ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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 家の事情から殆んど書く暇が……





第4章:停止教室のヴァンパイア
第33話:天魔の業龍×堕天使総督


.

 放課後のオカルト研究部の部室に、今日も今日とて集まる部活メンバー。

 

「使い魔っすか?」

 

「そうよ、使い魔。イッセーと夕麻はまだ持っていなかったわよね」

 

 コカビエル戦も終わって何やかんやあったが、それらも全てが終わって落ち着きを取り戻していた或る日、割と唐突に部長であるリアスが一誠と夕麻に言う……使い魔を探そうと。

 

 使い魔──それは悪魔にとっては正しく手足となって働く存在、主の手伝いや情報の伝達や追跡など様々な場面で使う事が可能だ。

 

 一誠は元より夕麻も一応はリアスの眷族悪魔となっているが、未だに使い魔を持ってはいない為にリアスが気を遣ったのである。

 

 因みに、一誠と夕麻以外の眷族達は既に使い魔を連れていた。

 

「使い魔か、懐かしいね」

 

「あら、ユーキも使い魔を持っていたの?」

 

「まあね、兄貴も居るよ」

 

「へえ、それは是非見てみたいわね」

 

 それを聴いたリアスだけでなく、朱乃や小猫や木場達のグレモリー眷族や、アーシア達も目が輝いている。

 

「ボクの使い魔は人間だったからね。それに今は兄貴の【閃姫】だし。兄貴の使い魔は眠りに就いてるから呼べないんだよ」

 

「あら、そうなの?」

 

「彼女を……シェーラを目覚めさせる為には負の感情を集めなくちゃならないから中々……ね」

 

 ドーナシークやコカビエルでそれなりにだけど負の感情も貯まってきたものの、討魔将軍であるシェーラは未だに目覚めの兆候が無かった。

 

「私達はイッセーと夕麻を連れて使い魔の森に行くのだけれど、貴方達はどうするのかしら?」

 

「僕は行くよ、ひょっとしたら面白いモノが見付かるかもだし」

 

「一応、ボクも行こうかな」

 

 ユートとユーキは行く事に決める。

 

「それではわたくし達は家で御留守番でもしていますわ」

 

「はい、レイヴェル様」

 

「留守番するです!」

 

「お土産宜しくです!」

 

 レイヴェル・フェニックスを始めとするミラ、イル&ネルのフェニックス組はユートの邸で留守番する事を宣言した。

 

「アーシアと那古人は?」

 

「えっと、行きます」

 

「マスター、私は彼女らを連れて先に帰ります。夕飯の準備もあるので」

 

「判った。ミッテは居ても仕方ないし、那古人の手伝いをしていなよ」

 

「ご主人様、ひどっ!」

 

 まあ、文句は言ってみたが使い魔に興味が有る訳でも無いミッテルトは、邸でメイドのお仕事に精を出す事にする。

 

「部長、準備が整いましたわ」

 

「という訳で、早速貴方達の使い魔をゲットしに行きましょうか」

 

 こうしてオカルト研究部員は魔法陣を通じて使い魔の森へと向かう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「此処が使い魔の森か」

 

 ユート達の場合は、その場で召喚呪文を唱えてマスターとなる者の力や性質に則した使い魔が、特殊な転移で顕れる様になっている為にこうやって捜すという事は無かった。

 

 この陽の光も届かない鬱蒼とした森の中には、確かに可成りの生物の氣が犇めいている様だ。

 

「此処は悪魔が使役する使い魔が沢山住み着いている森なのよ。此処で今日、イッセーと夕麻は使い魔を手に入れて貰うわ」

 

 リアスの簡単な説明を受けて頷く一誠と夕麻、使い魔を獲る意気込みは伝わってくる。

 

「ゲットだぜ!」

 

「な、何だ!?」

 

「び、吃驚したわ……」

 

 突然の声に二人は驚きを隠せず、一誠と夕麻はキョロキョロと辺りを見回す。

 

「あそこだね」

 

 ユーキの指摘に目を遣れば、袖無しの白い服にでっかいポケットが太股に当たる部位に付いてる半ズボン、青い帽子を逆方向に被っているラフな格好をした赤毛のオッサンが居た。

 

「俺の名前はマダラタウンのザトゥージ。使い魔マスターを目指して修行中の悪魔だぜ!」

 

 誰のパロディか丸判り。

 

「ザトゥージさん、早速だけれど例の子達を連れてきたわ」

 

「へえ。冴えない顔の男子と長い黒髪の美少女さんか。オッケー、任せてくれ! 俺にかかれば、どんな使い魔でも即日ゲットだぜ!」

 

