【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】 作:いる科
ヒーロー殺し・ステイン。
本名、赤黒血染。
オールマイトのデビューに感銘を受けヒーローを志す。
私立のヒーロー科高校に進学するも、[教育体制から見えるヒーロー観の根本的腐敗]に失望。
一年夏に中退――。
十代終盤で「英雄回帰」を訴える街頭演説活動を行うも「言葉に力はない」と諦念。
以後の十年を「義務達成」のため、独学で殺人術を鍛錬する。(この間に両親は他界、事件性については無しとされている)
「英雄回帰」――「ヒーローとは見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない」
現代ヒーローは英雄を騙る偽物。
粛清を繰り返すことで、世間にその事を気づかせる。
……しかし彼の凝り固まった狂気の思想は、一人の少女によって溶かされた。
[ここから録画開始]
ヒーロー殺しステインと、それを取り囲むヒーロー達が映っている。
ステインは凄まじい形相で叫ぶ。
「偽物は……正さねば……ッ!! 誰かがやらねば……血に染まらねば……!! 来い――来てみろ偽物共ッ!! 俺を殺していいのは――本物の
その場の全員がステインの圧に固まる中、一人の少女が飛び出す。
少女はステインに抱きつく。
そのまま幼子をあやすように、声をかける。
「もう――大丈夫だよ」
ステインは毒気を抜かれた様子で、困惑する。
ヒーロー達も何が起きているか理解出来ずに、そのまま固まっている。
少女がステインの肩を掴み、座らせる。
ステインが彼女に抵抗する様子はない。
「……何の、つもりだ」
困惑を口にするステイン。
少女はステインを慈しむような顔で眺めると、頭を撫で始める。
「辛かったよね。苦しかったよね。……一人で、誰にも理解されずに世界のために戦ったんだよね――でももう、大丈夫。ボクがいるから。ボクがオールマイトを継ぐから、もう平気。無理しなくていいんだよ」
「な、に…………? おまえが……だと……? ――口だけなら、なんとでも言える――」
「……口だけに、見える?」
「――――おまえは……なんだ? 一体――何故そんな顔をする。俺は……」
「ボクは全員救ける。君に襲われた人も、君の事も。だから――もう、休んでいいんだよ」
ステインが涙を目にうかべる。
少女がそれを優しく拭き取る。
「…………初めてだ。オールマイト以外に……殺されて良いと思ったのは」
暫くの沈黙。
相変わらず、ヒーローたちは動けず。
「最後に……おまえの名前を教えてくれないか」
「――レイジュ」
「…………そうか。いい名だ」
ヒーロー殺しステインはそのまま抵抗することなく、ようやく動いたヒーロー達に身柄を確保される。
[録画終了]
レイジュ。
本名、五条玲珠。十五歳、女性。
幼少期、母が個性婚によるトラブルで死去。
父は逮捕され、現在も獄中で服役中。
雄英高校ヒーロー科一年首席。
雄英体育祭のエキシビションマッチにてオールマイトに勝利し、現在ではネットを中心に絶大な人気を博している。
ヒーロー殺しステインを最小限の被害で捕らえたことを評価され、プロヒーロー免許を取得。
ヒーローデビューの最年少記録を更新する。
[以下 テレビのインタビュー記録]
「オールマイトは、私が来た! と言いました。……でも、彼ももう歳です。エキシビションマッチとはいえボクに負けたのは、老いというハンデがあったからに他なりません」
「ボクは平和の象徴を継ぎます。ボクの個性があれば、助けを呼んでいる人の元へ瞬時にかけつけ、凶悪なヴィランの確保を迅速に行うことが出来ます」
その後、彼女の個性【無限】と具体案についての説明。
位置情報を即座に彼女に送信し、呼ぶことが出来る機能を持つ専用アプリ『れいじゅちゃんたすけて!(仮)』を八月までには開発するとの事。
――。
――――。
以上が、今あらゆる動画配信サイトにおいて最高の伸びを記録している……。
『ヒーロー殺しステインと、銀氷の女神レイジュ』である。
バズった原因には、彼女の容姿の完璧さもあっただろう。
小汚い、血に濡れた――死神のような男を。
他のヒーローの一人も動けぬ圧の中で、たった一人『救うために』動いた。
その透き通った氷のような――それでいて温かい青い瞳に、動画を見た者の殆どが心を奪われた。
それが憧憬であったのか、恋慕であったのか、劣情であったのかは……まぁ、人によるだろうが。
兎にも角にも、この動画は瞬く間に日本中に広がり、世間を賑わした。
あの狂気に身を任せたステインでさえも認める新たな平和の象徴の誕生だ――と。
そして、この日を境に。
「商売あがったりだクソッタレ!!! ちくしょおォ……ッ!!」
「オールマイトさえ、オールマイトさえ消えてくれればって――クソが!! 何が女神だ、俺たちにとっちゃとんだ死神じゃねえか……ッ!!」
「…………やめだ。引退だ……。あの時代は……ヴィランの時代はもう、二度と戻って来ねえ。アレの顔を見たか? ありゃ人間の顔じゃねえよ――神だ。比喩でもなんでもなく、あいつはきっと……そういう星の下に生まれたタイプの人種だ」
ヴィランによる犯罪が――あからさまに減ったのである。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
私は――【個性】とは、宿命であると思っている。
個人個人の【個性】は最早、代用が利かないレベルまで複雑化が進み。
しかし今の社会は、これを潜在的なリスクとして使用を禁止し、遠ざけている。
……宿命から目を逸らしているのだ。
ただし――ヒーローと、一部のヴィランを除いて。
人を助けられるだけの強さを持って生まれた。
だから人を助ける。
――それを、宿命といわずしてなんとする?
