・綾小路と一緒に飯を食う
・各クラスのリーダーと話す
・教員からの評価
・教室で持ち帰りのラーメンを食う
「そろそろ席に付け。クラスポイントを増やす意思が無いのなら別だが」
日本史を担当する茶柱の鶴の一声により雑談をしていた生徒たちは各々自席に帰っていく。池や山内、須藤といった不真面目な生徒も周囲の圧力もあり素直に席に座る。
が、ここで大槻、一人席を立ち教室の前方へ行き、そのまま扉をガラリと開けた。無論手洗いにあらず。大槻は周囲の目線が集まっていることを知りつつも咎められる謂れはない、そう考え気にすることなく教室を後にした。
Dクラス教室前。
大槻、解放…!
その瞬間に大槻のスマートフォンにピピピと電子音と共に通知が入る。
今回大槻はとある目的のために昼休憩までの授業を欠席する「半日欠席権」を購入している。価格は33000pp。そのため学校側は午後からの授業までの制限時間伝えるため大槻のスマホに通知したのだ。
通知を開くと表示には4:59:51の数字が表れる。
「フフ…始まったか…。
5時間のカウントダウン…」
大槻はゆったりとした足取りで廊下を歩き始めた。
****
**
*
「始まったわね。大槻くんの外出…」
職員室にて、大槻のGPSを監視するのは星之宮知恵と真嶋智也である。
高度育成高等学校は外部との連絡が完全に断たれるが故、生徒の中には敷地から脱走を試みようとする者が少なからず存在する。普段は専用の職員により生徒らのGPSや監視カメラは24時間監視されているが、今回のような本来生徒が出歩くはずの無い、イレギュラーな時間帯での監視はその曜日に担当の授業が無い教員が監視を担う事になっているのだ。
「…随分と動きがゆっくりだな」
「え?」
「いや…普通、あの通知が届いたら
ああのんびりとはしていられないというか…」
行使されることはあまり多くない欠席権であるが、過去にそれを購入した者は大槻以外にも複数人存在する。
衝動的にサボりたくなった者、自室に忘れ物をした者、敷地から集団で脱出を試みようとした者、他クラスへの妨害工作を行おうとする者…。
「大抵はわずかな時間も無駄にしたくないと…
慌ててダッシュ…!」
「1年前の購入者は酷かったわねえ~
『パチンコ、キャバクラ、肉、酒、女…!』とか醜く駄々こねて、取り押さえるのが大変だったわあ~…」
ちなみにパチンコやキャバクラは高育の敷地内に当然のことながら存在しない。
「だが大槻は慌てるどころか…、見ろあれを」
真嶋は大槻のGPSをもとに、大槻の姿が見えるであろう監視カメラの映像を表示する。
「取っている…!靴底の泥…!」
中庭のベンチにゆったりと座り、大槻は膝の上に脚を乗せ木の枝で泥をほじくり出していた。
「流石に違うわねえ…チンチロで大勝ちしているだけあって」
過去に類を見ないppの稼ぎ方をする生徒、大槻。一見くだらないその行動は凡百の生徒との差を浮き彫りにする。
30分後、粗方の泥をこそぎ落とした大槻は時計を確認した後に校外へと向かう。GPSを確認すると朝食を抜いていたのか、立ち喰いそば弁慶に立ち寄り簡単な朝食を取っているようだった。
「食べログ3.2…。学生御用達の普通の店ねえ…」
「まさかそばを食うためだけに欠席したわけじゃあるまい。何が狙いだ…?」
その後、大槻のGPSはボウリング場に行きその場にとどまっている。学友が机にかじりついている合間に彼はハイスコアを狙い体を動かしているようだ。
「学生の普通の休日って感じね。…本当にこのGPS、大槻くんを追っているのかしら」
「奴にはスマホの所持を義務付けている。ペナルティも重く設定されているから大槻の現在位置なのは間違いないだろう。…む?」
ボウリング場を出た大槻は自転車程度の速さで移動していた。監視カメラを見ると大槻は電動キックボードに乗りどこかに向かっている。
「…残り1時間半。奴もどうやら焦ってきているようだな」
「そうねえ~。いくら大槻くんといえど、万単位のppを使って得た時間は惜しいものみたいね」
「朝食は質素…!そしてわざわざ電動キックボードを借りてまで急いでいるのだ…。
奴は今回の半日欠席を、一点集中…!
かけてきた…このランチタイムの一食に…!」
「見物ねえ~…。大槻くんが一体どんな高級店に入るのか…!」
和食か…。洋食か…。それともフレンチか…!
