アビドス・イスラーム高等学校 作:アヌビスの巣
原作:ブルーアーカイブ
タグ:R-15 残酷な描写 アンチ・ヘイト ブルーアーカイブ アビドス高等学校 これをブルアカ二次創作と呼ばないでください イスラム教 架空戦記 甲殻類先生リスペクト 架空歴史 独自解釈 オリジナル設定 オリジナルキャラ アリウス分校
これをブルアカ二次創作とは呼ばないでください。どちらかとちうと、ブルアカの世界観を借りた架空戦記でしょう。
扱っている題材が題材なため消す恐れがあります。
私はアブラハムの宗教ついては概要ぐらいしか知らないし、歴史も齧った程度です。ブルアカ知識もアビドス3章で止まっています。なので、その道の人が見たら間違っている、浅い知識だなと思うかもしれません。
それでも良いというなら、どうか温かく読んでいただきたいです。
かつての第一回公会議よりも昔のことである。
当時のアリウスはトリニティ領域において政治的に孤立した存在であった。
アリウス分派は同じトリニティとは違う、異様な存在として他の分派から疎まれていた。
主に二つの理由がある。
一つ目は、彼らアリウス派は、トリニティで支配的である一神教について、彼ら独自の教義や戒律を有していたためである。
アリウスで広まっていた独自性ある一神教の宗派を新説派と呼び、新説派に対して元来トリニティで信仰されてきた一神教を旧説派と呼ぶ。
新説派の教義は、旧説派のように清貧を重んじることはなく、逆に富を肯定的な存在として認め、経済的に満ち足りれば心も豊かになると説いていた。
富は人々の幸福を呼ぶものであり、貧しいものに富を施すことは大きな善行なのだと。
そのため当時のアリウスでは、他の分派が教義から忌避していた、金融業や商業が積極的に営まれていた。
「聖なるイコン(コイン)」
「生めよ、増やせよ、財布に満ちよ」
という言葉は、新説派の教義を端的に表している。
なお、貧しい者に対する施しは旧説派の教義にもあるが、新説派の考えは異質であった。
旧説派にとって、新説派は完全に俗物であった。
イコン(コイン)を増やすことに熱心で、清貧とはかけはなれた煌びやかな生活、金糸の入ったシルクの服を見せびらかしながら貧者に施しをする新説派の姿は、旧説派にとっては傲慢で貪欲、虚栄心の権化であった。
旧説派も信者からのお布施で華やかな修道服を着ていることは目を瞑る。
また、新説派における施しとはただ単に金銭や食物のことだけでなく、知識も含まれていた。
貧しき人が、自立できるようにお金の稼ぎ方を教えることは最も善良な施しとされた。
わかりやすく言えば、空腹の者には魚を与えるだけでなく、魚の獲り方を教えるわけである。
他にも、 1日5回の礼拝や約1ヶ月間の日の出から日没までの断食など、旧説派は新説派とは異なる戒律や教えがあった。
二つ目は、政治的にもアリウスは校内政治がまとまらず、朝令暮改状態でトリニティの諸分派に対する外交に一貫性を保てなかったためである。
当時のアリウス政治は、ロイヤルブラッドを仰ぐ旧説派(保守派とも)と最後の預言者を自称するウンマ率いる商人中心の新説派で対立していた。
政治的な重心が二つに分かたれていたため、アリウス内政治の方針が定まらず、能動的な動きを不可能にしていた。
当時のトリニティにおいては、分校は貴族の支配するところであり、まともに分校を支配できず、それどころか商人とそれを支持する平民が力を持ちつつある状況のアリウスは、伝統的な貴族制の中では異質であった。
分校一つも統制できないアリウスのロイヤルブラッドを見下してもいたし、力を増しつつある商人及び平民に恐怖していた。
