機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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最終話 暗躍の官僚 -ロイ・アクランド-

 

 ゴールドホーク隊のカイニス機に敗れた後、淀んだ水中に身を潜めて連邦軍の追撃をかわし続けていた、リュウジ機のプロトタイプケンプファー。その機体は長きに渡る逃避行を経て、ようやくこの場に辿り着いていたのである。

 

『大佐ァァッ! そいつはもういいッ! 後ろだ避けろッ、避けろぉおーッ!』

『なにィッ……!?』

 

 しかしそんな彼が目にしたのは、隊長機に迫り来るかつてない「危機」だった。

 リュウジ機のプロトタイプケンプファーは、河川から顔を出した瞬間――ルーク機の背後から迫り来る、片翼(・・)のコアファイターを目撃したのだ。その光景を目の当たりにしたリュウジは、咄嗟に声を上げる。

 

(さっきの……戦闘機ッ!? まさかあのパイロット、片翼でッ……!?)

 

 部下からの呼び掛けで冷静さを取り戻したルークは、咄嗟に振り返ろうとする。しかし、もう遅かった。片翼を失い、まともな飛行すら困難な状況に陥ったのにも拘らず――アシェリー機のコアファイターは、まだこの場から逃げ出していなかったのである。同様のダメージを負ったカズサ機のGファイターは、撤退を余儀なくされていたというのに。

 

『沈めぇえぇえーッ!』

 

 そんな戦闘機乗り(ファイターパイロット)の「意地」に驚愕する暇もなく。アシェリーの咆哮が空に轟いた直後――コアファイターの機体が、ルーク機の背部に勢いよく衝突する。メインカメラを失ったルーク機では、コアファイターでの体当たりをかわすことなど出来なかった。

 

『うぐぉあぁぁあーッ!?』

 

 コアファイターの「特攻」による爆炎に飲み込まれたルーク機は、辛うじて原型こそ保たれていたが――誰の目にも明らかなほどに「大破」していた。「森夜叉」の隊長機である漆黒のザクはついに、アシェリーの宣言通りに沈められたのである。

 

『……ふ、ふふっ……! 俺の負けと、言わざるを得んなッ……!』

 

 瞬く間に満身創痍となったルーク機は、黒ずんだ鉄屑のような姿になりながらも、最後の力を振り絞って動き出そうとしていた。しかし、そんな状態ではもはや撤退すらままならない。ふらつきながらも数歩だけ後退した後、完全に力尽きた漆黒のザクは、四肢を投げ出すように仰向けに倒れ込んでしまう。

 

『コアファイターの特攻……だと!?』

『アシェリーが、そんなッ……!』

『……!? い、いや……見ろ!』

 

 一方、コアファイターの「特攻」を目の当たりにしたラゼル達は、安否不明となったアシェリーの行方に気を取られていた。しかしそれから程なくして、ラゼル達は上空を舞うパラシュートを目撃する。

 

「ラゼルっ、皆ぁーっ!」

『アシェリー……! 無事だったのかッ!』

 

 アシェリーは特攻の直前、コアファイターから緊急脱出(ベイルアウト)していたのだ。夜明け前の空から舞い降りて来るアシェリーの姿に、ラゼル達は安堵の笑みを浮かべる。仰向けの姿勢に寝返ったジムスナイパーIIのコクピットが開かれ、そこから現れたラゼルが両手を広げてアシェリーの肢体を受け止めようとしていた。

 

「アシェリー……わぷっ!?」

「ふふんっ……どうっ!? 戦闘機だって、まだまだMSには負けないわよっ!」

「わ、分かった分かった、分かったってば!」

 

 しかし、一刻も早くラゼルと触れ合いたいというアシェリーの逸りが災いしたのか。予想以上の速さで降下して来たアシェリーは、そのまま勢いよくラゼルを押し倒してしまう。コクピットのシートに押し付けられたラゼルの顔に、アシェリーの豊満な乳房がむにゅりと押し当てられていた。

