アンコールも終わり、会場全体が満足げな熱気に包まれる中、俺たちは関係者用の通路を通って控室へと向かった。
「お疲れ様でしたー!」
控室のドアをノックすると、中からスタッフの声が返ってきて扉が開く。
そこにはステージ衣装のままのメンバーたちが、まだ息を切らしながら座り込んでいた。
「あ、翼君たちだ! 来てくれたんですね!」
ECHO DOLPHINのメンバーの一人である
「今日の公演、最高でしたよ」
「ありがとうございますー!」
そんな中、部屋の奥で汗を拭いていたルナが、俺たちに気づいて顔を上げた。
「あ、翼君に朝ちゃんと伊本さんまで。来てくれたんだー!」
「当たり前じゃない」
朝香はそう言うと、背中に隠していた花束を前に出した。
「これ、みんなで選んだの。今日のライブ、本当にお疲れ様」
「え……」
ルナの動きが、一瞬だけ止まった。
花束を受け取る手が、微かに震えている。
「ドームツアー、おめでとう」
朝香がもう一言添えた瞬間、ルナの目からぶわっと涙が溢れ出した。
「……っ、うぅ……」
声を殺そうとしても、抑えきれない嗚咽が漏れる。
花束を胸に抱えたまま、肩が小刻みに震えていた。
「ちょっと、ルナ?」
子役時代、朝香の隣に立ちたくて役者の道を諦めた過去。
アイドルとして必死に走り続けてきた日々。
その全てが、今この瞬間に報われたような顔をしていた。
「……頑張ったわね」
朝香がそっと歩み寄って、ルナを抱きしめた。
「みゃ」
くぐもった声で、そんな鳴き声のようなものが漏れた。
控室の空気が、一瞬だけ静まり返る。
「……なるほど、そういう感じですね」
「ルナちゃんの貴重な雌顔だ……!」
周りにいたエコドルメンバーたちが、互いに顔を見合わせた。
「うんうん……ルナちゃん、良かったねぇ」
「私バカだからよくわからないけど、良かったなルナ!」
「ふぅあぁ……あれ、誰か来てる?」
「ネルちゃんはいい加減起きなよ」
エコドルのメンバーも個性強いな……。
後方腕組み保護者っぽい人がメンバー最年長の
彼女たちも今田朱代の騒動で大変だったろうに、ドームライブをやり遂げたのはすごいと思う。
俺は苦笑しながら、控室の隅で成り行きを見守っていた伊本さんと目を合わせた。
「賑やかな現場だなぁ」
「西遊記の現場より賑やかかもしれませんね」
伊本さんがそう呟くと、俺も思わず頷いた。
ルナはまだ顔を赤くしたまま、メンバーたちの追及から逃げるように花束を持ったまま朝香を強く抱きしめていた。