緑色の竜に教えてもらった「迷宮」に挑む戦士さん、姫さま、羊飼いくんの3人。
「迷宮」には何があるのか? 『守国護の宝玉』は手に入るのか?
向かう先には何が待ってるのか……、そんなお話。
第27話は、第1章、第2章、第3章、第4章、第5章、第6章、の6回に分けて公開します。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGソード』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
『のびのびTRPGソード』のプレイヤーキャラクター等の「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「戦士」→「戦士さん」
NPC「姫」→「姫さま」
等々となっています。
先に記しとく設定、
戦士(主人公)と羊飼い、は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:戦士
イントロダクション:試練の迷宮へ
シーン1:エレベーターの行き先は?
カード1:光:姫(NPC)
シーン2:スクール・スニーキング
カード2:光:羊飼いの少年(NPC)
シーン3:癒やしの草を求めて
カード3:光:暗所恐怖症
シーン4:迷宮ショッピング
カード4:闇:100の
シーン5:荒れ果てた町の出会い
カード5:光:軍団
クライマックス:滅亡の名は星
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
まぶしい光で目が覚めた。
体を起こして、光、窓の方を見る。
窓辺に姫さまがいた。
窓を開けて窓から入る光と風を体に受けてた。
体をぐーっと伸ばして、完全に目が覚めた。
姫さまはすぐに俺に気づいた。
「おはようございます」
笑顔で言ってくれた。
「ああ、おはよ。
体、もう大丈夫か?」
呪いはもう大丈夫だろうけど確かめる。
「はい、何も問題ありません」
なるほど、十分に回復したらしい。
部屋に入る光に羊飼いくんも目を覚ました。
俺と姫さまを向いて、
「おはようございます」
そう言ってベッドから下りた。
「おはようございます」
姫さまが言って、
「おはよ」
俺が言った。
俺もベッドから下りる。
「お姫さま、体の具合はどうですか?」
「ええ、すっかり良くなりました」
羊飼いくんの言葉に姫さまが答える。
姫さまはもう大丈夫そうだけど……。
昨日の夜に羊飼いくんと話したこと、今日も1日休んで迷宮には明日向かうこと、姫さまに話した。
俺と羊飼いくんの言葉に姫さまは、
「私はもう大丈夫です。
それに宝玉は一刻を争います」
今日の出発を主張した。
どうしたものか……。
考える。
ぐぅ。
腹の音に緊張が抜けた。
「あ、あの、今のは……」
姫さまだった。
「腹、減ってるみたいだな」
「それは……、はい」
俺の声に姫さまは恥ずかしそうな様子になる。
羊飼いくんが言う。
「食欲が戻ってるなら大丈夫かもしれませんね」
「だな」
同意した。
宿の食堂で朝メシ。
俺と羊飼いくんはしっかりと食って、姫さまもしっかり食った。
これなら大丈夫だろう。
メシを食い終えて部屋に戻る。
明日出発か今日出発か、3人でもう一度話をした。
姫さまの具合は十分に良くなってる。
俺からも羊飼いくんからもそう見えた。
もちろん姫さまは大丈夫だと言う。
もういくらか話をして今日出発に決まった。
出発の準備を整えて部屋を出る。
宿のカウンターで支払いをして宿屋から出た。
竜に教えてもらった宝玉のありか、東の沢の奥を目指して村を出た。
村を出て少し歩いて、東の沢が見えてきた。
水の流れに近づいて、ここからは沢に沿って登っていく。
いくらか登って、迷宮に近づいてるはず、まわりの様子に気をつけながら歩く。
突然の羊飼いくんの声。
「あれじゃないですか?」
羊飼いくんが指した先、岩かげに自然のものとは思えない「岩」があった。
3人で「岩」に近づく。
岩でできたほら穴だった。
きれいに切られた岩が組まれてほら穴になってる。
どう見ても自然にできたものじゃない。
ほら穴の中をのぞく。
もちろん中は真っ暗で……、真っ暗じゃなかった。
