お久しぶりです。そして若干のキャラ崩壊?あるのかな?なので注意です。
後、二次創作が久々ですので、若干書き方が迷子になっております。
エミヤシロウは疾る。
弓から放たれた赤い閃光が森に堕ち、凍てつく青を破壊する。
向かう場所は本格的な戦闘を開始する前に行った偵察場所。
あそこには、投影品を用意している。
そこに行かなくては……いくら令呪で強化されていようとエミヤシロウの魔力が先に尽きてしまう。
「──……ぐぅ。」
「ナルホド。……不満ヲ上ゲルナラバ消耗システギルコトカ……。」
いくら剣が無限でも、魔力は有限だ。
エミヤシロウの頬に冷や汗が垂れる。
距離を取るには接近を許しすぎている。
──不味い。
氷の礫を矢で相殺し、双剣で異形の武器を止める。
その衝撃で、地面が沈む。
距離をとることが許されない。
着かず離れず、そして、近接戦をするべき距離を異形は常にとっている。
恐らくは、エミヤシロウの得手が弓であると気づいているのだろう。
青き異形の攻撃力や耐久力などは、エミヤシロウの比にならない。
竜殺しの英雄やギリシアの大英雄であればともかく、まともに攻撃を受ければ、エミヤシロウはただでは済まないだろう。
マスターであるカルカからの情報で、他の者たちがまだ無事であることを把握しているものの、それでも不安はぬぐえない。
だというのに、エミヤシロウは、この凍てつく怪物を倒すことができない。
このまま、時間を浪費していれば負けるのはカルカたちだ。
それほどまでにヤルダバオトと彼女らにはレベルの差があるというもの。
エミヤシロウはただただ、己の弱さを嘆いていた。
されとてそれは、諦めなどでは決してない。
彼は矢を番えて、閃光を放つ。
そのたびに青い異形は悉くを叩き落とす。
「……壊れた幻想。」
落とされた先で投影された武器が爆ぜる。
だが、──
「見事ダ。……ヨモヤ、ココマデトハ……。」
「それは、こちらのセリフだ。だが、些か疑問だな。これほどの実力を持つのなら徒党を組まなくともいいのではないかね?国が欲しいならば、一人でも落とせよう。それに、──背後にいる者がヤルダバオトであれ、なんであれ。フ、ここまで優秀な駒を持っていながら、……笑えるにもほどがあるな」
フシュ―と吐かれる白い吐息。
大気は凍り、森は水色へと姿を変えていく。
「……何ガ言イタイ?」
「別に、貴様の実力がないと言いたいわけではない。だが、……それまでだ。私一人にここまで時間と駒をかけている時点で。貴様の背後にいる主など、程度が知れるというもの。」
瞬間。瞬間にして、氷柱のように鋭い殺意がエミヤシロウにぶつけられる。
その圧に、自然と弓を握る力が強くなる。
だが、エミヤシロウはただ、
──掛かった。
と確信していた。
この異形は、確かに見事なものだ。
少々、実力に反して経験が少なすぎると思えなくもなかったが、確かにエミヤシロウが今まで戦ってきたの中でもトップクラスのものだ。
決して、油断できるものではない。
「……我ラノ、御身ヲ、愚弄スル気カ?」
「ああ、そうだと言っている。……貴様は素晴らしいな。ここまで来て、貴様は忠誠は疑いの具合もない。だが、それまでだ。……貴様いう
エミヤシロウが言い切る前に、鋭い鉄器が頬を掠めた。
だが、顔を変えることはない。
ここで怒りを見せて暴走するだけならやりやすい他がないとさえ思っていた。
冷徹に、正義の味方などとは到底思えない挑発をエミヤシロウは繰り返す。
……だが、エミヤシロウの予想に反して、青の異形は圧を増やすだけで佇んでいる。
されど、それだけがエミヤシロウの目的というわけでもなかった。
ゴゴゴと音を立てて、地面が隆起する。
「……お出ましか」
この目の異形がどれだけ、我慢強かろうと、我慢できぬ者はいる。
……特に、この忠誠度合いがデフォルトと考えるのなら、それは道理であった。
黒白の双剣。
それがエミヤシロウの両手に握られる。
「この、劣等人種があぁーぁ!!この、この!」
地面が割れ、石が宙を舞う。
振り下ろされた漆黒の斧。漆黒の鎧を身に着けた女らしき騎士がまるで狂戦士を思わせるほど斧を振り回す。
受けるよりもはやく、エミヤシロウは後ろへと後退していた。
それを追撃するが如く──凍てつく異形が斬り刻む。
「チィ…!」
双剣は衝撃で粉砕し、勢いよく木々に叩きつけられる。
すぐさま、双剣を再び投影するも、それを防ぐが如く、烈火の炎がエミヤシロウに迫る。
それに合わせて、猛犬がエミヤシロウの腕を目掛けて跳ねる。
炎はエミヤシロウの腕の肉を抉り、猛犬の犬歯が腕を噛み切りまいと顎を閉じる。
飛ぶ血汐。青色になっていた森も赤く染まり始める。
……ここにカルカたちがいなくてよかった。
エミヤシロウはそう思った。
もし、いたならば、著しく士気を下げてしまう。
「────ふっ、まさか。ここに戦力を集中させるとはな」
もしかしたら、魔力を回収するためとはいえ、カルカたちから離れた森へ走るべきではなかったのかもしれない。
そんな考えがエミヤシロウによぎる。
それを見た漆黒の翼をもつ女騎士が応える。
「貴様、キサマキサマ!あの御方を。御身のことを愚弄するなんて。そんなの。そんなのッ!」
それでも女騎士は御身とやらの名前を言うことはなかった。
意外に冷静といったところか。
