転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
というか、ルーズベルト(+チャーチル?)虐回?
ひょっとして”この世界線”のアメリカ合衆国は、”セント・バレンタインデー”に呪われているのだろうか?
そう、2年前の”セント・バレンタインの喜劇”に続き。1944年2月14日、第二次世界大戦から事実上、足抜けしていた英国が、その余力ある本土軍、特に海軍と海兵隊を中心に厳冬期のアイスランドに上陸したのだ。
無論、アイスランドと英国の間にあるフェロー諸島も含めてだ。
そして、アイスランドの現地軍、同君連合であるデンマーク王国軍の抵抗は無かった。
当然である。
この上陸は”ケース・グリーンランド(米国のグリーンランド侵攻)”と異なり、英国とデンマークの『アイスランドの自主独立性を守るための防衛行動』という大義名分とした合意として行われた進駐作戦だったからだ。
そして、同日中にデンマークとアイスランドは同君連合を解消し、アイスランドとフェロー諸島は正式に英国を新たな同君連合の相手とすること、それは同時に”
この『英国のアイスランド進駐と大英連邦編入』で、デンマーク王国が得た物は……
”世界海運の1割を掌握できる商業的海洋覇権”、そこに至る権利だ。
具体的には、この時代はまだ造船大国であった英国の民間造船リソースのデンマークへの振り分け、平たく言えば『デンマークへの余剰中古船・新造船建造を含めた”
この時代でもグリーンランドやアイスランドという海外自国領と呼べるものを持っていたデンマーク王国は、当時の国家規模を考えれば十分な商船があったと言えるが、しかしながら英国の言う”七つの海”に乗り出すのは些か物足りない隻数だった。
そこを船と航路でフォローするのが英国という訳だ。
☆☆☆
とまあ、こうしてデンマークは”世界屈指の大海運王国”への一歩を歩みだし、国土や人口の関係で大規模重工業を持ちにくい状況を逆手にとり、工業国の多いバルト海沿岸諸国の海洋物流を代行する形で国家としての活路を見出してゆくのだった。
そして、デンマークが輝かしい未来に向けて舵を切る中、実に抜け目が無いのも英国だった。
英国は実はデンマークの船舶販売で儲ける気は薄い。じゃあ、どこで儲けを出すのか?
海峡や運河の通行料? それも無くは無いが、最大の稼ぎはそこではない。
その答えは、世界最古にして最大の保険会社が誇る船舶保険や貨物保険を含む”海上保険料”と、文字通りの「日の沈まぬ帝国」が世界各地に持つ”(飲料水や食糧、燃料の売却益なども含む)港湾の使用料”だ。
また副次効果で「船舶の購入や海運設備投資などに必要な貸付」の利子も当然入る。
英国、少なくともこの時代は大工業国でもあるのだが、実はこの頃からすでに銀行や保険などの世界最高峰の金融大国でもあった。
それも暴利でも割高でもない。他国と大差ない”普通料金”で十分に採算が取れるのだ。
しかも独占契約で縛る必要すらない。
例えば、海上保険などは世界的にも寡占、欧州市場ではほぼ独占と言ってよい。
何やらドロシーの高笑いが今にも聞こえてきそうだが……
「うふふ♡ 全ては計算通り♪」
ただ、納得いかないのは英国産宰相古狸ことチャーチルだろう。
確かに”下拵え”も”お膳立て”もクルスとドイツの手により整えられていた。
デンマーク王国やアイスランド現地勢力とのコンセンサスは既にできており、交渉自体は裏表問わずに異常なほどスムーズに進んだ。
しかし、いくら戦闘が起らないとわかっていても、実際に相応の規模の国軍を近いと言っても国外に進駐、無期限に駐留させるというのは、首相の事務作業の増加分だけ考えても生半可ではないのだ。
おまけに発案から発動まで、いかにスピード勝負とはいえ実質1ヶ月で準備しろというのだから尚更だろう。
