強欲少女は邪竜と踊る 作:邪竜の棲家
〝
ユウキ・カグラザカ。
今はまだ小さき者だが、将来有望だと確信している。
その理由は、彼がユニークスキル『
彼の特異体質『
流石に私の究極能力『
⋯⋯⋯ふむ。それにしても『創造者』を獲得した存在がよもや人の子だったとは正直驚いた。
何故なら『創造者』の進化先の究極能力の名は───『
私が生み出した究極能力の一つなのだからな。
ナー君の一部分でしかない存在が、ナー君と同格の創造神に至れるかどうかという私の
彼の欲望は果てしないが、神の領域に至れるかは、全ては彼の〝魂〟の熱量次第である。
「───ふふ、私の期待を裏切らないでくれよ?私の未来の
モニターに映るユウキを、愛おしげに見つめるヴェルナンタ。
その表情は、さながら恋する乙女のようなものだった。
私の事を〝殺す〟と言ってくれた奴はいたが、〝全て奪う〟と言った者は彼が初めてだからな。
あれ程の熱烈な
無論、彼がそういう意味で言った訳では無いことも理解しているが、そう取られても仕方あるまい?
私が人類に恋心を抱いているのは、やはりナー君の影響を受けているようだな。
ナー君がルーちゃんを好きになったように。
私もまた、ユー君の事が好きになってしまったようだ。
こんな私だが、かつては感情は愚か、自我さえ持っていなかったからな。
私の真なる正体は───文字通りの〝無〟である。
世界が始まる前、何も無く〝
否、〝
そんな〝
この者こそが〝全なる一〟───後に星王竜ヴェルダナーヴァと名乗る存在である。
ヴェルダナーヴァは〝全なる一〟であるが故に、自分以外の〝
ヴェルダナーヴァは考えた。
ボクを生み出した存在は誰なんだろう?
それは〝全知〟であっても
だから生まれたばかりのボクは、【観測不可領域】について識ろうとは思わなかった。
けどボクに孤独を与えた存在が許せなかった。
ボクを孤独にした
そんな事を考えながらふと、ある違和感に気が付く。
ボク以外の〝
〝
ああ、そうか。ボクはこんな簡単な事に、今まで気付けなかったのか。
ボク以外の〝
だが困った事に〝無〟は〝
はてさてどうしたものか、と考え込んでいたヴェルダナーヴァは、ふと妙案を思い付いた。
『〝無〟に〝
ヴェルダナーヴァはノリノリでそんな事を言い、〝無〟に〝
するとヴェルダナーヴァ以外の〝
『───⋯⋯⋯ん、』
私の第一声は、眠りから目覚めたかのようなものだった。
そしてすぐに違和感に気が付く。
⋯⋯⋯?どういう事だ?私は〝
しかし今はあるはずも無い〝
『フフフ。みぃつけた!』
『⋯⋯⋯!?』
ヴェルダナーヴァが私を認識し、私もまたヴェルダナーヴァを認識する。
『⋯⋯⋯
『何で疑問形なの?そうだよ。そして君は、ボクが与えて生まれ変わった〝
『───ふむ、そうか。私が
『それは勿論、君だよ───
ヴェルダナーヴァが私を〝姉〟と呼んだ。
『いや待て。始まりの〝
『いいや、君はボクの姉さんだよ』
『だがな』
『ね・え・さ・ん♪』
『⋯⋯⋯う、うむ』
有無を言わさぬヴェルダナーヴァに、私は認めざるを得なかった。
流石は始まりの〝
我が強過ぎてとてもじゃないが敵わぬ。
私を〝姉〟と、ヴェルダナーヴァを〝弟〟としているが、私達にはそもそも性別という概念は無く〝無性〟。
便宜上、そういう事にしているだけに過ぎない。
⋯⋯⋯私としてはヴェルダナーヴァが〝兄〟で、私は妹として〝お兄ちゃん♪〟と言ってやりたかったのだが、それは叶わぬ夢となってしまったのは誠に遺憾である。
まあそれは置いといて、一つ大きな問題が生じてしまった。
私が〝無〟であり、ヴェルダナーヴァが〝有〟だった為に成立していた〝全なる一〟。
だがヴェルダナーヴァが余計な事をした
これでは私とヴェルダナーヴァが共に〝全なる一〟というわけわからん事になってしまう。
ならば私が〝全なる一〟である事を否定すればいいだけの話に聞こえるが、この場合はそうもいかない。
〝
の方程式が成り立つ為、それを否定するということは。
〝
となってしまい、私だけでなくヴェルダナーヴァも最初から〝全なる一〟ではないという事になってしまう。
であるならば、私とヴェルダナーヴァは二人とも〝全なる一〟とする方が都合がいい。
が、その問題は、根本的に問題にはなっていなかった。
何故ならば、私は真の意味では、〝有〟に生まれ変わってなどいなかったからだ。
ヴェルダナーヴァが与えてくれたのは〝
つまりそれ以外は〝無〟であり、〝不変〟なのだ。
だから〝互いに触れ合う為の姿〟として
私に出来ることは、ヴェルダナーヴァの姿を模倣したモノを〝無〟から生み出して、その中に私の〝
だが
故に私は、それ以上の〝有〟を欲しいとは思わなかった。
ヴェルダナーヴァと過ごす時間は、私にとって
『世界を創造したい!』
ヴェルダナーヴァがそんな事を言い出した。
その瞬間、私は理解してしまった。
⋯⋯⋯ああ、そうか。私では、弟の退屈を紛らわせられなかったのか。
私はヴェルダナーヴァの事を愛していたが、ヴェルダナーヴァは私の事を愛してくれなかったのだろうか?
