尸魂界へ侵入した一護達の前に立ちはだかったのは、瀞霊廷を囲む四大精霊門――その西門『白道門』を守護する門番、**兕丹坊(じだんぼう)**であった。
巨大な斧を自在に振るう怪力の持ち主であり、その圧倒的な体格は侵入者を威圧するには十分だった。
しかし、一護は怯まない。
幾度となく打ち合いを重ね、最後は渾身の一撃で兕丹坊の巨大な斧を叩き折ると、その実力を真正面から示してみせた。
敗北を認めた兕丹坊は豪快に笑い、一護の覚悟と強さを認める。
「完敗だ!オラは戦士とすでも男とすでもお前ぇに完敗だ!!」
そう言って、自ら白道門を開こうと巨大な門へ手を掛けた――その瞬間だった。
『あぁ…こらあかん』
鮮血が宙を舞い兕丹坊の腕が、何の前触れもなく切り落とされた。
「「「なっ!?」」」
突然の出来事に、一護達の表情が凍り付く。ゆっくりと開き始めた白道門の内側。
そこには、細い目を愉しげに細めた一人の男が静かに立っていた。
「あかんなぁ…門番は門開ける為にいてんとちゃうやろ」
狐のような笑みを浮かべたその男は、血に濡れた刀を肩へ担ぎながら、一護達を見下ろしていた。
市丸ギンは、白道門を開こうとする兕丹坊の前へ静かに歩み出る。
門番である兕丹坊は、己を打ち破った黒崎一護を「真の強者」と認め、その意思に従い白道門を開こうとしていた。しかし、その判断を市丸ギンは一切認めなかった。
「負けた門番が門を開ける資格なんてあらへん。」
飄々と笑みを浮かべたまま放たれた一太刀。次の瞬間、兕丹坊の巨大な右腕は肩口から鮮血を撒き散らしながら切り落とされる。
あまりにも速く、あまりにも容赦のない一撃。門番である兕丹坊は、自らの敗北よりも、市丸の非情な振る舞いに愕然とする。
「何を言うてんねや。負けた門番は門なんか開けへん。それが尸魂界の決まりや。」
市丸は笑みを崩さぬまま言い放つ。
「ほんま"真叶"君やなくて僕でよかったわぁ…僕なら何の躊躇もなくヤレる」
その言葉に、一護たちは息を呑む。
敵に敗れながらも信念を貫こうとした兕丹坊を、味方であるはずの死神が何の躊躇もなく切り捨てた。その冷酷さは、一護たちが想像していた尸魂界とはあまりにもかけ離れていた。
そして、市丸ギンはゆっくりと白道門の前へ立つ。
「ここから先は通さへん。」
細く閉じた瞳の奥に宿る底知れぬ威圧感。
一護は直感する。
――この男は、今まで戦ってきた相手とは格が違う。
張り詰めた空気の中、救出作戦は開始早々、護廷十三隊隊長という絶対的な壁に阻まれることとなるのであった。
しかし、一護は躊躇いもなく斬りつける。その一撃を受け切ったギンは一護が"ある程度"の実力を身につけていることに気づく
一護は己が市丸ギンの相手をしている間に治癒能力を持つ織姫に兕丹坊の治癒を頼む。
「ほんまオモロい子やなぁ。僕が怖ないん?」
「もう良せ一護!此処はひとまず引くのじゃ!」
ギンは黒崎一護という名を耳にした瞬間、細く閉じていた目をわずかに開いた。
「……黒崎一護。」
その名を一度だけ口にすると、何を思ったのか一護へ背を向け、ゆっくりと歩き始める。その不可解な行動に、一護は眉をひそめた。
「おい、そんな離れてどうする気だよ。その脇差でも投げんのか?」
ギンは肩越しに笑みを浮かべる。
「脇差やない……。」
腰の刀へそっと手を添えた。
「――これが僕の斬魄刀や。」
次の瞬間ーー
『射殺せ "神槍"』
刀身が爆ぜるような轟音とともに一直線に伸びた。常識では考えられない速度で"それ"は迫り視認した時には既に目前に
「なっ――!」
咄嗟に一護は斬魄刀を構える。凄まじい衝撃が腕を貫き、受け止めたはずの斬魄刀ごと身体が宙へ浮く。
「ぐあぁっ!!」
そのまま一護の身体は白道門を越え、遥か後方まで吹き飛ばされる。
受け身を取る間もなく地面を何度も転がり、ようやく停止した頃には両腕へ鈍い痛みが走っていた。確かに防いだ。斬魄刀で真正面から受け止めたはずだった。