壁、床、天井がかすかに光ってるようにも見える。
どうするか、3人で顔を見合わせる。
もちろん「入る」しかない。
ランプに火を入れる。
ランプを持った俺が先頭で後ろに姫さまと羊飼いくんが続く。
歩いてて気づいた。床に誰かが歩いたあとはない。
このほら穴に入るのは俺たちが初めてらしい。
そう言うと姫さまも羊飼いくんも同じ意見だった。
ほら穴には枝分かれはなくて一本道。
魔物の気配はなくて、だから魔物は出て来なくて。
誰も宝玉を守ってないのか、途中でか最後でか、とんでもないやつが守ってるのか。
歩き続けてどれくらいになるか。
ジジジ……、小さな音がしつつランプの火が小さくなって、消えた。
失敗だ。ランプの油を確認してなかった。
ランプの火が消えて俺たちのまわりは真っ暗に……、ならなかった。
壁と床と天井がやっぱりほのかに光ってる。
「何とかなりそうですね」
と、羊飼いくんの声。
「はい、進みましょう」
姫さまの言葉。
「だな」
そう言って進み始めた。
壁を手で探りながら進む。
光があるとは言えほんのわずかだ。
けど、その「ほんのわずか」が今はとてつもなく大事だ。
壁に手をついて、壁を確認しながらほら穴を進む。
壁に手をついて、壁を確認して、
壁に手をついて、壁を確認して、
壁に手をついて、手が壁を突き抜けた。
バランスを崩して壁の方へ体が倒れる。
体全部が壁を突き抜けた。
転がり込んだ先は明るい部屋だった。
「大丈夫、ですか?」
姫さまの声、俺が転がり込んできたところに姫さまと羊飼いくんがいた。
「ああ、大丈夫だ。
けど……、何だ、これ?」
姫さまと羊飼いくんが俺のところに来た。
まわりを見る。
いろいろな道具がならんでる。
「道具屋……、か?」
そう口にする。
「みたい……、ですね」
羊飼いくんの声が続く。
店? の奥の方から「誰か」が出てきた。
人間っぽいけど角があった。
「魔物か?」
剣に手をやる。
少し様子を見て。
魔物の気配はない。
つまり大丈夫だろう。
剣から手を離して、
「ここは道具屋か?」
角のある人間に尋ねる。
「はい、そうです。
隠し部屋の道具屋です。
話の通じるお客は3年ぶりです。
何でも見てってください」
角のある人間、店員が答えてくれた。
3人それぞれで店の中を見てまわる。
見てまわって驚いた。
どれもこれも格安だ。
普通の道具屋ではありえない値段。
粗悪品か? とも思ったけどそんなことはなくてしっかりした品物ばかり。
3人で買うものを考える。
ランプの油を十分な量。最上級の聖水を3つ。魔物の邪気に反応して爆発するビー玉サイズの爆裂弾を10個。それに、道具袋がいっぱいになってる。だから持ってるのよりひとまわり大きな道具袋を買った。
もっと買い物はしたいし金もまだあるけどこれでやめた。
この先まだ何があるか分からない。
金は大事にした方が良いだろう。
買い物を済ませて道具袋の整理。
俺の道具袋にはいちばん安い聖水のビンがひとつと、薬草がそれなりの数と、ほかにもいくつか、が入ってる。
これに爆裂弾を加えた。
買った道具袋に最上級の聖水を3つ全部と薬草の半分を入れた。
これも俺が持つ、てのは厳しいから羊飼いくんに持ってもらうことになった。
店員と言葉を交わして道具屋からほら穴に戻った。
ランプの明かりが戻ったから楽に進める。
どれくらい歩いたか、ほら穴の先に光が見えた。
少し進んで、ランプがいらないくらい明るくなった。
もちろんランプの火を消す。
「これ、絶対に何かあるな」
思ってることが声になった。
「はい、絶対にあります」
「なかったら良いですが……、ありますよね」
姫さまと羊飼いくんの言葉が返ってきた。
十分に明るくなったほら穴の終点、明るくて広い空間、天井も高い、に出た。
壁と天井が光ってる。
床は砂で覆われてる。
それ以外には……、何もない。
ほら穴から一歩、空間に入る。
砂を踏んで、ずっ、と砂が動いた気がした。
「戻ってくださいっ!」
姫さまの声。
すぐに足を戻した。
動いた気、じゃなかった。
砂が動いて集まる。砂山になった。
次は上へ伸びていく。
人の5倍くらいの高さの砂の柱。
形が変わる。
人の形になった。
つまり……、ゴーレムだ!
