始末屋キリカ~【推し】に人生を捧げるまでのお話し   作:☆エイラ★

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弐拾漆斬 キリカ

 革命軍の頭上へレーザー攻撃に続き、ミサイルや火球などの兵器群が降り注ぐ。マインを含む帝具使い達が必死に降り注ぐ死の弾幕を迎撃しているが対処しきれていない。

 悲鳴、悲鳴、悲鳴………悲痛な叫び、絶叫と慟哭が木霊する。

 人体が焼けこげる臭いが一面に漂い帝都周辺は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 私が城壁を飛び越えたところで再びシコウテイザーの胸元にある巨大な目玉へ光が集まっていく。厄介な事にその近くにブドーが浮いており、接近すれば必ず妨害される。

 

──まずは一射を空撃ちさせる………。

 

 シコウテイザーの全身を視ると機械なのに何故か力の流れを理解できた。

 錬金術による疑似生命的なモノだからか、はたまた流源の瞳が進化したのか………どちらにせよ好都合。

 僅かでも姿勢を反らさせることができれば射角は大きくズレる。狙い目はエネルギーを解き放つ寸前の頭部付近。巨体が踏ん張ろうとするタイミングに強烈な一撃を加えよろめかせる。 

 都内にある建物の屋根へ着地。抜刀術の構えをとり、極限の集中状態に入った。

 

 鬼神・断界抜刀術 仏………

 

「コウテイ、守ル!」

「がッ!?」

 

 ウェイブに横合いからいきなり凄まじい威力で蹴り飛ばされる。何度かバウンドして内壁へ叩きつけられた。

 

──そ、そういえば………さっきも溜めの隙を狙ってきましたね。

 

 不覚。巨大兵器に集中しすぎて周りが見えていなかった。キョロクでホリマカを倒したせいか、やたらと抜刀術を警戒されているようだ。

 発射を阻止できず、シコウテイザーの胸元から放たれる破壊の極光(絶望の光)

 

八咫鏡!」

 

 狂化したスサノオが浮遊状態で射線に割って入り巨大な鏡を展開。

 

──スーさん!?

 

 狂化──電光石火スサノオの禍魂顕現(奥の手)は使用者の寿命を吸って発動する禁断の技。最大3回使用出来て、最後の1回は必ず使用者の命を奪うとされている。つまり、キョロクで2回奥の手を発動したナジェンダは自らの命を懸けたのだ。

 

「ぉぉぉぉおおおおおお!!!」

 

 城壁の上で極光を防ぎ止めるスサノオ。八咫鏡がバキバキっと音を立ててひび割れていく。

 

「オレ、タチノ、勝チダ」

 

 気づけば目の間にウェイブがいて、槍を振り上げ私の首を落とそうとしている。

 

「………」

 

 直ぐに動けずエスデス戦の時と違い絶対に助からない状況。

 先生は再生に心臓と血液が重要と言っていた。首を落とされたら出血が止まらず私でも死に至るだろう。

 

──みんな、ごめんなさい………

 

 最後の刹那、やっぱりそんな想いしか出てこなかった………。

 

 ガキンッ

 

 次の瞬間、閉じようとした瞳に見知った黒髪の背中が映る。

 

「待たせたな」

 

 アカメが村雨でウェイブの一撃を受け止めていた。その身体には赤い呪詛のような文様が浮かび、凄まじい力の本流が渦巻いている。

 

「………アカメ、さん?」

 

 これが村雨の奥の手、役少角(えんのおづつ)。事前に聞かされてはいたが、本当に鬼神と同等の力を感じる。

 

「しばらく休んでいろ」

 

 槍をいなして回し蹴りでウェイブを吹き飛ばすと、更に縮地で矢継ぎ早に追撃をかけるアカメ。圧倒的な強さ、その動きは師事した私をほぼ完璧に再現している。

 

「………」

 

 安堵して空を見上げると、極光を防ぎきったスサノオとブドーが激しい空中戦をしていた。

 命懸けで皆を守ろうとするナジェンダの想い。今なお必死に戦う仲間達に報いる為にも、こんなところで蹲っている訳にはいかない。

 

「ア、カメ、クロメ、キッタ、アカ、メ………抹、殺」

「それが、クロメの望みだったからな」

 

 火花を散らせながら、神速の斬撃をぶつけ合うウェイブとアカメ。

 

「アカメさん、ここはお願いします」

「ああ、任せろ」

「………」

 

 身体に鞭打って強引に立ち上がり跳躍。帝都の街並みが一望できるほどの高度を稼いでから急降下。次発チャージに入っているシコウテイザー(機神)目掛け、大気を蹴って、蹴って、蹴りまくって加速し続ける。

 

──まずは一撃、グランフォール擬き!

