ご注文は捻デレですか?   作:白乃兎

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毎度毎度納得いくものが書きあがらないし思いつかないとかやってると気が付くと時間が過ぎている。


第四十二羽

「青い空!」

 

「白い雲!」

 

「かっ、輝く湖!」

 

「重たい瞼」

 

「「「ピクニックーー!!」」」

 

上から順番にモカ、ココア、千夜、八幡である。

元気三人娘の掛け声に苦笑いをするのがいつもの振り回され隊である、リゼ、シャロ、チノ、八幡である。

八幡に至っては休日を寝て過ごそうとしている時に家に突撃されたたき起こされて連行されたのである。

 

「眠たい。なぜこんなことに」

 

「事の始まりはココアさんとモカさんの勝負から始まりました……」

 

「チノちゃん、意外と乗り気ね」

 

語り部ちっくに原因を告げたチノ。意外にテンションが高いところをみると、ピクニック開催は強引だったものの、たのしみではあったらしい。

 

千夜はココアによって招集されたのち、持ち前のテンションですぐにモカと意気投合。

一方で少しおいていかれているのがリゼ、シャロ、八幡であった。

 

「さすがはココアの姉といったところか」

 

「姉妹そろってより強力になった感じですね」

 

「あの姉あってこの妹なんだろうな」

 

三人が少し離れたところで会話をしていると、モカはそれを見逃さずに三人に迫った。

 

「テンションの低い子たちはこうだー 」

 

三人まとめてモカにもふもふ(抱きしめ)をくらった。

三人の美少女と密着できた八幡としては役得であるが、恥ずかしがりやなリゼとシャロは顔を真っ赤にしてあうあうと悶えている。

 

外野からは友達が全員妹に!?なんて騒いでいるものもいるが総スルーを食らっていた。

 

「いつまでもふってんだ」

 

「んふー、恥ずかしがらないの」

 

「恥じらいを持つべきはモカだと思うんだが」

 

その八幡の言葉をモカは頭で何度か咀嚼する。すると、八幡の言わんとすることが分かったのか、ぱっと離れる。

モカは顔を赤く染め上げると、自分の胸を両手を交差させて隠す。

 

「ご、ごめんね」

 

「いや、別に……」

 

チノ、シャロ、リゼという常識的女性陣から八幡にジト目が送られるが、八幡は悪くないので無視することにした。

すると今度は八幡、リゼ、シャロの三人にココアが抱き着いた。

 

「みんなは私の妹なんだからねー!」

 

モカに盗られまいとした行動だったのだろうが、先ほどと異なるのはココアでは赤面をしないということである。

 

「ココア、あつい」

 

「くるしい」

 

「……」

 

シャロとリゼはココアに抱きしめられたとしても赤面することなく通常のトーンで返し、八幡は先ほど同様無言で何かを堪能していた。

 

相も変わらずチノからは冷ややかな視線が送られてくる。

 

「……俺、悪くないだろ」

 

「知りません」

 

「……モカ、チノがもふもふされたいって」

 

「そ、そんなこと言ってません!」

 

「遠慮しなくていいんだぞー」

 

うりうりー、と問答無用でチノをもふもふするモカ。

けしかけた八幡は早々にココアからの拘束から脱し、巻き込まれないようにモカのそばからフェードアウトしていた。

 

「八幡くん」

 

「ん、どうした」

 

八幡の逃げた先にいた千夜に少し寂しげなトーンで話しかけられる。

気落ちする千夜は意外とどうでもいいことで落ち込んでいたりするので、あまり気負うことなく八幡は千夜に問いかけた。

 

「……私だけ、モカさんにもココアちゃんにももふもふされないの」

 

案の定というべきか、かなりどうでもいい悩みを抱えていた千夜にあきれてすぐには言葉が出なかった。

八幡の無言によってできた時間に千夜は畳みかけるように言葉を紡ぐ。

 

「私はもふもふしたくならない体なのかしら」

 

「そんなことない」

 

即答だった。恐ろしいまでに即答だった。

なぜなら八幡はできることなら千夜をもふもふしたいからである。

最近、下心があふれてやまない八幡であるが、年頃の男の子はそんなものなのである。

 

