とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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注)
※ドラゴンボール超スーパーヒーローを見ました(察してください
※セルとブウ子がめちゃくちゃメタ発言をしています
※主人公ほぼ出番なし
直接的なネタバレはありませんが映画の感想を匂わせている箇所があります。それでもいいよ!という方向け


セルとブウ子が映画を見てだべってるだけの話

「暇だ」

「暇ね」

「いや帰れよお前ら」

 

 のどかな午後の昼下がり。リビングにて我が物顔でソファーに寝そべり、それぞれポテチと煎餅を食べながらワイドショーを見て「暇」とほざいている緑のとピンクの。

 これがかつては世界を恐怖で震撼させた「セル」と「ブウ」の成れの果てとは誰も思うまい。

 

 色々あって人造人間から精神生命体、精霊となり、ついには一星の神になったセル。

 例によってセルは定期的な孫悟飯へのちょっかいを出しにコナッツ星から訪れていたのだが、今日は孫悟飯の娘であるパンのお遊戯会。これをセルとの戦いなどですっぽかすわけにいかないと凄まじい気迫で断られ、ぽんと時間が出来たのが数時間前である。

 元悪ブウ、現人気闇医者兼人気スイーツブロガーのブウ子はといえば、最近ブログだけでなく世間の流行りに乗ってユーチューバーとしても活躍し始めた。顔出しいいのか? と知り合いからよく突っ込まれるものの、「堂々としてれば意外と気にされない」との事らしい。

 その人気は引く手数多なのだが、弱体化したとはいえ魔人である。そのスペックを十全に活かしているため仕事自体はすぐに終わるのだ。今日はそうして出来た暇を友人とお茶と世間話でもしてして満たそうと空梨の元を訪れたのだが、その友人……空梨もこれから娘と息子の授業参観だ。まず予定を聞いてから来いと怒られたのはつい先ほどの事。

 

 悟飯に断られたなら帰ればいいものを何故かふらりと空梨家を訪れたセルと、誘いを断られ腕組みをしていたブウ子が鉢合わせたのはつい数分前。

 どちらともなく「じゃあ相手が暇になるまで適当に時間でも潰すか」ということになり、リビングを占領し戸棚から勝手知ったる他人の家とばかりに菓子類を取り出してソファーに寝転がったのが数秒前。

 そのうえで同時多発「暇」発言。

 もうお前ら結婚しろとは、出かける用意でバタバタしていた空梨が漏らした嫌味である。ちなみにブウ子はまんざらでもなさそうだったが、セルがものすごく嫌そうな顔をした。

 

「もう! 居座るのはいいけど、そしたら留守頼むからね!」

「はぁ~い。いってらっしゃい空梨ちゃん♥」

「孫悟飯といい、子を持つ親とは忙しいな」

 

 空梨は何故こいつらに留守番を任せてるんだ? と疑問を抱きつつも、時間が迫っているため慌ただしく出かけて行った。

 ペンギン村は舞空術で飛ばしたとしても、意外と遠いのだ。

 

 

 

 残された元ボス二人であるが、なんとなくワイドショーを見てはいるが特に面白くもない。

 

「暇だ」

「暇ね」

 

 もう一度繰り替えす。

 

「……どうせ見るならもう少し面白いものを見たいものだな。どれ」

 

 セルがそう言うなり、ワイドショーを映していたテレビ画面が別のものに移り変わる。

 そこには……。

 

『俺は悟空でもベジータでもない。俺は貴様を倒すものだ!』

 

 それを見たブウ子は黒目と白目が反転している特徴的な目をぱちくりさせ、次いでパンっと手を叩いた。

 

「やっだ、ゴジータちゃんじゃな~い! しかもしかも! もしかしてこれって"劇場版"かしらぁ!?」

「流石に察しが良いな。その通りだ」

 

 脚を組み得意げに解説を始めるセル。

 

「孫空梨の記憶をもとに再現した。本人の記憶自体はもはやおぼろげだろうが、私にかかれば再現など容易い事なのでね」

「そういえば記憶を直接読んだことあったのよねぇ、あなた。わたしも取り込んでた時に色々見たけど、映像への再現なんて思いつかなかったわぁ」

 

 もしこれを出かける前に空梨が見ていたら「馬鹿野郎どもがよぉ!!」と悲鳴を上げていただろうが、本人不在である。

 セルやブウ子、ビルスなど一部には空梨が転生者であり、転生前の世界にはドラゴンボールという漫画でこの世界の事が描かれていたことは知られている。が、基本的に他の者は知らない秘密事項だ。

