転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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……大変お待たせして申し訳ありませんでした。
二月中に更新すると言ったのに、かなり遅れてしまいました。
誠に申し訳ありません。

ここであまりごちゃごちゃ書くのもアレなので、本編をどうぞ!
楽しんでいただけると幸いです!


第二十六話 現代のある一日

 「ふぅ」

 小さくため息を吐いて、俺は体を伸ばした。

 パキッと小気味良い音が響いて、体の力が少し抜けた気がする。

 

 バキバキと骨がなる音が聞こえたのか

 ノートに文字を書き込む音が聞こえる。

 滞ることなく一定のリズムで聞こえてくる音を聞いていると、眉間にしわが寄ってくる気がする。

 小さくため息を吐いて、軽くなった

 

 今年は高校受験があるので、鍛錬は控えめにして勉強中だ。

 小さくため息を吐いて、軽く伸びをしながら、ルキアを見る。

 俺から借りた紙を使って、過去問を解いていた。

 正直なんでわかるんだよ、と思ったが少し考えれば嵐山響の影響だろと思いなおした。

 それでも疑問は残るけどな。

 なんで100年以上昔の人物が、現代数学なんて理解してんだよ。

 

 それにしてもスラスラと過去問を解いていくルキアに、内心で焦る。

 ……俺って、結構勉強しているつもりだったんだが、俺よりも計算が速くないか……?

 額を揉み解しながら、ルキアの回答を覗き見るとあと少しで全問終了だった。

 始めてからどれくらいたった……?

 時計を見ると、ルキアが過去問をやり始めて15分くらいだった。

 15分で50問の計算問題が終わりそうだった。

 1問何秒で解いてんだよ。

 あまりの計算速度に思わず、窓から遠くを見つめてしまった。

 

「……よし、こんなところか」

 なんて思っていたら、全問解き終わったようだ。

 ルキアの兄貴は一体どんな教育をしたんだ……

「……ルキアって、数学もできるんだな……」

 相変わらず遠い目をしていたら、そんなことを問いかけてた。

「響兄様のお蔭だな。思考力を鍛える為、と言われてここまでは習った覚えがある」

 やっぱり兄貴の影響だった。

 ルキアに視線を向けると、念のために再計算して確認しているようだ。

 本当にルキアの兄貴は色々とおかしい。

 ルキアたちを育てて、畑仕事もして、狩りもして、斬魄刀の使い方も教えて、その上勉強も教える?

 どんな超人だよ。

 嵐山響だけ一日が24時間以上あるんじゃねぇの?

 

「……やはり久し振りだけあって間違いが多いな……」

 ミスしたと思わしき場所を横線で引いて、計算しなおしていた。

 その手の動きは淀みない。

 あんな風にスラスラと解けたら気持ち良いだろーな。

「……俺も負けてられねぇな」

 小休憩は終わりだ。

 気合を入れて、俺も机へ向かう。

 

 ピピー ピピー ピピー ピピー

 向かうと同時に、ルキアの伝令神機から何度も聞いていた事がある虚を観測した音が響いた。

 目を向ければ、ルキアが難しい顔で伝令神機を見ていた。

 それを見ると同時に、いつもよりも鳴り続ける伝令神機に嫌な予感を覚えた。

 

 ピピー ピピー ピピー ピピー

 音が止まることなる鳴り続ける。

 鳴り続ける音に、嫌な予感が強くなる。

「ルキ「一護」なんだ」

 ルキアはいつの間にか立ち上がって、斬魄刀を解放していた。

「すまないが、手を貸してくれぬか? 数が多い上に、纏まりがない」

「わかった、任せろ」

 俺は引き出しからコンを取り出して、飲み込んだ。

 最初はこんなデカい球を水もなしに飲み込むのは無理だろ!って思ったけど、尸魂界の謎技術によって、さっと飲み込む事が出来る。

 

「一護ー! いつになったら俺の体を見つけてくれるんだよ!?」

「探してるわ!! 都合よく見つかるわけないだろ!!」

 身体から俺が出ると同時に掴み掛ってきたコンの頭を押さえつける。

「ならせめて引き出しじゃなくて机の上に出せよ! そうすれば周りの状況がわかるんだからよ!! 暗闇は怖いんだぞ!?」

 コンが半泣きになりながら訴えてきた。

 わかったから俺の顔でそんな顔するな。

 

「コン! その話は後で聞こう。すまないが、今は時間が惜しい!」

「なんだかわかんねぇけど、了解しました姐さん! お帰りをお待ちしていますぜ!」

 ルキアには相変わらずデレッデレだよな、コンの奴。

 とにかく俺の顔でそんな顔すんな、イメージが崩れる!