以上のように、政治的・宗教的理由を挙げたが、結局のところは預言者ウンマの存在に原因がある。
彼女は預言者を自称し、人々に新しい神との契約の遵守をうったえた。
ウンマの主張は、当時のトリニティの一神教の教義を否定し、自身を通しての神の言葉に従えというもので、トリニティ諸分派から忌み嫌われた。
旧説派の教義の否定は、そのままトリニティ諸分派のそれぞれの権力体制の否定に直結するからである。
第一回公会議が開催される頃には、ウンマはアリウス内の宗教組織と経済を完全に掌握していた。
彼女の支配するところにないのは、あとは生徒会長だけだと言われるほどだった。
最後にして最高の預言者ウンマ(トリニティでは稀代の守銭奴、貪欲な偽救世主、ハゲと呼ばれる)は、第一回公会議より30年前に当時のアリウス自治区に生まれたとされる。
ウンマは幼い頃に両親を亡くし、商人の叔母の世話の下で育てられ、叔母の商売を手伝った。
彼女は幼い頃から聡明で、特に算術と弁論に優れていたとされる。
また、叔母の商売手伝いで商人として才覚を示して、成長後は独立した商人の一人となった。
彼女はゲヘナ部族と積極的に交流を持ち、またアビドスに独自の流通網を構築した。
アビドスのヤスリブ地方の生徒会長と懇意になるなど、他の商人には持ち得ない人脈をもち、アビドス-トリニティ間貿易をほぼ独占するにまで至った。
彼女の商売は凄まじく、流通網の独占により絹や銀といった需要が高い商品を売り財を成し、他の商人と連合を組むことで、アリウス経済を完全に支配下に置いた。
経済的に完全な成功を収めたウンマだが、彼女はしばしば貿易の版図を広げる過程で悩みを抱き、アリウス首都郊外の山の洞窟に籠るようにもなっていた。
悩みを抱いて洞窟で瞑想すると、そこで大天使に出会い、神の啓示を受けたとされる。
その後も啓示が次々と下されたとウンマは主張し、人々に神の啓示を説いて回った。
新説派の始まりである。
最初は、ウンマは彼女に近い人に教えを説いて回り、最初に入信したのはウンマの叔母で、その後ウンマを慕う商人、客に信仰は広まった。
またウンマは篤志家で、貿易の利潤を孤児院に寄付するなど社会的な名声が高いこともあり、アリウスにとどまらず多くの人は彼女の説教を熱心に聴いた。
最大の後援者は、アビドス-トリニティ間貿易で懇意のある新説派に改宗したヤスリブの生徒会長で、アビドスに新説派が広まる風土をつくり出した。
新説派が旧説派と違うところは、親が旧説派かどうかにとらわれず、どんな人も信じれば救われると説いたことである。
トリニティ生徒の民族宗教であった一神教が他校生にも信仰されるようになったが、ウンマ及び新説派が迫害される要因にもなった。
このように書くと旧説派は選民思想のように聞こえるので追記する。
もともとトリニティの一神教は、神と契約した原初の預言者から始まった宗教だ。
契約は、神は人(原初の預言者とその子孫)を導き祝福し、人は戒律を守りその絆に応えるという内容である。
また、契約ではトリニティは戒律を世の人々に広め、神の祝福を広めることを義務としており、選民思想ではない。
ただ、ウンマの生まれた時代のトリニティはやや選民思想的であったことは間違いなく、だからウンマはそれを非難して新説派を作り出したといえる。
やがてウンマは、アリウスにおける宗教的指導者となり、アリウスはわずか10年で新説派の根城となった。
時のアリウス生徒会は旧説派であり、彼らの最大の守護者はアリウス風紀委員会であった。
しかし、アリウス風紀委員会にも新説派が広まってしまっており、組織員の4割が新説派だったとされている。