 何故だか『ゲット』を強調する青年は、サムズアップしながらリアスに応える。

 

「イッセーに夕麻、彼は使い魔に関してのプロフェッショナルだから。今日は彼にアドバイスを貰いながらこの森で使い魔を手に入れるの。良いわね?」

 

「「はい!」」

 

 思えば夕麻も素直に成ったものではあるけど、リアスの言葉に頷く一誠と夕麻にザトゥージが何か本を手にして寄って来た。

 

「さてと、どんな使い魔がご所望かな? 強いのかな? 或いは速いの? それとも毒持ちとかを期待しているかな?」

 

「行き成り毒持ちとか危険極まりない事、言わないで下さいよ。で、どんな使い魔がお奨めなんですか?」

 

 一誠の質問にニッと人懐っこい笑みを浮かべ、ザトゥージは本をバッと広げてくる。

 

 それは使い魔のカタログの様で、ザトゥージが指差すのは見開き一杯に描かれた蒼い鱗を持った一頭の檸猛そうな龍。

 

「俺のお奨めはこれだ! 龍王の一角──【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマット! 龍王唯一の雌でもある! 今だ嘗てこいつをゲット出来た悪魔は居ない! そりゃそうさ、魔王並みに強いって話だからな!」

 

「阿呆かい! これ、もう使い魔ってレベルじゃないよ! 既に大ボスだよ、ラスボスだって! しかも誰もゲットしていないって、お奨めの意味を理解していますか? 突然、ラストダンジョンにでも放り込まれた気分です!」

 

 余りに意味不明な御奨めに叫ぶ一誠だったが、リアスの方は目がキラキラしていた。

 

「それ良いわねぇ! 伝説のドラゴン同士なら意気投合出来そうだわ。イッセーはこれをゲットしなさい」

 

「それは無理ですから! 明らかに死にますってこれっ! 意気投合が出来なさそうな雰囲気が、この図鑑からも確りと更には目一杯伝わってくるんですけど?」

 

 どう考えてもゲットなんぞ不可能っぽい龍は、本当にどうしても和解は無理な雰囲気だ。

 

 ジュルリ……

 

「へ?」

 

 間違いなく空気を読めていない緊迫感をぶち壊す音が響いた、それはまるで涎を拭き取りつつも舌舐め擦りする様な。

 

 場の雰囲気にはそぐわない音源は、ユートの居る方から聴こえてきた。

 

「こいつぁ、は中々に食い出が有って美味そうなドラゴンだね」

 

『『『龍喰者(ドラゴン・イーター)!?』』』

 

 その場の全員が突っ込みを入れる。

 

「なあ、ザトゥージ?」

 

「な、なんだい?」

 

 大粒の汗を流しながら受け応えた。

 

「この【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】のティアマット、何処ら辺に棲んでる?」

 

「あ、あんた真逆、使い魔にする気か?」

 

「うん? 食うんだけど?」

 

『『『やっぱり食べる気なんだ!?』』』

 

 全員の思考は一致する、正にコンバイン・OKと言わんばかりに。

 

 教えないと何だか自分が喰われそうな気がしたザトゥージ、故にこそ止めるという思考には至らずに教えてしまう。

 

 ユートがザトゥージから聴いた場所へ文字通り飛んで行き、それを見送ると彼は(おもむ)ろに再びカタログを開いて一誠達に見せた。

 

「えーっと、他には悪魔をも殺す凶悪な毒を持っているヒュドラなんてどうだ?」

 

 人、それを現実逃避と言う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 一方、【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマットの住処に来たユートは、大きな声で彼女を呼んだ。

 

「おおい! 【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマット!」

 

 そんな声に返事が……

 

『何じゃ、御主は?』

 

 何処かしら時代の掛かった口調による女性っぽい声が洞窟内から響く。

 

「何、貴女に用があるってだけだよ」

 

『ほう、妾を使い魔にでもしに来たか? 然し、御主の気配は人間の様だが……?』

 

「別に使い魔は要らない」

 

『ならば何故(なにゆえ)此処に来た?』

 

「ドラゴンってさ結構、美味しいんだよ。貴女はどうなのかな?」

 

『……は?』

 

 ティアマットは間抜けな声を上げる。

 

「それではこの世の全ての食材に感謝を籠めて、戴きますっ!」

 

 そんなティアマットに対して、ユートは合掌をしながら目を閉じて軽く一礼した。

 

『ちょっ、待たぬか!』

 

「魔王並に強いって話だからね、それなりに準備はさせて貰うよ」

 

 そう言ってユートは右腕を掲げると、人差し指を立てて叫ぶ。

 

「さぁ、此処に来て僕の肉体を鎧え……我が聖衣よ!」

 

 ビカッ! 光が煌めき、ユートの頭上には二つの顔と四本の腕を持つ黄金に輝くオブジェが威風堂々と顕れた。

 

 カシャーン!