エミヤシロウは、今にも千切れそうな右腕をだらりと下げながら、左腕に双剣の片割れを握る。
諦めか、それとも、ただの愚か者か。
女騎士……アルベドはあくまでもエミヤシロウの犬……いや、アルベドが毛嫌いする奴らよりも劣る考えを理解しかねていた。
コキュートスの忠誠が高いことも、コキュートスの背後にアインズがいることもなんとなく察しているほどの頭脳を持っておきながら、最も最悪の行動をとったこの男を。
あくまでも、アルベドは嘗めていた。
「……まさか。これほど、戦力を保持していたとはな。……だが、わからんな。この国を落とすことが目的ならば早急に戦力を扱えばよいものを。それとも、支配下にでもいれるつもりか?そんなものは愚王のするものだろう。恐怖で従わせているとはいえ亜人を無駄死にさせる理由にはならんだろう」
エミヤシロウの態度は依然として変わりがない。
それでも、なんとなくだが、エミヤシロウは理解している。
戦略的目的が国を落とす以外にあるのだろう。
だが、それを口にする必要もない。
エミヤシロウの狙いは挑発そのものだ。
実際にその狙いはある程度達成され、女騎士と異形が目の前にいる。
最も、魔法を放った者や猛犬を使い魔として操る者が出てくれれば問題はないのだが。
呼吸が乱れる。
長い、一呼吸にも匹敵するほど長い白い吐息がエミヤシロウの口から伸びる、伸びる。
女騎士の甲高い金切声など、凍えた感覚のない耳からほとんど聞こない。
まさしく、受肉している弱点か。
魔力となって逃げることもできやしない。
それでも、エミヤシロウがここで逃げるはずもない。
「どうやら何か勘違いしているようね。……ふふ、滑稽だわ。私たちを馬鹿にしておいて?今頃、アチラは大惨事でしょうね!アナタは最後まで利用されて死ぬの。」
エミヤシロウには何のことか理解しかねていた。
カルカからは確かに、定期的に念話を飛ばしてきていたが、それは今は止まっていた。
……だが、契約の線は切れていない。
そうであるのなら、カルカはまだ生きている。
「は、そっちこそ、些か勘違いがあるのではないか?」
「────はぁ?」
「私が君たちと同じである、という考え方そのものだ」
そう言った瞬間に、振りかざされる斧。
確かに、エミヤシロウであれ、サーヴァントであれ、殺されれば元も子もない。
勢いよく振りかざされた斧は、エミヤシロウを捉えて、地面を割った。
◆
時は少し遡り、アーチャーがコキュートスと刃を合わせていた時のこと。
戦場全体に絶望が奔っていた。
上空に浮かぶのは、ヤルダバオト。
それだけならば、まだよかったというもの。
「な────……」
「馬鹿な──」
レメディオスからもケラルトからも声が消えていた。
遥か彼方。そう簡単に見ることもできない遠い距離。
されとて、見間違うはずもない。
「──アー、チャー?」
カルカから零れた言葉は、絶望を助長させた。
ヤルダバオトの救国の英雄と呼ばれるあの赤い騎士を手に持っていた。
ヤルダバオトの手にある赤い騎士はだらりを腕と脚を下げ、抵抗もなく、ヤルダバオトの手にぶら下げられている。
「……あ、あああ……」
それもそうだろう。
この戦いは初めからアーチャーありきであった。
アーチャーがいたからまだ、我々は戦えるとそういう自信がついていた。
……無論、国を守るため、もとより士気は高かった。
だが、この戦いに臨んでいるほとんど者がアーチャーと組手をしてきた者たちだ。
それだけ、アーチャーとの実力差を理解していた。
だから、その希望がなくなったことに彼らは手を止めるのだ。
カルカはふと、手を見る。
手の甲にはまだ、一画の赤い痣が残っている。
魔力を帯び、赤く鮮明に誇張している。
──まだ、アーチャーは、生きている。
カルカの頭の中でそう感じる前に。
ヤルダバオトが声を発した。
「救国の英雄。ええ、実に強力な実力者でした。しかし、このヤルダバオトを前に。彼は死んだ。亜人たちよ。最後の攻めをお願いしますよ」
ただそれだけ。
それだけで、亜人たちは歓声をあげた。
あの男にどれだけの亜人が犠牲になったのか、その恐怖は前線にいた亜人たちにしかわからないだろうが、ヤルダバオトを除けば最も警戒すべき男が死んだ。
それだけで、亜人たちは雄叫びを上げる。
一方で、ローブル聖王国の者たちは動きを止めていた。
まさに絶望というものだ。
「……皆さん。騙されないでください!アーチャーは、まだ」
カルカの叫びは届かない。
何せ、赤い弓兵の死体をヤルダバオト自身が持っているのだから。
言葉と実物では重みが違う。
王女と悪魔であっても同じこと。
錬鉄の英雄の強い意志を引き継いでいたネイアであえ、次の矢を番えるのも躊躇いが出ていたのだ。
「……」
カルカは、アーチャーの言葉を思い出す。
令呪、とやらの説明が行われた。
三画の絶対命令権。
アーチャーを限界を超えた強化をできる代物だ。
アーチャーは三画を使ってしまえば、契約が消えるだけと言っていた。
ならば、──いや、そもそも、ここで使わずしていつ使うという。
ヤルダバオトが実物を持つのなら、こちらだって実物を用意する必要があるのだ。
沈んだ戦場に希望を見出すためにはこれを使うほかない……!
「令呪を持って命じます!今すぐにこのカルカ・ベサーレスの前へ無事に招集されよ!」
最後の赤き魔力が戦場に花開き、傷だらけの英雄を召喚する──