とある学園都市の第零位《ゼロナンバー》   作:右左右左右

30 / 30
第30話 走る実験室

 八月十二日、午後五時三十七分。

 

 学園都市第七学区。

 

「……通信が途絶えた?」

 

 御坂美琴の表情が変わった。

 

 久遠零司は、携帯端末を耳に当てたまま頷く。

 

「そうらしいね」

 

『……零司』

 

 電話の向こうから、N-12の声が聞こえた。

 

『……九九七三号、死にたくないって言ったんだよ』

 

「うん」

 

『……それなのに、返事が来なくなった』

 

 N-12の声には、焦りが滲んでいた。

 

 零司は、近くのベンチへ腰を下ろした。

 

「最後に届いた情報は?」

 

『……生きたいって、それだけ』

 

「居場所は?」

 

『……分からない』

 

「そっか」

 

 零司は、手元の書類ケースを開いた。

 

 昼間、観測部隊から回収した資料。

 

 そこには、研究資材の搬送記録が残されている。

 

 関連施設。

 

 運用番号。

 

 搬送方法。

 

 そして、第十八学区へ向かう専用貨物線。

 

「……十二号」

 

『……何?』

 

「九九七一号と九九七二号に聞いてみて」

 

『……何を?』

 

「昨日までの搬送で、共通していたこと」

 

 少しの沈黙。

 

『……分かった』

 

「分からなくてもいいよ。無理に思い出させなくていいから」

 

『……うん』

 

 通話が切れた。

 

 美琴が、零司を見下ろしていた。

 

「……どうするの?」

 

「とりあえず、列車を調べようかな」

 

「列車?」

 

 零司は、書類を差し出した。

 

《機密研究資材搬送》

 

《搬送先:第十八学区・統合観測管理区画》

 

《搬送方式:専用貨物線》

 

 美琴が目を細める。

 

「……今日の搬送?」

 

「日付は今日。でも、九九七三号が乗っているとは限らない」

 

「だったら、調べるしかないわね」

 

「お願いできる?」

 

 美琴は、書類を受け取った。

 

「任せなさい」

 

 その返事を聞いて、零司は立ち上がった。

 

「じゃあ、僕は別のことを調べるよ」

 

「……別のこと?」

 

「昨日までの連中が、どうやって僕たちを待ち伏せしたのか」

 

 美琴が眉をひそめる。

 

「それ、今必要?」

 

「必要だよ」

 

 零司は、書類ケースを閉じた。

 

「二回も実験に割り込まれたんだ。向こうだって、三回目は違う方法を考えるでしょ」

 

 その言葉に、美琴は黙った。

 

 確かにそうだった。

 

 昨日の研究施設は、実験を繰り上げたうえに自爆までしている。

 

 研究者たちは、自分たちの行動を予測していた。

 

 零司は、そんな美琴を見て言った。

 

「今度は、向こうの予定を狂わせよう」

 

     ◇

 

 午後六時十二分。

 

 第十八学区、某貨物管理施設。

 

「……新しい実験対象の搬送準備が完了しました」

 

 研究員の報告に、一人の男が頷いた。

 

 短く刈り込んだ黒髪。

 

 灰色の戦闘服。

 

 落ち着いた物腰。

 

 男の名は早瀬。

 

 絶対能力進化計画に関係する輸送警備部門の現場責任者だった。

 

「対象個体の状態は?」

 

「正常です。ただし、実験への参加拒否を繰り返しています」

 

「……九九七一号と九九七二号の影響か」

 

「その可能性があります」

 

 早瀬は、監視モニターを見た。

 

 画面には、茶色い髪の少女が映っている。

 

 ミサカ九九七三号。

 

 両手を拘束され、窓のない小部屋に座っていた。

 

「通信は?」

 

「ミサカネットワークとの接続を、専用の遮蔽設備で制限しています」

 

「完全に遮断できているのか?」

 

「現時点で、外部との通信は確認されていません」

 

「分かった」

 

 早瀬は、別の画面を開いた。

 

《第九九七三次実験》

 

《実施予定:二十一時》

 

《対象個体:ミサカ九九七三号》

 

《輸送計画:変更済》

 

 画面の隅には、もう一つの名前が表示されている。

 

《ZERO》

 

 久遠零司。

 

 非公式の第零位。

 

 第一位と二度交戦し、二度とも妹達を救出した少年。

 

 警備部門にとって、最も厄介な妨害者だった。

 

「……本当に来るのでしょうか」

 

 研究員が尋ねた。

 

 早瀬は、即答する。

 

「来る」

 

「……何故、そう言い切れるのです?」

 

「今回の対象個体も、生存を希望している」

 

 男は、端末を閉じた。

 

「これまでの行動を見る限り、ZEROが無視するとは考えにくい」

 

「……では、迎撃しますか?」

 

「正面から戦うつもりはない」

 

 早瀬は、首を横へ振った。

 

「第一位と交戦できる相手だ。通常兵器で勝てるなどとは考えん」

 

 その言葉に、研究員が安堵する。

 

 しかし。

 

「だから、勝つ必要のない作戦にする」

 

 早瀬は、別の資料を開いた。

 

《専用貨物列車》

 

《三両編成》

 