 豊満な巨乳でラゼルの顔面を圧迫しながら、その蠱惑的な肢体を擦り付けるように彼を抱き締めているアシェリー。勝利の喜びを分かち合おうとする彼女の抱擁に、ラゼルは慌てた様子で両手をバタつかせていた。

 

「……おいフランツ、こんな時にまで俺達ァ一体何を見せられてんだァ?」

「いちいち気にしても疲れるだけだぞ。あの2人、しょっちゅうあの距離感なんだから」

 

 そんな2人の様子を遠巻きに眺めていたJ.J.とフランツは、呆れたように苦笑しながら肩を竦めて、顔を見合わせている。この場に居合わせたのがカイニスとカナデであっても、恐らくは同様の仕草を見せていたのだろう。

 

『大佐、動けるか!?』

『いや……このザクはもうダメだ。済まんが、手を貸してくれ』

 

 一方。乗機のザクを撃破されたルークは軋むハッチを強引に開き、辛うじて脱出を果たしていた。救助に駆け付けて来たリュウジ機の掌に乗った彼は、朝焼けの空を仰いだ後――ラゼル達の方へと振り返る。

 そんな彼に気付いたラゼル達も、プロトタイプケンプファーの掌に乗るルークを鋭く睨み付けていた。お互いすでに満身創痍であり、この場で決着を付けることは叶わない。その悔しさを胸に、双方のパイロット達は視線を交わしている。

 

「……」

「……見事だったな、連邦のパイロット達よ。いつかまた、戦場で会おう! さらばだ!」

 

 やがて、朝陽の輝きに向かって行くかのように。ルークを掌に乗せたリュウジ機は、帰りを待つ仲間達の元へと走り去って行く。このプロトタイプケンプファーも、いつ大破してもおかしくない状態なのだ。今はラゼル達にとどめを刺すよりも、ルークの救出を優先しなければならないと判断したのだろう。

 

 継戦能力を喪失しているラゼル達は、その背中をただ見送ることしか出来なかった。部下(ミランダ)の奪還に失敗したJ.J.は、無言で乗機のハッチを殴り付けている。多くの仲間達を殺されたフランツも、悔しげな面持ちで天を仰いでいた。そんな2人の様子を一瞥したアシェリーは、ラゼルの胸板に乳房を押し当てたまま、神妙な表情を浮かべている。

 

「……逃げられちゃったわね」

「奴らも俺達も、さすがにボロボロだからな……。これ以上の追撃は困難だ。それに、深追いなんてしなくても……奴らの行き先は分かってる」

「え……?」

「残る奴らの拠点といえば、キャリフォルニアベースだ。いつか必ず、ジオンとの決着を付けてやるぜ……!」

 

 アシェリーに力強い眼差しを向けるラゼルは、その拳をわなわなと震わせていた。彼の言う通り、「森夜叉」をはじめとする敗残兵達の多くは、北米のキャリフォルニアベースに向かおうとしている。

 ならば、自分達の行き先は決まったも同然。そのように語るラゼルの言葉に、フランツとJ.J.も鋭い表情で振り向いている。どうやら彼らも、ラゼルと同じ思いだったようだ。このままやられっぱなしで終わるわけには行かない。そんな連邦兵としての意地が、彼らを次の戦場に誘おうとしている。

 

 一方。プロトタイプケンプファーの掌に乗り、仲間達が待つ大河を目指しているルークも、雄々しい闘志を露わにして拳を握り締めていた。そんな隊長の様子を、リュウジ機の一つ目(モノアイ)が静かに見下ろしている。

 

「……首の皮一枚、とはまさにこのことだな」

『まぁな。なんとか「森夜叉(おれたち)」も全滅だけは免れたらしい。だがあんたのザクも含めて、ダメになっちまった機体も多い。キャリフォルニアベースに辿り着けたとしても、十分な機体を受領出来るとは限らないぜ?』

「構わんさ。MSの性能だけが、戦力の決定的な差となるわけではない。どのような機体であろうと、俺達は乗りこなし……生き残る」

『ふっ……そうだったな』

 