それにもかかわらず、防御ごと弾き飛ばされるほどの圧倒的な膂力と衝撃。
隊長格――その力の一端を、一護は身をもって思い知らされる。
「「「一護(くん)!!」」」
織姫、石田、チャドが一斉に駆け寄る。そんな彼らを見下ろしながら、市丸ギンはいつもの笑みを崩さぬまま静かに口を開いた。
「……"今の"君やったら、尸魂界に入ったところで無駄死にするだけやで。」
その声音には嘲笑も怒気もない。ただ、淡々と事実を告げるような冷たさだけがあった。
「自分らも命は惜しいやろ。今日は大人しく帰り。」
そう言い残すと、市丸は踵を返す。重厚な白道門は轟音を響かせながらゆっくりと閉ざされ、一護たちと尸魂界を完全に隔てた。
誰一人、その背を追うことはできなかった。
追えば今度は間違いなく殺される――理屈ではなく、本能がそう告げていた。
それほどまでに、市丸ギンと一護たちの間には、埋めようのない実力差が横たわっていたのである。
夜も更けた瀞霊廷。一番隊隊舎の庭園には、虫の音だけが静かに響いていた。
縁側に腰を下ろす真叶のもとへ、一つの足音が近づく。
「こないな時間な呼び出しなんて真叶君には人の心とかないんか?」
振り返ることなく真叶が口を開く。銀色の髪を揺らし、市丸ギンはいつもの人を食った笑みを浮かべていた。
「今更俺とお前の間に遠慮は要らないだろ?」
「ふふ。親しき中にも礼儀ありって言葉知らんの?…まぁええわ。今日…
黒崎一護、来とったで」
真叶との軽口も早々にギンから伝えられたその一言に、真叶はゆっくりと目を閉じる。
「……やはり来たか。」
尸魂界で何かが起きていることは、既に察していた。朽木ルキアが処刑されると知れば、あの少年が黙っているはずがない。
「……それで?」
真叶はゆっくりと顔を上げる。
「どうだった? 彼の実力は。」
ギンは肩を竦め、小さく笑った。
「話にならへんわ」
その声音には、冗談めいた色は一切なかった。
「あの程度やったら隊長格どころやない。席官クラスと当たった時点で終わりや。」
淡々と告げられる黒崎一護の評価。
「門番の兕丹坊を倒したんは確かに大したもんや。けど、それだけや。剣筋は粗い。霊圧の扱いも甘い。戦い方は力任せ。隙だらけ。」
ギンは細めた目を真叶へ向ける。
「何で真叶君が、あないな小僧にそこまで期待しとるんか……正直、僕にはさっぱり分からへん。」
「……そこまでか?」
「そこまでや。」
ギンからの回答は即答だった。
「今のまま尸魂界を進んでも、待っとるんは犬死にだけ。」
僅かな沈黙が訪れ庭を吹き抜ける夜風だけが二人の間を流れる。
「……でもまぁーー」
ギンがふと口元を緩めた。
「あの眼は買いや。恐らく出会った時点で実力差には気づいとった筈や。それでも僕相手に躊躇いもなく切り掛かってきた胆力は大したもんや」
「……。」
「それでも気持ちだけじゃどうしようもないもんもある。あかんわこりゃ。」
「…の割に嬉しそうじゃないか。」
「ん?何言うてはるん?」
真叶の目にはギンが高揚し何か面白いものでも見つけたような眼差しをしているように見えた。
「それにお前がその"旅禍"の面々をそう容易く逃すとは思えない」
「…向こうさんにも中々癖のある奴らが揃ったってな」
「親友の俺相手に下手な嘘が通じるとは思うなよギン」
「…はぁ…勘弁してや。敵わんな真叶君には。」
「ふっ…何年の付き合いだと思ってるんだお前は」
「ええて。そないなくさい事よう簡単に言えるなぁ本当に。」
口ではそう言いながらも嬉しそうなギン
「…一度は俺の手で逃した。今の時点ではどう足掻いても犬死に以外の未来が見えんかったからな。…けど次はもう無い。いくら俺でも2回も逃す事は不可能やしその程度の実力ならいっそのこと俺が殺したほうが楽に死ねる」
「…それでもお前は奴に期待した?違うか?」