《発車予定:十九時五十五分》

 

《第一貨車:輸送管理設備》

 

《第二貨車:観測機材》

 

《第三貨車:特殊搬送物》

 

 さらに。

 

《非常時対応:独立制御》

 

《車両分離機構:作動可能》

 

 早瀬は、静かに続けた。

 

「我々の任務は、対象個体と観測資料を指定先へ運ぶことだ」

 

 研究員が頷く。

 

「……はい」

 

「しかし、ZEROが来れば輸送は妨害される」

 

 男は、少しだけ目を細めた。

 

「ならば、輸送そのものを観測に利用すればいい」

 

     ◇

 

 午後六時四十一分。

 

 第七学区。

 

「……見つけた!」

 

 美琴が、携帯端末を掲げた。

 

 画面には、第十八学区の貨物運行情報が表示されている。

 

「今日、臨時で走る三両編成の貨物列車がある!」

 

 零司が画面を覗き込む。

 

「時間は?」

 

「十九時五十五分」

 

「一時間ちょっとか」

 

「ただし、何を積んでるかまでは分からない」

 

「うん」

 

 零司は、書類を確認した。

 

 昼間に入手した管理番号。

 

 美琴が見つけた臨時列車の運用番号。

 

 完全には一致しない。

 

 だが、管理区画と搬送系統が重なっていた。

 

「……確かめる価値はあるね」

 

「そうね」

 

 美琴は、端末を閉じた。

 

 そのとき。

 

 零司の携帯端末が振動した。

 

《N-12》

 

《九九七一号たちが、搬送時の共通点を思い出した》

 

 続いて、短い情報が届く。

 

《窓のない車両》

 

《内部に独立した電源設備》

 

《搬送中は外部通信に制限あり》

 

 零司は、画面を見つめた。

 

「……なるほど」

 

 美琴が尋ねる。

 

「何か分かった?」

 

「昨日までの搬送方法」

 

「……それで?」

 

「今回も同じとは限らないけど、列車の中身を調べる手掛かりにはなる」

 

 美琴は頷いた。

 

「……分かった」

 

 その隣から、N-13が口を開く。

 

「……わたしも行く」

 

 美琴が顔を向けた。

 

「……危ないわよ?」

 

「……分かってる」

 

 N-13は頷いた。

 

「……でも、わたしにもできることがある」

 

 零司が少女を見た。

 

「潜入する?」

 

「……うん」

 

 迷いのない返事だった。

 

 零司は、少しだけ考えた。

 

「じゃあ、お願いしようかな」

 

 美琴が目を見開く。

 

「……ちょっと!?」

 

「大丈夫」

 

 零司は、N-13へ視線を向けた。

 

「危なくなったら、すぐに離れて」

 

「……分かってる」

 

 N-13は、静かに頷いた。

 

 その表情には、以前とは違う強さがあった。

 

 研究施設から逃げ出した少女。

 

 いつも誰かに守られていた少女。

 

 だが、今は違う。

 

 自分の意思で、誰かを助けようとしている。

 

     ◇

 

 午後七時五十三分。

 

 第十八学区、南部専用貨物線。

 

 貨物列車が、静かに動き始めた。

 

 三両編成。

 

 先頭には無人牽引車。

 

 後方には、同じ形の貨物コンテナが三つ連なっている。

 

 車体の外装は、いずれも同じ色。

 

 識別番号も、一般の貨物と区別しにくいよう処理されていた。

 

 その第三貨車。

 

 内部の隔離室。

 

 ミサカ九九七三号は、椅子に座らされていた。

 

 両手首には、拘束具。

 

 首元には、生体情報を測定する装置。

 

 壁には、監視カメラが設置されている。

 

「……質問があります」

 

 少女が口を開いた。

 

『何だ』

 

 監視室から、男の声が返ってくる。

 

「ミサカは、実験への参加を拒否しました」

 

『却下されている』

 

「……理由を伺ってもよろしいでしょうか」

 

『お前は実験用の個体だからだ』

 

 九九七三号は、静かに目を伏せた。

 

 その説明は、何度も聞いてきた。

 

 自分は実験のために作られた。

 

 だから、命令に従う。

 

 だから、死ぬ。

 

 それが当然だと教えられていた。

 

 しかし。

 

 今は、その説明に納得できなかった。

 

「……再度、質問します」

 

『まだ何かあるのか』

 

「ミサカが生存を希望することは、規定違反なのでしょうか」

 

『くだらないことを聞くな』

 

「……了解しました」

 

 少女は、静かに答えた。

 

 だが。

 

 その視線は、手首の拘束具へ向けられていた。

 

 金属製。

 

 電子認証式。

 

 そして、電気的な監視回路。

 

 完全な絶縁構造ではない。

 

 九九七三号は、自分の能力で何ができるか考え始めた。

 

     ◇

 

 午後八時二分。

 

 貨物列車、中央車両。

 

「……侵入者?」

 

 警備員が、監視モニターを見つめていた。

 

 画面には、狭い通路が映っている。

 

 何もない。

 

 しかし。

 

 先ほどから、映像に違和感があった。

 

 人影らしきものが映る。

 

 だが、次の瞬間には見失う。

 

 別のカメラへ切り替えても、位置が一致しない。

 

「……どうなってる?」

 

 警備員が呟く。

 

 その隣にいる男が、端末を確認した。

 

「熱源反応は残ってるぞ」

 

「……何?」

 

「中央車両の後方。誰かいる」

 

 その瞬間。

 

 警備員が、通路へ向けて銃を構えた。

 

「……出てこい!」

 

 返答はない。

 

 だが。

 

 通路の奥から、小さな足音が聞こえた。

 

「……そこか!」

 

 男が、引き金へ指を掛ける。

 

 その直後。

 

 車体が、僅かに傾いた。

 

「……っ!?」

 

 姿勢が崩れる。

 

 次の瞬間。

 

 男の足元にあった床が、不自然に軋んだ。

 

 ガギンッ!