そんな事は無いのだろうが、ヴェルダナーヴァは更なる何かを求めているのは確かなのだろう。
ヴェルダナーヴァに依存している私にとっては、世界の創造など興味の欠片もなかった。
たとえ
私は
だから私は言ってやったのだ。
『世界を創造したいなら私を倒せ!』
これの意味はそのまま───〝私を殺せ!〟だ。
私にとってヴェルダナーヴァが全てだった。
故に、世界が生まれればきっと私は嫉妬で狂い、世界を滅ぼす邪竜へと成り果てるだろう。
そんな未来の私になりたくなかったから、ヴェルダナーヴァに殺してくれと頼んだのだ。
〝全なる一〟のヴェルダナーヴァならば、私に与えた〝
そして、私は本来の〝
だがヴェルダナーヴァはあろうことか、私を殺す事はなく、私と世界の両方を選んだ。
ヴェルダナーヴァの選択に、私は嬉しい反面、複雑な気持ちになった。
私としてはどちらか一方を選んで欲しかった。
それは私の我儘であり、ヴェルダナーヴァの気持ちは一切考慮していない自己中心的な考えだった。
そんな私がヴェルダナーヴァ以外に興味を持つなど有り得ない事だとこの時は思っていたのだが。
そんな私が、直接干渉する事を避けていたナー君の世界で、
〝
⋯⋯⋯いや、私の〝
尤も、私の〝
そう思いながら、私は胸に手を当てて微笑する。
『───姉さん』
一つのモニターから、私を〝姉〟と呼ぶ声がした。
私はそのモニターを自分の下へと転移させると、リモート会議よろしく黒髪の青年と話し始める。
「ふふ、ナー君か。何か用か?」
『ボクの用事が何なのか知ってる癖に、わざわざ聞くんだね?』
「いや分からぬよ?今の私の中には『
『そうなんだ。ヴェルーシャはイヴァラージェとは相変わらず仲が悪い感じかな?』
「そうだな。仲が悪いといえば悪いな。何やら私の事でよく衝突するのだよ。ナー君はこれについて何か分からぬか?」
『⋯⋯⋯ああ、なるほどね。姉さんが人気者ってことならよく分かったかな』
ナー君───ヴェルダナーヴァが意味不明な事を言ってくる。
ぬ?私が人気者とはどういう意味だ?
〝全知〟で調べれば一発で分かる事なのだが、私は基本〝全知〟は利用しないようにしている。
それに〝全知〟担当は我が
『お久しぶりです、ナンタ
「ん?ああ、ルーちゃんか。久しいな、数年前に転生したてだったな。息災か?」
『はい!ヴェルダに面倒を見てもらってます!』
「ふむ、そうかそうか⋯⋯⋯ロリコンめ」
『姉さん?今のは聞き捨てならないんだけど?』
『あら、アナタってロリコンだったの?』
『違うからね!?ボクはただルシア一筋なだけだよ!』
『うふふ、冗談よ。ナンタ義姉様の嫌がらせで色々な世界に転生させられるけど、ヴェルダはすぐに私を見つけて寄り添ってくれるもの。私はそれがとても嬉しいし、アナタのことがもっと好きになってしまうわ』
ヴェルダナーヴァも『ボクも君のことが大好きだよ、ルシア』などと言ってイチャつく二人。
ほぉう?この私を前に見せつけてくれるじゃないか。
⋯⋯⋯ふん。別に悔しくなんかないんだからな!