 そんなことを思っていると、ルキアが窓のふちに足を乗せた。

「すまん、行くぞ一護!」

「おう!」

「一護! テメェ、姐さんに何かあったらただじゃ置かねぇからなー!」

 

 コンの声を背に、俺はルキアを追って瞬歩で上空へと移動した。

 結構高い位置へと移動して止まったルキアをしり目に、斬月を肩に乗せた。

「で、俺は何をすればいいんだ?」

「ここで少し霊圧を解放してくれ、奴らをおびき寄せる」

「あー、なんでか知らないけど俺の霊力って、魂魄が集まりやすいんだっけ」

 そんな話をしながらも、霊圧を少しだけ解放する。あまり解放しすぎたら、弱い魂魄に悪影響を与えるらしいから強すぎない程度に抑える。これくらいの強さなら虚しか集まってこないだろ。

 

「うむ、一護の霊圧の質が魂魄には心地よく、虚には……こう言っては何だが、美味い魂魄だと思われるのだろう」

 技術局ならもっと詳しい事がわかるかもしれないが……と呟くルキアの言葉に、背筋が冷える。

 

 人体……この場合は魂魄?……実験も辞さないマッドな科学者の集まりである技術開発局に聞きに行ったら解剖される未来しか見えない。改造魂魄とか義体とか、色々凄いものを作ってるのはわかるが、関わりたくない集団だと、ルキアから話を聞いて思った。

 

「来たな」

 技術開発局、なんて恐ろしい場所なんだ……なんて思っていたら、ルキアが俺の霊圧に誘われて上がってきた虚に一瞬で近づき、仮面のある頭部を一刀両断にした。本気の瞬歩だったのか、俺は全く反応できなかった。

 

 ルキア曰く、入りと抜きを鍛え続ければ速度が出てなくても反応させない事が出来るとか言ってたけど、それって簡単に極める事が出来るものなのか?

 そんなことを思いながら、別の所からあがってきてこちらの様子を伺っていた虚へ斬月を投げつけた。

 避けられるかと思ったがあっさりと頭部を貫いたので、布を引っ張って斬月を手元へと戻す。

 

「面白い使い方だな」

「霊圧も使わねぇから、月牙天衝よりも楽なんだよな。白い俺が使ってたやり方だけどよ」

「何度聞いても不思議な奴だ。一護を『王』と崇める虚の力を持った斬魄刀か……斬魄刀はわりと不思議な所があるからそう言う事もあるのだろう」

 その力が暴走しないか心配ではあるが……なんて言いながら、ルキアは虚に向けて鬼道を放って一撃で退治していた。

 

「いや、多分その心配はねぇ」

 斬月から伝わってくる感情を感じて、ルキアの不安は杞憂だと思いながら苦笑した。

『いいぜ、王! 前、俺がやったみたいに回しながらやれば貫通力アップだ! さらに投げた後に振り回せば広範囲攻撃に早変わりだぜ! さらに霊圧を纏わせれば威力も倍プッシュだ! 仮面の力も使えば高威力な攻撃に早変わりだぜ!』

 俺に戦い方のアドバイスをしてくる白い俺が暴走するわけがない。

 白い俺の言葉に従って斬月を振り回して、ぶん投げる……あ、外れた。

『おしいぃ! 少し手を離すのが早かったな、どうせだからそのまま振り回そうぜ!』

 俺の行動にはしゃいでいる白い俺の言葉を聞いてると、テレビを見ながらはしゃぐ遊子の姿が浮かぶのはなんでなんだろうな?

 

 そんなことを思いながら、布を操って斬月を振り回して、何体かの虚を斬り裂いた。

『よっしゃ! いいじゃねぇか、王! 次は当てられるように頑張ろうぜ!』

 ガッツポーズをしている姿が浮かんで、苦笑がただの笑いに変わる。

「こいつが裏切ったら、しばらくは誰も信じられなくなるな」

「ふふふ、まぁ、関係が良好なようで何よりだ」

 

 そんな話をしながら虚を片付けていると、下から何かが飛んできているのに気が付いた。

「なんだあれ?」

 飛来した物は霊圧の……矢……か?