 

 床を支える金属材が変形し、男の身体が座席へ押し戻される。

 

「……何だ!?」

 

 その声と同時に。

 

 車両の側面から、別の声が響いた。

 

「……こんばんは」

 

 久遠零司だった。

 

 少年は、走行中の貨物列車の横に浮かんでいた。

 

 足元には何もない。

 

 支えるための装置もない。

 

 両手はポケットに入ったまま。

 

 ただ、列車と同じ速度で移動している。

 

「……ZERO!?」

 

 警備員が叫んだ。

 

 零司は、軽く笑った。

 

「少し通してもらうね」

 

 次の瞬間。

 

 車両側面の装甲板が、静かに外れ始めた。

 

 固定用のボルト。

 

 接合部の摩擦。

 

 金属内部の応力。

 

 それらが変更され、装甲板そのものが滑るように移動する。

 

 ガコンッ。

 

 車両の内部が露出した。

 

 警備員が、目を見開く。

 

「……馬鹿な!」

 

 零司は、そのまま車内へ入った。

 

「N-13」

 

「……零司!」

 

 通路の奥から、少女が顔を出した。

 

「……見つけた」

 

「何を?」

 

「……第三貨車」

 

 N-13が、奥を指差す。

 

「……生体反応を監視してる装置があった」

 

「場所は?」

 

「……後ろ」

 

 零司は、静かに頷いた。

 

「分かった」

 

 そのとき。

 

 警備員が、再び銃を構えようとした。

 

 しかし。

 

 身体が動かない。

 

 足元の支持構造が変形し、床と座席の間に身体を固定されていた。

 

「……ぐっ!?」

 

 男が、歯を食いしばる。

 

 零司は、振り返った。

 

「ごめんね」

 

 静かな声。

 

「今、急いでるから」

 

 そのまま、N-13と共に後方へ向かった。

 

     ◇

 

 午後八時六分。

 

 先頭制御室。

 

「……ZEROが侵入しました!」

 

 研究員の叫びに、早瀬は頷いた。

 

「確認している」

 

「……どうしますか!?」

 

「予定どおりだ」

 

 早瀬は、端末を操作した。

 

《緊急輸送手順》

 

《第三貨車:独立制御へ移行》

 

《連結解除準備》

 

 研究員が、目を見開く。

 

「……貨車を切り離すのですか?」

 

「そうだ」

 

「……しかし、第三貨車には対象個体が!」

 

「分かっている」

 

 早瀬は、監視画面へ視線を向けた。

 

 久遠零司。

 

 その少年は、どんな攻撃も無力化する。

 

 通常の装甲も意味を成さない。

 

 ならば、直接攻撃する理由はない。

 

「……あの少年は対象個体を助けに来た」

 

 早瀬は、静かに続けた。

 

「だったら、助けてもらえばいい」

 

 研究員が眉をひそめる。

 

「……どういう意味です?」

 

「救出へ意識を向けている間に、我々は観測記録を送信する」

 

 画面が切り替わる。

 

《観測データ:外部転送準備》

 

《輸送部門:緊急退避》

 

 早瀬は、淡々と告げた。

 

「勝つ必要はない」

 

 そして。

 

「目的を達成してから、戦場を離れればいい」

 

     ◇

 

 午後八時八分。

 

 第三貨車。

 

 ガコンッ!

 

 巨大な金属音が響いた。

 

 N-13が、壁へ手をつく。

 

「……っ!?」

 

 車体が、大きく揺れた。

 

 前方の連結器が解除される。

 

 さらに、線路の分岐器が切り替わった。

 

 第三貨車だけが、別の線路へ誘導される。

 

「……零司!」

 

 N-13が叫ぶ。

 

「……切り離された!」

 

「見えてるよ」

 

 零司は、外の線路を確認した。

 

 貨車の進行方向。

 

 その先。

 

 行き止まりの側線。

 

 しかも、終端には十分な停止設備がない。

 

「……なるほど」

 

 少年の目が細くなる。

 

「人質にするつもりか」

 

 第三貨車は、速度を落とさない。

 

 むしろ、下り勾配によって徐々に加速している。

 

 しかし。

 

 零司は、慌てなかった。

 

 車体の内部構造。

 

 車輪の回転。

 

 荷重の伝わり方。

 

 そして、内部の人間に掛かる加速度。

 

 そのすべてを把握し、必要な条件を変更する。

 

 次の瞬間。

 

 貨車の速度が、滑らかに落ち始めた。

 

