【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
CE74.2.** (PHASE-20)
ユウナ・ロマ・セイランがアマミキョに乗り込んできた。
どうやらアークエンジェルのことがご不満らしい。僕たちはちゃんとオーブ軍にもアークエンジェルのことは連絡したはずだ、これは嘘じゃない。
内部のアスハ派に握りつぶされることまで予測済みだったけど、そこまで僕たちの関知するところじゃない。結果的に、セイランに大恥をかかせたのはいい気味だ。
間もなく、連合が動いた。
ユーラシアを完全掌握するべく、あの戦略兵器・デストロイを持ち出してきたんだ。いずれこうなることは分かっていたけど、僕らのそばでやられるのは勘弁だったな。
そして、イヤな予感は当たった。
ベルリンから東へ約200キロといったところで、僕たちはデストロイの攻撃に巻き込まれてしまったのだ。
さらに言うとこの時、ティーダではデストロイ・パイロットの感情まで捉えてしまった。
なんとパイロットはあの、ステラ・ルーシェ。マユも、顔見知りとこんな処で会うなんて思わなかっただろう。
フィードバックシステムもこの時、その性能を既に10%近くまで発揮していた。
ステラの恐怖の感情もその増幅に一役買ったとはいえ、マユとナオト君にかかったフィードバックの影響による負担は凄まじいものだった。
戦場での痛みの感覚が、システム稼働率の分だけパイロットに行ってしまうこの「フィードバックシステム」は、実戦ではとても使えるものじゃない。
戦場の状態にもよるけれど、この時の状況から考えると、システム稼働率が12%を超えた段階で、パイロットの生命維持に支障が出たはずだ。
だから、Nジャマーの強すぎる場所ではティーダを使いたくなかったんだけど……
こんな状態で稼働率を100%以上にしたら、パイロットは命が幾つあっても足りないよ。
その上最悪なことに、こちらの感情までがステラに伝播してしまった。
ナオト君の怒りに触れて刺激された彼女の感情は、僕たちを攻撃してしまったんだ。
CE74.2.**
アマミキョは中破して、ハーフムーン付近に不時着した。ブリッジも損傷し、リンドー副隊長が重傷を負った。
そろそろ名実共に、サイをアマミキョの要とすべき時が来たということか。
偶然にも、セイランがサイを副隊長代理にしようと言い出したので、姫は早速それに乗った。
まだ多少の嫉妬やわだかまりがあるとはいえ、アークエンジェルでのサイの映像は見事にクルーの心を捉えているからね。
元々オーブ国民って、自己犠牲を美化する傾向があるから──
ウズミ・ナラ・アスハの例を見ても分かるとおり。
CE74.2.** (PHASE-21)
マユがティーダの中で口走っていたステラ・ルーシェのことが気になったので、僕は一応調べてみた。
そしたら、興味深い事実が判明した。
さすが、最初のデストロイパイロット。チグサに替わる依代になりうるデータだ。
これはもしかしたら、姫の新たな希望になるかも知れない。
それに、依代は出来れば多い方がいいに決まっているし、御方様への報告も問題ないだろう。
しかも、シン・アスカと彼女は顔見知りだった。ラスティに言わせれば、実に興味深い運命の出会い。これを利用しない手はない。
僕たちの次のミッションは、決まった。
どうかステラが生存していますように。少なくとも、大脳の40%以上、身体の20%以上は無事でありますように。
マユの状態は気になるけれど、僕たちはステラを優先する必要がある。
御方様からの正式な命令も下った。任務の性質上、最小限の人数で──
つまり、ミゲルと姫でこのミッションは行なうことになるから、姫はアマミキョを離れることになる。
山中のザフトの残党が気になるけど、恐らく彼らは衰弱しきっている。ティーダとカラミティは置いていくし、山神隊やオーブ軍の護りもある。
偶然か必然か、スティング・オークレーもアマミキョに収容された。彼がもし戦えれば、これほど頼りになる味方はいないだろう。
ただ、地熱の上昇が気になると姫は言った──
確かに、地殻変動にしては急激すぎる数値だ。出来るだけ早く姫が帰ってきてくれるといいけど。
CE74.2.**
またしても、イヤな予感が当たった。
ザフト残党の連中は、熱核兵器を破壊したニュートロンスタンピーダの機能を応用して、地中のニュートロンジャマーの掘削速度を上げていた。
ジャマーとスタンピーダをマントル付近で衝突させて、半径300キロ以上を吹っ飛ばす気だ。勿論、地上の連合軍や僕たち含めて。
弱体化しきった脱走兵に何故スタンピーダの技術が持ち込まれたかが疑問だったけど、恐らく議長の差し金だ。
ヨーロッパでの形勢逆転の足がかりにすると同時に、厄介者たるティーダやアマミキョを葬るチャンスとも考えたのかも知れない。
CE74.2.** (PHASE-22~23)