 捕虜となったエプタガテス、ルティラ、シュヴァル。そして、戦死したボルドとアイゼナッハ。彼らを欠いた「森夜叉」はもう、かつての強さを維持することは出来ないだろう。遠からずこの部隊は解散となり、隊員達もそれぞれの道に旅立って行くことになる。

 しかし、例えそうであっても。同胞達と共に生き残るために戦うという、部隊の信条が揺らぐことはない。ジオン地上軍に「森夜叉」ありと知らしめた男として、ルークは次の戦場でも己の信念を貫こうとしていた。そんな隊長の勇姿に、リュウジも不敵な笑みを浮かべている。

 

(……連邦軍パイロット達の練度はすでに、我々にも劣らぬ領域にまで到達している。MSの操縦においては我がジオン軍に一日の長があると自負していたが……その優位性すら危ぶまれているのだとしたら、この戦争の行く末は……)

 

 だが、ルークの胸中にはかつてないほどの危機感が渦巻いていた。圧倒的に「量」で勝る連邦軍に打ち勝つには、その差を覆すほどの「質」を追求するしかない。しかしその「質」ですら連邦軍に追い付かれてしまったというのなら、ジオン軍は一体どのような手段で連邦軍に対抗すれば良いのか。

 

(しかし、仮にそうだとしても……あの「三獣鬼(さんじゅうき)」や「蛮紅隊(ばんこうたい)」のような連中に頼るわけには行かん。俺達「森夜叉」の手で、勝たねばならんのだ)

 

 如何なる戦争にも、規範(ルール)というものがある。どれほど追い詰められようとも、人間として越えてはならない一線がある。それを容易く踏み躙る人面獣心の悪鬼達を知るルークは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。彼らの悪辣さを知っていながら、その強さも理解しているが故に。僅か一瞬でも、「頼れる戦力」として悪鬼達の存在を思い出した己を恥じているのだ。

 「三獣鬼」のダンテ・ヴォルフルク軍曹。「蛮紅隊」のビアンナ・ドバルド少尉。彼らのような、血も涙も無い悪鬼達にだけは頼ってはならない。そんな焦りを心の奥底に封じ込め、ルークは気高い面持ちで空を仰ぐ。例えこの先、どのような強敵が現れようとも自分達の手で勝たねばならない。その必勝の信念だけが、ルーク・アルフィスという男を突き動かしている。

 

「……俺達は絶対に死なん。奴らがこの戦乱の中で、一体どこまで成長して見せるのか……未来(つぎ)の戦場で見極めてやろうぞ」

 

 夜明けを迎えた空を睨み付け、拳を震わせる「漆黒の戦闘鬼」。彼を筆頭とする戦鬼達の旅路は、より過酷なものとなって行くのだろう。

 しかし、そうと分かっていても彼らは進むしかないのだ。連邦軍の追撃に晒されたジオン兵達の命運は、彼らの双肩に懸かっているのだから。

 

 ◇

 

 この戦いの後。森の奥の大河で待機していた潜水艦(ユーコン)に到達したルークをはじめとする「森夜叉」の面々は、ジャブローからの脱出を果たした。重い犠牲を払いながらも、彼らは辛うじてキャリフォルニアベースまで辿り着くことが出来たのである。

 その途中も幾度となく連邦軍の追撃に遭ったが、同じ潜水艦に乗り合わせていた4人組のエース集団「四海竜(しかいりゅう)」によって、追手の悉くが返り討ちとなった。水中戦のエキスパートである彼らの助力により、「森夜叉」は辛うじて壊滅を免れたのだ。

 

 ――世話になったな、カリュブス曹長。君達「四海竜」が居なければ、我々はこの北米まで辿り着けなかっただろう。「森夜叉」を代表して、礼を言いたい。

 

 ――礼なんて要りませんよ、ルーク大佐。文字通り、乗り掛かった船……ってヤツでしょう? あの「漆黒の戦闘鬼」が一緒なら、地獄行きの船旅でも楽しめるってものですよ。

 

 ――地獄行き、か。君の眼に見えているのだな。この戦争の行く末が……。

 

 ――まぁ、ねぇ。でも……行く末なんざ見えていようがいまいが、俺達のやることは変わらない。違いますか?