 急停止ではない。

 

 車内の人間や設備に過大な負荷を掛けないよう、運動量が調整されていく。

 

 数秒後。

 

 ガタン。

 

 第三貨車は、側線の終端手前で静かに停止した。

 

 N-13が、大きく息を吐いた。

 

「……止まった」

 

「うん」

 

 零司は頷いた。

 

「中の子を探そう」

 

 N-13が顔を上げる。

 

「……でも、前の車両は?」

 

「御坂さんが追ってる」

 

「……大丈夫?」

 

 零司は、少しだけ笑った。

 

「第三位でしょ」

 

 そして。

 

「任せた方がいいよ」

 

     ◇

 

 午後八時十分。

 

 南部専用貨物線。

 

「――逃がさないわよ!」

 

 御坂美琴が、保守通路を走っていた。

 

 前方には、加速する貨物列車。

 

 残された先頭車両。

 

 その内部に、研究側の責任者がいる。

 

 さらに、観測資料も積まれている可能性が高い。

 

「……まったく!」

 

 美琴が、歯を食いしばる。

 

「人間を貨物扱いしておいて、自分たちだけ逃げる気!?」

 

 少女の身体から、青白い電撃が迸った。

 

 パチパチッ!

 

 周囲の金属片が、浮き上がる。

 

 黒い砂鉄が、帯となって伸びた。

 

 磁力を利用した即席の足場。

 

 その上を、美琴が一気に駆け抜ける。

 

 列車との距離が縮まった。

 

 そのとき。

 

 先頭車両の屋根が開いた。

 

 ガシャンッ!

 

 内部から、小型の無人兵器が飛び出す。

 

 円盤状の機体。

 

 下部には、回転翼。

 

 側面には、短い発射管。

 

「……また、そういうの!?」

 

 美琴が、顔をしかめた。

 

 次の瞬間。

 

 パシュッ!

 

 複数の硬質弾が放たれた。

 

 金属ではない。

 

 電磁操作による直接干渉を避けるための素材だった。

 

 美琴の目が細くなる。

 

「……対策してるつもり?」

 

 砂鉄が、少女の周囲へ集まった。

 

 黒い粒子が、巨大な盾を形成する。

 

 硬質弾が、次々と砂鉄へ突き刺さる。

 

 ガガガガッ!

 

 しかし、貫通しない。

 

 美琴は、そのまま距離を詰めた。

 

「……だったら!」

 

 砂鉄の帯が、左右へ広がる。

 

 無人兵器の進行方向を塞ぐ。

 

 さらに、別の帯が機体の下へ回り込んだ。

 

 回転翼へ絡みつく。

 

 ガギンッ!

 

 一台が、動きを止めた。

 

 続いて二台目。

 

 三台目。

 

 次々と、無人兵器が落下していく。

 

 美琴は、着地した機体を踏みつけた。

 

「……無駄よ!」

 

 そのまま、先頭車両へ跳んだ。

 

 両足が、屋根へ着地する。

 

 ガンッ!

 

 次の瞬間。

 

 少女の身体から、強い電磁波が放たれた。

 

 車両内部の通信設備に、激しい雑音が走る。

 

《通信異常》

 

《外部接続不安定》

 

 美琴が、歯を見せて笑った。

 

「……さあ」

 

 屋根の金属板が、ゆっくりと持ち上がる。

 

「中身を見せてもらうわよ!」

 

     ◇

 

 午後八時十二分。

 

 第三貨車、内部隔離室。

 

「……質問があります」

 

 九九七三号の声が響いた。

 

 零司が、扉の前で足を止める。

 

「何?」

 

「外部の人物は、久遠零司でしょうか」

 

「そうだよ」

 

 短い沈黙。

 

 そして。

 

「……ミサカ九九七一号から、情報を受け取っています」

 

 少女は、静かに続けた。

 

「あなたは、ミサカたちを救出していると」

 

「まあ、そうだね」

 

「……今回も?」

 

 零司は、扉を見た。

 

 厚い金属製の隔壁。

 

 その周囲には、複数の配線。

 

 内部には、機械式の連動装置が設置されている。

 

 強制的に扉を開けると、拘束設備が作動する構造だった。

 

「君が帰りたいならね」

 

 零司は、静かに答えた。

 

「……帰りたい」

 

 九九七三号が、その言葉を繰り返した。

 

 そして。

 

「……ミサカは、まだ死にたくありません」

 

 零司の口元が、僅かに上がった。

 

「じゃあ、決まり」

 

 次の瞬間。

 

 隔壁の隣にある壁が、静かに変形し始めた。

 

 金属の接合部。

 

 内部応力。

 

 固定具の位置。

 

 それらが変更され、壁の一部が外側へ開いていく。

 

 ガコンッ。

 

 扉は閉じたまま。

 

 しかし、その隣に新しい通路ができていた。

 

 N-13が、目を瞬かせた。

 

「……扉、開けないんだ」

 

「罠があるからね」

 

 零司は答えた。

 

「別の入口を作った方が早い」

 

 その向こう。

 

 ミサカ九九七三号が立っていた。

 

 茶色い髪。

 

 白いブラウス。

 

 灰色のプリーツスカート。

 