アリウス生徒会は、勢力を増すウンマを危険視し、暗殺しようとしたが、一部のアリウス風紀委員会が独断で暗殺者を捕らえ、またウンマが民衆の助けで暗殺から逃れると、事態は悪化した。
アリウス生徒会本部前に集まった民衆は、生徒会に対する抗議活動を行い、一部の風紀委員会が合流してからは公然とアリウス生徒会施設への襲撃が起こった。
ウンマは民衆の暴動を鎮静化しようと尽力したが、民衆の熱狂は凄まじかった。
また、情報筋から風紀委員会が武器を民衆に横流ししていると判明し、アリウス生徒会は民衆の武装蜂起を恐れ、渋々新説派は一神教における一つの宗派として受け入れた。
アリウスが完全に新説派になることは拒絶したわけだが、もはやアリウスにおいて旧説派は力を失ったことは明らかだった。
ウンマがアリウスで生徒会に次ぐ地位に立つと、アリウスの商業主義化をもたらした。
独自のアビドスへの流通網と、一部ゲヘナ部族との交易は、アリウスを貿易中心地として発展させた。
当時はアビドスは初期生徒会期末期にあたり、まだアビドスは統一されていたが地方に対する全アビドス生徒会の統制が弱まっていた時期であった。
地方の生徒会は自勢力拡大のために、それぞれが勝手にトリニティへ貿易しに行った。
また、トリニティ諸分派も争いで優位に立つためにアビドスとの貿易を重視していた。
こうした両者の思惑のため、この時のアビドス-トリニティ間貿易はとても盛んで、アリウスは大きくその恩恵を享受した。
一時期このときのアリウスは、トリニティのみならずキヴォトスの四分の一の富が集まったと言われている。
ウンマの商業重視姿勢は、のちの新説派において商売と交渉が尊重され、推奨される風土をつくりだすことになる。
こうしたアリウスの動きに対して、他のトリニティ分派の反応は芳しくなかった。
商業重視と独自の戒律と教義は、当時農業中心であり旧説派でもある諸分派には異質に見えた。
当初は他の分校も、アリウス独自の教義や外部勢力との交流については思うところはあっても、アリウスを通して流れてくるアビドス-トリニティ間貿易の恩恵を素直に喜んだ。
しかし、アリウスが経済力を大きく高め、独自の軍備整備でトリニティにおけるパワーバランスを崩し始めると、状況は変わる。
軍備整備はウンマ筆頭の新説派の商人の要望が大きく、キヴォトス有数の資産家となった彼らは、すでに多数の賊の襲撃を受けていた。
そのため治安維持能力の拡充を図ったが、防衛どころかアリウスが勢いそのままに独自にゲヘナの諸部族を征服し始めると、トリニティ諸分派は警戒を強める。
トリニティ諸分派はアリウスの経済力と軍事力を警戒し、自然に対アリウスの連合が組まれていった。
トリニティにおけるアリウスの孤立化について、アリウス生徒会は事態を深刻には捉えていなかった。
アリウス生徒会からすれば、目の下のたん瘤は新説派であった。
しかし、トリニティ諸分派には同じ旧説派の同胞の好(よしみ)があるだろうと考えていた。
確かに独自にゲヘナ部族を征服しているが、蛮族からトリニティを守っている防御行為だと考え、むしろ他の分派から感謝されているだろと考えていた。
しかし、アリウス生徒会が思うよりも、アリウスの膨張はトリニティ諸分派にとって恐怖であった。
彼らはいずれアリウスがトリニティを征服し、自分たちの教義が弾圧されると考えていた。
新説派はアリウス以外の分派にも伝わったが、分派の生徒会は新説派を危険視し、異端として弾圧した。
弾圧された新説派の人々がアリウスに集まり始めると、トリニティ諸分派はさらに対アリウスで結束した。
その筆頭はフィリウス分派とパテル分派で、彼らは殊更アリウスの新説派を敵視した。
これに対抗して、アリウスの新説派商人がフィリウス及びパテルの商売から引き上げる事件が発生する。