 

 鬼神・闘争術 天翔穿脚(てんしょうせんきゃく)

 

 そうして、私の出せる最高速度をもって顔面を蹴りつける。

 

 バキッ

 

 轟音と共に顔がへこみ機神がよろめいた。

 

『な、なにが!? 至高の帝具が傷つき揺らぐなど!!』

 

 搭乗者の子供──皇帝の声が響く。

 

「聞こえているなら、これ以上罪を重ねるのはやめてください」

 

 子供とは言え奪った命が多すぎて許されはしないだろう。しかし、彼もまた大臣の傀儡にされてしまった哀れな被害者。

 

『罪だと? 何だ、貴様は?』

「私は始末屋………いいえ、()()()()()()のキリカです! もう一度言います。これ以上は罪を重ねないで」

『余に歯向かう無礼者め 罪人は貴様らであろうが!』

 

 口から火球のようなモノを飛ばしくる機神。

 

「これは、何を言ってもダメそうですね」

 

 それを避けて飛び回りつつ、関節など狙い風刃を次々放ってみる。

 

──硬すぎる!

 

 異様な強度をしていて機神へのダメージは皆無。

 あまり時間をかけてもいられない状況だ。今も城壁近くで行われているスサノオとブドーの戦い。できればスサノオに勝って欲しいが禍魂顕現には制限時間がある。

 

「陛下ぁ、そのような蝿に何を苦戦されているのです! さっさと皇帝ビームではたき落としてしまってください」

 

 初老の男性と思しき叫び声。

 

「………」

 

 声が聞こえた方向を見ると、宮殿の最上階に位置するバルコニーに二つの人影がある。

 一人は丸々肥え太った体つきの巨漢──オネスト。もう一人は先日取り逃がしたドロテアだった。

 

──標的のオネスト! あんな場所に………。

 

 高みの見物とは良いご身分だ。二人共さっさと始末したいところだが、機神の相手を止めれば再び革命軍が狙われてしまう。

 

「あの女は人外の化け物じゃ。そうそうに奥の手を発動した方が良いかもしれん」

「そうですねぇ。陛下も慎重すぎますし、やっちゃいましょうか。至高の帝具、奥の手発動!

『な! どういうことだ。これは!? 大臣、どうなっている大臣! オネストぉ』

 

 皇帝の戸惑ったような声。そして、機神の形が筋繊維を剝き出しにした生物的で禍々しい姿へ変貌する。肩や膝にも巨大な目玉が現れより攻撃性が増しているようだ

 

「陛下はお優しい性格、それが帝具の弱点に直結しています。だから、私はこれを準備していたのです」

「ふっふっふ、錬金術と帝具の合成、さしずめ粛清モードじゃな。さて、実験結果も見れたし十分楽しませてもらった。わしは一足先に失礼するぞ」

 

 戦況が怪しくなってきたせいか、通路の方へ引っ込んでいくドロテア。

 

 ゴキリッ

 

 その首が獣腕と義腕に掴まれ180度回された。

 

「ごきり?」

「宮殿内の護衛も全て始末してきた。これで残るはお前一人だ」

 

 通路の影から現れたレオーネが左腕の義腕を構えた。

 

「………」

 

──私の相手はこっちですね。

 

『大帝国に歯向かう愚か者たちよ。統治者として余が全員に裁きをくだしてやるぁ!!』

 

 突如、気が狂ったように全方位へ無差別爆撃を開始する機神。革命軍だけでなく都内の建物、市民、帝国の兵士までもが吹き飛ばされていく。

 

「な、なんてことを!」

 

 傷ついた身体でどこまで技に耐えられるか分からないが、もう後先考えてはいられない。

 

 鬼神・滅尽葬華 曼珠無限獄

 

 空中機動を用いた斬り抜け居合いによる連撃。縦横無尽に空を駆け、先ずは右肩の目玉へ斬撃を集中。深く抉って発射口の一つを損傷させた。

 

『余の玉体(ぎょくたい)にまたしても傷をぉ!』

 

 皇帝が数多の誘導ミサイルを放射。それらが空中で連鎖するように起爆した。

 

「熱ッ」

 

 直撃は避けているのに爆炎で身体を焼かれてしまう。

 

──それでも! 

 

 身体が動く限りは斬って、斬って、斬って必ず破壊してみせる!