 自分と同じ顔をした少女たちの情報を受け取りながら、初めて自分の意思で実験を拒否した少女。

 

 その手首には、まだ拘束具が残されている。

 

「……質問があります」

 

「何?」

 

「……ミサカの実験は、どうなったのでしょうか」

 

 零司は、静かに答えた。

 

「まだ始まってないよ」

 

「……そうですか」

 

「うん」

 

 少年は笑った。

 

「だから、もう帰ろう」

 

 その言葉に。

 

 九九七三号は、しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「……帰る場所が、ありません」

 

 小さな声。

 

 N-13が、一歩前へ出た。

 

「……じゃあ」

 

 少女は、九九七三号を見つめた。

 

「……うちに来る?」

 

 九九七三号が、目を瞬かせる。

 

「……よろしいのですか」

 

「……うん」

 

 N-13は頷いた。

 

「……九九七一号も、九九七二号もいるよ」

 

 数秒の沈黙。

 

 そして。

 

「……了解しました」

 

 九九七三号が、小さく頭を下げた。

 

「……よろしくお願いします」

 

 その様子を見て、零司は少しだけ笑った。

 

「……さて」

 

 その視線が、外へ向けられる。

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

     ◇

 

 午後八時十五分。

 

 先頭制御室。

 

「……第三貨車、停止!」

 

 研究員が叫んだ。

 

「対象個体の所在を確認できません!」

 

 早瀬は、静かに端末を見つめた。

 

 久遠零司。

 

 その少年は、やはり第三貨車を止めた。

 

 しかも、対象個体を救出している。

 

「……想定どおりだ」

 

 早瀬が呟く。

 

 研究員が顔を上げる。

 

「……では、観測資料の送信を!」

 

「すでに始めている」

 

 画面には、複数の進行状況が表示されていた。

 

《観測データ転送》

 

《進行率:上昇中》

 

《ZERO行動記録:保存》

 

 しかし。

 

 その直後。

 

《通信異常》

 

《外部接続不安定》

 

 警告が表示された。

 

「……何!?」

 

 研究員が、端末を操作する。

 

 さらに。

 

 天井から、巨大な金属音が響いた。

 

 ガギギギッ!

 

「……っ!?」

 

 全員が顔を上げる。

 

 屋根の金属板が、外側から持ち上がっていた。

 

 次の瞬間。

 

 ガシャアッ!

 

 天井が開いた。

 

「――見つけた!」

 

 御坂美琴だった。

 

 その身体から、青白い電撃が迸っている。

 

「……あんたたち!」

 

 少女が叫んだ。

 

「もう逃がさないわよ!」

 

 研究員たちが、慌てて後退する。

 

 しかし。

 

 早瀬は、動かなかった。

 

「……第三位」

 

 静かな声。

 

「随分と無茶をする」

 

「そっちに言われたくないわ!」

 

 美琴が、右手を伸ばした。

 

 青白い電撃。

 

 それが、一直線に早瀬へ向かう。

 

 しかし。

 

 その直前。

 

 早瀬が、足元の装置を踏んだ。

 

 ガコンッ!

 

 床下から、金属製の遮蔽板がせり上がる。

 

 電撃が、そちらへ流れた。

 

「……っ!?」

 

 美琴が、目を見開く。

 

 早瀬は、淡々と告げた。

 

「第三位への対策も、用意している」

 

 その瞬間。

 

 車両の床が、大きく開いた。

 

「……え?」

 

 美琴の足元。

 

 そこに、巨大な空間が生まれる。

 

 少女の身体が、落下した。

 

     ◇

 

「……っ!」

 

 美琴は、咄嗟に周囲の金属へ干渉した。

 

 磁力。

 

 足元の鋼材を引き寄せ、落下速度を抑えようとする。

 

 しかし。

 

 床下には、複数の絶縁性素材が配置されていた。

 

 磁力で利用できる部分が少ない。

 

「……くっ!」

 

 美琴が、歯を食いしばる。

 

 そのとき。

 

 視界の端に、一本の金属製レールが見えた。

 

 車両の支持構造。

 

 その一部。

 

「……そこ!」

 

 右手を伸ばす。

 

 磁力が働く。

 

 身体が、横へ引き寄せられた。

 

 ガシャンッ!

 

 レールへ手を掛ける。

 

 落下が止まった。

 

「……はぁっ!」

 

 美琴は、大きく息を吐いた。

 

 その頭上。

 

 早瀬が、静かに顔を覗かせた。

 

「……やはり、第三位は厄介だな」

 

「……あんた!」

 

 美琴が睨む。

 

「……そんな程度で、私を倒せると思ってるの!?」

 

「倒すつもりはない」

 

 早瀬は、淡々と答えた。

 

「時間を稼げれば十分だ」

 

 その言葉に。

 

 美琴の表情が変わった。

 

「……何?」

 

 早瀬は、腕時計を確認した。

 

 午後八時十七分。

 

「……観測記録の送信が完了した」

 

 短い言葉。

 

 その瞬間。

 

 美琴の瞳が、僅かに見開かれた。

 

「……まさか!」

 

「我々の目的は、最初から戦闘ではない」

 

 早瀬は、静かに続けた。

 

「第零位の能力を観測し、その行動傾向を記録することだ」

 

