ぼっちではありません、エリートです。   作:サンダーボルト

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少し詰め込み過ぎたかも…。


世界は狭いようで広いけどやっぱり狭い

大自然の山々に囲まれた場所にある保養施設、千葉村。駐車場に止めた車から降りた結衣は澄んだ空気をたっぷりと吸い、大きく背伸びをした。

 

 

「んーっ!きっもち良いーっ!」

 

「……人の肩を枕にしてあれだけ寝ていれば、それは気持ちいいでしょうね」

 

「う……ご、ごめんってば!」

 

 

結衣に続いて車を降りた雪乃がちくりと言うと、結衣は両手を合わせて謝っていた。

 

 

「わぁ……本当に山だなぁ…」

 

「小町は去年来たばっかなんですけどねー。でも、やっぱ気持ちいいなぁ…」

 

「……」

 

 

彩加と小町は目の前に広がる大きな山に感動し、八幡は携帯を片手に写メを撮っている。

 

 

「ここからは歩いて移動するから、積んである荷物を下しておきたまえ」

 

 

自然を堪能する時間は一旦終わり、静の指示に従ってに荷物を下し始める。その最中、もう一台のワンボックスカーが近くに停車し、男女合わせて四人を降ろしていった。何気なしにそちらを見た八幡は、その四人が顔見知りだという事に気づいた。

 

 

「……葉山君?」

 

「やあ、ヒキタニ君」

 

 

気さくに片手を挙げながら合流してきたのは、葉山隼人、三浦優美子、戸部翔、海老名姫奈の四人。結衣が所属しているグループのクラスメイト達だった。

 

 

「あなた方もボランティア活動に駆り出されたんですか?」

 

「いや、募集がかけてあったから応募したんだよ。奉仕活動で内申点を加点してもらえるって聞いたからさ」

 

「え、これって奉仕部の合宿じゃないの?」

 

「あーしはタダでキャンプできるっつーから来たんですけど?」

 

「だべ?いーやータダとかやばいっしょー」

 

「葉山君と戸部君がキャンプすると聞いてhshs」

 

 

全員がバラバラの理由を言い出すと、静は軽く頭を抱えて溜息を吐いた。

 

 

「まぁ、概ね合っているしよかろう。君達にはしばらくボランティア活動をしてもらう。なぜだか私が校長から地域の奉仕活動の監督を申し付けられてな…」

 

「奉仕部、なんていかにもな名前の部活の顧問ならそうなるでしょうね。残念ながら我が校の校長先生は奉仕部の理念を理解していないようですが」

 

 

どこか棘のある八幡の言葉に、静はコホンと咳払いをして続ける。

 

 

「君達には小学生の林間学校のサポートスタッフとして働いてもらう。千葉村の職員及び教師陣、児童のサポートが主な役割だ。簡単に言うと雑用ということだな。……端的に言うと奴隷だ」

 

「奴隷かぁ…」

 

 

彩加が苦笑いしながら、奴隷という単語を呟く。あまり気持ちの良い気分ではないが、捉えようによってはそう言えなくも無いので複雑なのだろう。

 

 

「奉仕部の合宿も兼ねているし、働き如何では内申点が付くかもしれないな。自由時間は遊んでもらって結構だ」

 

「スケジュールはどうなっているのでしょうか?」

 

「うむ。一日目はオリエンテーリング…まあ簡単なスポーツみたいなものだが、その後の昼食の準備だ。生徒達の弁当と飲み物の配膳を頼む。二日目は夜に行う肝試しとキャンプファイヤーの準備だ。昼間は小学生達は自由時間だから、準備が終わり次第遊んでくれて構わないぞ」

 

 

雪乃が予定を確認すると、静は大まかに今後の動きを説明した。

 

 

「では、早速行くとするか。全員、荷物を持って本館に向かうぞ。荷物を置き次第、仕事に取り掛かるからな」

 

 

静が先導して歩き出すと、それに付き従う形で全員が後に続く。アスファルトで舗装されている道を歩いている途中で、静のすぐ後ろを歩いていた雪乃が陰鬱な表情で口を開いた。

 

 

「あの、……なぜ葉山君達までいるのでしょうか」

 

「ん?―――ああ、私に聞いているのか。葉山がさっき言っていたと思うが、人手が足らなかったから学校の掲示板で募集をかけていたのだよ。もっとも、そんなものに応募してくる人間がいるとは思わなかったが…」

 

「言外に、彼らを物好きと仰っているのでしょうか?」

 

 

雪乃の隣を歩いていた八幡が携帯片手に聞くと、静は最後尾にいる隼人達を一度見てから苦笑する。

 