事態は短期間で解決したが、もはやアリウスとトリニティ諸分派の対立は避けられなくなってしまった。
その後、トリニティの統合について話し合う第一回公会議が開催された。
論点となったのが、新説派の扱いである。トリニティ諸分派は新説派は異端とし、教義を修正しなければとても統合はできないと。
無論アリウスはこれに断固反対した。
このときのアリウスにおいては生徒会に権力はほぼなく、真の権力者は預言者ウンマであった。
アリウス生徒会の本音としてはトリニティ諸分派の主張に賛成し、統合に加わりたいところだが、校内政治がそれを許さなかった。
アリウス生徒会は背後のウンマ率いる新説派とトリニティ諸分派との板挟みにあい、非常に苦しい立場に置かれた。
アリウスはトリニティ随一の校力(=国力)を持つと言っても、トリニティ諸分派全てに対抗するのは不可能であった。
このときアリウス生徒会にとって救世主が現れた。
のちにユスティナ聖徒会の中核を担い、現在はシスターフッドという名で活動することになる分派であった。
その分派の提案は、新説派を認める代わりに、アリウス風紀委員会をユスティナ聖徒会の傘下に収めることであった。
アリウス生徒会は渋るが、その分派は続けて言った。
さもなければ、トリニティ連合はアリウスに然るべき処置を施さなければならないと。
アリウス生徒会はようやく自身の置かれた立場の深刻さを理解した。
アリウスは議題の変更若しくはやり直しを求めるが、業を煮やした諸分派はアリウスそっちのけで会議を進めた。
そして、公会議はアリウスを除いたトリニティの統合に同意した。
最初からこれが狙いだとも言われている。
当然アリウスは強く反発し、暴発した一部の新説派のアリウス風紀委員会が公会議を先制攻撃したことで、第一次アブラハム戦争(アリウス・トリニティ戦争とも言う)が勃発した。
先制攻撃はアリウス生徒会の与り知らずのところで、預言者ウンマの統制を離れた宗教的熱狂からくる独断行為であった。
当初はアリウスが戦況を有利にすすめ、トリニティ諸分派は突然の奇襲に完全にパニックであった。
また、結成したばかりのユスティナ聖徒会は連携がうまく取れず、各個撃破されていった。
そしてなし崩し的に旧説派のアリウス風紀委員会及びアリウス生徒会、そして預言者ウンマの支持が加わり、アリウス派は総力的にトリニティへの侵略を推し進めた。
短期決戦に持ち込まなければ、負けるのはアリウスであるという事実もあった。
アリウスは一時期トリニティの半分を占領した。
しかし、ユスティナ聖徒会の抵抗は凄まじく、トリニティ生の全力の反撃に遭うと侵攻スピードが徐々に鈍化した。
また、文字通りトリニティ全てを敵に回したアリウスは、各地の反乱の対応に追われ、徐々に初期の勢いを失っていった。
最後はアリウスの旧説派の反乱で戦線は崩壊し、アリウスにユスティナ聖徒会の軍勢が押し寄せた。
このときのユスティナ聖徒会のアリウスに対する仕打ちは過酷なもので、生徒会本部から膨大な量の金銀や聖遺物が略奪され、大聖堂などの歴史的建造物が破壊された。
これをもって、第一回公会議の目的の一つが、アリウスの豊かな財を奪うためとする説もある。
ユスティナ聖徒会はアリウス生徒(新説派)に対しても激しい弾圧を加え、拷問なども行われていたとされている。
余談だが、こうした血生臭い歴史を作り出したユスティナ聖徒会は、新説派への弾圧の一方で、旧説派のアリウス生徒会を密かに匿い、ロイヤルブラッドのカタコンベ逃亡を手引きしていた。
アリウス旧説派は密かにユスティナ聖徒会と密会し、アリウス旧説派がアリウスにおける指導的地位に返り咲くことを支持することを条件に、旧説派はトリニティ側に寝返った。