「おっほん!イチャつくのは別に構わんが、私に用事があるのではなかったのか?」
『あら?ナンタ義姉様がとても不機嫌だわ。もっとイチャつきましょう?ア・ナ・タ♪』
『そうしたいのは山々だけれど、ボクの姉さんを煽るのは程々にしてね?じゃないと───世界が無に帰されちゃうから!』
「ふふふ、どうぞお構いなく。
『お願いだからやめて!?』
「大丈夫だぞ、ナー君。無に帰しても元通りに復元させればいいだけの話だからな」
『そういう問題じゃないからね!?』
慌てふためくヴェルダナーヴァ。
ふふふ、必死になってるナー君、可愛いな!
もっと虐めたくなるではないか!
『私のヴェルダで遊ばないで下さいませ、ナンタ義姉様?』
「ふふふ、ナー君は私の可愛い弟だからな。可愛い弟をからかって何が悪いというのだ?」
『悪いに決まってます!ヴェルダは私のものなんですから、勝手な真似は許しませんよ?』
「だが断る!⋯⋯⋯
『丁重にお断りします。ナンタ義姉様が敬語を嫌ってるのを知っていますからね。義姉様こそ、ヴェルダを虐めるのをやめてくだされば、考えてあげなくもありませんよ?』
「⋯⋯⋯チッ」
やはりこの女、できるな。
ナー君に愛を注ぎながらも、私に対してはしっかり嫌がらせをしてくる。
いけ好かぬ女だが、ナー君と出逢ってくれた事に、いつまでも変わらず愛してくれている事に感謝している。
しかし不思議なものだな。
ナー君は私というお姉ちゃんが居ながら、世界の創造にも手を出す二股男だというのに、ルーちゃんの事はいつまでも愛せるとかなんか納得いかぬ。
『(ヴェルダにとってナンタ義姉様は一番だったの。世界の創造さえも義姉様を喜ばせたい一心で行ったことだったのに、どうしてこうも想いがすれ違ってしまったのかしら)』
ルシアは悲しげな表情で、ヴェルナンタを見つめながら内心で呟いていた。
しかしそれは無理からぬことだった。
ヴェルナンタの〝
それ故にヴェルナンタの〝
だからすれ違ってしまったのだ、ヴェルナンタにとって、ヴェルダナーヴァの気遣いなど何の意味もなさなかったのだから。
その行為は逆に、ヴェルナンタを苦しめる結果を齎してしまったのだから。
『(ヴェルダは、ナンタ義姉様に捨てられたことで〝
ヴェルダナーヴァの〝
〝無〟だったヴェルナンタに〝
だからヴェルダナーヴァの『ルシア一筋』という発言は引っ掛かり、ルシアの心のモヤモヤは取れないのである。
ルシアにとってヴェルダナーヴァが一番だが、ヴェルダナーヴァにとっての一番はルシアなのかそれとも───
「───して、私に用事とはなんだ?」
『あ、そうそう!姉さんの〝世界の目〟を通して、先程のやり取りを見させてもらっていたけれど⋯⋯⋯姉さんにも好きな人ができたって認識で合ってるかな?』
「⋯⋯⋯ふむ、その事か。そうだな、その認識で合っているぞ」
『まあ!ナンタ義姉様にも想い人ができたのね!なら今日は赤飯にしましょう、ヴェルダ!』
『フフッ。そうだね、ルシア。そっかぁ⋯⋯⋯〝ボク一筋〟だったあの姉さんがねぇ』
自分の事のように喜ぶルシアとヴェルダナーヴァ。
「ふふ、なんだナー君?私を取られるのがそんなに嫌か?」
『え?別にそういうわけじゃ』
「⋯⋯⋯
『!?』
ヴェルダナーヴァが愕然とする。
まさかヴェルナンタの口から、その様な言葉が出てくるとは思わなかったらしい。
「もうよい、よいのだ。
『⋯⋯⋯姉さん』
「私は私の
『本当に、いいの?』
「うむ」
『⋯⋯⋯本当に、心の底から、ルシアを愛してもいいの?』
「くどい。それとも
『そんなわけないよ!ボクのルシアへの愛は、本物さ!』
ヴェルダナーヴァはそう言い、ルシアの肩を抱き寄せる。
彼の瞳からは完全に迷いが消えていた。
そんなヴェルダナーヴァを見上げたルシアは、頬を朱に染め、そして安堵した。
今この瞬間、ヴェルダナーヴァの一番がルシアとなったのだった。
⋯⋯⋯そう、それでいい。私にとってはその結果が全てだ。
ヴェルダナーヴァよ、
であるならば、それは
故に私などにいつまでも縛られるべきではないのだよ。
私が
「───さて。私はこれから可愛い姪と甥に接触しようと思うのだが⋯⋯⋯
『え?姉さんの姪と甥ってことは、つまりボクとルシアの子供達のことで⋯⋯⋯ミリムとリムルにかい?』
「うむ。私も〝かくれんぼ〟はやめて、堂々と基軸世界に姿を現そうと思ってな。人間に憑依する形で問題無く干渉できたし、私の〝
『問題はないと思うけれど、そもそもなんで姉さんは基軸世界に干渉できたの?』
純粋な疑問をぶつけてくるヴェルダナーヴァ。
その疑問に私は答えた。
「私にはヴェルーシャという神智核兼半身がいるのを知っているな?」
『うん。それがどうしたの?』
「私はな、その関係を維持する為に新たな究極能力『
『ちょっと待って!姉さんにはボクの〝全なる一〟を解析して生み出した究極能力『
「いやそれがな。『
『あったのだよ、じゃないんだけど!?何さらっと世界滅ぼしちゃってるの!?』
「その点は問題ないぞ。ちゃんと元通りに復元したからな、何事も無かったかのように」
『そういう問題じゃないんだけどなぁ⋯⋯⋯』
痛い頭を押さえるヴェルダナーヴァ。
これにはルシアも半眼で私を見つめていた。
しょうがないだろう!『
隣接していた別次元世界も幾つか巻き添え食らうレベルの破壊力があったのだよ!