 そして、視界の端では引き続きオネストとレオーネが対峙していた。

 

「し、ししし刺客、こんな最上階まで潜入してきたというのですか」

「待っていたぞ、この時を。報いを受けろ大臣!」

 

 義腕の刃を展開、オネストへ向けてロケットパンチを放つレオーネ。

 

「ひゃあああ、怖ぁああああい。あ! でも食べちゃいましょう」

 

 大口を開け金属性の義腕を嚙みちぎりムシャムシャと租借するオネスト。

 

「こいつ………」

「何かの発見があるかと思いましたが、やはり金属はマズイ。ここはあなたで口直しといきましょうか」

「あいにくこっちが食う側だ。お前は私が倒す!」

「混乱に乗じてとはいえ単身でここまで乗り込んでくるとは………殺し屋とは厄介なものです」

「レオーネさん、駄目………」

 

 オネストは見た目によらず位階_()クラスの実力者のようだ。レオーネの危機察知能力が発揮されるのは回避や防御に限られる。それでなくても隻腕で不利な状態。攻めに回れば地力の差は埋めようがない。

 

「単身って訳でもないさ………皆の分までお前を100回くらいぶっ殺す」

 

 レオーネがまっすぐオネストへ飛び蹴りで向かって行く。

 

「なら、私は200回くらい殺してあげます! 皇拳寺百裂拳!!!」

 

 蹴りを軽くいなし、拳でレオーネを滅多打ちにするオネスト。

 

「拳法、だと! こいつまさか素で強いとは………」

 

 レオーネは受けたダメージが大きく立ち上がれない様子。

 

「人生を長く楽しむには強い身体が不可欠ですからね。若い頃はみっちり鍛えましたよ。そのおかげで随分タフになりました。美味しいものを食べても身体は健康そのもの………あなたはハラミあたりが美味しそうですねぇ」

 

 オネストが涎を垂らしながらレオーネの腹に手を伸ばす。

 

「レオーネさん!」

 

 助けに向かうべきか、一瞬の迷い。

 

 ドシュ

 

──え!?

 

 私の腹部から太い骨のようなモノが飛び出ている。それは機神の掌より生じ私の身体を貫通していた。

 

『スキありぃぃぃい。まったく手こずらせおって』

「げぶッ!」

 

──あ、これ今度こそダメなやつ………。

 

 そのまま建造物へ叩きつけられ………

 

『これぞ近接最強の武装………至高拳!!!』

「………」

 

 私は機神の巨大な拳に押しつぶされた。

 

………

 

 ………

 

  ………

 

 耳障りな騒音と綺麗な青空が見える。

 

(なんか周りが煩いなぁ)

 

 血液が足りず上手く思考出来ない………。

 

「陛下、陛下ぁ、どうなさったのですか。おやめください」

 

 誰かが機神の前に浮遊して説得を試みていた。

 

『ブドー、そこをどけ! 害獣どもを粛清できぬではないか』

「この方角にはまだ我が親衛隊がおります」

『黙れ、黙れ。余の為に死ねるのだ。本望であろうが!』

「そ、そんなッ」

『退かぬなら貴様も反乱分子だ』

「は、反乱分子?………代々お仕えしてきた私が………」

 

 愕然とした様子で無防備に呆けるブドー。

 

『もうよい。消えよ』

 

 機神の胸元より超巨大な破壊球が撃ちだされ………

 

「陛下、陛下ぁぁぁあああああああああああああ」

 

 それはブドーを消し去って東側にクレーターを作り上げた。

 

「これ以上はやらせん! 天叢雲剣

 

 スサノオが大剣を振り下ろし機神の胸元を破損させる。

 

『まだ虫がいるのか!』

 

 機神が周囲への無差別破壊を再開。

 

「………」

 

(あれ? ()()()? ()()()は………)

 

 ()が死を自覚した事で鬼神の力に宿る本能──()()()が完全に覚醒したようだ。

 見知った顔と大きな人型の機械が戦っているが、割とどうでもいい。それより、お腹が空いてお腹が空いて堪らない。周囲に目をやれば沢山のご飯(民衆)が逃げ惑っている。側を横切る子供を抱えた母親がとても美味しそうだ。早速、捕まえようと伸ばした手が、何故か途中で止まってしまう。煩わしい事に()の思念は完全に消え去った訳ではないらしい。

 

(ねぇ、どうして? どうして食べちゃダメなの?)