 美琴が、歯を食いしばった。

 

 だが。

 

 次の瞬間。

 

 背後から、気の抜けた声が響いた。

 

「……ああ、そういうこと」

 

 早瀬が振り返る。

 

 そこには、久遠零司が立っていた。

 

「……っ!?」

 

 男の顔が、初めて強張った。

 

「……ZERO」

 

 零司は、車両内部を見渡した。

 

 監視装置。

 

 通信設備。

 

 そして、複数の記録媒体。

 

「……なるほどね」

 

 少年は、少しだけ笑った。

 

「君が責任者?」

 

 早瀬は、答えなかった。

 

 零司は、肩をすくめた。

 

「まあ、いいや」

 

 そして。

 

「御坂さん、もう上がってきていいよ」

 

「……言われなくても!」

 

 美琴が、下から叫んだ。

 

 次の瞬間。

 

 砂鉄が、床下から噴き上がった。

 

 ガギギギッ!

 

 車両内部の金属片が、一斉に動く。

 

 その勢いを利用し、美琴が床の上へ飛び上がった。

 

「……よし!」

 

 着地。

 

 そして。

 

「……あんたねぇ!」

 

 零司へ顔を向ける。

 

「もう少し早く来なさいよ!」

 

「ごめんごめん」

 

「……本当に!」

 

 零司は笑った。

 

 その様子を、早瀬は黙って見つめていた。

 

 目の前の二人。

 

 第三位。

 

 そして、非公式の第零位。

 

 普通なら、決して敵に回してはいけない相手。

 

 だが。

 

 作戦の目的は、すでに達成している。

 

 少なくとも、そう思っていた。

 

「……残念だが」

 

 早瀬が口を開いた。

 

「記録は、すでに外部へ送信した」

 

 零司が顔を向ける。

 

「そうみたいだね」

 

「……何?」

 

「送信したんでしょ?」

 

 少年は、あっさりと頷いた。

 

「じゃあ、もう遅いね」

 

 その返答に。

 

 早瀬は、僅かに眉をひそめた。

 

「……理解しているのか」

 

「うん」

 

 零司は、笑った。

 

「でもさ」

 

 その灰紫色の瞳が、細くなる。

 

「君たち、僕のことを調べるのに夢中だったよね」

 

 早瀬の表情が変わった。

 

「……何?」

 

「その間に、君たちの輸送記録を調べる時間もできた」

 

 零司は、携帯端末を取り出した。

 

 画面には、昼間に入手した搬送伝票と、新たに確認した情報が表示されている。

 

《統合観測管理区画》

 

《車両運用責任者:早瀬》

 

《輸送系統:第十八学区》

 

《観測記録受信先:確認》

 

 早瀬の顔色が変わった。

 

「……馬鹿な」

 

 零司は、少しだけ笑った。

 

「観測って、便利だね」

 

 そして。

 

「でも、見られてるのは僕だけじゃないよ」

 

     ◇

 

 午後八時二十二分。

 

 貨物列車、先頭車両。

 

 早瀬は、何も答えなかった。

 

 その代わり。

 

 ゆっくりと右手を動かした。

 

 懐。

 

 小型の拳銃。

 

 その銃口が、零司へ向けられる。

 

「……動くな」

 

 低い声。

 

 しかし。

 

 零司は、動じなかった。

 

「……まだやるの?」

 

「……貴様をここで拘束する」

 

「無理じゃない?」

 

「……っ!」

 

 早瀬の指が、引き金へ掛かる。

 

 その瞬間。

 

 銃身が、内側から潰れた。

 

 ガギンッ!

 

「……なっ!?」

 

 次の瞬間。

 

 早瀬の身体が、床へ押し倒された。

 

 ドンッ!

 

「……ぐっ!」

 

 四肢が動かない。

 

 呼吸はできる。

 

 しかし、それ以外の自由は失われていた。

 

 零司は、男を見下ろした。

 

「……ねえ」

 

 静かな声。

 

「君、誰の命令でやってるの?」

 

 早瀬は、歯を食いしばった。

 

「……答える義務はない」

 

「そう」

 

 零司は、少しだけ考えた。

 

 そして。

 

「……じゃあ、別にいいや」

 

 あっさりと答えた。

 

 早瀬が、目を見開く。

 

「……何?」

 

「君が話したくないなら、記録を調べればいいし」

 

 零司は、美琴へ顔を向けた。

 

「御坂さん」

 

「……何よ」

 

「この人、任せてもいい?」

 

 美琴が眉をひそめる。

 

「……あんたは?」

 

「ちょっと調べもの」

 

 零司は、車両の奥を指差した。

 

「まだ、見てない部屋があるから」

 

 美琴は、少しだけ考えた。

 

 そして。

 

「……分かった」

 

 強く頷いた。

 

「この人は、私が見張ってる」

 

「よろしく」

 

 零司は、軽く手を振った。

 

 そのまま、車両の奥へ向かう。

 

 早瀬は、少年の背中を見つめていた。

 

 その表情には、初めて明確な恐怖が浮かんでいた。

 

 自分たちは、ZEROを観測していた。

 

 その能力を調べていた。

 

 行動傾向を分析していた。

 