確かにアイスランドから英国本土北端まで1,000㎞もないし、王立軍は第二次世界大戦から実質的に足抜けしていたからこそ、万が一に備えて陸海空それぞれで完全充足状態の緊急展開部隊を常設していた。
だからといってこれは完全に無茶ぶりの類のロイヤルオーダーである。
チャーチル曰く、
『英国史上稀に見る最も低リスクかつ最も冒険的な作戦』
とのことだが、これは明らかに英国紳士お得意の皮肉だ。
実際、チャーチルをはじめ関係各所に泊まり込む羽目になった実務官僚たちが、よく”戦死”しなかったものである。
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さて、その後、アメリカ合衆国
「グヌヌヌヌヌ……」
第32代アメリカ合衆国大統領フランシス・ルーズベルトは血圧を上げつつ憤慨した表情で唸っていた。
米国では「進駐」だが米国がグリーンランドに行ったのは、「同君連合の宗主側であるデンマークの合意を得ない”侵攻”」であるのは公然の事実であった。
しかし、アイスランドは「イギリスとデンマーク、アイスランドの各勢力の合意の下で行われた進駐と同君連合の解消、そして”
これは米国のグリーンランド侵攻とは真逆の意味を持つ事象であり、物理的にも政治的にも外交的にも強烈なカウンターパンチとして米国の顔面に突き刺さっていた。
つまり、事象的には『米国の侵攻を恐れたアイスランドが、”まだ米国よりマシな”英国に庇護を求めた』という図式になってしまう。
これは複雑な影響を米国に齎せた。
『武力を用いた強引な併合』ではなく純粋な外交案件という事象……一部の国内勢力、特に赤化著しいルーズベルトの取り巻きは、『アイスランドの逆侵攻と併合を含めた軍事作戦』を言いだす者もいたが、中立法がある上に、外交上は戦争状態にない「国際法上、問題の無い方法でアイスランドを自陣に併合した」英国と正面切って戦端を開ける合法的な理由が無かったのだ。
何しろ、”ララシュ事件”では『自由フランス(=ド・ゴール)の暴走』という形で決着をつけたのだから、それを理由にというのもできないだろう。
おまけに、
しかもタチが悪いのは、この話が正規の外交ルートで大統領に届くタイミングを見計らうように、様々なマスコミからリークされていた。
米国のグリーンランド侵攻と英国のアイスランド進駐で米英の緊張拡大と、それが戦端が開かれる可能性に恐怖していた米国市民(=有権者)にとり、それは最大の福音となったのだ。
何しろ、「英国からの香港租借権売却の提案」は、英国から「米国とこの問題で争うつもりはない」という明確な意思として捉えられたからだ。
しかも、英国政府からの正式な表明もそれを裏付けていた。
であるならば、後は米国がこの英国の香港租借権売却を受諾するか拒否するかなのだろうか……
「受けるしかあるまい。それが例え不本意であっても」
表情からわかる通り、反日大統領でアカとの親和性抜群のルーズベルトとしては、「日本勢力のすぐそばの土地に米国拠点を増やす」というのはあまり乗り気になるものでは無かった。
しかし、地政学的な理由で「南中国に米軍が新たな拠点を持つメリット」を声高に叫ぶ米軍上層部、また国民党支配地域の拡大を狙える千載一遇のチャンス到来と息まく中華民主共和国のロビイスト、更に更に日本への中国大陸産出鉱石輸出で荒稼ぎをする米国鉱業資本からの突き上げを食らったのだ。
特に中国大陸での地下資源の採掘拡大を狙う鉱業資本からの要求が厄介だ。
今や彼らは対日輸出額の稼ぎ頭、対日貿易黒字大幅拡大の立役者であり、急速にその資本力を充実させてきている。
また、その巨大資本から捻出される政治資金は、共和党・民主党関係なしに政治家たちに流れ込んでいるのだ。
そんな彼らが、
『なあ、この英国からのバーゲンセールに乗らなければ、今年(1944年)の大統領選挙がどうなるか分かってるよな?』
と言われてしまえばぐうの音も出ない。
