そのままの君が好き。   作:花道

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#25 言い訳。

 

 

 

 

 理由を探している。

 貴女と一緒に居れる理由をずっと探している。

 胸の奥に、ひっそりと隠し続けていた、抱く事は無いと思い続けたモノがこちらを見続けている。

 今のままで十分幸せだと言い聞かせている。

 その枷を容易く破ろうとしてくる。

 その度に言い訳が出てくる。

 視界の隅っこで貴女を捉える。

 貴女が笑っていてくれるなら。

 壊れるくらいならこのままで良い。

 

 

 ーーー終わりまで、貴女と居たい。

 

 

 ……なんて、今はまだ……とても言えない。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

  そのままの君が好き。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 大学を終えた比企谷は、同じくアルバイト上がりの陽乃と夕食の買い物をしていた。

 相変わらず二人の間には会話は無かった。

 同じ歩幅で、同じ道を進む。

 時々、陽乃の方から手を握る事もあるが、それ以外は何も変わらない。

 変わらないままで良いとさえ思っていた。

 友達でも恋人でも無い曖昧な関係のままで終わるのも悪くない。

 

 

 ーーーなんて言い聞かせている。

 

 

 深呼吸一つ。

 ずっと頭の片隅に陽乃が居る。

 上手に生きてこなかったから、不意の幸せが転がり落ちてきてもどうすればいいのか分からない。

 同じ間違いを何度も繰り返して、その度に後悔して、修正してきた。

 だが今回は教科書が無い。

 今まで培ってきたモノが何一つ役に立たない。

 だから、考えてしまう。

 陽乃と過ごす時間はあとどれほどだろうかと。

 背中を撫でる冬の風に体が震える。

 街のざわめき。

 遠くで聞こえるブレーキ。

 ふらふらと紙飛行機みたいに全部飛び越えられたら楽なのに。

 そんな事も出来なくて。

 時間だけが過ぎていく。

 飛び越えられないから、瞬きの向こうに本音を隠す。

 君の影。

 君らしい揺れ方。

 色々と下手くそだったから。

 沈めて隠すしか出来ない。

 曝け出して壊れるくらいなら、このままで良い。

 いくつ言葉を紡いだって、陽乃の前では消えてしまう。

 叶わないままの方が綺麗な事だってきっとある。

 風に揺れる髪を陽乃は軽く抑える。

 たったそれだけの仕草なのに、眼で追ってしまう。

 喋ろうとしては辞めてを繰り返す。

 

 

 溜め息一つ。

 

 

 やっぱりこのままで良い。

 このままの方がきっと良い。

 この感情は理解できる。

 いつか終わる魔法を貰って。

 空の色も変わって。

 曖昧なまま終わっても。

 

 

「今日はなに食べたい?」

 

 

「……え?」

 

 

「好きな物、なんでも作るよ」

 

 

 再確認する。

 想像じゃない未来。

 動きだした景色から。

 ざわめきの外へ。

 今一番伝えない想いが、胸の中を駆け上がる。

 いつの日か、きっと伝える時が来る。

 曖昧なままじゃなく。

 明確に。

 この魔法が終わってしまう未来だとしても。

 

 

「陽乃さんの料理ならなんでも」

 

 

「それが一番困るんだけどね」

 

 

「全部美味いから大丈夫です」

 

 

「……寒いしグラタンにしようか」

 

 

 そう言って陽乃は笑う。

 見つけた言葉は無くさないように胸の奥底に閉じ込める。

 いつか……いつになるか分からないが伝える日がきっと訪れる。

 陽乃の笑顔を見ながら、軽く微笑み返す。

 掌をこちらに向ける陽乃。

 その掌をしっかりと繋ぐ。

 笑顔があまりに眩してくて。

 思わず小さく呟いてしまう。

 

 

 

 ーーー笑顔、ずるいよな。

 

 

 

  #25 言い訳。

 

 

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