 

 “外道の定義? そんなの簡単だよ。いたずらに罪無き命を奪う連中の事さ”

 

 ()の記憶に強く刻まれた始末屋としての心構えが邪魔で外道以外の命を奪えない………。

 

(なら、食べても良い獲物………そう言えば丸々太ったご飯(大臣)を見かけたような)

 

 ()()()は衝動のままに宮殿の一番高い場所へ向けて跳躍。バルコニーより少し高くまで飛び上がると傷ついたレオーネに銃口を向けるオネストを発見。

 

「私の夢は130歳ぐらいまで生きて世界中の()()()()を食べ、美女を抱き気に入らない者を殺すこと。叶えるには身体が資本なんですから攻撃されたら怒こりますよ」

「あはッ、あはははははッ! ()()()()()()、みぃつけた!」

 

 飢餓感に耐えかね背後から襲い掛かってその右腕を力ずくで捥ぎ取った。

 

「ぎゃぁぁぁああああああああ!!!」

「モグ、モグ………んッ」

 

 手に入れた腕を食べてみると脂っこいが中々悪くない。

 

「な、ななな、私の腕を返しなさい! た、食べるんじゃありません!!」

「あははッ………血、血、血、血とお肉をもっともっとちょうだぁい」

 

 オネストに飛び掛かり組み伏せ、あちこち喰らい千切っていく。

 

「ひッ! ひぁぁああああ!! なんですか、この化け物は!? やめてお願い食べないで、助けて! 私を、私を食べるなぁぁあああああ!!!」

 

………

 

 ………

 

  ………

 

「ふぅ、美味しかった」

 

(でも残念、()()()の時間はおしまいかぁ)

──あれ? 私何を食べて?

 

 完全に死んだと思っていたのに再び意識を取り戻す事ができた。そして、いつの間にか豪勢な食事をしていたようだ。ぼんやり視線を下に向けると血だまりの中で痙攣するオネストに跨っている。

 

「いたい、いたい、たすけて、やめて………やめて」

 

 辛うじて生きてはいるが、酷い有様だった。

 

「………」

 

 瞬時にこれまでの凶行を思い出してぞっとする。

 

──あれは私? いえ、それとも………。

 

 いや、考えたり後悔するのは後でいい。それより今気にすべき問題は他にある。慌てて後ろを振り返ると腹の銃創を抑えて苦し気にうめくレオーネがいた。オネストにライオネルを破壊されてしまい、傷を回復できないようだ。

 

「スカッとした。ありがとな、キリカ。まだ、腹空いてるんだったら私を食べてもいいよ。その代わり他の人間は襲わないでほしい」

「そんなこと、できる訳ないじゃないですか! こんな化け物で………ごめんなさい」

 

 晒した醜態が大きすぎてそれしか言葉が出てこない。

 

「キリカは化け物なんかじゃないさ。気にするな、仲間だろう。チェルシー、もう大丈夫だ」

「うん………」

 

 通路の奥からチェルシーが恐る恐るといった感じで姿を現した。オネストに帝具を奪われる訳にはいかず、レオーネが殺されそうな時もじっと耐え忍んでいたのだろう。

 

「今まで仲良くしてくれて、ありがとうございました」

「怖がってごめん。これからも仲良くしてよ」

 

 チェルシーの瞳の奥には隠し切れない怯えの色が滲んでいる。

 

「………」

 

 皆と一緒にいて、もしまた食人衝動に襲われたら取り返しがつかない。答えに詰まっているとドロテアの死体から生命力が視えた。

 

「キリカ?」

「ドロテア、まだ生きてますね」

「げ! ま、待つのじゃ、わしを殺すのは人類の損ッ」

「………」

 

 手刀で風刃を起こして首を跳ね飛ばした。

 

「あれで生きてるとかしぶとい奴だったな」

 

 感心したように言うレオーネ。

 

「チェルシーさん、レオーネさんとオネストを連れて転移してください。私は残りの仕事を片付けます」

「………必ず、帰ってきてね」

 

 シャンバラを起動させ転移で消えるチェルシー達。

 

「………」

 

 機神は未だ暴れまわっておりスサノオがボロボロになりながら必死に食い止めていた。ウェイブとの対決を終えたらしいアカメも足元を駆け回りながら村雨であちこち斬って呪殺できないか試している。

 

 【流源(りゅうげん)の瞳】

 

 機神を隈なく視てみると胸の少し下、鳩尾付近に構造上脆い箇所が存在していた。脆いと言っても破壊するには相当のエネルギーが必要だ。チャンスはスサノオとアカメに気をとられている今しかない。

 私は一旦地上へ降りて常闇を確保。その後はひたすら垂直に初撃を当てた時よりも高く高く空へ駆け上がっていく………。

 やがて、雲の上まで来たところで一気に落下。大気を蹴って加速、加速、加速、加速………前方へ常闇を突き出し回転を加えて私自身を一本の矢じりと化した。豆粒に見えていた帝都の街並み、機神の身体が瞬く間に大きくなっていく。一回限りの大勝負、外れたら私自身は跡形も残らないだろう。