 

 軽快な音を辺りに響かせると、瞬時に分解されたオブジェがユートを鎧っていく。

 

『ぬう、力が大幅に上がっただと?』

 

「さあ、征くぞ! 【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマットッッ!」

 

「ええい、ならば殺ってやろうぞ!」

 

 使い魔の森の一画にて、此処に補食する者とされる者の仁義無き闘争が始まった……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「それで、結局はどちらが勝ったのかしら?」

 

 もう呆れたと云わんばかりの口調で、頭を抱えながらもリアスが問うて来る。

 

『シクシク、妾は大切な尻尾を喰われてしもうたのじゃ』

 

「中々の御味でした」

 

『この鬼、悪魔、エイリアン! プレデター! 世界の破壊者!』

 

 ユートを罵るとても小さな【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマットが浮いている。

 

「兄貴、これは何?」

 

「【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマットだけど、何か?」

 

『『『『ハァァァァァァァァァァァ!?』』』』

 

 全員で驚愕する。

 

「正確には、ティアマットの肉体と意識を【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】から得たデータと、前に読んだ漫画を基に造っていた人工神器(アーティフィカル・セイクリッド・ギア)に封じたモノだよ」

 

 結果として、捕食者と彼捕食者の闘争にて勝利を収めたのはユートだった。

 

 炎は余り効かないユートはダメージを受けたら直ぐに治療魔法で回復、ティアマットに回復の術は無くて受けたダメージを蓄積していき遂には倒れてしまい、勝者となったユートは全部食べたら死ぬからと尻尾だけを斬り取って食べる。

 

 その後はボロボロに成ったティアマットへと、新しく肉体として神器を提供したのだ。

 

「神器の名前は【天魔の超龍甲冑(ザウロス・ナイト・メイル)】。自律型人工神器だよ。能力は十秒毎に体内エナジーを倍化出来る。通常モードでは小さな龍でしかない。後、人型も執れるから基本的には自由に人間世界で暮らせる」

 

(体内エナジーの倍化? 兄貴の小宇宙を倍々に出来るなら凄いチート)

 

 これで更に禁手(バランス・ブレイカー)となれば……

 

「処で、さっきから何で一誠はこんなにも落ち込んでるんだ?」

 

「うう、スラ太郎……」

 

「フン! 放っておけば良いんだよ、こんな明け透けな変態帝は」

 

 どうやらユートが居ない間、此方は此方で一悶着があったらしい。

 

 尚、何故かアーシアに懐いた蒼い龍(スプライト・ドラゴン)が前例は無いけど使い魔契約をした。

 

 ハルケギニア式で……

 

 また、夕麻も三本脚の鴉と使い魔・召喚契約をしたのだとか。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ティアマットを人工神器アーティフィカル・セイクリッド・ギアへと変えた翌日、ゼノヴィアの編入の準備が終わって一誠達のクラスに迎えられる。

 

 また、転生悪魔の騎士(ナイト)と成ったゼノヴィア・クァルタはオカルト研究部に所属する事になった。

 

 一誠のルーツ──おっぱい好きの理由──も判明、小猫とユーキから汚物を視るような目で見られる一誠が落ち込んだのは、蛇足でしかない。

 

 そんなある日の事だが、一誠は悪魔稼業に精を出していた。

 

 最近の御得意様はちょっとした事で召喚して本来の対価以上の物を貰える為、一誠の評価が鰻登りだ。

 

 ユートも相変わら一誠にくっ付いており、仕事をして対価を別に貰っている。

 

 評価は関係ない為、対価をリアスには渡さず完全に自分の物にしていた。

 

 今日も今日とて喚ばれた先で依頼人と会っている。

 

「よう、悪魔君にお仲間君……今日はゲームでもやらないか? 昼間にレースゲームを買ったんだが、相手が居なくて寂しくてな」

 

 黒髪で悪系のイケメン……所謂、ワルメンな男性が浴衣を着て待っていた。

 

 ユートは召喚の度にいつも思うのだが、この男は何を考えているのか……と首を傾げている。

 

 とはいえ、相手が誰であろうと依頼人に変わりないからレースゲームの準備を一誠と共に行っている訳だが、何より実入りも美味しい相手だし、自分から言い出すまでは搾れるだけ搾り尽くそうと考えていた。

