【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
さて感想戦である。
と言っても、恵子もお姉ちゃんもいない。
恵子はまたお豚さんたちの元に帰っていったし、お姉ちゃんはそもそもゲストとしてわたしの配信に参加するくらいだ。だから、感想戦の相手はお兄ちゃんたちということになる。
今日はなんと!――というほどでもないが、久しぶりに素顔で配信をしてみることにする。
お兄ちゃんたちはほとんど素顔を見ているだろうし、見てない人は狐のお兄ちゃんくらいか?
「というわけで帰ってきたよ。ざ~こ♡」
『おつかれ』
『ていうか素顔配信かよ。大丈夫か?』
『メスガキが素顔になるといまいちくそおおおおって気分にならんのよな』
『かわいすぎてちょっとなーw』
『オレ氏もそう思います』
『うひゃあ、マジでイソラちゃんカワヨ……¥500』
『比較的新参の人かと思ったら狐きゅんじゃん』
「あー、この姿を直接見るの初めてのお兄ちゃんたちもいるかもね♡ お兄ちゃんたちなら見られても別にいいけどね♡ どうせ小学生には手を出せない雑魚お兄ちゃんたちばっかりだし♡」
『くそおおおおお』
『くそおおおおお』
『久しぶりのくそおおおおおだなw』
『メスガキは非メスガキCOしちまってるから、まあいまさら感あるわ』
『で、なんで顔出ししたん? ¥1000』
「べつにたいしたことじゃないんだけどね」
わたしは背後に置いてあったエレキギターを手に取る。
カメラ調整ヨシ!
そして、いつかのときのように靴下をぬぎぬぎ。
生足をみんなの前にさらけ出す。
『えちえち』
『これはメスガキw』
『なんでそこで脱ぐんw』
『もはやメスガキへの信頼度が高すぎて不安感はないが』
『ふーむ?』
「あのね。ここ、下にキーボードがありまーす♡ これを足で弾きながら、ギターを演奏しながら歌うという寸法だよ♡ いくらなんでも足指はメスガキモードじゃ表現できないからね。どうだすごいでしょ♡」
『すごーいw』
『いやてっきり感想戦へと移ると思ってたんで困惑しているオレ氏』
『イソラちゃんカワヨ』
『魅了属性100パーセントだからな。メスガキっぽさはないが』
『あのさぁ……この小学生いまさらながら天才すぎひん?』
演奏なんて単なる技術だからね。
経験値さえ積めば、誰でもってわけではないが、うまくなる人がほとんどだよ。
まあ素顔を見せたのは、お兄ちゃんたちに仮面を脱いでお礼を言いたかったというのもある。
ちょっと照れくさかったんで、演奏を理由にしたんだ。
――メスガキ演奏。
「どうだった?」
『いやなんかもうワケがわからないというか』
『変態プレイすぎて逆にキモイww』
『頭ン中ぐちゃぐちゃ丸だよw』
『演奏後のハァハァしてるイソラカワヨ……』
『さっきから魅了されまくってる人がいますわよ』
『で、そろそろどんなふうに勝ったのか。教えてくれるんだろう? ¥1000』
やっぱり、切り込み隊長はMSGK泣かし隊の兄貴だった。
うむうむそうだよね。
しかし、どう切り出したものか。自分の中でもまだ整理がついていないからな。
「あー……とりあえず、休憩後についてなんだけどね。淫猫を押し倒してきたよ」
『ひゅー』
『それはまぎれもなく奴さ』
『狼の所業。でもそれは猫噛みなのでは?』
『メスガキ属性のほうで攻めたわけか』
『しかし、そんなんで勝てるわけないと思うんだが』
「あのね。にわかに信じがたいことかもしれないけど、淫猫ってマゾブタだったんだよね」
『マゾブタかよwww』
『へえええええあああああああああwwwwwwww』
『お豚さんを囲っているのは猫ではなくメスブタだったのかよwwwwww』
『草あんど草』
『お姉ちゃん呼び強要したりもしてるのにか?』
「まあ、さでずむとまぞひずむってコインの両面だからね。たぶんどちらも淫猫の本性だと思う。ともかく、ちっちゃい女の子に罵られたいという、わたしからすれば何とも言えない属性持ちの女の子だったわけ」
『それはメスガキ特攻だわ』
『妹Ⅱはメスガキがメスガキしているの見て興奮してたんだなw』
『だからコラボ配信もちかけたりしてw』
『特殊性癖すぎてそれは想像できんわ』
『あ、でもこれで妹Ⅱは完全攻略したってわけか?』
「まあそういうことになるね。時々踏んであげたら言うこと聞くらしい」
『ひええええ』
『この村やっぱり焼き払うべきなのでは?』
『相対的にイソラが真っ白に見えるレベルw』
『結局、妹Ⅱも手に入れたいもの手に入れちゃってるわけか。¥100』
『妹Ⅱを敵とみなせなかった時点で、そりゃそうなるよ』
「まあ――、度し難い趣味を持ってるのはわたしも同じだしね。ただお姉ちゃんを苦しめたのは許せないのでお仕置きしたほうがいいのかなとも思う」
『お仕置きしたら喜ぶのがマゾブタだぞ』
『真のお仕置きは家からの追放だろうが、さすがにそれしたらゲームが嘘だったとバレてしまうしな。淫猫は本質的にはメスブタなのかもしれんが、やはりロールとしては猫よ。¥100』
『だな。まあ家族として矯正していけ』
『飼い主としての責任やなw』
「そうするほかないよねぇ」
勝利のあとに寂寥さを感じるとは業が深い。
※
あれから何度も夜を越えて再び朝が巡ってきた。
と言っても、わたしはまだまだ小学生だけどな。
お姉ちゃんボイスを止めて、わたしはうにょ~んと伸びる。
「ふぅ……、さて、今日もお姉ちゃんライフを始めます」
今日のコーデはどうしよう。
やっぱり、お姉ちゃんと同じリンクコーデがいい。
でも、お姉ちゃんはどう着替えてくるかな?