 

「そういう訳ではないよ。まあ、これもいい機会だろう。君達は別のコミュニティと上手くやる術を身につけたほうがいい。特に比企谷、君は周りに敵を作りやすいからな。さらっとビジネスライクに無難にやり過ごす術を身につけたまえ」

 

「それは隣の仏頂面の人に言ったほうがいいのでは?エリートですから、上手くやる必要があるのならばいくらでもそう振舞いますよ」

 

「……」

 

 

雪乃は静の言葉にも八幡の言葉にも反応せず、ただ黙っている。八幡はこれ以上は会話が続かないと悟り、歩くスピードを落として列の真ん中あたりを歩く結衣、小町、彩加達の所に混ざった。

 

 

「八幡、忙しいのに夏休みにテニスの練習に付き合ってくれてありがとうね」

 

「いえいえ、メル友の頼みとあれば断れませんから」

 

「ちょ、さいちゃんのお願いはきいたの!?あたしが遊びに誘ったら忙しいって断ったくせに!!」

 

「ならあなたが付き合いますか?大体、元はあなたが持ってきた依頼でしょうが」

 

「うっ…」

 

 

夏休み中に送った遊びの誘いのメールを断られた事に腹を立てていた結衣だが、痛いところを突かれて言葉に詰まる。さらなる追及を避けるために、結衣は慌てて話題を変えた。

 

 

「い、忙しいって言ってたけど、ヒッキーは夏休み何してたん?」

 

「私ですか?小町さんや川崎さんの勉強の監督をしたり、後はメル友からのヘルプで海の家の手伝いや肝試しに駆り出されました」

 

「お、肝試しやってたんだ!じゃ、明日は期待しても良いってことだよね?」

 

「どうですかねェ…ただボーっと立ってただけなんですけども」

 

「立ってるだけでお化けと勘違いされるウチのお兄ちゃんって…」

 

「小町ちゃん、ドンマイ…」

 

 

がっくりと落ち込む小町を慰める結衣。八幡は特に気にした様子も無く、携帯をいじりながら話を続けた。

 

 

「後はそうですね…ラジオ体操のハンコ押す係を引き受けたり、プールの監視員をしたり、稲毛のカラーギャングを殲滅したりしてましたよ」

 

「へ、へぇ~…」

 

「そんなに沢山やってたんだ…大変だったね」

 

「おかげで私も八幡と全然遊べなかった。だからこれから沢山遊ぼうと思う。いいよね?」

 

「そうですねェ……えっ」

 

「やっはろー」

 

 

この場にいるはずのない、聞きなれた声。八幡が後ろを振り向くと、ダブルピースをしている今井信女が立っていた。未来の嫁の予期せぬ登場に、八幡だけでなくその場にいた全員の視線が信女に集中する。

 

 

「信女さん…あなた、どうしてここに…」

 

「あれ」

 

 

信女が指差した方向を見ると、駐車場の端で沢山の人が固まって並んでいた。その誰もが、八幡の知っている人物であり、メル友だった。その中の真っ黒いサングラスをかけた中年のおじさんが、人集りに向けて声を張り上げた。

 

 

「おいオメーらァ!今から点呼を取んぞォ!はい番号ォ!!」

 

「一!」

 

「よしオッケェェェェ!!」

 

『二と三とその後はァァァァァァ!?』

 

「あァ?知らねェなそんな数字。男はな、一、さえ覚えときゃ生きていけるんだよ」

 

「せんせー、私女の子だヨ?」

 

「いいかチャイナ、イイ女ってのは男を立てるもんだ。ほら良く言うだろ?女は男より一歩下がって歩けってなァ。つまり女も、一、さえ覚えておけば生きていけるんだよ」

 

 

神楽の疑問に対して謎理論を展開させて答えるこのおじさんこそ、八百万同好会の顧問である松平片栗虎である。

 

 

「えー、オメーらも知ってるだろうが、この千葉村ってのは自然との触れ合いを主にした保養施設だ。どうだ、空気が美味ェだろ?おじさんはヘビースモーカーだが、ここにいる間はタバコともおさらばよォ」

 

「どーせしばらくしたら、体がニコチン求めて暴れまわるでしょ」

 

「うっせーぞ総悟ォ!!こういうのは気の持ちようよォ。都会のコンクリートジャングルで生きる俺達じゃ滅多に来ねぇ場所だ。気の済むまで遊び倒せェ!虫取りでも魚釣りでもビックフット探しでもヘンゼルとグレーテルごっこでも森の木陰であの子と○○○(ピーー)でも好きにしろィ!」