低空飛行を続けている支持率が、グリーンランド侵攻でほんの僅かに持ち直したとはいえ、米国鉱業資本の選挙資本が全て対立候補に流れてしまえば、選挙結果は今からでも手に取るように分かる。
確かにルーズベルトには米国マスコミやら何やらを実効支配する”赤いフレンズ”が味方するだろうが、『札束で殴る』のが礼儀の資本主義国家で、政治力が資本力を上回るのはかなり難しい。
マネーパワーを物差しにするなら本体が暗部の赤化感染源たちは、表社会で大金を国家予算レベルで大盤振る舞いできる大資本には太刀打ちできないのだ。
結局のところ、合衆国大統領の価値というのは『いかに米国資本を儲けさせられるか?』、『有権者の懐をどれだけ温めさせられるか?』という事に終始する。
そういう意味において、このルーズベルトが抱えるジレンマは、皮肉であると同時に順当でもあった。
そして根本的な事を言えば、”この世界線”においてはルーズベルトが大好きな共産主義・民主主義を問わない中国に、朝鮮半島まで含めて『一切日本が統治に関わっていない』事が根本的な問題でもあると言えた。
何しろ、東西中国から直接でなくわざわざ『在中米国資本から間接的に購入する』事により、一切中華の大地に踏み入ることなく、米国企業の「金払いの良い、取引甲斐のある貿易相手」となっているのだ。
実際、「米国では安いどころか需要が無いので価値がつけられない鉱石」まで良い値段で買ってくれる(※本来の、あるいは未来の価値を考えれば転生者的には採掘手間賃を払ってる感覚)なので、本当の上客なのだ。
特に最近、日本皇国が輸入量を伸ばしているのは”モナズ石(モナザイト)”なのだが……
厳密には、
・ガドリニウムモナズ石
・ランタンモナズ石
・ネオジムモナズ石
・サマリウムモナズ石
などの区分が含有レアアースによってあるのだが、精製方法を知らない今の米国鉱業資本にとっては全て”モナズ石”という見分けのつかない石ころであり、重要なのは「日本に売れるかどうか」だけだ。
実際、このような理由で区別がつかないので日本に輸出されるモナズ石は文字通りの玉石混交状態なのだが、それはそれとしてもルーズベルトにとり残念なことにこの取引は日米にとってまさにWin-Winの関係だ。
であるならば、「日本に売れる鉱石や地下資源」を求めて香港を起点に中国南部に進出、国民党支配領域を広げると同時に採掘権を確保しようとするのは当然であった。
結局のところルーズベルト政権の米国は、「英国のアイスランド進駐と”
つまり『振り上げた拳の落とし先』を見つける以前に、英国相手に『拳を振り上げることすらできない』のが今の米国だったのだ。
絶対、チャーチルの酒量と消費葉巻本数が爆増したと思う(挨拶
という訳で、クルス提案の「英国のアイスランド進駐と香港租借権売却」のエピソードでした。
ちなみに裏で糸を引いてたのがクルスだということはアメリカにはバレてませんw
厳密には、独英の策謀だとは気づくでしょうが、まさかその発端がサンクトペテルブルグ大公だとは想像もつかないでしょうね~。
戦後の歴史家が頭抱える、「クルスの死後に明らかになる裏業績」がまた増えたというw
ただ、今回の一件は結果としては回り回って日米にとってWin-Winの得しかなく、独英デンマークも美味しいという「外交とはかくあるべき」というお手本のような展開です。
ついでにアイスランド進駐という緊張も、間を入れずに行われた香港租借権売却とそれを受諾した米国という図式が良いガス抜きとなり、状況を知らぬ英米市民にとっても「英米軍事衝突の回避」ととらえられるので、安心材料になるのではないかな~と。
ルーズベルトも面白くは無いでしょうが、これでまた少しは”ノルマンディー”前に支持率が回復するのではないかな~と。
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