 だが。

 

 観測対象として扱っていた少年は、自分たちが想定したようには動かなかった。

 

 そして。

 

 必要と判断すれば、自分たちの計画そのものへ手を伸ばしてくる。

 

「……化け物め」

 

 早瀬が、小さく呟いた。

 

 その声を聞いて。

 

 美琴が、静かに口を開いた。

 

「……そうかもね」

 

 男が顔を上げる。

 

「……何?」

 

「……でも」

 

 美琴は、零司の背中を見た。

 

「少なくとも、あんたたちよりは人間らしいところもあるわよ」

 

 早瀬は、何も答えなかった。

 

     ◇

 

 午後八時四十四分。

 

 第七学区。

 

「……帰ってきた」

 

 N-12が、玄関の方を見た。

 

 扉が開く。

 

 そこには、零司とN-13。

 

 そして、ミサカ九九七三号が立っていた。

 

「……ただいま」

 

 零司が、片手を上げる。

 

 N-12が、目を見開いた。

 

「……九九七三号!」

 

 その声に、ソファに座っていた二人の少女が顔を上げた。

 

 九九七一号。

 

 九九七二号。

 

 そして、玄関に立つ九九七三号。

 

 三人は、しばらく互いを見つめていた。

 

「……生存を確認しました」

 

 九九七一号が、静かに口を開いた。

 

「はい」

 

 九九七三号が頷く。

 

「ミサカは、現在も生存しています」

 

 九九七二号が、少しだけ首を傾げた。

 

「……予定された実験は、どうなったのでしょうか」

 

「中止となりました」

 

「……そうですか」

 

 数秒の沈黙。

 

 そして。

 

「……よかった」

 

 N-12が、小さく呟いた。

 

 その言葉に。

 

 九九七三号が、僅かに目を瞬かせた。

 

「……よかった?」

 

「……うん」

 

 N-12は頷いた。

 

「……生きてて、よかった」

 

 九九七三号は、しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「……ありがとうございます」

 

 小さく頭を下げた。

 

 その様子を見て。

 

 N-13が、嬉しそうに笑った。

 

「……これで、三人だね」

 

 零司が、部屋を見渡した。

 

 N-12。

 

 N-13。

 

 九九七一号。

 

 九九七二号。

 

 九九七三号。

 

 そして、自分。

 

「……六人か」

 

 少年は、天井を見上げた。

 

 しばらく考える。

 

 そして。

 

「……引っ越そうかな」

 

 N-13が、即座に頷いた。

 

「……うん」

 

 N-12も頷く。

 

「……絶対、その方がいい」

 

 零司は、少しだけ笑った。

 

「全会一致だね」

 

     ◇

 

 午後九時三分。

 

 第十八学区、統合観測管理区画。

 

「……第三貨車の回収に失敗しました」

 

 研究員が、端末を見つめていた。

 

 画面には、複数の報告が表示されている。

 

《第九九七三次実験》

 

《結果:実施不能》

 

《対象個体:生存》

 

《輸送警備部門:機能停止》

 

《現場責任者:拘束》

 

 その隣で、一人の男が静かに息を吐いた。

 

「……また、失敗か」

 

 男は、別の画面を開いた。

 

《ZERO》

 

《第三位:御坂美琴》

 

《観測干渉能力者:N-13》

 

《行動記録:取得済》

 

 必要な戦闘記録は、一部確保されていた。

 

 しかし、それだけではない。

 

 輸送部門の記録。

 

 観測設備の管理情報。

 

 そして、複数の施設を結ぶ運用経路。

 

 それらの一部が、外部へ流出していた。

 

「……第零位」

 

 男が、小さく呟いた。

 

 自分たちは、あの少年を観測しようとした。

 

 だが、その結果。

 

 観測する側の情報まで奪われてしまった。

 

「……これ以上、直接的な観測は危険だな」

 

 男は、別の資料を開いた。

 

《絶対能力進化計画》

 

《次回実験:第九九七四次》

 

《実施予定:調整中》

 

 その表示を見て。

 

 男は、しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「……計画は継続する」

 

 静かに告げた。

 

「ただし、従来の運用では駄目だ」

 

 研究員が、顔を上げる。

 

「……では?」

 

 男は、画面を切り替えた。

 

 そこには、複数の研究機関の一覧が表示されている。

 

 資金。

 

 実験設備。

 

 量産個体の管理。

 

 そして、実施予定の承認。

 

「……関係機関へ通知を送れ」

 

「……内容は?」

 

 男は、静かに答えた。

 

「実験運用方式の変更を検討する」

 

 その声には、迷いがなかった。

 

「これ以上、個別の実験を妨害されるわけにはいかん」

 

     ◇

 

 同日、午後十一時四十七分。

 

 第七学区。

 

 零司は、自室のベッドへ寝転がっていた。

 

 手元には、昼間から集めていた資料。

 

 観測部隊の通信記録。

 

 輸送管理情報。

 

 そして、今回の戦闘で入手した追加資料。

 

「……なるほどね」

 

 少年は、端末を操作した。

 

 画面には、複数の研究機関が表示されている。

 

 いずれも、絶対能力進化計画へ直接または間接的に関係している組織だった。

 

 だが。

 