 

 ――ふふっ……そうだな。未来を憂いている暇があるなら、我々は現在(いま)を戦わねばならん。ここまで共に生き延びて来た、同胞達のためにも……。

 

 「四海竜」のリーダー格である、カリュブス・トゥーケス曹長。短い「船旅」の中で彼との友情を育んだルークは、「森夜叉」の同胞達を救うために戦い続ける決意を新たにしていた。

 この戦争がどのような結末を迎えようと、ジオンの大義がどうなろうと関係ない。共にジャブローから生還した部下達を守るためにも、自分は戦いを諦めるわけには行かない。その信念を胸に、ルークは次の戦場となるキャリフォルニアベースを目指している。そんな彼の気高い横顔を、カリュブスは不敵な笑みを浮かべて一瞥していた。

 

 一方。ゴールドホーク隊、プラチナファルコン隊、アイアングース隊の隊員達は、フィーネ・エイム少佐らに救助され、ジャブローへの帰還を果たしていた。「勝って当たり前」の掃討戦で多くの損害を出した上、ゴールドホーク隊と「炎葬隊」以外の部隊は無断出撃だったことから、その隊員達はマッチ・シュッポー中佐によって重い処罰が下される――はずだったのだが。

 何故か彼らは「お咎め無し」となり、この件の罪状は「有耶無耶」にされた。それには、プラチナファルコン隊に所属していたヴィルヘルミーナの存在が絡んでいたのである。彼女を「愛人」として寵愛していた、ダブリン出身の大物政治家――ロイ・アクランド議員。彼の政治的圧力により、マッチはこの件を追及出来なくなったのだ。

 

 ――ほほう、ジオンの追撃に動いた勇敢な将兵達を罪に問おうというのか。つまり君は……私の顔に泥を塗りたくてたまらない、そういうことなのだな? シュッポー中佐。

 

 ――い、いえっ……決してそのようなことはっ……!

 

 ――「北欧の荒鷲」。ジャブローに居る以上、君も当然その名を知っていよう? ()の名声が、私の支持率に大きく寄与していることも。言いたいことは……分かるな?

 

 ――も、もちろんであります……アクランド議員っ……!

 

 先日のジャブロー防衛戦でも大活躍していた、FF-3「セイバーフィッシュ」のパイロット――「北欧の荒鷲」ことローズマリー・アクランド少尉。類稀な美貌と色香の持ち主であり、戦闘機乗り(ファイターパイロット)としても非凡な才能を持っている才色兼備の女傑。

 そんな彼女の実父であるアクランド議員としては、娘が属するジャブロー内での不祥事を露呈させるわけには行かなかった。マッチは危うく、そんな彼の逆鱗に触れるところだったのだ。ローズマリーの特徴として有名な茶髪と赤い瞳は、どうやら父親譲りだったらしい。マッチの前に立つアクランド議員は、赤い眼光で鋭く彼を睨み付けていた。

 

 ――総人口の半数以上が命を落としてしまったこの時代において、「彼女達」のような存在は……まさしく、人類の宝だ。丈夫で健康な子を身籠り、産み続ける大役に適した……あの強く、逞しく、美しい身体。あれこそ、「優れた遺伝子」を後世に残す「器」に相応しい肉体なのだよ。そうは思わんかね?