セイランの手によって、アマミキョに強制的に配備されたローエングリン。
元々、ジャマーを取り除く為に取り付けられたものだ。これを使って、衝突前にニュートロンスタンピーダとニュートロンジャマーを一掃する。
位置情報は、ティーダを使って調べる。
人の魂を感じる能力を使って、山神隊の風間曹長が自ら人柱となり、この無謀な大陸破壊作戦を止める。
連合にしては合理的な作戦だ。
──結果から言えば、作戦は見事成功した。
村は壊滅したが、アマミキョは助かった。
犠牲も大きかったけど、ティーダとアマミキョが無事ならそれでいい。
だけどナオト君やマユは、村人と結構交流があったようだ。サイなんか目の前で知り合いに犠牲が出たらしく、一時錯乱しかけた。
その上、ザフトを止める為とはいえ、ローエングリンで風間曹長まで撃つハメになって……
彼らの心理状態については、十分注意しなくては。
とにかく、僕たちは助かった。
僕は基本的に外には出られないし、見守る以外にやれることは何もない。ここではラスティ以外とは殆ど、私的な会話はしなかった。
ちゃんと姫は戻ってきてティーダを助けてくれたし、これでいいんだ──
良かったんだ、これで。
CE74.2.**
姫の報告を聞いた。ステラ・ルーシェは戦闘中に、既に死亡していた。
だが、不幸中の幸い──
その身体はシン・アスカの手によって、湖に沈められていたという。
密かにシンを追っていた姫は彼が立ち去った後、オギヤカから派遣されたディープフォビドゥンで、彼女の身体を回収した。
雪国で良かったよ。常夏のチュウザンでこんなことをしたら、腐食がとんでもない勢いで進むところだった。それに身体の傷も、内臓がいくつか潰れて破片が15箇所に突き刺さった程度。
勿論死んでるのは確かだけど、爆死じゃなくて本当に良かった。彼女が最小限の傷ですむようにトドメを刺してくれたキラ・ヤマトはやっぱり流石だ。
脳の物理的損傷も大したことはなかったけど、長年の投薬と記憶操作でシナプスが大分やられていたらしい。やっぱりウーチバラで修理だな。
姫の話によると、どうやらシン・アスカにとって、ステラはかけがえのない存在だったようだ。マユ・アスカと同レベルの。
──なら、こちらとしても都合がいい。
CE74.2.**
ナオト君の錯乱が心配だ。
村の女の子を守れなかったことでマユを逆恨みし、首を絞めようとしたらしい。
だけどここまで来た以上、彼を降ろす決断は難しい。ナオト君のログが蓄積されているデータバンクを全て書き換えるのは最早不可能だし、パーツ交換となるとまた手間もかかる。
ハーフムーンでの戦闘による疲労で、サイが倒れてしまった。
姫が介抱して事なきをえたけど、姫の態度が明らかに露骨になってきた。
僕たちに一言もなく、「フレイ」を「降ろす」なんて──
さらに、キラ・ヤマトがシン・アスカに討たれたなんていうニュースまで入ってきた。
ここまでシンが成長するとは、正直驚きだよ。やっぱり引き金は、ステラのことなんだろうか。
キラは大丈夫だろうとは思うけど、アークエンジェルからの情報が入るまで油断は出来ない。こんなところで何かあっては困る。
キラにはシンやアスランと一緒に、ラクス・クラインのもとでしっかり働いてもらうことになっているんだから。
CE74.2.**
やっぱりというか……キラ・ヤマト生存の情報が、間もなく入ってきた。
これで計画は特に支障なく進められる。今のところ、一番大きな問題は──
やはり、姫の迷いだ。
僕は「ニコル・アマルフィ」としてしか生きられないから、姫のような葛藤はない。ミゲルもラスティも、トールもそうだ。
僕たちはあくまで、一つの人格しか持たない。だから、僕たちは僕たち以外の何ものでもない。たとえそれが、まがいものとして生み出されたものだとしても。
でも、姫は違う。
元からある「姫」としての人格が、強制的に「フレイ・アルスター」として生きるようにされてしまったんだ。
いっそのこと「姫」の人格や記憶を全部なくし、その上でフレイとして生かされるなら姫本人も楽だったはずなのに、御方様はそれをしなかった。
──それが、姫に対する御方様のやり方だから。
フレイとして生き、キラと再びめぐり逢い、彼女はキラを愛し抜く。
だけどキラはラクスを選ぶ。フレイは見ていることしか出来ない──
それが、御方様のシナリオ。
だけど御方様。それをするには──
貴方はあまりにも、とある存在を軽く見すぎた。
フレイにはサイ・アーガイルがいたことを、貴方はすっかり失念していましたよね。
もっと言うなら、人の心を軽く見すぎた。
姫がああまでサイに魅かれるなんて、誰も予想出来なかった。
姫がナチュラルの下賎に惚れるはずがないと、僕たちもずっと思っていたから。御方様にとっては全くの計算外だったに違いない。
姫の願いは叶えたいけれど、僕としてはこのことを報告しないわけにはいかない。
僕は姫の部下であると同時に、御方様の部下でもある。