 だというのにご丁寧にアニメに再現などされている。もし見つかれば説明が非常にめんどくさい事になるのは想像に難くなかった。

 しかしそんな指摘をする者は今ここに居ない。居るのはお互いが空梨の記憶を有していると知っている、人外二人だけである。

 

「いいわね、いいわねぇ! 記憶で見たことはあったけど、こうやって目にするのはまた面白いわ! 視聴者視点ってやつね! あ、わたしも出来るかしら……出来た!」

「…………。まあ、もともと魔術はお前の方が専門分野か」

「ふふん。魔人ですもの」

 

 ブウ子が人差し指をぴっとテレビに向けると、画面が切り替わる。そこに映し出されたのは小さな頃の孫悟飯だ。眼がくりくりした恐竜と戯れているようである。

 すぐさま真似をされたことに多少思うところはあるようだったが、いい時間の潰し方を見つけたことに変わりはない。

 

 

 

 誰もいないのを良いことに、元ボス二人は原作映画の垂れ流しという暴挙を堂々と始めたのであった。

 

 

 

 

 そして何作か見た後。

 

「…………そういえば、これがあった世界では大人気だったのよねぇこの作品」

「世界規模でな。まあ私が出ているわけだから当然だが……」

「あらぁ~? それを言うならわたしの魅力じゃないかしらぁ」

「貴様は出ていないようなものだろ」

「悪ブウがもともとの姿ですもの。同じよ! ああそうそう、今はそれはどうでも良くて。可愛くて賢いわたしはちょっ~と面白い事を考え付いたのよ」

「ほう、面白い事」

 

 可愛く賢い、の部分をスルーしつつも興味はあるのかしっかり食いつくセル。今ではプロトセルに同化してしまったが、未来から来たセルの方は暇を理由に時を超えてきたのだ。

 暇とは不死の存在をも緩やかに殺す穏やかな毒である。

 それを良く知るがために、面白い暇つぶしには貪欲だった。

 

「人気作って、原作が終わっても続編とか作られるじゃない? ドル箱コンテンツならなおさら」

「言い方が生々しいな」

「まあまあ。……で。もしかしてなんだけど、空梨ちゃんが知らない続編があったりもするんじゃないかしらって思ったのよ! ゴクウブラックまでよ、空梨ちゃんがぎりぎり知ってるの! あれきっと尺的にテレビシリーズだわ。でもって再人気出たなら当然出るでしょ! 続・劇場版!」

「だから言い方が生々しいぞ」

「まあまあ」

 

 ブウ子もその辺は自覚しているが、自覚した上での発言だ。

 人外二人にとってはビルス達同様、自分たちが創作物の中の存在などということは些末な事。肝心なのはそれを承知した上でどう楽しむかだ。

 特にこれから長い時を過ごすであろう彼らにとって、アンテナは常に張っていたいところである。

 

「今はこうして空梨ちゃんの記憶から再現してるじゃない? 当然、彼女が知らない部分は見られない。……でもわたし達はすでに「わたし達が創作物として存在する次元」の存在を知っている。ここまで言えば察しの良いセルちゃんならわかるかしらん?」

「……まさか別次元の覗き見をしよう、と言うのかね?」

「ピンポンピンポン、だーいせーいかーい! ぱちぱちぱち。それよ! 一人じゃちょっ~と厳しいけど、わたしと同じく魔術にも秀でていて、別次元を認識しているセルちゃんがいるなら不可能じゃないわ!」

 

 名案! とばかりに発言するブウ子の中ではすでにそれは決定事項のようだ。

 だがこうして暇つぶしに映画の上映会などやっているのだ。正直セルも乗り気である。

 

「ふむ……。まあ、物は試しだ。いいだろう、のってやる」

「さっすがセルちゃん! そう言ってくれると思っていたわ!」

 

 了承を取るや否や、非常に気軽な調子で人知を超えた魔術が一般家庭のリビングで展開され始めた。もし魔術を扱う者が見れば卒倒しそうなほどに高度なそれを、なんなく操る緑とピンク。

 そして手ごたえはすぐに表れた。

 

「む、ここか?」

「みたいねぇ。次元が違うからかしら? なんだか世界の見え方が違って面白いわ」

 

 探り当てるやいなやチャンネルを合わせるようにテレビへと出力する。するとそこには何やら賑わいを見せている映画館らしき場所が映し出された。

 