この事実は第四次アブラハム戦争にて、ユスティナ聖徒会本部を占拠したアビドス上下軍が、地下の金庫から見つけた機密文書から判明した。
さらに余談だが、この事実によって、エデン条約襲撃事件で存在が判明したカタコンベ派アリウスと、アビドスのウンマ派アリウスの統合をますます困難なものにした。
カタコンベ派アリウスとは、ユスティナ聖徒会の手引きでカタコンベに逃げた旧説派のアリウス一派のことである。
閑話休題。
過酷な弾圧により自治区から逃げたアリウス生徒は散り散りになり、こうしてアリウス分校は表舞台から消えた。
このとき、一部は集団でアリウス自治区から逃げた。
そのうちの預言者ウンマ率いる一団は、アビドスのヤスリブへ逃亡していた。
ユスティナ聖徒会はこれを追撃し、まともな武器を持たなかったウンマの一団は壊滅した。
しかし、信者たちの狂信的な抵抗とユスティナ聖徒会の慢心により、ウンマは無事にヤスリブへ逃亡した。
この、預言者ウンマがアリウス分校からアビドスへ脱出した事件を、ヒジュラ(聖遷)といい、この年はのちにアビドス独自の暦の元年と定められた。
慢心を非難されたユスティナ聖徒会だが、ウンマは信者も財産も全て失い、不毛な大地に一人追放されたので、たった一人に脅威を見なせないのも無理はないだろう。
実際、ウンマは文字通り裸一貫で、ヤスリブから救援に来た軍は、まずウンマに服を貸し与えたと言われている。
後世、この判断は「トリニティ始まって以来、最初で最悪の過ち」と非難され、ユスティナ聖徒会においても、トリニティの指導的立場を退くまで終生深く後悔し続けた。
まさか、砂漠に追放された無一文が、アビドスで奇跡の復活を果たし、トリニティ総合学園にとってゲヘナ以上の宿命的な敵校、アビドス・イスラーム高等学校を誕生させることになるとは、誰も思わなかったのである。
アビドスのヤスリブに聖遷したウンマは、当初はアリウスの時と同じように教えを説いていた。
また、ヤスリブにユスティナ聖徒会の弾圧から逃れたアリウス生徒が集まり始めると、ウンマを中心とする新説派共同体が誕生した。
ウンマは繰り返し聖地(旧アリウス自治区)の奪還を主張しており、これは神との契約によるものだとされる。
ウンマの言うところによれば、神との新しい契約により、神が降臨した聖地アリウスを真なる預言者(ウンマ)と使徒(新説派)の土地にしなければならない。
さもなくば、神との新しい契約を、人間は履行できないとのことだった。
この教義によって、のちのアビドスでは聖地奪還運動が盛んとなり、トリニティとの度重なる戦争の原因となった。
こうして彼らは聖地である旧アリウス自治区の奪還を目標に、勢力的に共同体拡大に努めた。
ウンマは布教活動だけでなく、かつてと同じように商業活動や政治活動を積極的に行った。
かつて征服したゲヘナの部族とは、今度は同盟を結び、積極的にトリニティへ貿易に行く行商人と貿易し、アビドスに新説派の教えを広めた。
ウンマのカリスマは凄まじく、かつて征服したゲヘナ部族との同盟もウンマの働きが大きい。
ヤスリブにおいて新説派の教えが急速に広まった。
これには新説派に改宗したヤスリブ生徒会長の後押しもあったとされる。
ウンマが聖遷した当初、アビドスでは全アビドス生徒会の権威は失墜し、地方生徒会が勝手気ままに動く分裂期にあった。
ヤスリブ生徒会長はこの混乱期を生き残るために、新説派を利用して自治区をまとめ上げたのである。
新説派の教えはヤスリブだけでなく、トリニティへ貿易しに行く行商人を通して、アビドス全土に広まり始めた。
こうして、ウンマ率いる新説派共同体は急速に勢力を拡大した。