御方様がどういう手段に出るか、想像したくもないけど。
CE74.3.** (PHASE-24)
ナオト君とマユの間で、最悪の事態が発生してしまった。
いよいよもって本格的にナオト君への対策を考えないといけなくなった。マユも……
彼女も、あと少ししかもたないし。
そしてプラントでは、議長が声明を発表した。
要約すると、全ての争いはロゴスが仕組んでいた、ということらしい。
個人的に色々言いたいことはあるけど、とにかくこの声明のおかげで、一気にロゴスは窮地に追い詰められた。
アマミキョのスポンサーたる文具団もロゴスと絡んでいるから、もう文具団からの援助も期待出来ない。
つまり、ロゴス騒動はアマミキョまで孤立させてしまったことになる。
ハーフムーンの戦闘を経て、サイが正式にアマミキョ副隊長となり、アマミキョ・ハーモニクスシステムも活発に動き始めている。
そろそろアマミキョから、データの引き上げが近いか──
そう思っていたら、ちょうどインドの研究班から連絡が入った。
御方様が優秀な研究員を一名入れてくれて、アマミキョに直接よこしてくれるそうだ。
それはなんと、ナオト君の母親、マスミ・シライシ。
SEEDのことを報告したら、ナオト君の覚醒の為に是非協力したいという。その為の計画まで持ちかけてきた。
……確かに効果は期待出来るけど、早すぎるよ。
母親ってみんな、あんなものなのかな。そうだとしたら、僕に母親という存在がいないのは、良かったのかも知れない。もっとも、ニコル・アマルフィのお母さんはそうじゃなかったはずだけど。
少なくとも、姫は大反対だった。
CE74.3.25 (PHASE-25~26)
ナオト君がアマミキョを抜け出した。
マユにあんなことをした自分は、もうティーダに乗れないと思い込んだらしい……
既にマスミ・シライシはチュウザンに上陸している。遅かれ早かれ、例のミッションは始まってしまう。
祭に乗じて大規模テロが起こるという情報も把握済み。その混乱にさらに乗じて……
……
いや、やめておこう。ため息しか出ない。
ナオト君の位置は特定してあるから、連絡があればいつでも始められる。
ごめんよ、ナオト君。姫の言葉を無視してでも、実行する必要がある。
御方様の命令なら。
こんな時に、姫はどうしたかといえば……
サイに、自分の正体を明かした。ハーモニクスシステムの恒常的安定の為、という名目で。
確かに、結果的にはこれまでないほど、システムが安定したのだけど。
勿論、自分がフレイ・アルスターではないという部分だけに留めていたみたいだけど、それだけでサイには十分だったようだ。
フレイ・アルスターは2年前に死亡した──
その認識を、サイは無意識のうちに避けていたんだ。これこそが今まで、ハーモニクスの数値が安定しなかった原因だった。
サイの時間がずっと2年前で止まっていたと姫は言っていたけど、恐らく彼の精神は、姫の告白によって一段階上へシフトしたんだろう。
実際、アマミキョのハーモニクスは、あるべきレベルで、今までになくとても理想的な波型を保ち始めた。
今までは大きく変動することはあっても、ハーモニクスレベル自体がなかなか上昇しなかった。だから御方様も、コアの熟成にはまだ早いと見ていたんだ。
皮肉にも、姫がサイを想って告白した結果
――ハーモニクスデータは、完全に安定してしまった。
アマミキョから抜き取ることが出来るようになってしまったんだ。
それが何を意味するか、分からない姫じゃないのに。
多分姫は、サイがこのまま時間を止めているよりも、進める方を優先したんだ。
その先に待っているものが死だとしても、今の状態でいるのは死ぬよりつらいから……なのかな。
もっともこれは、ティーダの覚醒によるところも大きいかも知れないけど……
僕たちの予想より早く、御方様は動いた。
トールが遂に出撃してきたんだ──サイを消す為に。
今までトールを遠ざけていたのは、サイにこれ以上衝撃を与えないための姫の配慮だったのに、御方様は全く気にせず……
いや。それを知っているから、彼を派遣してきたのか。
姫が言ってたけど、もしかしたら都合良く発生したテロも、御方様が裏で手を引いていたかも知れないそうだ。
その中でサイが死んでも、ナオト君が暴行されても、何もおかしくはないから。
……僕たちに何の連絡もなしでの、戦闘実験か。
姫の命がけの説得で、トールは退いたみたいだけど。
これでもう、御方様に言い訳は出来なくなってしまった。
サイの運命は、決まってしまったも同然だ。
あとは、どんなに残酷な形でその運命が実行されるか。
結論から言うと、マスミ・シライシのミッションにより、ティーダは完全覚醒した。
マユだけでなく、ナオト君までがティーダの遠隔操作が可能になってしまった。
SEEDはまだ確認出来ないけれど、通常状態でもティーダがセレブレイト・ウェイブを0.2%ほど発振しながら起動するなんて、今までじゃ考えられない。