「さてお目当ては……ほう? 見たまえ。丁度映画がやっているようだぞ。読みが当たったな」

「あ、本当だ! ふふふん、さっすがわたし! え~と、なになに? ドラゴンボール超スーパーヒーロー……? ふ~ん。ヒーロー。ヒーローねぇ」

 

 映画のタイトルを見るなり腕組みをするブウ子。その視線はどこか厳しい。

 

「でも悟空ちゃん達ってヒーローって感じとはちょっと違くなぁい? 周囲からしてみればそう見えるかもだけど、いざスーパーヒーローなんてお出しされちゃうと、なんだか首を傾げるわ」

「発言が厄介なファンだぞ」

「は? 違いますけど? これはかつて戦ったものとして、今までの彼らを生で知るからこその発言ですけど??」

 

 見る前からマイナス評価を匂わせるブウ子のうがった見方はひねくれ者ゆえか、それとも日々評価と向き合うスイーツブロガーだからか。

 興をそがれ眉根をよせるセルだったが、映画の看板に興味を惹かれた。

 

「いや、しかし今回はもしかすると孫悟空が主役ではないかもしれんぞ? 見ろ。孫悟飯とピッコロが全面に押し出されている」

「あら本当」

 

 手前に居る今回の敵らしき相手に見覚えはないが、確かに広告ど真ん中を飾っているのは孫悟飯とピッコロだ。一目置いている二人が主演となればセルとブウ子も姿勢を正すと言うもの。姿勢を正したうえで、次元を超えた無銭映画鑑賞を決め込むことにした。

 ちなみにブウ子はキャラメルポップコーンとコーラを手にスタンバイ済み。しゃかしゃかポテトとジンジャーエールを要求してくるセルに気前よく品を用意してやることも忘れない。なんといったってこの奇跡を再現可能にした大事なゲストである。

 

「さぁて、観ましょうか!」

 

 

 そうして、映画の上映が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日ピッコロは悟飯夫婦に招かれ悟飯邸を訪れていた。なんでも娘のお遊戯会が素晴らしかったから映像記録を一緒に見てほしいとのこと。

 

(ふむ。ちゃんと娘の行事に参加しているようだな)

 

 研究漬けの弟子に対し修行云々を考える前にそんな思考へ至る当たり、ピッコロ自身も相当悟飯の娘であるパンに甘い。

 従姉弟に年の近い面々がいるため遊んでいるうちに勝手に強くなる気がしないでもないが、もう少し大きくなったらピッコロがまず基礎的な力の使い方を教えてもいいかもしれないと考えている。あの悟飯の娘だ。当然、秘めている潜在能力は高いだろう。

 

「あ、ピッコロさん! いらっしゃい!」

 

 上空から下降していると、家の中から悟飯が出てきて嬉しそうに出迎える。気を察知したのだろう。実のところ感覚が鈍ってはいないか? と少々試すつもりでぎりぎりまで気を押さえていたのだが、杞憂だったようだ。

 そのことを口にすれば悟飯は困ったように後頭部をかく。

 

「定期的にセルの奴が来ますからね……。おちおち鈍っていられませんよ」

 

 今日なんかお遊戯会直前に来たんですよ。まったく僕の予定も考えてほしいですよ……とブチブチ愚痴をこぼす悟飯だったが、ピッコロからすれば常に気を張っている部分があるのは良い事だと思っている。そうでもしないとこの弟子はすぐに大好きな研究に没頭し、せっかくの才を錆び付かせるだろう。

 

(まあ、潜在能力は随一なんだがな)

 

 もし錆びついたとしてもなにかのきっかけさえあれば、孫悟飯はもう一段階上の領域に達する事さえできる。そんな確信がピッコロにはあった。

 それはもしかすれば、同化したナメック星の最長老がもたらす勘なのかもしれない。

 

「パ~ン! ピッコロおじさんが来たよー!」

「…………」

 

 ピッコロおじさん呼びに思うところがあったが、腕を組んで黙る。家の奥からパタパタと軽い足取りが聞こえてきたからだ。

 そして廊下の角からくりくりした目を輝かせて飛び出てきたおかっぱ頭の女の子を目にした時……なんの前触れもなく、ピッコロを背後から二つの衝撃が襲った。

 

 

 

「「ピッコロぉ!!」」

 

「ぐはぁ!?」

「!?」

 

 

 

 バァン! っと勢いよく叩かれた背中に何とか耐え、たたらを踏むに留めたが突然の強襲に目をむくピッコロとそれを見ていた悟飯。

 