「その数多の世界を無に帰してしまう『
『なるほどね。確かにボクが基軸世界に降り立つことができたのは、〝全知全能〟では無くなったからだったし、姉さんの『無限之神』が数多の世界を滅ぼせる力を持っていたとしても不思議じゃないか。それなら他に究極能力を創造して、『無限之神』の対策を講じるのも頷けるよ』
「だろう?ああ、ちなみに。他にも究極能力を色々生み出しているがそのうち、私が所有する『維持之神』に比肩する『創造之神』と『
『⋯⋯⋯なんだろう。とても嫌な予感がする』
「私がずっと昔に養女として攫った、イーちゃんが獲得していたユニークスキル『
『至っておったな、じゃないんだけど!?何やってるの姉さん!?そんな物騒な究極能力生み出して、よりにもよってイヴァラージェが獲得してるとか洒落にならないよ!?』
悲鳴を上げるヴェルダナーヴァ。
維持に特化した究極能力『維持之神』。
創造に特化した究極能力『創造之神』。
破壊に特化した究極能力『破壊之神』。
そんな
ギィが知ったら、額に青筋を浮かべながら物凄くいい笑顔でこう言うだろう。
『テメエの姉は大馬鹿野郎だ!!イヴァラージェにそんなもん与えるとか、世界を滅ぼす気じゃねーだろうな!?』
そんなもの知るものかよ。
ヴェルダナーヴァが自由意志を尊重したのだから、それはイヴァラージェもまた、自由にしていいということだろう?
私はただ、イヴァラージェの封印を解いて自由を与えただけに過ぎぬし、『破壊之神』だって、イヴァラージェの破壊への渇望が、私の生み出した究極能力へと至たらせただけなのだからな。
尤も、私というイヴァラージェにとっては〝不壊〟の存在が立ちはだかった事によって、破壊への渇望を増幅させた原因であるのは認めるが。
「確かにイーちゃんは、ナー君と一つになり〝全なる一〟に帰る事を渇望しているが、それは
『⋯⋯⋯というと?』
「簡単な話だ。要はイーちゃんが、ナー君の世界を気に入りさえすれば、世界は滅ぼされないし、〝全なる一〟に帰りたい渇望も無くなるのではないか?」
『な、なるほど───って、イヴァラージェも基軸世界に連れて行くつもりかい!?』
「無論、そうだが?」
『いやいやいや!流石にそれはマズイって!?』
「案ずるな、イーちゃんの面倒は私や『
『は、はぁ⋯⋯⋯』
確かに姉さんやヴェルーシャが、イヴァラージェの面倒を見てくれるなら安心できる⋯⋯⋯けど、本当に大丈夫なのかなぁ?
一抹の不安を残しながらも、ヴェルダナーヴァは了承するのだった。
オリ主の設定
完全なる〝無〟
↓
自我を与えられた〝無〟(ヴェルダナーヴァと似て非なるもの)
〝心核(ココロ)〟以外は〝無〟であり、〝不変〟の存在。
普段の姿は、〝心核〟の容れ物として創造したもの。
究極能力『無限之神』
ヴェルダナーヴァの〝全なる一〟を解析する事で生み出した究極能力。
この能力の所有者が顕現しただけで、数多の世界を無に帰す力がある。
この問題を解決したのが究極能力『維持之神』。