 

 ――は、はぁ……。

 

 ――特に、ヴィルヘルミーナの身体は素晴らしい。あれほどの肉体は私も今まで味わったことがなかった。過酷な戦場で生き延びるために練り上げられた、あの極上の女体……。あのような身体を征服することこそ、この時代を制する男の本懐というものよ。無論、彼女だけではない。このジャブローに集う女傑達は皆、子孫を残そうとする雄の本能を熱く焚き付けている。彼女達の生命力……生きようとする強い意志が、そうさせているのかも知れん。

 

 娘のローズマリーを巡る政治的都合だけではない。アクランド議員は愛人のヴィルヘルミーナのみならず、今回の戦闘に参加していた見目麗しい女性パイロット達を手篭めにしようと目論んでいたのである。いずれは彼女達全員に、「優れた遺伝子」を持つ自分の子を産ませるために。

 ノーマルスーツの上からでも窺える、豊満な乳房。引き締まった腰つき。そのくびれによって際立つ、安産型の巨尻。雄の獣欲を掻き立てるために生まれて来たかのような、扇情的な曲線を描く抜群のプロポーション。そんな極上の女体と絶世の美貌に粘ついた獣欲を向けていたアクランド議員は、強力な部隊が「処罰」によって足止めされる事態を恐れていた前線に大恩を売ることで、「籠絡」の足掛かりにしようと企んだのだ。

 

 ――ローズマリーも、彼女達に勝るとも劣らない……良い肉付きの身体に育っている。我が娘ながら、思わず隅々まで味わいたくなるほどにな。今までは前線から遠ざけるために、敢えて旧型の戦闘機(セイバーフィッシュ)に乗せるように仕向けていたが……今後は先日のような戦闘が起きる可能性も考慮して、新型の戦闘機(コアファイター)を用意してやらねばなるまい。優秀な子を身籠り、産むことが女の務めだからな。その務めは、この時代を生き抜ける女にしか果たせぬものだ。

 

 ――と、仰いますと……?

 

 ――君の心掛け次第で、「炎葬隊」の今後が決まる……ということだよ。連邦議会の話題にされたくはなかろう? 君の高尚なご趣味(・・・)の話は。

 

 ――ッ! は、はい……! ローズマリー少尉には、「炎葬隊(われわれ)」のコアファイターを送らせて頂きますッ……!

 

 愛娘(ローズマリー)の安全と、己の欲望のためなら手段を選ばない。そんなアクランド議員の政治的都合と、彼個人の「執着」によって、奇しくも今回の戦闘に参加した連邦兵達は罪に問われることもなく、軍務に復帰出来るようになったのである。「今の状況で優秀な戦力をジャブローだけに留まらせるわけには行かない」と今後の大局を考慮していた、J.J.の上官であるアントニオ・カラス大佐も、この「決着」に異を唱えることはなかった。

 「炎葬隊」のNo.3だったコスモスを失った挙句、官僚の思惑に翻弄され、上官からの圧力まで掛けられたマッチは、言いようのない憤怒を募らせていたという。それは、「炎葬隊」の隊長であるエリムス・ナイドレイブン中佐も同様だった。かくして、無断出撃の責任追及は「有耶無耶」にされてしまったのである。

 

 だが、今回の件でジオン地上軍の脅威が明らかになったことにより、連邦軍は宇宙への打ち上げ計画を大きく見直す必要に迫られた。敗走を重ねてもなお、「森夜叉」のような戦力を未だに残しているジオン地上軍を確実に無力化するためにも、精鋭と呼べる戦力の一部を地上に残さねばならないという判断に至ったのだ。

 サラミス級巡洋艦で宇宙に打ち上げられるはずだったゴールドホーク隊。マゼラン級戦艦に配属されていたプラチナファルコン隊やアイアングース隊。彼らをはじめとする一部のエース部隊は打ち上げを延期され、キャリフォルニアベース奪還作戦への参加を命じられた。今回の戦闘から生き延びた彼らは結果的に、因縁の「森夜叉」が向かった先である北米大陸に赴くことになったのである。

 

 そして宇宙世紀0079、12月15日。キャリフォルニアベース奪還作戦に参加した、ゴールドホーク隊を筆頭とする連邦軍の精鋭達は、再び「森夜叉」の戦鬼達と死闘を繰り広げた。しかしそこでも決着は付かず、彼らの戦いはついに宇宙にまでもつれ込んだ。連邦軍屈指のエース達を乗せたサラミス級やマゼラン級は、満を持して宇宙に打ち出されたのである。

