まだ無名だった僕らへ
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オリジナル:現代/ノンジャンル
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高校時代、一本の自主映画に出演した。

それだけだった。

けれど、あの放課後に雨宮湊のカメラの前に立った少年少女たちは、やがてまったく違う世界へ進んでいく。

国民的アイドル。
オリンピック金メダリスト。
世界的な外科医。
漫画家、教師、建築家、料理人、弁護士、政治家――。

華々しい成功を収めた彼らは、後年のインタビューで不思議なほど同じ名前を口にする。

「高校時代、雨宮湊という奴と映画を撮ったんです」

人前に立つことを恐れていた少女。
勝つことに疲れていた陸上選手。
自分の将来を選べずにいた優等生。
何の才能もないと思い込んでいた少年。

雨宮は誰かを救おうとしたわけではない。
人生を変えようとしたわけでもない。

ただ、その人にしかない表情や、その人自身もまだ知らない何かを見つけ、映画に撮ろうとした。

そして彼との出会いは、いつしか彼らが夢を見つけ、傷を乗り越え、自分の人生を選ぶ小さなきっかけになっていく。

一方、天才と呼ばれた雨宮自身の道は決して平坦ではなかった。
失敗、挫折、消えた企画。
それでも彼は映画を撮り続ける。

長い年月を経たある夜。
世界最高峰の映画賞、その壇上で一人の日本人監督の名が呼ばれる。

世界中に散らばったかつての仲間たちが思い出すのは、有名監督になった彼ではない。

古いカメラを抱え、まだ何者でもなかった十七歳の雨宮湊だった。

これは天才監督の成功譚ではない。

一本の映画が、いくつもの人生に残したもの。
そして誰かの人生を撮り続けた少年が、最後に自分自身の物語へ辿り着くまでの物語。