砂でできた巨人、ゴーレムが動きだす。
ゴーレムの倒し方、有名で簡単だ。
額の文字を消せば良い。
「戦士さん、援護魔法を使います」
姫さまの言葉。
「頼む!」
俺の声を受けて姫さまが呪文を唱える。
呪文が終わって、「何か」が俺に入り込んだ。
「おねがいします!」
姫さまの声を合図に俺は剣を抜いてゴーレムに向かって駆け出す。
人にはありえないスピードで走る。
ゴーレムが腕を振り下ろした。
とんっ、と足に力を入れる。
やっぱり人にはありえない高さまで飛び上がる。
ゴーレムの腕を簡単に避けた。
次は反撃。
道具袋に手を突っ込んで爆裂弾を取り出す。
大雑把につかんで、3つが手にあった。
狙うなら足だ。
タイミングを合わせて爆裂弾を投げる。
ゴーレムの足に当たって……、ぽとん、と落ちた。
「戦士さん! ゴーレムは魔物じゃありません!」
羊飼いくんの声。
あ、そうだ。
だからこの爆裂弾は効かない。
ゴーレムが足を踏みしめて、腕を振り下ろして、俺はそれを避ける。
魔物じゃないから聖水も効かない。
となると、正面から堂々と、しかない。
ゴーレムの正面に立つ。
ゴーレムがこっちに向かってきて、腕を振り上げて、振り下ろす。
ぎりぎりで横に飛んで床を蹴る。
ゴーレムの頭の高さまで飛び上がった。
ちょうど顔の前。
額の文字を狙って剣を横に薙いだ。
文字を消し飛ばした。
文字がなくなったのを見て、体が落ちて、着地。
ゴーレムはすぐに崩れ始めて、崩れ落ちて、砂の山になった。
これで終わり……、じゃなかった。
砂の山が伸び上がって、砂の柱になって、ゴーレムに戻った。
すぐに動き始める。
どすんどすんと歩きまわって、ぶんぶんと腕を振り回す。
暴走してる感じだ。
「消すのは初めの1文字だけです!」
姫さまの声。
「分かった!」
もう一度、とゴーレムの額を見て、……文字があった場所は剣を薙いだあとになってた。
これじゃ消しようがない。
暴れまわるゴーレムの足を、腕を避ける。
どうしたら良いか……。
突然、ボンッ、とゴーレムの足が爆発した。
次は振り下ろした腕が、ボンッ、と爆発。
爆裂弾……、か?
道具袋に手を入れて爆裂弾、今度は4つが手に、をゴーレムの足を狙って投げる。
ボ、ボ、ボ、ボンッ、4つ爆発した。
爆裂弾が効くってことは今のこいつは魔物ってことだ。
ってことは。
道具袋に手を突っ込んで聖水のビンを握る。
取り出して、振りかけてる余裕なんかない。
だからビンでゴーレムの頭を思いっきり殴った。
ビンが割れて聖水がゴーレムに飛び散る。
聖水がかかったところ、色が変わって動かなくなった。
けど、動かないのはもちろん聖水がかかったところとそのまわりだけ。
でも効くのは確認できた。
「羊飼いくんっ!」
ちらりと見て言う。
「はいっ!」
同じことを考えてくれてた。
「いきますっ!」
羊飼いくんが最上級の聖水のビンを投げてくれた。
ビンを受けてもう1回、ゴーレムの頭にビンを振り下ろす。
ガチャンッ、とビンが割れて聖水がゴーレムに降りかかる。
聖水が飛び散ったところの色が変わって、次の瞬間、変わった色が、ぶわっ、と広がった。
さすが最上級だ。
頭から胴体の半分くらいが固まった。
けど、腕と脚はしっかり動いてる。
動きを止めたい。
ラスト3つの爆裂弾、ゴーレムの脚を狙って……、爆発が3回、動きを止めた。
「頼むっ!」
「はいっ!」
俺の声に羊飼いくんが聖水のビンを投げる。
2本目を手にしてゴーレムを殴る。
ゴーレムの8割がたが固まった。
「戦士さんっ!」
「おうっ!」
羊飼いくんから飛んできたビン、最後の1本、をゴーレムに叩きつける。
ゴーレムの体全部の色が変わった。
これで良し、……じゃない、まだだ。
ゴーレムはわずかずつだけど動こうとしてる。
「戦士さんっ! 今なら切れます!