あの大槻の目指す食事処…。様々な想像をする教員二人。しかしそのGPSの止まった場所は、
「家系ラーメン…っ、だと!?」
その予想を悉く裏切り、大槻は某家系ラーメン店へと入店する。真嶋はGPSに不具合が無いかしきりに確認し、星之宮は驚愕で開いた口が塞がらない。
「平均950円…!こってり系が売りの普通のラーメン店よ…!?」
「うっ…」
真嶋の思考は大槻の行動に対する疑問で埋め尽くされる。
めちゃくちゃ…!せっかく33000ppの欠席権を購入したのだぞ…!わざわざキックボードも借りて行く先がただの家系…!?
「何を考えているんだ…?」
「見て!」
思考の海に飛び込むすんでのところで星之宮の声により意識が現に引き戻される。
見ればGPSは既に店の外に出ているようだった。
「どういうことだ…?まだ5分程度しか経っていないぞ…」
「大槻くんは一体何をしているの…?」
キックボードに乗っているであろう大槻のGPSが動き出し、監視カメラの多い道路に大槻の位置情報が表示される。すぐさま真嶋はそのカメラを表示する。
「「えっ…!」」
そこにはラーメンが入っているであろう袋片手に電動キックボードに乗る大槻の姿があった。
「持ち帰り…ラーメンの持ち帰りをしているわ…!店をすぐ出たのはそういうことだったのね。
けど、どうしてわざわざそんなことを…」
「…」
真嶋、星之宮の疑問は晴れぬまま、大槻は遂に学校に帰ってくる。カウントダウンは残り1時間。学校はちょうど昼休みの時間となっていた。
「学校に帰ってきたわねえ~…。そういえばそろそろお昼ご飯の時間ね」
星之宮の何気ない一言。
その言葉を切っ掛けに、真嶋は電撃が走ったように思い至る。
大槻の狙いとは…。
「まさか…」
がしゃりと、真嶋は椅子を蹴るように立ち上がる。星之宮は未だついていけていないようだ。
「食堂だ…!急ぐぞ…!」
職員室を出て人目も憚らず廊下を走り抜け食堂にたどり着く真嶋と星之宮。
果たして、食堂の中央には大槻がどんぶりと共に鎮座していた。その周囲には多くの生徒たちがどの食事にしようかと悩みながらまばらに歩き回っている。
しかし、大槻がどんぶりにスープをお湯と共に溶かし入れ始めると雰囲気が変わり始める。雑音に近いざわめきはやがて"ざわ…ざわ…"とどこか統一感のある喧噪に変化し、明らかに大槻を中心にざわつき始める。
大槻がどんぶりをレンゲでかき回す度に食欲旺盛、食べ盛りの学生の鼻孔を突き抜け胃を鳴らす。
その香りはやがて食堂全体に広がり真嶋と星之宮の鼻にも届く。どちらが発したのだろうか、ごくりと喉を鳴らした。
「なるほど。悪魔的っ…!」
「えっ…!?」
「大槻は肴にしてるんだっ…!こってり濃厚ラーメンを…食いたくても食えない…!学生への優越感をっ…!」
「うっ…」 「こんな昼から…」 「ゴクッ」 「どこからあんな…」 「ぐっ…」
大槻の周辺どころか、遠巻きに見ている生徒まで唾を飲み込むその香りは正に悪魔的。この食堂には大槻の持つ家系ラーメンをも超えるこってりとした飯は存在しない。これから山菜定食を頼むDクラスの生徒にとっては悪魔を超えた閻魔級の香りだろう。
「秀逸なのはあのスープ…!」
「!」
「スープと麺が別れている…!もし既に完成された状態であのラーメン店からここまで持ち帰っていたとしたら、ここまで香りは強くなっていなかったはずだ…!」
「条件に合うラーメン店を探していたからこそ少し遠めの店からキックボードで帰ってきた、ということね…」
「まるで作り立て…!
そしてメニューには書かれていないはずなのに食堂で家系ラーメンを食べても許される権力者…!」
濃厚な豚骨スープをまとった太麺を、勢いよくズズッと啜る。背脂の甘みと強烈な旨味が舌に絡みつき、思わず箸が止まらない。
「くぅ~~!旨い!」
「もはや奴の座っている席はただのテーブル席ではない…!」
君臨した!この食堂の中で…!
常に肴が供給される地位…。玉座に…!
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*
「ふぅ…。食った食った。もう腹いっぱいだ…!」
暴力的なまでの旨味と悦楽により腹を満たした大槻は教室へと向かう。大槻は気分よく午後の授業を受けられるであろうことを確信していた。
「!」
ガラリと扉を開けると、教壇の前に立つ真嶋が大槻を睨んでいた。
「時間だ大槻…!席に戻れ…!」
食堂でラーメンを啜る大槻は、食堂の入り口にてこちらを見る真嶋の存在に気が付いていた。
にやりと笑い、そして自席に向かる。
「はいはい…!
出迎えごくろうさん…!」
とりあえずあってほしい展開の一番下を雑に書いたけど本当に誰か書いてくれ
私はもう二度と更新しません!