拘束されたオウギ、エヴァ、茶々丸。
自分は無断でこの街に侵入したも同然なので、警戒されるのは仕方ないとは言え…………気のせいでなければ褐色の男の敵意は自分よりエヴァに向いている。
「さて、はじめましてじゃのお、オウギ君」
「あ、名前とか知られてんっすね」
「まあ、『お助けオウギ』ってなんか有名になっとったし………不法侵入した自覚ある?」
「不法……あー、そうなるのか。え、お助けオウギ?」
なにそれ初耳、と困惑する。確かに目につく範囲で人助けはしていたが、そんな噂になっていたとは。そういえば前世の人助けで知り合った子供はどうしているだろうか?
「君泣いてる子供や困ってる老人、老若男女関係なくを見つける度に無視できてなかったろう? そりゃ、目立つさ」
「不法侵入者しちゃいましたけど………」
「まあ、君がこの地に現れた時の映像は残っておる。あの戸惑い様と言い、何か企みがあったわけではないのじゃろう?」
フォッフォッフォッと笑いながら髭を撫でる老人。眼鏡の中年も好ましく思っているのか苦笑している。
「今の問題はその男ではないでしょう、学園長! ネギ君を襲った『
「むぅ……いや、これも彼の試練じゃと放置するときめたの儂じゃし………」
歯切れ悪そうな学園長。そういえばこの前も吸血鬼として誰かを襲っていたようだが、その割に監視とかなかった。ネギとエヴァの魔法の打ち合いで漸く事態に気付いたのだろうか?
「何を考えているのですか学園長! 彼は『
何やらあの少年は将来を期待されているようだ。ただ教育方針にいろいろ意見が異なるらしい。
「やはり吸血鬼など封印中に殺す方法を見つけ、滅するべきだったんです!」
「め、滅する!?」
ネギが目を見開いて固まった。
「か、彼女は僕の生徒です! そ、そんなことさせませんよ!」
「坊や……」
「……………」
「おい、なんだ『ほらな?』って言いたげな目は」
自らを庇おうとする小さな背中に目を丸くするエヴァはオウギの視線に気付き頬を赤くして顔を逸らす。
「いいかい、ネギ君。その女は君の父親に封印された悪い魔法使い………いいや、魔法使いを名乗るのも烏滸がましい化物だ」
「な、なんてこと言うんですか!」
「………………あ?」
両手をブンブンと振り抗議するネギに子供だから仕方ないとでも言う様な目を向ける褐色眼鏡はオウギの視線に気付かず肩をすくめた。
「己の力と美貌の為に何百人もの人間をその毒牙にかけた。女子供は襲わないなんて、どこまで信用できるか。その昔魔法世界に現れ、尋常じゃない被害を出したことは有名な話だよ。その後も、彼女の手によってどれだけの『
拳を握り義憤に燃える褐色眼鏡。悪を許せず、平穏に暮らす者達を命にかけても護りたいと、そう本気で思っているのが伝わる。
慣れたものだと、何もかも諦めたかのように嗤う少女の姿が見えた。
だから、
「なっ!?」
「謝れ……」
「くっ、この……!」
必死に振り払おうとするが少しも動かせず、手首を締め付ける痛みに顔を歪める褐色眼鏡。
「言ったこと全部謝れ、食うぞ!」
「すまぬ! 彼等の長として……!」
「あんたが謝れ、おっさん」
学園長が代表として謝ろうとするもオウギが睨みつけるのは目の前の男だけだ。
「あんたが好き勝手言ったのは、確かに数え切れない人を殺してきた。でも、お前等魔法使いに親も故郷も燃やされて、自分みたいな奴が少しでも生まれないよう戦って、なのに世界から嫌われても、自分が悪いって思っちゃう優しい奴なんだよ………そんな女の子を目の前で虐められて、怒ってんだ、俺は!」
「な、なにを………言って………!?」
吸血鬼こそが悪であり、魔法使い達は被害者で正義の味方と疑ったことのない男は困惑しながら振りほどこうと暴れる。
サングラス、刀の女がオウギに向き直り、その隙に茶々丸が結界魔法を破壊する。エヴァがオウギを蹴る
「いだ!? え、な、なにすんの!?」
「うるさい! 大して悪くなかった立場を悪くしてどうする間抜け」
「ええ〜………」
情けない顔をするオウギを静かに見つめる学園長と中年の眼鏡。
(
(とんでもない男が入ってきたのう………)