こんな拙作を待っていると言っていただけて、嬉しかったです。
「色々と」忙しかった中、どう話を薦めようかな、とある程度再考していたりしていました。
残弾ゼロですので、続きはのんびりお待ちください。
生存報告の意味も込めて、投稿ですw
四宮邸、かぐや様の部屋の窓。それに切り取られた小さなビル街の夜空。一人取り残された者の心情を描いた絵画の様なそれを、年に一度小さな火の花が彩る。
遠雷の様な、それでいてパラパラと散って行くような破裂音が光から大分遅れて耳に届く。
花火大会かぁ……。
花火大会の会場で見たとしたら、どんな感じなんだろう。そうふと思ってみて、そう言えば私自身、花火大会なんか見に行ったことが無いなと思い出した。
かぐや様にお仕えする前は、まだ小さすぎたし、両親も忙しかったのでどこかに連れて行ってもらえた記憶は殆どない。もしかしたら私自身覚えていない位小さい頃に連れて行ってもらった可能性もあるにはあるけど、記憶の限りでは、こんな大きな花火を見に行ったことは無い。
かぐや様にお仕えしてからは、当然主を置いて花火見物をしに行く訳にもいかない。意地っ張りで寂しさをおくびにも出さないかぐや様の側に仕えていたから。
ここから会場まで車で10数分で付くでしょう。手配したタクシーは評判のいいドライバーを見繕ってもらいましたし。
今頃はかぐや様もこの花火を生徒会の皆さんと一緒に見ている頃だろうか。
もっと大きな花火を、もっと大きな音で。
再度、切り取られたビル街の夜空を火の花が彩る。
小さく彩られた一瞬の景色に見とれる。あぁ、私も誰かと花火を見に行きたい……自分の心の中にある欲求が頭をもたげる。
幾らかぐや様の姉ポジだったとしても、私だって年頃のJKだし、好きな人と一緒に花火を見に行って屋台でかき氷を食べたりしてみたい。タコ焼きだって食べてみたいし、綿菓子やりんご飴を食べて真っ赤になった舌をべーってやって見せ合ったり。
ふと見せ合うシーンを妄想して、何故か目の前に雲鷹様の幻想が浮かんで一瞬呼吸が止まる。
特別な意味がある訳じゃない、と思う。ただこの所、雲鷹様について考える事が多かったから。
……なんとか立て直しても、もう妄想に浸る心情にはなれなかった。
雲鷹様、か。
心に浮かぶのは雲鷹様がアメリカに発つ前のあの光景。珍しく、扉の外に護衛の八雲ーズはおらず、ドアも少し開いていた。
屋敷内とは言え物騒な。
雲鷹様の身に万が一があったら、それだけで四宮の海外事業は大混乱を起こすし、それは容易に世界経済に深刻なダメージを与える事になる。雲鷹様の個人資産も既に四宮家で並ぶ物が無いほど莫大なものだけど、彼が四宮家の海外部門で持っている権限、利権はちょっと理解できない水準に達している。
もう一つの四宮家と言っても過言じゃないみたい。
彼が急にいなくなるだけで、少なくともアメリカとヨーロッパを中心に経済はしばらく大混乱から立ち直れなくなるだろう、と、八雲ーズが胸を張って話していた。そして彼には後継者も配偶者もいない。
彼亡きあと第三者を納得させる事のできる後継者は、恐らくはこのまま行けばかぐや様になるかもしれないわね。
……亡き、なんて言ったけど亡くなるどころか老いる、というか成長途中で止まってしまっているように見えるから、そんな話は出てくることも稀みたいだけど。
かぐや様が後継になる話は兎も角、世界経済の混乱、その辺は本当にそうなのか、私には分からない。八雲ーズが私をからかっているだけかもしれない。
ただ、雲鷹様がMIPである事は間違いない。
だから屋敷の中とは言え、周囲の者は気を抜く事は許されないし、せめて戸締りくらいはちゃんとしなくては、と少し開いたドアを閉じる為に近づいた。