「期待?ちゃうちゃう。ちょっと面白うな玩具があっさり壊れんのが嫌やっただけや。どっちみちあの子が強なって戻ってくるかどうかなんて俺にも分からん。…せやけど何故やろな。見てみたい気もすんねん」
「……何を?」
真叶の問いに、ギンは口角をゆっくりと吊り上げる
「誇りやら格式やら、プライドやらを振りかざして、人間なんぞ取るに足らん存在やと見下しとる連中が……たった四人の人間に振り回される姿や。そんなもん傑作やろ」
軽口のようなその言葉に、真叶は何も返さなかった。だが、長い付き合いだからこそ分かることがある。
市丸ギンという男は、本心を決して口にしない。笑みの裏に本音を隠し、冗談で真実を覆い隠す男だ。
だからこそ、真叶には理解できた。彼もまた、朽木ルキアの処刑という決定に、少なからず思うところがあったのだろう。
しかし、護廷十三隊の隊長である以上、その決定を覆すことはできない。
抗う術も、止める資格も持ち合わせてはいない。だからこそ、彼はあの四人に僅かな可能性を託した。
閉ざされた盤面を覆し、この絶望的な状況に風穴を開けることのできる、唯一の”ジョーカー”として。
懺罪宮(せんざいきゅう)…双殛の丘に建造された、死刑囚を収監するための特別監獄であり護廷十三隊の通常の牢獄とは異なり、中央四十六室によって極刑が確定した重罪人のみが処刑の日まで収監される場所である
「なんだ恋次…刑の日取りでも早まったか?」
そのような所に投獄されている朽木ルキアの元に六番隊副隊長…阿散井恋次が訪れた
「処刑まで残り14日をきった。懺罪宮四深牢へテメーを移送する」
かつて共に修行し入隊したであろう友の在り方とは変わっていた。方や名誉ある護廷十三隊の副隊長…方や尸魂界史に残る大罪人である
「見えるかルキア…そこの窓から」
移動した牢獄の小窓から見える己が処刑される大台… 普段は巨大な白い磔柱として封印されているが、処刑の刻になると封印が解かれ、その本来の姿である巨大な炎の鳳凰へと変貌する。伝承では、その一撃は護廷十三隊隊長百人分の斬魄刀に匹敵する力を有するとされ、罪人の魂魄すら完全に焼き尽くす、尸魂界最強の処刑具である。
「あれが『双殛』…お前を処刑する二つの道具だ」
ルキアの背後から中央四十六室の者達が現れる。
「あれを毎日そこから眺める事で己の犯した罪を悔いる。それが懺罪宮と呼ばれる所以。」
「…」
「さぁお手を『解』」
その解号共にルキアの両手を背後で縛っていた縛道が解除される。
「阿散井副隊長殿。移送の先導お疲れ様です。さぁ参りましょう」
「ん?あぁ」
彼等の呼び掛けに返事をします恋次はその声とは裏腹にルキアの元へと向かった。そしてーー
「一つ。未確認情報を教えてやる。昨日尸魂界に旅禍が入ったのは知っているな?数は5。…そのうちの一つは身の丈ほどの斬魄刀を持った'オレンジ色の髪をした死神"だそうだ」
その瞬間だった。俯いていたルキアの肩が小さく震える。
「……!」
ゆっくりと顔を上げる。絶望に沈み切っていた瞳へ、失われていた光が僅かに宿った。
「……一護。」
思わず零れたその名。恋次は何も言わずただ、小さく口元を歪めると踵を返した。
「……行くぞ。」
その短い言葉だけを残し、再び副隊長としての表情へ戻る。ルキアはその背を見つめながら、胸の奥で静かに呟いた。
そして懺罪宮を抜けた辺りでとある人物と遭遇した。
「やっ!」
「…藍染さん」
「久しぶり。阿散井くん」
現れたの護廷十三隊五番隊隊長…藍染惣右介その人である。穏やかな物腰と柔和な笑みを絶やさない人格者であり、隊士や他隊の死神からも厚い信頼を寄せられている。争いを好まない温厚な性格で、部下の意見にも真摯に耳を傾けるため、「理想の上官」と評する者も少なくない。
「いやぁこうして話するのも久々だなぁ」
「…はい」
「君を剣八の所に取られて以来だから何年ぶりだろ?」
「今は六番隊にいるんだっけ?」
「はい…あの…話って何すか?」