 

「はい、ゲームのセットは出来たよ」

 

「おお、わりぃな。いや、日本って国には時間潰しのアイテムが多くて良いな。本当に悪くない所だわ。ほら、コントローラー」

 

「あ、どうも。俺、この手の対戦ゲームって結構強いですよ」

 

「へえ、そりゃ楽しみだ。此方は初心者だからな、軽く頼むわ」

 

 四人対戦モードで相手の一人はコンピューター任せにし、三人でコントローラーを手にするとゲームを始める。

 

《GO!》

 

 一誠は言うだけあって、レースゲームが非常に強く各ゲーセンで最強伝説を叩き出しているが、スタートをして暫くすると様相が変わっていく。

 

「フッフッ、一通りは覚えたぜ。そろそろ追い抜かせて貰うか!」

 

 言うが早いか、あっという間に一誠を追い越した。

 

「なっ! マジかよ?」

 

 呆然となる一誠であるがユートはまだ追い抜かれてはいない為、負けられないと気合いを入れる。

 

「簡単には抜かせない!」

 

「いいや、抜かせて貰う」

 

《WIN!》

 

 チェッカーフラグが振られて二台の車がゴールラインを過ぎ去る。

 

「へえ? 同着一位かよ。やるじゃねえか」

 

「そちらもね」

 

 ニヤリとお互いに凶悪な笑みを見せた。

 

「お、俺だって! まだまだですよ!」

 

「おお、気合いが入りまくりだねえ。んじゃあ、もう一レースすっか? なあ、悪魔君……いや、赤龍帝。それに異世界の聖闘士君」

 

「は? え? アンタ……誰だ?」

 

「堕天使の総督アザゼル、謂わば堕天使のボスだよ」

 

「んだよ~、こういう正体バラしのカタルシスが良いってのに、勝手に言うんじゃねえよ。まあ、宜しくな赤龍帝の兵藤一誠君」

 

《WIN!》

 

 完全に停まった一誠の車を尻目に、ユートとアザゼルの車がゴールする。

 

 その瞬間、アザゼルの背中から漆黒の闇色に煌めく十二枚の翼が顕れた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「冗談じゃないわ!」

 

 一誠からの報告を受け、バンッ! と机を両手で叩きつつリアスが激昂する。

 

 一誠を膝枕しながらも、眉根を吊り上げているその表情は、正しく怒りを露わにしていた。

 

 夏服の薄着が眩しくて、一誠は頬に当たるリアスの膝枕の感触を堪能する。

 

「確かに悪魔、天使、堕天使の三竦みのトップ会談がこの街で執り行われるとはいえ突然、堕天使の総督が私の縄張りに侵入し、営業妨害をしていたなんて!」

 

 リアスは怒りでぶるぶると体を震わせていた。

 

 リアスの一族──グレモリー家は、下僕の眷属悪魔を大切に可愛がるという、稀なタイプの上級悪魔。

 

 基本的にはケジメの為の区別はしても、不当な差別などしたりしない貴族としても珍しい家柄だ。

 

 グレモリー家は情愛が深いと云われ、自分の所有物を他人に無闇矢鱈と勝手に触れられたり、況して傷付けられたりするのを嫌う。

 

 今回のアザゼルの行動、それはリアス・グレモリーにとってちょっとしたお茶目などで済まない事態だ。

 

 断りも無く管理領域内へと入り込み、下僕ではないユートはまだしも、大切な下僕たる一誠へ好き勝手に接触していたのだから。

 

「営業妨害は違うだろう。寧ろ、ある意味で売り上げに協力してくれた上客な訳だしね。僕もだけど、一誠だって大分稼がせて貰っていただろ?」

 

「そりゃ、そうだけどな」

 

「これで本当に、一誠に対して何か良からぬ事をしたなら問題提起も已む無しと言えるけど、魔法陣を使って正式に喚んで、対価を支払った上それに沿った行動をしていたんだ。あれだけ稼がせて貰っておいてさ、人間じゃなかったから怒るのもどうかな? アザゼルに問題が無かったかと訊かれれば……それは有ったと答えるけどね」

 

 先日のコカビエルの事件で悪魔、天使、堕天使の三竦みの関係に多大な影響を及ぼした結果、トップ同士が一度集まって今後の関係について話し合われることになっていた。

 

 そんな大事な時期に突然堕天使の総督のアサゼルが会談前に此方側に接触して来たのは正に青天の霹靂であり、一誠の契約相手としての有り得ない接触には、リアスとしても看過出来ない話なのだろう。

 