その日の光景は、未だに理解できない。あれは……何だったのだろうか。
ただはっきり言えるのは、その日も私は疲れていたという事。そして部屋の中に少なくとも二人、もしかしたら三人の誰かがいたように見えた。
顔は見ていない。ただ二人の後姿は雲鷹様にそっくりで、声も……。
あの日以来、時折その光景が頭に浮かんで私を悩ませる。
普通なら「私は疲れているんだな。」で終わってしまう話なんだけれども、相手はあの雲鷹様。私は違うと信じてはいるけど、経済界の界隈では仙人ではないかと、いや彼は魔王だ、などと冗談半分。そして半分は真剣に噂される人物なのだから。
……いや、でもあの後気が付いたら自分の部屋の前に立っていましたし、やっぱり疲れて変な幻覚を見たのかもしれません。ショックで呆然としながら歩いていた記憶なら、おぼろげにあるのですが。
無論、雲鷹様に直接問いただす等出来る筈もありませんし。笑われて種明かしをされて正気を疑われて心配される、までのフルコンボを食らう所まで容易に想像がつきます。
それに万が一、私の見た者が本当の事だったとしたら、妙に納得してしまうのも怖いものでして。
……何に対して怖いんだろう。雲鷹様がもしかしたら普通の人間じゃないかもしれない事が怖いの?ううん、雲鷹様は怖くないわね。
雲鷹様はどうして年を取らないのかしら。雲鷹様は私が年をとってもお若いままなのかしら。
そんな想像は当然、単なる妄想に過ぎないわね。普通なら。だから真剣に悩んだり怖かったりすることは無い、はずなんだけど。
……あはは、ダメダメ。そんなあり得ない妄想に時間を使うよりもっと建設的な事に時間を使わないと勿体ないわね。
あの日私は疲れていた。雲鷹様に正気を疑われるような事は話せないし、変に思われたくないもの。
まぁ、種明かしをされる前に少し調べる程度の事はするけど、あくまで主の兄様の周辺警備に役立てる為の情報収集だから、これは。
ん……種明かし?
あ、……もしかしたら。雲鷹様と言ったら仙人ネタと手品の人です。社交的には、ですが。
そしてもう一つのヒントは、普段なら部屋の外で警戒している筈の八雲ーズの面々がドアの側にいなかった。
部屋の中には雲鷹様に似通った人影が少なくとも2人、もしかしたら3人いた。そして普段からドアの外で待機している人員は2人。私は二人の顔を確認していない
どうやって声を重ねる事が出来たのかは、多分単純な答え。普通に録音しておけば問題ない筈。
気づいてみれば単純な答え。今迄、私やかぐや様がどんなにおねだりしても手品の種だけは教えていただけませんでしたが、これはチャンスかもしれませんね。
あの雲鷹様が初めて見せた隙かもしれません。
雲鷹様がやる手品はほぼ全てがテーブルマジックと言われる、所謂小規模な手品ですが、先日、かぐや様に仙人ネタを封じられてから、残ったネタの新規開発に大掛かりな手品を模索中、とかかも知れませんね。
大規模なダムも蟻の一穴で崩壊する事もある、と聞きます。ここを起点に今まで謎でしかなかった手品の種も判明するかもしれません。
「ゲームセットです。」
その声が、いつの間にか窓からの花火から意識を離していた私の思考を断ち切る。
本家付きの怖い方、とかぐや様に呼ばれている使用人が後ろから声を掛けてきた。溜息を外には出さずに飲み込み、振り返らずに答える。
「バレましたか、かなり自信はあったのですが。」
「いえ、全く気が付きませんでしたよ。今、雲鷹様がかぐや様に付けている護衛の者たちから連絡があって初めて気が付きました。
貴女も雲鷹様とは別に何人か早坂家の手の者を付けていますよね。」