「ピッコロさん! ……と、あ~! ブウ子ちゃんとセルもいる!」

 

 珍客を見ても歓迎の意志を見せた少女とは裏腹に、突然現れた人外どもに「いきなりなんだ貴様ら!」と怒鳴りつけようとしたピッコロ。

 だがその前に彼は波に飲み込まれた。言葉という波に。

 

 

「お疲れ!」

「ああ、流石だな」

 

 

 何がだ? と問う前に。波状攻撃のごとく言葉が押し寄せてきた。

 

「もうほんっと! お疲れさまとしか言いようがない涙ぐましさだったわ!」

「あんなことも出来たのだな君は。実に器用なものだと感心してしまったぞ」

「けどネーミングセンスはちょっとどうかと思うわぁ! シンプルイズベストって言ったらそうかもだけど」

「フッ。そこは私を見習ってもらいたいところだな」

「お前が言うなってツッコミ待ちかしらセルちゃん?」

「どういう意味だ」

「そのまま以外に何かある? あ、そうそう! そういうの全然ダメなのかしらって勝手に思ってたけど機械の操作も出来るのね~! スマホ持ってる? 持ってないならわたしがプレゼントするから連絡先交換しましょ! それとも飛行機でドライブにつれてってもらおうかしら~」

「いやそんな事より私と共にドラゴンボールを集めに行かないか? な~に。ちょっとした実験だ。ピッコロにも益のあることだ是非試してみようそうしよう」

「ちょっと割り込まないでよ暑苦しいわねセミはミンミン樹にでもとまって鳴いてなさいよ。あ、でも待ってやっぱりあなたセミじゃなくて緑のゴキブリじゃなぁい? あの羽ばたき方はゴキでしょ」

「消されたいのか貴様。それにあれは私ではない。まず色が違うだろうが」

「兄弟みたいなものじゃないの~。けどやっぱりこの世界一番やばいの科学者よね。あのレベルを量産とかもう神域よ」

「同感だ。まあ野放しにしていれば勝手に面白いものを作ってくれると思えば悪くはないがな、ククク」

「ま、それはそれとして! 今のピッコロちゃんもセクシーで魅力的って思うけど、もうちょっといかつくなった感じもかなり素敵よね!」

「だろう! だから私がこちらのピッコロも!とだな」

 

 

「……なんだこいつら」

 

 

 もともと訳の分からない存在ではあるが、今日は輪をかけて言っている内容が理解できない。ただ分からないなりに妙な期待を寄せられていることだけはひしひしと感じ、ピッコロは思わず腕をさすった。寒気がする。

 

「ちょ、ちょっとちょっと! いきなり来て何ですかあなたたち。ピッコロさんが困ってるじゃないですか!」

 

 勢いに押されているピッコロを庇うように間に入った孫悟飯。

 標的が移り変わる。

 

「孫悟飯!」

「孫悟飯!」

「は、はい?」

 

 フルネームでそれぞれに呼ばれ眼鏡がずり落ちる。

 

「やはりな私の目は間違っていなかったと思ったわけだ。なんだあの姿は!? まだ隠しているものがあるんじゃあないか! 日々の手合わせではまだ足りないな私と一緒に宇宙へ旅に出よう孫悟飯お前の伸びしろはまだそんなものではない」

 

 なにが? と聞けないまま次はブウ子だ。

 

「ちょっと髪型のバランス悪いかしら? と思わなくもないけどそれを加味してもかっこいいんだからずるいわよね~! なにあのカラーリング!? 美味しいとこ持ってくわぁ~! ずるいわぁ~! でもあそこであの技は分かってるわよね流石よ!」

 

 このままでは何か得体の知れないものに飲み込まれる。

 そんな防衛本能から、悟飯はとっさに腕を横に構えた。

 

 

 

「か~め~は~め~」

「え」

「ん?」

 

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 かめはめ波の余波で玄関が吹き飛びあとあとビーデルに怒られることになるのだが、孫悟飯は語る。「これまでにない怖さを感じた」と。

 

 

 

 余談だがビルスの星での修行から帰宅していたベジータも例の二人に絡まれ「よかったな」「感動した」などと言葉をかけられ寒気を味わったそうな。

 

 

 

 

 

 




ドラゴンボール超スーパーヒーローめちゃくちゃ面白かったです!!という気持ちだけで書きましたすみません。

主人公の霊圧が消えてる……(いつもの

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