「そう?ならーー」

 

次に発される言葉は八幡を苦しめることになると八幡は理解していながら千夜の口をふさぐことをしなかった。

 

「八幡くんが私をもふもふしてくれるかしら」

 

両手を広げ八幡を受け入れる形を整えた千夜。

下心のない純真無垢な千夜に下心満載な八幡は一瞬躊躇する。

しかし、千夜の方から求めてきたのだから捕まることはないだろうという非常に都合のいい解釈を行った八幡は手を広げて千夜に近づきーー

 

「なにしてんのよ!」

 

シャロに頭をたたかれて正気に戻らされた八幡。

内心ほっとしつつも、もったいないという気持ちを併せ持っていた。

 

「……もふもふ?」

 

そもそも八幡としてはもふもふするということがどういうことなのかわかっていない。

愛玩動物をもふもふするということはその体毛を堪能するということなのだろうが、人間にそれを適応した場合どういうことなのだろうか。

それゆえに、疑問形でしかシャロに答えることはできなかった。

 

「そういうことを言ってるんじゃないわよ」

 

「シャロちゃんも一緒に八幡くんにもふもふされる?」

 

「されない!」

 

「ここにも私の妹たちを自分の妹にしようとする人がー!」

 

「妹にしようとしてない」

 

「じゃあ、私が妹に立候補!」

 

そう言って手を挙げたのは最年長であるモカ。

モカの外見は高校生といわれても信じられるほどの若さではあるが、気持ち的な問題で妹としては扱いづらい。

 

「おい、年長者」

 

ココア、千夜のいつもの振り回しに加えてモカまで悪乗りを始めたらこの場は中々収まらない。

ピクニックの醍醐味、外での食事にはまだ時間がかかりそうだった。

 

 

 

 

 

謎の騒ぎも収束し、レジャーシートをしいて七人仲良く屋外でパンを食べる。

さすがパン屋の娘たちといったところか、店に出しても何の問題もないクオリティのパンがずらり。

 

「……うぅ、太らないかしら」

 

「お前は一番そういうの気にする必要ないだろ」

 

シャロがメロンパンを片手に体重の心配を始めたので八幡は自分の見解を話した。

事実、シャロは小柄で細い。ほかのメンバーもモデル顔負けの体形なので比較しづらいが、シャロも身長と胸以外は完璧といって差し支えない体形をしている。

 

「そ、そうかしら」

 

「シャロちゃんは太りやすいっていつも悩んでるの」

 

「あんたはいつも余計なことをー!」

 

「シャロちゃんは太ってないよ」

 

「そうそう、モデルさんみたいな腰の細さだよ」

 

どうどうとなだめる保登姉妹。この姉妹もモデル腰はモデル顔負けであるので、慰めにはなり得なかった。

騒がしいなと、あきれているリゼとチノも細くリゼに至ってはもはやモデルそのものである。

チノもその白い肌は他の追随を許さないほどである。

 

よくよく考えてみれば八幡はすごいメンバーと一緒にいるなと神様に感謝をしてしまうほどであった。

 

「お前ら全員体重とか気にする必要なんてないだろ」

 

八幡がふと思ったことを口にした瞬間千夜以外の視線が八幡に集中した。

そんな状況に蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった八幡。

 

「八幡くん、体重を気にしなくなった瞬間から女の子は女の子じゃなくなっていくの」

 

モカが妙に説得力のある言葉に返す言葉もない八幡。

女の子はかわいくあろうとするからかわいいとはよく言ったものである。

 

しかし男子(八幡)からすればこの場にいる全員が体重を気にする必要のない容姿をしているし、シャロあたりはむしろもっと食べたほうがいいのではないかと思うほどには細く簡単に折れてしまいそうな体をしている。

女子って難しい、そう強く思った八幡はこの件について強く追及することをやめた。

 

「んん”っ」

 

突如八幡の口の中に広がるのは異常なまでの辛さ。八幡が口にしたのはただのパンであったにもかかわらずこんな味に襲われているということはーー

 