いくら主の希望を叶えるためとは言え、無防備に年頃の女の子を一人、街の中に放り出すような事はしない。雲鷹様が出国する前に手を打っている事は気が付いてはいたけど、此方も打てる手は打っておくのは当たり前。
「追わないんですか?」
彼女達からすれば黄光様から叱責を受けてもおかしくない事態。いや、かぐや様はそこまでされるほど大事にされているとは思えない、けど名家の面子と言うモノもある。
四宮の紅一点、一人娘が変な事件に巻き込まれる訳にはいかないという事情も分かる。籠の中の鳥にはそうなるだけの事情があるという事。
「私達も鬼ではないのです。心配なのは花火大会の渋滞で警備の者の配置が上手くいかない事ですが……。
既に雲鷹様が交通渋滞を想定した警備プランを用意していらっしゃったらしいですから、私達はここでお役御免、漸く一息つけるという事です。」
かぐや様には決して見せない様な疲れた表情をして、隠しもせずに溜息をもらす怖い方。いや、なんかかぐや様が名前を呼ばないから私まで怖い方、強い方で覚えてしまったじゃない。
いや、そんな事はどうでもよくて、その怖い方の言葉にハッとする。あぁ、花見大会当日の渋滞の可能性を忘れていた。かぐや様にはタクシーを手配しておきましたけど、ほぼ確実に渋滞に巻き込まれるでしょう。
不味い、当日の交通状況を考慮に入れなかったなんて考えが浅かったわね。無意識にスマホでかぐや様のTwitterを確認する。
かぐや様の追加の呟きも会長さんの書き込みらしきものも確認できない。見ていないのか、見る余裕がないのか。かぐや様は確実に後者よね。
ただ、もう今からでは私に打てる手はない。まぁ、それでも……。
花火大会に間に合うかどうかは、もう非常に微妙な状況になりはしたけど、なぜかそれほど心配する気にはなれなかった。会長さんはあれはあれで只者じゃないですし、かぐや様も渋滞の中タクシーで大人しく花火大会が終わるのを待つような方じゃない。
窓から飛び出していくときのかぐや様の笑顔を見ていたから、不思議と大丈夫だと思える。
間に合っても、間に合わなくても。
きっと、彼らは彼等自身で色々乗り越えるでしょう。
……おそらく周囲に雲鷹様の手の者もいる訳ですし。
気が付くと、私の後ろにいた筈の怖い方の使用人は姿を消していた。名前は確か後藤とか何とか言っていたような気がしたけど、あれ?それは強い方でしたっけ?
不味い、本格的に怖い方と強い方で覚えてしまっていて名前が出てこない。
「ふむ、日本で花火を見るのも何十年ぶりか。こういう風に窓から覗く花火にも中々風情があっていいじゃないか。」
ふと、後ろから掛けられた二人目の声に、一瞬跳ねそうになる身体を押さえつけ、私は振り返りもせずに言葉を返す。
「お帰りなさいませ。」
視線は花火で彩られた絵画から外さずに。振り返りたくなる気持ちを必死に抑えながら。警備の方からかぐや様に関して報告を受けているかもしれませんけど、まだ受けていないかもしれない。
意外と雲鷹様は面倒くさがりだから、大きな問題が起きていなければ報告は後回しにされることもある。
さて、雲鷹様は、私が早坂だと気が付くかしら?そんな悪戯心がほんの少しあったから。
最初に作った大体の話の流れを、その後確定しつつある複数ルートに合わせて微調整して、もう一度流れを敷きなおしました。
久しぶりに書くと何となく感覚が狂いますね。少しおかしい所があるかもしれませんが自分では良く解っていません。
久しぶりに読専にもどって仕事三昧、読書三昧していました。
EDFに入隊して5作目の世界の地球を少しの間、守っていたのですがインフェルノの蜂に数週間ボコボコにされて大人しく続きを書き始めました。
おのれ、蜂め!