 同年12月24日、チェンバロ作戦。同年12月31日、星一号作戦。かつて「森夜叉」に属していた戦鬼達の多くは、その最前線にまで乗り込んでいた。そんな彼らとの因縁に縛られた連邦兵達もまた、そこに馳せ参じていたのである。戦後の政治交渉に備え、サラミス級に同乗していたアクランド議員が見守る中。グリーン・ワイアット中将による指揮の下、ラゼル達は激戦の中で愛機を失いながらもジムやボールに乗り換え、戦いの宇宙(そら)を最後まで駆け抜けた。

 

 密林を焼く戦火に彩られた、あの日――「烈火のジャブロー」から始まった因縁は、宇宙の彼方にまで続いていたのである。

 

 だが。彼らの因縁は、戦争が終わってもなお、終わらなかった。

 

 例え終戦協定が結ばれようと、時代が移り変わろうと。戦後間も無く、武装解除に応じたルーク・アルフィスが軍を退役しようとも。戦士達の因縁は、奇妙な腐れ縁のように続いていた。

 

 ジオン残党組織「黒死霊(こくしりょう)」の首領として頭角を表していた、リュウジ・クガ。彼の台頭によって、束の間の平和すらも容易く破られてしまったのだ。そんな彼が率いる「黒死霊」を阻止するべく立ち上がった、第28突撃機動戦隊「スターイーグル」と共に行く道を選んだラゼル達は、さらに苛烈な戦場へ身を投じて行く。

 

『ラゼル・バルカンク……行くぜッ!』

『リュウジ・クガ……出るぞッ!』

 

 ――「鬼は死すべし(オーガ・マスト・ダイ)」。その信念を背負う連邦軍の追撃は、年を追うごとに苛烈を極め。生き残ることへの執念に燃える戦鬼達もまた、それ以上の闘志を剥き出しにしていた。

 断ち切れることのない悪縁で結ばれた彼らの戦いは、終戦を迎えた今もなお、この地球圏のどこかで繰り広げられている――。

 

 ◇

 

「ほんっと……アタシ達って、奇妙な縁で繋がってるのかも知れないなぁ。まさかキミがエゥーゴに居るとは思わなかったよ、ルティラ」

「ゲッカお姉ちゃんこそ、エリート部隊のティターンズを蹴ってこっち側(エゥーゴ)に付くなんて……何考えてるのさ、全く。あのフィーネさん達を敵に回すっていうことなんだよ?」

「確かに、あの人達には悪いけど……アタシの肌には合わないんだよ、ティターンズの連中は。アクランド議員の愛人なんて、死んでもゴメンだしさ」

「……言えてる。あの変態議員、ケダモノどころの騒ぎじゃなかったからね。捕虜だったボクやシュヴァル達まで愛人にしようとするんだから、あの頃は本当に大変だったよ……」

「とにかく! アタシの僚機になる以上、死ぬことだけは許さないからね。何がなんでも、絶対に生き残ること! 約束だからなっ!」

「今さらお姉ちゃんに言われるまでもないよ。ボク的にはね、本当の負けは死ぬことだから。生きてさえいれば……勝ちさ」

 






【挿絵表示】


 今話を以て、外伝「オーガ・マスト・ダイ」は完結となりました! 最後まで本章を見届けてくださった読者の皆様、キャラ募集企画にご協力頂いた参加者の皆様、応援誠にありがとうございますー! おかげさまで、本章も無事に完走となりました!(*≧∀≦*)
 久方ぶりの陣営選択式だったこともあってか、大変賑やかなキャラが大勢集まり、企画主としても終始ホクホクでございました。本章が無事に完結を迎えられたのも、ひとえに皆様のおかげであります!(*^ω^*)
 本章のヒロインを務めたアシェリー・スカイは、一年戦争後の東京を舞台としている第1.5部「トーキョー・ファランクス」の後編(https://syosetu.org/novel/223795/53.html)でも活躍しております。彼女のことが気になる方はこちらのエピソードもどうぞよしなに!m(_ _)m

