね。今日暖かいし」
…………それは、ユキを守る為だ。俺が読んでいたのは二年生編の12.5巻までだけど、そこまでで既に綾小路はやりたい放題してる。各クラスにはリーダー的存在がいるんだけど、そいつらを一つの試験で全員ノックアウトしてたからね。ヤバいよもう、本当に。
けど、そこまでの流れでユキに直接の被害が出た描写はなかった筈だ。Bクラスとしてはかなりまずい流れになってたけど、それは知らない。俺は何もできないだろうし。
幼馴染の安寧を守るのが俺の役目だからな。この学校は変な男が多いし、変な虫が寄り付かないように俺が守るんだっ!(使命感)
「アイス美味ぇ………」
「子供のときからずっとチョコミントよね。飽きないわけ?」
「飽きないねぇ。この爽やかさがいいのよ、分かる?」
「私はバニラが一番好きだから。分かり合えない」
「じゃあ俺もうチョコミント食べないわ」
「愛なさすぎでしょ。そんな軽い気持ちで爽やかさとか語ってたわけ?」
俺は後ろに誰かいないかを確認しながら、ユキとの話を進める。こう見ると結構な毒舌っぽいが、普通にそうだ。特にずっと一緒だからか俺には遠慮という言葉を知らない。
そのまま自室に戻った。よく二次創作とかでは初日から職員室凸して「この学校の制度、分かっちゃいました。口外されたくなかったら、ね?」とか言ってプライベートポイントをひったくったり、監視カメラの場所調査してたら堀北学に見つかって「面白い生徒だ。プライベートポイントをやろう」とか言って50万くらい渡されたりするんだろうけど、ない。
普通に星之宮とかに目付けられたくないし、そもそも職員室怖い。坂上先生とかね?アニメ版見たことある?めっちゃ悪そうな顔してたよ? 会いたくないです。
それに堀北学にも、変に関わって期待されたら南雲雅とかいう面倒な奴の対処任されるんでしょ? 嫌ですよ、そりゃ。
…………この学校は、きっと推薦含めて顔採用なんだろうな。
入学から約一週間、大型のショッピングモールである『ケヤキモール』の中を歩きながら、ふとそう思った。原作でも挿絵見ながら思ってたけど、ここ美男美女多すぎ。
まず出てくる奴ら大体顔面偏差値70くらいあるのバグでしょ。何?面接官の好みで選んでます? 一之瀬、網倉、ユキなどこのクラスだけでも可愛い人多いし、Dクラスなんて普通にブスって言われてた篠原も普通レベルあるよ?
軽井沢とか、松下とか、堀北、櫛田、佐藤、長谷部…………実にけしからん。Cクラスにも椎名とかいるし、Aクラスには坂柳いるし。もう救えないよ、この学校。
「で、今日の夜何?」
「今日も来る気ですかい?」
「嫌ならコンビニ弁当食べるし」
余計なことを考えていると、ボケーッとしてる俺を見かねたのかユキが話を振ってくる。今の会話で察して欲しいが、ユキは料理をしない。出来ないのではなく、しないのだ。
何故かと言うと、俺が料理上手いからなんだなぁこれが。勉強の才能はいまいちなんだけど、料理の才能はあるっぽい。ユキからは好評で休日とかによく振舞ってた。
で、入学後も何気に俺の部屋に来て夕食を共にしている。夜は確か八時以降は男子は女子の部屋行くの禁止なんだよ。だけど、女子が男子の部屋に行くのは禁止されてない。なんで?
「ハンバーグとかどう?」
「重いね」
「じゃあユキの分少なくするわ。っていうか、ユキも偶には手伝ってよ」
「………じゃあ皿洗いやる。それでいい」
「自己完結するなし。まぁ、やってくれるだけ有難いけどさ」
…………そうえいば、確かそろそろプールの授業あるよな。ユキって勉強は出来るけど、運動は普通だから嫌そう。それに、他の奴に水着見られるの嫌いそうだし。
Dクラスは山内とか池とかが下賤な話をクラス内でしてたせいで女子ほとんどが見学だったんだっけ。あー、可哀想(脳死)。俺はユキがDじゃなくて心底嬉しいよ。
「あっ、志摩くんと姫野さん。おはようっ!」
いつも通りユキと登校していると、後ろからそんな声が聞こえた。アニメ版で散々聞いた、東山〇央ボイスである。前世では大分この人のファンだった。嬉しい。
「ああ、一之瀬さん。おはよう」
「………はよ」
俺が挨拶を返したからか、ユキも一応ぶっきらぼうに返す。多分(あり得ないけど)俺がスルーしてたらユキもスルーしてた。
「いつも通り二人は仲いいね」
「幼馴染だからな。これが普通だよ」
「そうなんだっ! 私も幼馴染とか憧れるなぁ」
そのまま通過していくかと思ったけど、どうやら居座るつもりらしい。俺としては全然いいんだけど、普通は離れるよな。この世界ではそうじゃないのかもしれないけど。
「今日、水泳の授業あるらしいね。一之瀬さん泳ぎは得意?」
「普通かなぁ。あんまり速くは泳げないよ」
はい、知ってました。そりゃ、
そのままユキはあんまり喋らずに登校してしまった。水泳の授業だけど、ユキは普通に受けてた。うちのクラスは民度良いっぽいから、変な話題してる人もいなかったし。
それよりも、俺が一之瀬と話してる間ユキから変な視線が飛んで来てた気がする。気のせいかな、嫉妬だったりしない? なら可愛くて萌えなんだけど。ユキに限ってそんなことはなさそうだ。
志摩椿の今日の感想
・推しの声を聞けて満足。やっぱり自分の苗字が志摩なのは運命じゃないかと改めて思った