そのままの君が好き。 作:花道
理由を探している。
貴女と一緒に居れる理由をずっと探している。
胸の奥に、ひっそりと隠し続けていた、抱く事は無いと思い続けたモノがこちらを見続けている。
今のままで十分幸せだと言い聞かせている。
その枷を容易く破ろうとしてくる。
その度に言い訳が出てくる。
視界の隅っこで貴女を捉える。
貴女が笑っていてくれるなら。
壊れるくらいならこのままで良い。
ーーー終わりまで、貴女と居たい。
……なんて、今はまだ……とても言えない。
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そのままの君が好き。
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大学を終えた比企谷は、同じくアルバイト上がりの陽乃と夕食の買い物をしていた。
相変わらず二人の間には会話は無かった。
同じ歩幅で、同じ道を進む。
時々、陽乃の方から手を握る事もあるが、それ以外は何も変わらない。
変わらないままで良いとさえ思っていた。
友達でも恋人でも無い曖昧な関係のままで終わるのも悪くない。
ーーーなんて言い聞かせている。
深呼吸一つ。
ずっと頭の片隅に陽乃が居る。
上手に生きてこなかったから、不意の幸せが転がり落ちてきてもどうすればいいのか分からない。
同じ間違いを何度も繰り返して、その度に後悔して、修正してきた。
だが今回は教科書が無い。
今まで培ってきたモノが何一つ役に立たない。
だから、考えてしまう。
陽乃と過ごす時間はあとどれほどだろうかと。
背中を撫でる冬の風に体が震える。
街のざわめき。
遠くで聞こえるブレーキ。
ふらふらと紙飛行機みたいに全部飛び越えられたら楽なのに。
そんな事も出来なくて。
時間だけが過ぎていく。
飛び越えられないから、瞬きの向こうに本音を隠す。
君の影。
君らしい揺れ方。
色々と下手くそだったから。
沈めて隠すしか出来ない。
曝け出して壊れるくらいなら、このままで良い。
いくつ言葉を紡いだって、陽乃の前では消えてしまう。
叶わないままの方が綺麗な事だってきっとある。
風に揺れる髪を陽乃は軽く抑える。
たったそれだけの仕草なのに、眼で追ってしまう。
喋ろうとしては辞めてを繰り返す。
溜め息一つ。
やっぱりこのままで良い。
このままの方がきっと良い。
この感情は理解できる。
いつか終わる魔法を貰って。
空の色も変わって。
曖昧なまま終わっても。
「今日はなに食べたい?」
「……え?」
「好きな物、なんでも作るよ」
再確認する。
想像じゃない未来。
動きだした景色から。
ざわめきの外へ。
今一番伝えない想いが、胸の中を駆け上がる。
いつの日か、きっと伝える時が来る。
曖昧なままじゃなく。
明確に。
この魔法が終わってしまう未来だとしても。
「陽乃さんの料理ならなんでも」
「それが一番困るんだけどね」
「全部美味いから大丈夫です」
「……寒いしグラタンにしようか」
そう言って陽乃は笑う。
見つけた言葉は無くさないように胸の奥底に閉じ込める。
いつか……いつになるか分からないが伝える日がきっと訪れる。
陽乃の笑顔を見ながら、軽く微笑み返す。
掌をこちらに向ける陽乃。
その掌をしっかりと繋ぐ。
笑顔があまりに眩してくて。
思わず小さく呟いてしまう。
ーーー笑顔、ずるいよな。
#25 言い訳。