落雷に当たる確率というものは高い訳ではないがゼロという訳でもない。
落ちてきた雷をただの子どもが避けるのは不可能で、雷に打たれることになった俺の頭に思い浮かんだのは、格闘家として生涯を生きた男の人生の記憶。
落雷に当たったことでそんな前世を思い出した俺は、今生の自分がボルテーンという名前で、とある漫画のキャラであることも理解してしまった。
リメイク版のワンパンマンという漫画に登場したボルテーンというキャラは、幼少期に雷に打たれたことで帯電体質となり、雷々拳という拳法の使い手となった格闘家であったが、敗北した相手との力の差を埋める方法として怪人細胞を食して自ら怪人となっても、同じ相手に再び負けるというぱっとしない戦績の存在だったな。
そんなボルテーンになってしまった訳だが、今は雷に打たれたばかりで帯電体質となっただけの子どもである俺。
前世を思い出さなければ、同じ様に帯電体質頼りな格闘家になった後に怪人細胞を食べて怪人になっていたかもしれないが、怪人になっても冥躰拳の使い手であるスイリューには勝てないことを、今の俺は知っている。
格闘家としての才能というものは、冥躰拳のスイリューがボルテーンよりも遥かに上だ。
しかしワンパンマン世界は尋常じゃない程に鍛えまくれば人間でも強くなれる世界である為、今から鍛練を積み重ねていけば原作のボルテーンよりも強くなれるんじゃないかと考えて、ひたすら鍛練を行うことに決めた俺は、先ずは単純な筋トレから始めてみることにした。
幸いと言っていいのか、今生の両親は筋トレが趣味であった為、筋力を鍛練する時に使う器具には困ることはない。
両親から借りた筋トレ器具等も用いて筋力を鍛えていく毎日を過ごしながらも、かつて格闘家として学んだ武術を再び磨き直していく。
帯電体質となって使えるようになった電気ショックだけに頼るのではなく、磨いた五体を武器として戦えるように積み重ねた鍛練。
鍛練ばかりな幼少期を過ごした結果、少年となった頃の俺の身体は鋼のように強靭となっていたが、野外で鍛練していた時に連続で落ちてきた雷がまるで避雷針に引き寄せられるかの如く、全て残らず俺に当たったことで更に凄まじく強化された帯電体質。
以前は強力なスタンガン程度の電気ショックが出せる位だったが、今では雷よりも凄い雷撃を放てるようになっていた俺は、明らかに怪人化したボルテーン以上の雷撃を繰り出せるようになっていた。
恐らくは鍛練を積み重ねたことで肉体が強靭になっていた為、帯電可能な電気の量も増えたということなのだろう。
体外への放出も可能な雷を体内で活用することで、反応速度や身体能力等も上昇させることができた俺は、帯電体質で雷撃を放てる特殊能力持ちとしてだけではなく、格闘家としても強くなることができたのは間違いない。
まだ少年である今の状態で、怪人化した原作のボルテーンよりも明らかに強くなることができていたが、俺はそれで満足することはなく、鍛練を積み重ねていく日々を過ごす。
少年の身で時折格闘大会に参加しては、雷撃を使わずに鍛えた身体と武術だけで優勝して賞金等をゲットし、賞金の半分をこれまで育ててくれた両親に感謝の形として渡しておいた俺は、残りの半分は貯金しておくことにした。
そんな生活を繰り返していく内に人間以外と遭遇して戦うことにもなり、怪人とも戦うようになった俺は実戦経験も豊富になっていたのは確かだ。
格闘家が変貌した強力な怪人を相手に戦い、血を流すこともあったが勝利してきた俺は、身体の中に火が灯るような感覚を感じ、その日を境に限界を超えることが可能になってきたが、もしかしたら俺のリミッターも外れてきているのかもしれない。
上昇していく身体能力、より洗練されていく武術、更に強化された帯電体質、それによって俺の強さはどんどん上がっていく。
飛躍的に強くなることができたとしても、日々の鍛練は欠かさず行い、格闘家としての研鑽を続けた俺は怪人とも積極的に戦うようになり、対人戦だけでは身に付かない経験も得ていった。
そんな毎日を過ごしていくと月日が過ぎ去って、少年から青年となった俺は、今回で第22回となるスーパーファイトに初参加することに決める。
第22回スーパーファイトでは本来ならチャランコの代わりにサイタマがヅラを被って替え玉で出場していた筈だが、怪我していなかったチャランコ本人が普通に出場しており、原作との差異というものを感じたが、俺がトーナメントで戦うことになる相手も変わっていたりもした。
第22回スーパーファイトで本来ならサイタマが戦うことになっていた面々と俺がトーナメントで戦うことになっていて、原作でボルテーンと初戦で戦っていたバズズという選手とチャランコが戦うことになっているようだが、チャランコでは勝てないだろうな。
予想通り、バズズという選手に敗北したチャランコは、スーパーファイトの会場から病院まで送られていったが、いち早くスーパーファイトの会場から離れられたチャランコは、幸運だったかもしれない。
俺は俺でスーパーファイトを戦っていき、最初はザッコス、次はバクザン、その次はチョゼ、どんな相手も次々と一撃で倒して連勝していくと、ついに決勝で戦うことになるスイリューと俺。
試合開始の合図と共に真正面から突っ込んできたスイリューへと、かなり加減して叩き込んだ正拳突きは一撃でスイリューの身体と意識を飛ばしたようで、場外に吹き飛んだスイリューは気絶していた。
俺の優勝で終わった第22回スーパーファイトは、何事も無ければ賞金を渡されて終わりだが、そんなことはなく、大会が行われていた会場に現れた怪人。
初代スーパーファイトの王者であったゴウケツという格闘家が、怪人王に敗北して怪人細胞を食べたことで怪人と化した存在こそが、この会場に現れた怪人ゴウケツであり、災害レベル竜の怪人だ。
さて、ようやく本番が来たと考えた俺は、ヒーローとして怯えることなく前に出て怪人ゴウケツと戦おうとしたスネックとマックスが蹴り飛ばされる前に素早く2人を下がらせて避難させると、怪人ゴウケツを相手に拳を構える。
原作では怪人化しても勝てなかったスイリューに、人間のままでかなり手加減して倒せるようになった今の俺が、S級ヒーローであるジェノスを一撃で倒すような怪人であるゴウケツを倒せるかどうかを試す時が来た。
「オレとやる気か?なら死ね」
そう言って拳を無造作に振り下ろしてきた怪人ゴウケツの一撃を軽々と避けた俺は、雷速よりも速く動けるようになっていた身体で、下から上に突き上げるように拳を繰り出す。
人間であるスイリュー相手に繰り出した時とは違って手加減はしていない俺の拳は、ゴウケツの頭部を完全に爆散させると同時に、余波で空の雲すらも完全に消し去っていたみたいだ。
頭部を失ったゴウケツの身体が倒れたところで観客達から巻き上がる大歓声。
そんな観客達の声に応えるように、俺は拳を掲げておく。
これまで鍛えてきたことが無駄ではなかったのなら、報われたような気がするが、格闘家としての鍛練は今後も続けていくとしよう。
ちなみにサイタマ不在という訳ではありませんが、チャランコが怪我していなかったので替え玉出場しなかったサイタマとなります