――今日は恵子が着替えを手伝う日。
でも、恵子の意思だけで決まるわけじゃない。
お姉ちゃんもその日の気分があるし、どんな装いがいいか自分の意見を積極的に出そうとしているように思える。たぶん、お姉ちゃんもゲームを通じて少しだけ前に進んだのだろう。
さて、そうなると予想されるのはどんな格好か。
わたしはお姉ちゃんの姿を想像するのが少し楽しかったりする。
お姉ちゃんをヒモにしたいという気持ちは今も変わっていないけれど、それと同時にお姉ちゃんが前に進んでわたしが追いつこうとするのもいいんじゃないかと思えてきた。
ヒモにしたい/ヒモにしたくない。
依存させたい/依存したい。
狼になりたい/妹でいたい。
そんなアンビバレンツがこころが、わたしの中で同居している。
でも、そんな想いも結局のところは「お姉ちゃん大好き♡」という言葉に収斂される。
「たぶん、これかな?」
今日は少し暑い。そしてみんなで遊園地にお出かけする日だ。
出無精なお姉ちゃんを説得するのは簡単だった。わたしと恵子の両方から説得されれば、お姉ちゃんも頷かざるをえないからな。お姉ちゃんも少しカジュアル気味な恰好を選ぶんじゃないだろうか。
だから涼し気なワンピースを着てみた。
青を基調としたセーラー服の上着部分を伸ばした感じ。
大き目のリボンが胸元についていて、今日もわたしは超絶かわいい。
こういうロリコン殺しな服は、正直あまり趣味ではないけれど、恵子はどちらかと言えばかわいい系が好きなようだからな。わたしがそう思うのを予想して、恵子がお姉ちゃんの意思を誘導しようとするのは考えられる。マゾブタではあるけれど、お姉ちゃんぶりたい特殊なお豚さんなのである。
ドアを開けて、階下へ降りた。
まだ少し暗い部屋の中にカーテンを開けて光を取り入れる。
それからいつものように、朝ごはんを作り始める。
今日のお姉ちゃんは何が食べたい気分だろう。
お姉ちゃんの喜ぶ顔が早く見たい。
いっぱい食べて満腹になって溶けた顔になるのが好き。
「ふんふーん♪」
お姉ちゃんはまだ料理ができない。
けれど、少しずつ手伝ってくれるようになった。
具体的にはピーラーで人参の皮を剥いたりするレベルだけど、前よりもちょっぴり実の部分が残るようになった。
階段を降りてくる音がする。
わたしが視線をそちらにやると、来たのは恵子だけだ。
「お姉ちゃんは?」とわたしは聞いた。
「はい。いくつかの選択肢を与えて、そこから選んでいただくようにいたしました」
ゾーン進行か。
いくつかの灰の中から吊っていく手法のことをゾーン進行という。
我ながら頭人狼だなと思うが、そうなると、やっぱりお姉ちゃんの意思が重要だ。
お姉ちゃんがどんな格好で降りてくるか、わたしはウキウキした気分になる。
「ごくろうさま」
わたしはぞんざいに言い放った。
「はい♡ またイソラちゃんの椅子になりたいです♡」
恵子の言葉の意味は、文字通り恵子が椅子になることを指す。
ドMの思考はよくわからないけれど、よつんばいになって、わたしが座ると愉しいらしい。
いや、マジで意味がわからんのよ。
でも、時々はエサを与えないと、鳴き声がうるさいからな。
「考えとくね」
「よろしくお願いしますわ。それと、おはようございます」
「うん、おはよう。恵子お姉ちゃん」
「ところで、本当によかったのですか?」
「ん。なにが?」
「遊園地。貸し切りにしなくてよいのかという話ですわ。お姉様は雑踏が苦手な方でしょうから。開演前なら数億ほど出せば、おそらく貸しきりも可能ではないかと」
「恵子お姉ちゃん」わたしは指先を突き出す。「めっ!」
「あ♡」
「わたしに叱られるためにわざとそんなこと言ってないよね」
「いえ、そんなことはありませんわ。ちょっとお腹の奥がうずいたくらいです」
「はぁ……。まあいいけど、お姉ちゃんだって成長してるんだからさ。そんな無茶苦茶なことしないよ。むしろ小学生妹が遊園地貸し切るほうがヒモっぷりに拍車がかかってドン引きすると思うけどな」
「そうですわね。かしこまりました」
「うむ。よろしい」
「はぁん♡」
わたしが恵子をぞんざいに扱うたびに、恵子は身をふるわせる。
本当に度し難いな……。まあ、人のこと言えないけど。