『力』を送ります!」
姫さまはそう言って「何か」、たぶん呪文、をつぶやいてる様子で。
それが終わって姫さまから赤い光が飛んできた。
剣で光を受け取る。
剣が赤く光って熱い空気が渦巻く。
「よし!」
少しずつ動こうとするゴーレム。
正面でジャンプしてゴーレムの頭の上、思いっきり剣を振り下ろした。
斬撃がゴーレムを左右ふたつに切り分けた。
この後どうなるのかは十分に分かる。
だから着地してすぐにバックステップ。
ゴーレムからできるだけ距離をとる。
瞬間、刃の跡が爆発した。
爆発の後、砂煙が落ち着いて床にはまだ砂があったけど動きそうな気配はなかった。
ゴーレムは何とか倒せたらしい。
姫さまと羊飼いくんが俺のところに来た。
「戦士さん、大丈夫ですか?」
羊飼いくんに尋ねられる。
「ああ、問題ない。
けど、これで終わりか……?」
「まだ『次』があるかもしれません……」
姫さまも不安を感じてるらしい。
ほら穴、俺たちが入ってきた、と逆の方に目をやる。
何もない。
空間をぐるりと見る。
やっぱり何もない。
竜はここにあるって言ってたけど……。
ゴガンッ!
重たい音がした。
音がしたのはほら穴との反対側。
壁の一部が動いた。
動いたあとにはさらに空間。
警戒しながら近づく。
危険はなかった。
空間の中、台座も含めると人の背丈よりも大きい宝玉がふたつあった。
姫さまはふたつを見てそのひとつに近づいた。
「守国護の宝玉です」
こちらを向いて言う。
「これが守国護の宝玉か……」
これを持って帰れば……。
「でも、こんなに大きな物どうやって持って帰るんですか?」
羊飼いくんの言葉、その通りだ。
「問題ありません」
姫さまはそう言って宝玉を向く。
呪文か、祈りの言葉か、何か。
姫さまの声に反応して宝玉が光った。
何回か光って、光り輝いた。
宝玉が光の塊になった。
宝玉だった光の塊が小さくなっていく。
両手の平に乗るくらいの大きさになったところで姫さまの胸に吸い込まれた。
「これで大丈夫です」
姫さまの言葉に、
「なるほど、これなら問題ない」
「ですね」
俺と羊飼いくんは納得できた。
次に羊飼いくんの疑問。
「こっちのは何なんですか?」
もうひとつの宝玉を見て言う。
確かに謎だ。
宝玉に近づいて姫さまの声。
「これは『大いなる力の宝玉』です。
これも元は王宮にありましたが200年ほど前に行方不明になっていました」
「じゃあこれも持って帰れば……」
姫さまの言葉に思ったことをそのまま言う。
こくり、と姫さまはうなずいてさっきと同じように大いなる力の宝玉を向いた。
守国護の宝玉と同じ、大いなる力の宝玉も光になって姫さまの胸に吸い込まれた。
「これでどうにかなるんですね」
羊飼いくんの安心した言葉。
「いや、まだだ。
宝玉を王の都に持って行かないと」
まだ先がある。
まず宝玉を取り返した。
次は王の都に宝玉を持って行く。
つまり姫さまを王の都に連れて行く。
来た道を戻ってほら穴から出た。
午後の遅い時間になってた。
麓に目をやって言った。
「今日はここまでだ。
明日、朝いちばんで王の都に出発だ」
俺の言葉に姫さまと羊飼いくんはうなずいてくれた。
沢を下って村に戻ってきた。
宿屋で部屋をとって、そう言えば昼メシを食ってなかった。
だから早めの晩メシを食った。
晩メシを食った次、夜になる前に道具屋に行って道具を補充した。
夜。
王の都への行程を確認した。
守国護の宝玉が王の都にない。
と言うことは魔物が出てくる危険はいくらでもある。
だからできるだけ安全なルートを使う。
となるといちばん早い道を使って2泊3日。
急ぎたいけど王の都に着けなければ意味がない。
だからこの行程で。
3人で確認した。
続
『宝玉戦記 ~ふたつの宝玉~ (第3章)』、これにて終幕です。
と言う訳で、『守国護の宝玉』を取り返しました。
今回は「それっぽい迷宮攻略ちっくなファンタジー」です。
ダンジョンには隠し部屋が要る、とか、最奥には巨大な敵、とか、ありがちっぽいことを書いてみました。
あと、ゴーレムの額の文字を「全部」消したら? 的なこととかも、です。
物語は『守国護の宝玉』を取り戻して、王の都を目指すことになりました。
王の都への道中では何が起こるのか。
次回は『宝玉戦記 ~ふたつの宝玉~ (第4章)』です。
では、今後ともご贔屓のほどよろしくお願い致します。