そう問いただす阿散井恋次の表情は"酷く強張っていた"
「あはは…やはり僕のことは信用ならないかい?」
「いえ…その…」
「良いんだ。僕自身"彼"に嫌われてしまっていることは理解しているからね」
阿散井恋次が藍染惣右介を警戒している理由はただ一つ。護廷十三隊一番隊隊長である雀部隊長から目の前の男に対して警戒するよう、ないしは必要最低限の接触のみにするように言葉をいただいていたからである。
勿論、白哉は兎も角他の隊長や人物に同じことを言われたとて話すら聞かなかっただろう。しかし彼…雀部隊長は違う。阿散井恋次は彼を尊敬し彼に憧れていた。
他を寄せ付けない圧倒的な強さ勝ることながら、部下や仲間の為にどんな相手にも立ち向かう心の強さ。…何よりルキアの件に対しても彼だけは正面から上層部に対して苦言を呈しルキアの事を最後まで擁護していた。
その人物が『藍染惣右介には気をつけろ』と言ったのだ。それだけで阿散井恋次が藍染惣右介に対し警戒する理由は十分だろう
「…ところで…阿散井くん。君朽木ルキアさんとは親しいんだっけ?」
「え、…えっと」
「隠さなくて良い。流魂街の頃からよく知った仲だと聞いてるよ。ーー単刀直入に聞こうか。彼女は死ぬべきか?」
藍染惣右介の言葉に驚く恋次。
「いえ…」
「妙だと思わないかい」
「彼女の罪状は無断貸与及び、喪失、そして滞外超過だ。」
「…」
「その程度の罪で極刑など聞いたことがない。加えてそれに続く義骸の即時返却、破棄命令…三十五日から二十五日への猶予期間の短縮…隊長格以外の死神への双殛の使用…どれも異例づくめだ」
「な、何が言いたいんですか」
「僕にはこれが全て一つの意思によって動いてるような気がしてならないーー厭な予感がするんだ…阿散井くん…もしかしたら僕はーー」
その時だった
『隊長各位に通達!隊長各位に通達!只今より緊急隊首会を召集!!繰り返すーー』
突如として下された招集命令。
それを聞いた藍染は、小さく目を伏せる。
「……緊急隊首会か。」
先ほどまで浮かべていた柔らかな笑みは変わらない。
だが、その瞳の奥だけが一瞬、何かを悟ったように揺らいだ。
「どうやら、ゆっくり話している時間はなさそうだね。」
恋次は無言で頷く。
「阿散井くん。」
藍染は恋次の肩へそっと手を置いた。
「さっきの話は忘れないでほしい。」
「……。」
「今回の件には、まだ君たちの知らない何かがある。」
穏やかな声だった。しかし、その言葉だけは妙に重く阿散井恋次の胸へ残る。
「もし何か異変を感じたら、自分の目で見て、自分の頭で考えるんだ。」
恋次は藍染の顔を見つめた。浮かべているのはいつもと変わらない優しい笑み。隊士たちから慕われる人格者として誰もが信頼してやまない五番隊隊長。
それでも――雀部真叶から掛けられた、あの言葉だけは頭から離れない。
『藍染惣右介には気を付けろ。必要以上に近付くな。』
その忠告が胸の内で何度も反響する。
「……失礼します。」
恋次は軽く頭を下げると、その場を後にした。藍染は去っていく背中を静かに見送り、小さく息を吐く。
「……哀れな子羊…他人に踊らされ動いている者ほど過剰に自分を持ち上げている」
その独り言を聞く者は、誰一人としていなかった。ただ阿散井恋次を見つめるその瞳は酷く侮蔑が混ざった瞳をしている
そして数刻後――護廷十三隊全隊長を震撼させる、あまりにも衝撃的な事件が幕を開けることとなる。
この先の展開!!
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原作まで飛ばす!
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オリジナルストーリーで!
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完全お任せで!