「あ、それから鍵渡しておくね」
「よいのですか?」
「うん。わたしだけ部屋の鍵を渡してないの。なんだか仲間外れみたいで嫌だったから」
「ありがとう存じます」
恭しく鍵を受け取る恵子。
それはエサを与えられた豚のごとく――、
なんてことはなく、キラキラしたエフェクトを巻き散らかすただの小学生なんだよな。
やはり、最後の最後で恵子を切れなかったのは、わたしの甘さが原因というより、転生により加算された経験値というものかもしれない。
家族――なんてものは幻想で、儚く、散りゆくもの。
だから、あえて自分の手からとりこぼしてしまう必要はないと思っている。
たとえ、厄介で爆弾のような存在でも、わたしは抱えて生きていく。
家族はひとつの宇宙みたいなものだから。
わたしの大事な宝石箱だから。
それが、わたしの答えだ。
※
朝食を作り終わった頃に、ようやくお姉ちゃんが降りてきた。
やった! 当たり!
お姉ちゃんが着てきた服は、青のロングワンピース。
足首まで隠れるくらい長いからニアミスだけど、まずまずの当たりといっていいだろう。
「お姉ちゃん。おはよう♡」
「うん。おはよー」
ちょっとまだ眠そう。
でも、そんなお姉ちゃんもかわいい♡
家族みんなで食事をする。
あれから少し変化があったのは、テーブルをラウンド型にしたことかな。
丸いテーブルだと、円卓の騎士の気分。
これこそが三国鼎立、なんてね。
ともかく、ふたりのお姉ちゃんたちの顔が見れるので、これが一番安定しているんだ。
「今日もおいしいねぇ。イソラちゃんありがとう」
「ううん。お姉ちゃんありがと♡」
食事も終わった頃。
糖分が脳内に入ったことで、朝に弱いお姉ちゃんはさらにとろけた顔になっている。
こんな状態で本当に大丈夫かな。
お姉ちゃんといっしょに外に行くのは久しぶりなんで楽しみなんだけど、お姉ちゃんが嫌ならわたしは行かないほうを選ぶ。お姉ちゃんのペースにあわせて、ゆっくりと――。
「お姉ちゃん。今日は人混みの中に行くことになるけど大丈夫?」
「う~、うん! 大丈夫。お姉ちゃんがんばるよ」
「もし、お姉様が倒れられたら鳳寿院家のスタッフがバックアップするので大丈夫です」
「大丈夫だよぉ。お姉ちゃんだって大人なんだから、そんな大事にしないでもきちんとやるよ」
「それは……まあ、わかりました」
わたしが視線を飛ばすと、それだけで恵子は控えてくれた。
考えるまでもないことだが――
いざというときはグラサンつきの黒服たちが駆けつけるんだろうな。
いやあるいは、高校生の恰好をした凄腕探偵の孫あたりがくるんだろうか。
いずれにしろ――、
わたしの保護者はお姉ちゃんだけだ。
「お姉ちゃんが守ってくれるなら安心だね」
そう言って、わたしはお姉ちゃんの大きなお胸にダイブした。
生地の薄いワンピースはお姉ちゃんの弾力と甘い匂いをわたしの脳内に直接送りこんでくる。
「守るよ。だって大切な妹だもん」
「お姉ちゃん大好き♡」
お姉ちゃんにCOする。
お姉ちゃん好き♡
お姉ちゃん好き♡
お姉ちゃん好き♡
いくら言葉にしても足りないくらいだ。
だって、お姉ちゃんはいつだってお姉ちゃんで、わたしはお姉ちゃんといっしょにいられるだけで嬉しい。生きていてよかったって思える。永遠に変わらないものはないけれど、永遠に変わりつづけるという永遠はあるよ。わたしはお姉ちゃんという永遠を信じてる!
だから――、
玄関のドアを開けて、お姉ちゃんを引っ張って。
子どもがはしゃぐみたいに駆け出して。
そしてわたしは叫ぶんだ。
「わおーん!」
狼の遠吠えは澄み渡る青空の向こう側へと吸いこまれていった。
これにて完結です。
村建て同村ありがとうございました。
いえ、ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
あとは番外編を書いて終わろうと思いますが、いったん完結とさせていただきます。
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どれも得難い経験になりました。
感謝の言葉しかありません。
本当にお読みいただきありがとうございました。