 それは低い位置で集まり始めていた虚の頭を撃ち抜いた。

 するとまた次の矢が飛んできて、虚を撃ち抜く。

 

「一護」

「おう?」

 ルキアに呼ばれて、声がした方を振り返ると眉間にしわを寄せて険しい表情をしたルキアが、矢が飛んできた方向を見ていた。

「すまないが、少し任せても良いか?」

「おう、これくらいなら問題ねぇよ」

 俺がそういうと、ルキアは少しだけ笑った。

「随分逞しくなったものだ」

「鍛えられたからな。ここは任せろ」

 会話しながらも虚を貫いて、少しだけ霊圧を強くした。

「ありがとう、任せた」

 そう言って、ルキアは瞬歩で消えた。

 多分、あの矢を射ってる奴の所に向かったんだろ。

 

「いつかの大軍を思い出すな」

 空座町は虚に襲われやすい場所なのか?

 そうだとしたら、今まで此処の担当をしていた人は相当強い奴だったんだな。

 俺一度も襲われた事ないし。

 

 そんなことを考えながら、徐々に群をなしてきている虚を見る。

 ルキアがいなくなったことで、処理が遅れてきてる。

 上空からだと対応方法が限られてるから仕方ねぇか……感じる霊圧には……脅威になる奴はいねぇな。

「ちょっと本気出すか、斬月行くぜ」

『お、的当ては終わりか? 任せろ、王!』

 左目の上に手を添えて霊子を集めると、顔の上半分を隠す仮面になった。

「『全力で片付ける』」

 仮面の力……斬月曰く虚の力……で一気に加速して虚を殲滅する!明日も学校だからな!あんまり時間が掛かると俺が困る!

「『睡眠時間の為に、とっとと消えろ!』」

 虚の集団の下を取って、上空目掛けて黒く染まった霊圧の斬撃を放った。

 

 

 ★ ★ ★ ★

 

「出鱈目じゃのう」

「いやはや……一体どうなってるんスかねぇ」

 屋根に腰掛ける喜助の膝に丸まりながら、上空で戦う死神を眺める。

 先程まではルキアも居たが、何かに気が付いたのか途中で離脱した。

 中々に見事な瞬歩だった。

 流石は響と緋真の妹と言うだけある。

 ワシが会った頃は、まだ無邪気な子供だったと言うのに……あれから、もう100年以上経つのか……

 

「やっぱり響サンに関わった人は、どこか変わってますねぇ」

「一番おかしいのは本人の方だと思うがの」

 

 凄く速いと聞いて、どちらが速いか賭けをしたら負けてしまった。

 何故ワシはあの時、秘蔵の銘酒を賭けてしまったのか……!!

 ……まぁ、あやつが作った肴と酒は中々に相性がよかったが……

 

 だが響よ、今に見ておれ。

 ワシは負けたままでいる性分ではない。

 負けた日から今日までずっと鍛え続けてきた。

 次勝負する時は絶対に負けん。

 

「夜一サン? なんか黒いオーラが出てるスよ」

「絶対に負けん」

「あっ、これは何言っても無駄なパターン。いい加減慣れたスけど」

 フフフフ、あやつには前回と同じように秘蔵の一品をかけて貰うとしよう。

 肴の美味さからかなり期待できるじゃろう。

 

 そうと決まれば、より速く走れるようにもっと鍛えなければいかんの。

「ひとっ走りしてくるか」

「その前に服着てくださいね。いつぞやみたいに痴女の妖怪が残像を残して走ってるなんて噂立てないでくださいよ」

「…………それは忘れろ」

 あやつに知られたら絶対に怒られる。

 現世にそんな噂があると知られたら、間違いなく説教される。

 

 初めて会った時ですら、貞操観念について説教されたと言うのに……というか、何なんじゃあやつは。

 怒鳴りつけるわけではなく、淡々としていると言うのに、あの威圧感。

 このワシが何もできずに大人しく説教されてしまうとは……まるで総隊長に叱られている様な気がしてしまう。 

 

 ……わしの方が年上だと言うのに…… 

 いそいそと服を着て、軽く屈伸する。

 虚に関してはあやつらに任せて問題なかろう。

 なにせ響と緋真の妹とあやつの息子だ。

 

 まぁ、何かあれば手助けするのはやぶさかではないが。

 屈伸を終えて、屋根に立つ。

 今日は1000程の瞬歩を最高速で行う。

 あやつに速度で負けぬためには、より瞬歩を鍛えねば。

 

 「次は絶対に負けぬぞ、響よ」

 そして次はあやつの秘蔵の一品を勝ち取らせてもらう!!

 そう考えて、ワシは走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改めまして、更新が遅くなってすいません。
一応これから少しずつではありますが、執筆を再開していきます。
と言っても、体調がまだ完全に回復していないこともあり、次の更新もまた遅くなってしまいそうです。

拙い作品ではありますが、これからもよろしくお願いします。

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