 本章は外伝シリーズの最終章というイメージで書き始めたエピソードでしたし、もっと明るめな雰囲気で締めるべきかなー……という思いもあったのですが、そういう路線のオチは他の章ですでに書いていましたので。本章においては、このような形の最終話とさせて頂きました。ティオネもきっと、キャリフォルニアベースでゼファーに逢えた……はず(´-ω-`)
 キャラ募集企画に使用していた当時の活動報告を読み返していると、応募キャラの戦後の動向について書かれていらっしゃるケースも幾つか見受けられまして。その要素を意識した結果、「戦後も彼らは戦い続けている」というイメージが浮かんで来た次第であります。ゲッカとルティラの2人も、きっとエゥーゴで仲良くやっていることでしょう(*´꒳`*)
 恐らくデラーズ紛争の時代でも、グリプス戦役の時代でも、ネオジオン抗争の時代でも……彼らの多くはそれぞれの陣営で悪縁に縛られているのではないかなぁ、と。さすがにラプラス事変の頃までには諸々落ち着いていて欲しいところですし、ホタルやみこたん辺りは戦後すぐに戦いから降りているとは思いますが(´ω`)

 ちなみに今話で言及されていた、アクランド議員の娘であるローズマリー・アクランド少尉は、第1部「パンツァー・アンド・パンツァー」の第5話(https://syosetu.org/novel/223795/5.html)から登場しております。父親のことは彼女もかなり煙たがっていた模様……。また、エリムス・ナイドレイブン中佐とマッチ・シュッポー中佐は、外伝「ガダルカナル・ストレンジャーズ」の第1話(https://syosetu.org/novel/223795/76.html)から悪役として登場しております。こちらのエピソードでは、今話の鬱憤を晴らすかの如く大暴れしておりますぞ……(ノД`)
 それから、「森夜叉」をユーコンで救出していた「四海竜」のカリュブス・トゥーケス曹長は、外伝「コバルト・キャリバー」の第1話(https://syosetu.org/novel/223795/12.html)から敵役として登場しております。この「コバルト・キャリバー」では、彼ら「四海竜」の最期の戦いが描かれておりますぞ……(´-ω-`)
 さらに、ジオン残党組織「黒死霊」のリーダーとなったリュウジ・クガ大尉の暗躍は、外伝「ブラック・スペクター」の第1話(https://syosetu.org/novel/223795/107.html)から描かれております。彼の動向が気になる方は、こちらのエピソードもどうぞよしなに……m(_ _)m

 そして、キャリフォルニアベースへの生還を果たしたルークの物語は、ヒロアキ141先生の3次創作「機動戦士ガンダム 追憶のキャリフォルニアベース(https://syosetu.org/novel/368664/)」に続いて行く形となります。彼の今後の動向はこちらの物語や、外伝「ガダルカナル・ストレンジャーズ」の方で描かれておりますので、機会がありましたらぜひご一読くださいm(_ _)m

 恐らく本作におけるキャラ募集企画も、本章で最後になるかと思われます。しかし、ちょっとした番外編的な小話ならまた書ける機会があるかも知れませんので、もしその時が来ましたら、またお気軽に遊びに来て頂けると幸いです(о´∀`о)

 また、第1話公開時にお知らせした通り、本章は後ほど、外伝「レディーズ・プライド」と第3.5部「アイアン・キャットファイト」の中間辺りに移動させる予定です。
 ではではっ、本作を最後まで楽しんで頂き、誠にありがとうございましたー! いつかまた、どこかでお会いしましょうー!٩( 'ω' )و


【挿絵表示】


Ps
 アクランド議員は多分スキキルに手を出そうとした時に、トラウマ級の「お仕置き」を受けたんじゃないかなーと思います_(┐「ε:)_
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