ウンマとユスティナ聖徒会両者は睨み合い、ウンマはヤスリブの生徒会の支持をとりつけ、トリニティへ行く隊商を妨害した。
ユスティナ聖徒会はヤスリブに大部隊を派遣し、それを防止するためにウンマは軍を率いて出陣した。
第二次アブラハム戦争の始まりである。
両者はヤスリブ平原(東ヤスリブ地方にある、アビドス領域のトリニティ校境近くにある平原)で激突、トリニティ側はヤスリブ側の倍以上の数だったが、奇跡的にヤスリブ側の勝利となった。
ウンマは軍事的才覚にも恵まれていたのである。
ウンマは神の啓示のおかげだとしているが、中立的に見てもウンマに軍事的才覚があったのは間違いなく、ウンマは名将としても歴史に名を刻んだ。
ちなみに、これをヤスリブ平原の戦いと呼び、のちに新説派はこの戦いを記念してこの月に断食をするようになった。
翌年、ユスティナ聖徒会は今度はゲヘナ部族と同盟を結び、前回の倍の軍でヤスリブに攻め入った。
第二次ヤスリブ平原の戦いの初戦はトリニティ側優位に進んだが、ウンマの計略でゲヘナ部族が離反し、またしてもヤスリブ側の奇跡的勝利となった。
しかし、ヤスリブ側の損害も大きく、両者は一度停戦した。
停戦の結果トリニティはヤスリブ自治区から撤退し、ヤスリブ平原は非武装地帯と定められ、ヤスリブ側に不利な形となった。
当時の勢力差ゆえに仕方がなかったが、この停戦はウンマのヤスリブ生徒会入りを果たさせ、ウンマは以後の勢力拡大に有利となった。
ウンマの生徒会入りは生徒会長の意向によるもので、当時の生徒会長は新説派に深く熱心で、自分の権威や権力を否定してまでウンマを生徒会長に就かせようとしたほどだった。
さすがにこれには他の生徒会役員が苦言を呈し、ウンマ自身も権力者という世俗的な立場につくことは、預言者の権威を損なうとして辞退した。
筆者としてはもう商人やってるのだから十分世俗的だろと、トリニティに賛成する立場だ。
その翌年、トリニティとヤスリブの間で小競り合いがあり(ヤスリブがトリニティへ向かう貿易隊を妨害した)、停戦が破られたためウンマはゲヘナ部族を含めた軍勢で東西からアリウス自治区に侵攻した。
今度はトリニティ側が劣勢となり、トリニティはアリウス砦(旧アリウス自治区にある生徒会本部を囲うようにしてある砦)に籠城したが、ウンマの奇跡(奇術)で城門があっさり開門し、トリニティはアビドス(ヤスリブ自治区)に降伏した。
ウンマはアビドス生徒を行商人に偽装し賄賂で懐柔させたそうだ。
ウンマの言うところによれば、神が門番の心を堕落させたと、なんだか都合が良すぎるが、都合がいいからこそ奇跡だと新説派は言うのだろう。
ウンマは降伏したトリニティ生徒に当時としては寛大な態度で臨み、全てのトリニティ生徒が捕虜虐待を受けることなく解放された。
ちなみにこのとき賄賂を受け取った門番はのちに新説派に改宗し、アリウス庁ナンバー2にまで上り詰めた。
この門番の姓名は羽沼と呼ぶ。
ヤスリブ生徒会はアリウス庁を設置し、その長をアリウス入りしたウンマが務めた。
さらに、散り散りになったアリウス生徒がアリウス自治区に集まり、ほぼ全てのアリウス生徒が再度自治区に帰還すると、アリウスは宗教的な高揚感に包まれた。
ウンマの治世の下、アリウス自治区は表舞台に返り咲き、ウンマの死まで平穏な日々が続くことになる。
一方トリニティでは、帰還した兵を中心に新説派の運動が活発になり、ユスティナ聖徒会が過酷な弾圧を加えたため内戦状態になった。
ウンマが無傷でトリニティ生徒を帰したのは、トリニティの混乱を狙ったものと思われる。
反乱を鎮圧したユスティナ聖徒会は、その後トリニティの中央集権化を推し進めた。