人を傷つけずにはいられない個性を持って生まれてしまった。
だから人を傷つける。
――それを、宿命といわずしてなんとする?
では、私の宿命はなんだ?
個性を見通すことの出来る【神眼】を、突然変異によって手にした私のするべき事は――。
疑問のまま、ただ己の出来ることをして生きてきた。
私はただ人の【個性】を暴き、過去を覗くことが出来るだけの一般人だった。
主観の視点で覗くことが出来るため、個性使用の許可をとってカウンセラーの真似事などをしていたが。
迷子を助ける。
お婆さんに席を譲る。
人の悩みを聞く。
一般人でも出来る、当たり前のことだ。
だがそれもまた宿命なのかもしれないと、思っていた。
ナチュラルボーンヒーロー、オールマイト。
平和の象徴。
全てを救う宿命を持って生まれたであろう彼に、私は興味が湧いた。
彼が、宿命のままに動き生きているように見えたからだ。
彼の生き方は、私の望む人の生き方そのものだったのだ。
私の【神眼】はテレビ等を通して使うことは出来ないから、あの手この手を使って直接彼の元に赴いた。
私はただの熱心なファンを装ってサインを貰い、彼を【神眼】で視た。
直後私を襲ったのは――絶望と、そして希望だった。
AFOなる魔王の存在と、それに対峙するOFAなる勇者の存在。
コミックの読みすぎだ、とからかわれてしまうかもしれないが。
私は本当に視たのだ。
一見平和を取り戻したかのように見える、世界の裏側を――世界の全てを覆い尽くす、あまりに冷酷な闇を。
それだけならば、まだ良かった。
なぜなら、それだけならば私の宿命とは関係がないからだ。
――【個性】の覚醒が、なければ。
【個性】というのは、得てして成長する。
成長の種類は様々だ。
単に増強するもの、解釈を拡大するもの、能力そのものが増えるもの――。
私の場合は、最後のケースだった。
オールマイトの【個性】を視たその刹那、目を裏返しているのに見えている、というような視界が私の中にあった。
表では過去が。
裏では――。
間違いなく。
未来が見えていたのだ。
私の【神眼】は、個性因子を通じてその人物の過去を見通す――それだけのもののはずだった。
原理は分からない。
未来など確定していない可能性に過ぎないのだから、ただの妄想である可能性も捨てきれない。
――と、普段の私であったならそう切り捨てただろう。
しかしそこには、妙な確信があった。
これはこのままでは必ず起こる現象なのだと――脳に押しつけるように。
そして思わず私は、それを口に出した。
貴方はこのままでは、死んでしまうと。
巨悪により腹をぶちまけられ――死んでしまうのだ、と。
しかしその話が信じられることはなかった。
私の存在はただ、オールマイトのワーカホリックを心配する熱心なファンとして受け取られた――が。
その瞬間。私の視た未来が変わったのだ。
オールマイトは腹に風穴を開けられつつも、絶命することなく巨悪を倒す。
絶望から希望へと置き変わった。
ここで――宿命がどうこう、という話に戻そう。
つまるところ、こうだ。
私の宿命は、かの巨悪が全てを手にする可能性を排除することなのだ。
でなければ、オールマイトを通して巨悪の存在を知ったその刹那に個性が覚醒した理由に説明がつかない。
あれは必然だったのだ。
あれこそが、私の宿命の始まりだったのだ。
しかし――この個性以外には何も持たない私程度の者に、何が出来ようか。
私は考えた。
足りない脳をフルに使って、それはそれは沢山考えた。
結果思い至ったのが――未来が見えることを活用した、成功の約束された個性婚である。
この頃になると、私の未来視は随分便利なものになっていた。
他人に使うことが前提の【個性】ではあるものの、それに対して自分がとるあらゆるリアクションに対して、その後の未来を見せてくれるのである。
そして私は、探した。
魔王の未来を阻む、最強の個性を――。
神を、共に作ることの出来る伴侶を。
私の罪は、生涯許されることはないだろう。
それは誰よりも私自身が自覚している。
私は彼女のことも、娘のことも――全てを犠牲にした。
娘のことを神などとは、思ったことは一度もなかったというのに。
ただ、そう接することが『最適』であっただけだった。
未来を視る。『最適』を選ぶ。
ただ、ずっと、そうしてきた。
そこに私が自ら選んだ道はなかった。
押し寄せる罪悪感、込み上げる吐き気、自己を構成する宿命以外の全てを捨てて――。
【個性】とは宿命である。
が、故に。
自己が【個性】に逆らってはならない。
私はあの日から、ただ『狂い』という『最適』を演じ続けている。
それこそが最大の『狂い』であると言われれば、なるほど確かにそうだ。
だが、私がその『狂い』にこの身の全てを滅ぼされることがなかったのは――そこに、救いがあったからに他ならない。
――――玲珠。
我が娘の未来に…………。
ともあれ。
私という個人は最早、生きてはいない。
それはあの日死に絶え、ただ宿命という名の呪い――神の糸に操られるだけの人形と化した。
今でもなお。