「しかもよ! 私の可愛いイッセーに手を出すなんて万死に値するわ! っていうかユウ、貴方は知っていて黙ってたわね?」

 

 怒りの矛先がユートにまで向かうが、当の本人は涼しい表情で受け流す。

 

「そりゃ、ホットラインで顔を見てるからね。顔を変えていたなら兎も角、気配を消しただけで判らなくなる程に僕も鈍感じゃない」

 

「あらあら、それではどうして黙っていたんですの? 報告をしてくれてもも良かったのではありませんか?」

 

 朱乃がニコニコしながらユートを威圧する。

 

「稼げる時に稼がないと。折角、鴨が薬味(ネギ)を背負って来たんだし。お陰様でこの数日間というもの、一千万単位で稼げたし」

 

「……だったら、今度奢って下さい」

 

「そうだね、所詮は泡銭だし……パーっと使うのも有りかもな」

 

 小猫からの言葉に対してユートは肯定の意を示すと……

 

《クックックッ、流石は妾を喰らおうとしただけの事はある。悪魔よりよっぽど欲深だな》

 

 パタパタと、優雅に宙を飛んでいる【天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)】ティアマットが、然も可笑しそうに笑う。

 

 因みに、今は人工神器アーティフィカル・セイクリッド・ギアの躯に封ぜられており、話し合いの末にリアスが使う事となる。

 

 嘗てユートが読んだ古本にあった存在を基に、神器(セイクリッド・ギア)として再現されており、甲冑となってリアスに装着され、十秒毎に体内のエナジーを倍化する事が可能だ。

 

 本来ならそこら辺の名も無き龍を封じる予定であったのだが先日偶々、彼女──ティアマットと闘う機会に恵まれて戦闘をし、見事に勝利を収めたのである。

 

 ユートの予定の通りだと一回のみの倍化が精々だったし、人型に成るのは疎か人語を喋るのも覚束無かった。

 

 二天龍に次ぐ五大龍王の一角であるが故に可能となったのだ。

 

「……やっぱり、俺の神器(セイクリッド・ギア)の事をアザゼルは狙ってんのかな? 堕天使の総督なんだろう?」

 

 不安そうな声を出す。

 

 コカビエルさえ越えるであろう力の持ち主、ユートが一人で受け持って斃してくれていなければ、体育館とその周囲を一発で破壊してしまえる怪物(コカビエル)と一誠は戦わねばならなかった。

 

 それ以上といったら何だよと思う。

 

「心配は要らない。あの男はコカビエルみたいな鷹派じゃない。神器(セイクリッド・ギア)大好きな処はあるらしいけど、無用な争いは起こしたりしないさ。そうだろ、サーゼクス?」

 

『『『え?』』』

 

「何だ、ユート君……気付いていたのかい?」

 

 其処に居たのは癖のある紅色の長髪を持つ男性と、後ろにメイド服を着たクールビューティな銀髪さん。

 

 サーゼクス・ルシファーとグレイフィア・ルキフグスの2人であった。

 

 朱乃達グレモリー眷族は直ぐに膝を付き頭を垂れているが、新顔のゼノヴィアは首を傾げている。

 

 リアスは驚きの余り、立ち上がって一誠の頭を落としてしまった。

 

「痛っ!」

 

「お、お、お兄様!?」

 

 大きく口を開けて驚愕の声を出す。

 

「アザゼルは昔からあんな男でね、悪戯みたいな事はするけどユート君の言う通りで、コカビエルの様な事はしない。それにしても、総督殿は予定より早い来日だな」

 

 ユートは事前に朱乃が淹れてくれた紅茶を飲んで、寸劇の様な場面を観察していたが……

 

「お、此処か~」

 

 子安っぽい声が聴こえ、赤毛の男が入って来た。

 

「ブフゥゥゥゥーーッ!」

 

ユートは口の中に含んでいた紅茶を思わず噴き出し、驚愕に染まった表情で赤毛の男を視る。

 

「……ユウ先輩、何て事をするんですか?」

 

 噴き出した先には小猫が居て、ユートの唾液と紅茶が混ざった液体が全身を濡らしベチャベチャだった。

 

 小猫が怨みがましい顔で睨んできて文句を言うが、ユートはそれ処ではないのか聞いてはいない。

 

「な、な、な、何でアンタが此処に居る? こんの、ダメ親父ぃぃぃぃっ!」

 

 ドガン!

 

「さるばとーれっ!?」

 

 ユートの見事なドロップキックが顔面に極り、赤毛の男は変な悲鳴を上げながら吹き飛ぶのであった。

 

 

.




 新章に漸く突入したけど旧サイトの噺を足して付け足した程度。


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