ユスティナ聖徒会の強権的な姿勢は、トリニティ内に聖徒会解体の機運を生み、実際に第六次アブラハム戦争後に解体されることになる。
現在のトリニティの三頭政治体制は、このユスティナ聖徒会の出来事を反省してできている。
トリニティ生徒たちは、ユスティナ聖徒会を血塗られた歴史として認識している。
しかし、歴史はユスティナ聖徒会に別の評価を与えている。
確かにユスティナ聖徒会は強権的であり、独裁は政治体制として好ましくない。
だが、もともと複数の自治区から成り立つトリニティは常に分裂主義の恐れがあり、ユスティナ聖徒会の独裁体制は、政治的安定性を保つ上で非常に大きく貢献をした。
ユスティナ聖徒会による独裁体制あってこそ、トリニティがアビドスやゲヘナの侵略を跳ね返し、独立を守れたというのは、現代でも支配的な見解である。
筆者もユスティナ聖徒会の弾圧行為は非難されるべきだと考えているが、それ以外の面も評価するべきだと考える。
預言者ウンマはアリウス自治区の復興を推し進め、さらに盟友のヤスリブ生徒会と共にアビドスの平定に乗り出した。
ここで一つ問題が発生した。
かつてウンマはトリニティへ行く貿易隊を妨害しており、それによって他の地方生徒会からも反感を買ったのである。
彼らは反ヤスリブ同盟を結び、連合となってヤスリブへ侵攻した。
メンフィス遠征の始まりである。
ヤスリブ生徒会は大急ぎでウンマに助けを求め、ウンマはアリウスから援軍を派遣すると、ウンマはひと足先にヤスリブに到着した。
ウンマはヤスリブの軍勢を率いてまたしても軍事的才覚を示した。
ウンマは巧みな指揮で敵を翻弄し、敵軍の侵攻を遅らせた。
敵がヤスリブ中心部に迫ると、ヤスリブから撤退するように見せかけてあえてヤスリブ川(ヤスリブを南北に横断する川)を渡らせた。
敵の半数が渡り切ると、ウンマはアリウスからの援軍と合流、そのまま敵に突撃した。
迎撃しようにも、自軍の半数は川を渡河している最中で身動きが取れず、動ける兵も先月のウンマの翻弄により疲弊していた。
反ヤスリブ同盟軍は、そのままヤスリブとアリウスの軍に各個撃破されて全滅した。
この戦いは、ちょうど戦いがヒジュラ(聖遷)の月に起こったことから、ヒジュラ(転換)の戦いと呼ばれ、ウンマの最後の軍事的偉業となった。
ヤスリブ-アリウス連合軍は数日間補給と休憩を行ったのち遠征を開始し、次々と敵対地方自治区を降伏させ、半年後には全ての反ヤスリブ同盟の自治区が降伏した。
こうして、メンフィス遠征は終結し、ヤスリブは雄区(アビドスの全自治区の中でも特に力を持った自治区の総称)の仲間入りを果たした。
以後、ヤスリブは新説派の守護者として、アリウスの生徒はヤスリブによるアビドス平定を大いに助け、後のシェマタ政権下にはアビドスの統一を成し遂げることになる。
晩年、ウンマはアリウス自治区へ戻ると、精力的にアビドスへの布教活動と聖典の編纂に力を入れた。
一方、前回の失敗を反省し、ゲヘナ方面やトリニティ方面には勢力を拡大せず、同盟や交易にとどまり、布教も控えた。
数年後、預言者ウンマは昇天した。
しかし、彼女の教えは残った。
彼女の教えはキヴォトスに大きな影響を及ぼすことになる。
良い意味でも悪い意味でも。
●トリニティ
原作以上の過酷なる国際情勢(アビドスとゲヘナという不倶戴天の敵)のため、皮肉にも原作のような陰湿な派閥争いはほぼない。浦和ハナコもニッコリな団結力とクリーンな人間関係が築かれている。
なんならカタコンベ派アリウス(旧説派アリウス)にいち早く謝罪と賠償をし、アビドスのアリウス派よりも先に和解が成立して統合を成し遂げた。
もうトリカスとは呼ばせない。
続ける気はないです。