 力の流れを掌握して最終角度を微調整。

 

 鬼神・一刀絶技 曼珠鋼刃貫(まんじゅこうじんかん)

 

 文字通り、全身全霊もって絶ち穿つ。

 

 ズガァンッ

 

 音速を遥かに超えた速度で機神の鳩尾から背面へ突き抜ける。

 

『な、なんだ? 至高の帝具の腹に穴が開いて?』

虐殺者(皇帝)………あなたを彼岸へ誘いましょう」

 

 地面へ着地した途端、刀身の負荷に耐えきれず常闇が砕け散った。

 

『うぁあああああああああ!!!』

 

 動力炉を失い至る所から内部爆発が起こり轟音と共に機神が倒れる。

 

 ドドオオオオオオンッ

 

「「「ワァァァアアアアア!!!」」」

 

 国中から沸き起こる歓声。

 

「………」

 

──これで私の仕事は終わり、ですね。

 

 希望の凱歌を聞きながら、土煙に紛れてその場を立ち去った。

 

 ◇

 

 数日後。私は陰に潜みながら帝都の色々な光景を眺めていた。都市が崩壊したにも関わず人々の表情は明るい。素晴らしい速さで復旧作業が進んで行く。

 広場では皇帝の公開処刑とオネストへの拷問が行われている。

 皇帝は壊れたシコウテイザーの中で生存していたらしい。

 また、オネストは特殊な鍛え方をしていたようで生命力が高く、今なお大勢の人間に斬り刻まれながら生き続けていた。

 外道には相応しい生き地獄と言えるだろう。

 あと、嬉しい驚きが一つ。ナジェンダが死なずに済んだこと。恐らくキョロクで中途半端に二回目の奥の手を使用した為に寿命が残ったのだろう。復興の指揮を執り、それを隣で支えるラバックも充実した表情をしている。

 アカメ、レオーネ、マイン、スサノオ、チェルシー、シェーレの姿もある。時折、寂しそうに私を探してくれている様子だが、仲間達の元へ戻るつもりはない。

 皆ならきっと民が幸せに生きられる国を作れるだろう。

 ナイトレイドのメンバー、一人一人の笑顔を目に焼き付け、出国前に軍医の元を訪ねた。

 

「救国の英雄!………生きていてくれたのか。すぐメンバーに連絡をッ」

「やめてください、やめて、ください。薬を貰いに来ただけです。すぐに出国します」

「そうか………当面の間の分と薬のレシピだ。いつまで効力があるか分からないが」

「ありがとうございます」

「どこへ向かうつもりだ」

「故郷のワコクへ帰ろうと思います。鬼の血について調べてみようかと」

「そうか、ならアカ………いや、なんでもない」

「………お世話になりました」

「君が生きていることは伝えておくよ。そのくらいは良いだろう?」

「ええ、お願いします。あと、皆に楽しかった、ありがとう。そう伝えてください」

 

 私は黒いコートを頭から被って歩き出した。

 旅をしていると時折、命について考える事がある。

 虫や鳥、多くの動物に魚それらも皆等しく命と言える。日々、生きるために多くの命を奪い食べている訳だが、なぜ人間を殺すのはいけない事なのだろう。

 私の持論だが、人は人として生まれただけで価値が有るのだと考えている。

 旅の道中、大自然の中を歩いていると滅多に人と出会うことはない。町中にいれば人間が沢山いてつい勘違いしてしまうのだが、数多の命の中で人間に生まれる事自体がとても難しいことだと思う。

 他者を慈しみ豊かな感情と心を持てる生物。

 もし、命に生まれ変わりがあるのなら、とてつもない回数生まれ変わり死に変わりを繰り返さないと人間にはなれないはずだ。そう考えると人の命は宝石や財宝などより、よほど希少価値がある。そして奇跡的な確率でようやく人間に生まれ変わる事が出来たのに、誰かに搾取されたり、理不尽に命を奪われるのはとても悲しい事だと感じてしまう。

 

──なんて、私が生まれ変わるとしたら地獄の何処かでしょうね………

 

 さて、少し寂しいけれど今日からまた以前の生活に戻るだけだ。

 三途の川の渡し賃を対価に悪鬼外道を始末する。

 私は始末屋、黒狐のキリカ。

 

                                                                 完




一言。
 帝国編を全てお読みいただき感謝の極み。
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