涙目でモカの方を見ると何やらにやにやとしている。

間違いなく犯人はモカである。

 

「さぷらーいず」

 

モカと八幡以外は何が起こっているのか状況が理解できていないようだった。

 

「一つだけものすごい辛いマスタードパンを作っておいたんだ」

 

「八幡くん、これを飲んで」

 

千夜から渡された紙コップ、その中に入った緑色の液体を八幡は何も考えず口の中に流し込んだ。

 

「んぐっ!?」

 

再び八幡の口の中を異様な味が支配した。

 

「特製青汁よ 」

 

辛さに引き続き苦みに襲われた八幡。

無事この後に開催されるボートレースを欠席したのだった。

 

 

 

 

 

「くっそ、あいつらマジで許さん」

 

いまだに口の中に不愉快な感覚が残る八幡は五人がボートで遊ぶ中レジャーシートで寝ころんでいた。

 

「大丈夫?気分悪いなら帰ったほうがいいんじゃない?」

 

一人八幡を残すのが悪いとこの場に残ったのはシャロだった。

チノも残ると主張したがココアに強制連行されていった。

 

寝ころぶ男と、その傍らに腰かける少女。青い空に自然。何とも絵になる光景である。

 

「体調は問題ない。気持ち的には腹立たしいことこの上ないが」

 

数瞬、二人の間に沈黙が落ちる。しかし八幡はこの沈黙を気まずいものだとは感じなかった。

それはシャロとの関係性やシャロの人の良さを分かっているからだろう。

 

この沈黙を破ったのはシャロだった。

 

「……八幡は、自分のことが嫌いなの?」

 

あの時、フルールで盗み聞きしていた内容について、シャロは踏み込んだ。

 

「あぁ、大嫌いだ」

 

「私も、自分のこと、好きじゃなかった。でも、今はちがう」

 

「あぁ、なんとなくわかるよ」

 

シャロは、自分が嫌で、少しでも好きになるためにひたすら努力をする人間だということは、バイトや勉学にいそしむ彼女を知っているからこそ理解できた。

 

「こんな私でも、みんな、私に優しくしてくれたから」

 

ーーみんなが好きでいてくれる私のことを、私は嫌いになれない

 

シャロは、みんなのことが大好きだから、みんなが好きなものを嫌いになれないのだ。

 

「八幡はみんなのこと嫌い?」

 

「いや、好きだよ」

 

八幡の口から出るのは掛け値なしの本音。

だからこそ、シャロは笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、私の言いたいことわかるわよね」

 

八幡が好きな人たちの好きなものを自分の偏見、主観だけで嫌いになるのか。

それとも、八幡が認めた人達の好きなものを自分も好きになろうと努力するのか。

 

「私は、八幡が好きよ。どこがって言われても、困らないくらいには好きになれるところはいっぱいある。だから、私の好きなものを八幡にも好きになってほしい」

 

この好きという言葉。言わなくてもそれとなく伝わるその思いが口にされたことでよりその言葉は重みを増す。

好きなものを好きな人と共有したい。ただそれだけのこと。

 

だから、きっと八幡が八幡を好きになるということも難しいことでは決してないのだろう。

唯一の不安要素であった八幡の好きな人たちが八幡のことを好いているかどうか。

それすらもチノやシャロが言葉で表している以上、八幡には逃げ場がないのだった。

 

だから八幡は決意を新たに一歩を踏み出す。

 

「お前たちと出会えてよかった」

 

自分を認めてくれる人間と出会えたことのなんと幸福なことか。

 

それをかみしめると八幡の頬が自然と緩んだ。

 

 

 

周りに都市の喧騒など感じられない八幡の立つ場所に風が駆け抜ける。

前髪が持ち上がり、八幡の視界に映った光景は湖で遊ぶ八幡の好きな人たち。

しかし、その光景は以前よりも輝いて見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




別に最終回なわけではありません。
なんか最終回みたいな終わりだったけど。

少しづつ八幡の心情の変化を書いてきたけど表現できてたらいいなぁ。

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