 そこには、妙な共通点があった。

 

「……責任者が、分かれてる」

 

 小さく呟く。

 

 実験計画の作成。

 

 資金の管理。

 

 量産個体の製造。

 

 戦闘実験の実施。

 

 それぞれが別の組織によって管理されている。

 

 つまり。

 

 一つの研究所を潰しても、別の施設が実験を引き継げる。

 

 それが、今回まで計画が継続していた理由の一つだった。

 

「……じゃあ」

 

 零司は、少しだけ笑った。

 

「一番上を探せばいいんだ」

 

 その瞬間。

 

 携帯端末が振動した。

 

 御坂美琴からのメッセージ。

 

《今日の資料、こっちでも調べておくわ》

 

《明日、分かったことがあったら連絡する》

 

 零司は、短く返信した。

 

《了解》

 

 そして、端末を置いた。

 

 そのとき。

 

 扉の向こうから、声がした。

 

「……零司」

 

「何?」

 

「……起きてる?」

 

「起きてるよ」

 

 扉が、ゆっくりと開いた。

 

 N-13だった。

 

「……あのね」

 

「うん」

 

「……今日、怖かった」

 

 零司は、少女を見た。

 

「そうだね」

 

「……でも」

 

 N-13は、少しだけ笑った。

 

「……行ってよかった」

 

 零司が、首を傾げる。

 

「どうして?」

 

「……九九七三号を、助けられたから」

 

 短い答えだった。

 

 零司は、しばらく少女を見つめていた。

 

 そして。

 

「……そっか」

 

 小さく頷いた。

 

「じゃあ、次も自分で決めればいいよ」

 

 N-13は、少しだけ目を瞬かせた。

 

 そして。

 

「……うん」

 

 静かに頷いた。

 

 扉が閉まる。

 

 零司は、天井を見上げた。

 

 第一位。

 

 第三位。

 

 妹達。

 

 そして、研究者たち。

 

 それぞれが、自分の意思で動いている。

 

 誰かの計画に従う者。

 

 誰かの計画を壊す者。

 

 そして、初めて自分の意思を持とうとする者。

 

「……さて」

 

 少年は、ゆっくりと目を閉じた。

 

「……次は、どうしようかな」

 

 学園都市の第零位。

 

 久遠零司。

 

 その少年は、まだ知らなかった。

 

 自分が手に入れた資料によって、絶対能力進化計画の運用を支える組織の一部が、すでに特定されつつあることを。

 

 そして。

 

 研究者たちも、まだ理解していなかった。

 

 彼らがどれだけ観測を重ねても、久遠零司という少年の次の行動を、完全に予測することなどできないということを。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法科高校の落第生(作者:超高校級の切望)(原作:魔法科高校の劣等生)

魔法がお伽噺でなくなり、超能力が魔法になった世界。▼超能力は魔法技術で説明のつくものとなった。しかし、本当に全ての超能力を、人は解析できたのだろうか?▼PSYREN世界の設定では、人の脳は発達しすぎて100%の力を使うと負荷がかかるから力を抑えてるんだってね。魔法が使える前提の人間の脳が10%程度なら、100%ってどれだけだろうね。


総合評価:3057/評価:8.18/連載:16話/更新日時:2026年10月31日(土) 23:38 小説情報

【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない(作者:C-RhYme)(原作:推しの子)

▼推しの子を読み終えて、登場人物たちに救いがあってほしくて執筆開始!▼登場人物たちはもう頑張ったんだから原作にいない人をぶっこんで頑張ってもらえばいいがコンセプト。▼前世の記憶なんてものもなく、原作知識もない人物が導く物語。▼原作開始までシリアスっぽい感じの文章になるけど本編が始まったらいちゃいちゃしてもらう予定。▼タグのアンチ・ヘイトは念のため。主人公は性…


総合評価:1169/評価:7.82/連載:47話/更新日時:2026年10月31日(土) 00:00 小説情報

妖精と聖剣使い(作者:使い手なない)(原作:FAIRY TAIL)

【第一章完】異世界から突然、別の世界へ転移してしまった一人の少女。▼彼女の名は、イリス・アストレア。▼故郷へ帰る方法を探す彼女が辿り着いたのは、後に妖精の尻尾誕生の地となる天狼島だった。▼そこで出会ったのは、メイビス・ヴァーミリオンという一人の少女。▼それは、後に初代ギルドマスターとなる少女と、異世界から訪れた聖剣使いの、運命の出会いだった。▼やがて二人の出…


総合評価:68/評価:-.--/連載:90話/更新日時:2026年11月01日(日) 10:00 小説情報

とある科学の渦巻(ボルテックス)(作者:mukugawa)(原作:とある魔術の禁書目録)

朝、目が覚めると右掌に菱形の痣があった。


総合評価:194/評価:8.25/連載:5話/更新日時:2026年11月01日(日) 00:00 小説情報

ようこそ原作主人公抜きで頑張る教室へ(作者:灰色の)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼よう実の世界に転生した青年、しかし物語の鍵となる原作主人公がいなかった。▼自分の能力も分からない中、彼は必死に足掻いて行く。


総合評価:3883/評価:7.9/連載:43話/更新日時:2026年08月14日(金) 21:23 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>