 

「何つー事を大声で言いやがんだこのオッサン!?」

 

「つか、そんな事言われたら二人で行動するたびに○○○(ピーー)してるんじゃないかって思われるじゃねーか!!」

 

「いや、それは違うぞ新八君。複数人でも3(ピー)や4(ピー)というものも…」

 

「九兵衛さんソレ伏字になってないですから!?発音同じですからァァァァ!!!」

 

「ああ、あとアレだ。今日明日は小学校の林間学校とかいうので沢山ガキが来てるからよォ、迷惑かけねェようにしとけ。総武高校ってとこも手伝いで来てるみてェだしな」

 

「あ?総武?アレ、それって確か…」

 

「八幡さんの通ってる高校ですよ、銀さん」

 

「ああ、そういやそうだったな……ん?じゃあアイツもいんのか?」

 

「旦那ァ、信女の奴が消えた時点で察してくだせェ」

 

「噂をすれば、アル」

 

 

神楽が信女達の方を指差して八幡の姿を確認すると、八百万同好会の面々はわらわらと八幡を囲むように移動した。

 

 

「あら八幡君、奇遇ね」

 

「どうも、お妙さん。皆さんこそ千葉村でキャンプとは…まさか私と信女さんに気を遣われたのでは…」

 

「いや、全然そんなんじゃねーから。決して喉に脇差突き付けられながらお願いされた訳じゃねーから」

 

「ホントすいません松平公」

 

 

僅かに顔色を悪くさせながら言う片栗虎に対し、八幡は嬉しさと申し訳なさが混じり合った気持ちで頭を下げた。

 

 

「ハハハ、まあ本当に気にするなよ。どうせ行き先なんて決まってなかったんだしな」

 

「どっかの学園長みてェに、単なる思い付きだからな…」

 

「あら、楽しそうでいいじゃない。皆とキャンプなんて、素敵な思い出になると思わない?」

 

「……否定はしねェよ」

 

 

笑いながら肩を叩いて八幡の緊張をほぐす勲。その隣では十四郎がぶっきらぼうな態度をとっていたが、ミツバの言葉には同意していた。

 

 

「ま、手伝いで大変だろうが少しは顔出せよ。でないと信女がまた勝手にいなくなるからな」

 

「ええ、分かりましたよ坂田さん。逐一メールさせて頂きます」

 

「いやメールはいいから。お前のメール長すぎて読むの辛いんだよ。あとすげーテンションたけーし」

 

「じゃあ、キャンプを楽しんで下さいね信女さん。私も後でメールしますから」

 

「うん。待ってるから」

 

「八幡君、俺の話聞いてた?メールはいいからね?ねえ、聞いてんの!?八幡君!?」

 

 

手を振る信女と叫ぶ銀時を置いて、八幡は総武校組と再び合流した。

 

 

「ヒ、ヒキタニ君、あの人達は…?」

 

「私のメル友です。お時間をとらせて申し訳ありません。行きましょう」

 

 

笑顔を引きつらせながら聞く隼人に、極めて簡潔な説明をした八幡はすぐに歩き出す。その後すぐに、静が八幡に追いついて隣に着いた。

 

 

「驚いたよ、君にあんなに友人がいたとはな…」

 

「メル友は百人以上いると、前に言ったではありませんか」

 

「正直、半信半疑だったよ…」

 

「これで信用できましたか?」

 

「ああ…。だがな、比企谷。この奉仕部の合宿中は、なるべく彼らとは行動するなよ」

 

「……何故です?」

 

 

八幡が怪訝な目をしながら聞き返すと、静は少し不機嫌そうにしながら口を開く。

 

 

「当然だ。私は君に別のコミュニティと上手くやる術を身につけてほしいんだ。あれは君のコミュニティなのは分かったが、それとこれとは別問題だ」

 

「言われずとも、必要以上に接触する気はありませんよ」

 

「うむ、分かってるならいいんだ」

 

 

静は八幡の言葉に大きく頷くと、意気揚々と先頭に立つ。

 

 

「(自分の思惑通りに事が進まなかったのが気に入らないのか、嫁を持つ私に嫉妬しているのか……両方なのかもしれませんねェ…。何にせよ、問題が起きなければいいのですが)」

 

 

八幡は内心で静に辛口な評価を下しつつ、この林間学校が無事に終わる事を祈っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…………あの人達がいる時点で、何もないわけがないか…気が思いやられます)」

 

 

自分のコミュニティに対する評価も辛口だった。




キャンプに来た銀魂キャラ達は、この話で出なかっただけで実際はかなり多いです。この後に登場する予定です。
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