が。


非常に違和感を感じたのは「主人公の目的が（八話まで）明示されず、その破天荒な言動に説得力を感じられない」点です。
あらすじを読む限りでは、「軍」「兵器」がキーワードで、精神的に甘えた艦むすを軍隊式に鍛え直すというお話かと期待したのですが。

主人公の言動が、軍人というよりチンピラにしか見えません。ロシアンルーレットの件が特に、悪い意味でインパクトが強いですよね。
軍人て部下に銃を向けて脅迫しますかね？
主人公が言うように、法律的な意味で艦むすが兵士ではなく「兵器」だとしてもこれは不思議です。兵器は主人公が自費で買った玩具ではなく軍の大事な備品（財産）なのですから。
一応、この世界には「艦むすを虐待するのは違法、もしくは悪行である」という建前があるんですよね（でなければ前提督を廃する理由ないですし）？
積極的に規範を破る人間が、軍人としての心構えを説いても説得力がありません。

このあたりでとても不愉快（強い言葉ですみません。しかし、大の男が無実の少女を銃で脅す場面を見て愉快になる人間は限られていることはご存知かと）だったのですが、もし最初から主人公の「早く終戦させたい」「艦むすを救いたい」という目的が示されていれば、まだ許容範囲だったかも知れません。

八話でようやく主人公の目的の一つ（「終戦」はさらに後で示された目的ですよね）が明らかになりました。

しかし残念なことに、結局のところ違和感は消えませんでした。
なぜなら、目的と行動が噛み合っていないからです。
実弾演習で本当に轟沈する艦むすが出たらどうする気だったんでしょう？　艦むす一人って紙くらいの価値しかないんですかね？　これは倫理ではなく経済の問題です。
「実弾演習」に運良く生き残って得られるメリットと、轟沈した艦むすを一から建造するデメリットが釣り合うんでしょうか？　ていうかもし釣り合うほど艦むす一人のコストが安いなら、訓練よりもどんどん自爆特攻させれば良いんじゃないですかね。その方が結局は早く戦争終わるでしょう。

要するに、練度を早くあげたいならもっと説得力ある手段でやってもらいたいということです。別に、非人道的な手段でも構わないんです。問題は「説得力」です。
（人質取られた朝潮に対する命令が「島風を撃て」も凄いですよね。そこは普通「何とか工夫してヴェールヌイを撃て（島風にあたるもやむ無し）」でしょう……）


ところでこの作品の艦むすはA「改造された元人間」なのか、B「無から作り出された人工生物」なのかどちらでしょう？
Aであれば、早乙女の目的である「平和にして艦むすなんて生物兵器を廃止する云々」にもある程度筋が通りますね。しかし、本文にはそのあたりの説明はなく、むしろ「建造」という言葉がでてきたりするため、Bのように見えます。個人的にはBの設定の方がSF的で好きなのですが。

このあたりの世界観の根本を成す設定が説明されていないことも、主人公の行動に共感できない理由でしょう。


正直なところ、「この主人公が戦争を終らせる未来が見えない……」と読み進めるのを止めようかと思っていました。
が、まさかの十二話ですよ。
鬼畜系主人公が上司に怒られて反省し更生を誓うって。作者様の当初の狙いとは大分違うのでしょうが、非常に面白いコンセプトになってますね。ある意味、これも投稿型小説の面白い点ですね。


活動報告を拝見して、読者の意見と真摯に向き合う作者様の姿勢には感心しております。
今後主人公と鎮守府がどのような道を辿るのか、見守らせていただきます。
体調もお悪いようですし無理はなさらず執筆なさってください。





以下は蛇足です。文章に関する意見も募集されているようなので。
読んでいてずっこけそうになる部分が散見されます。装飾的な文章は使い方を誤ると逆効果ですね。普段は平易・簡素な文を使い（実はこれも難しいんですけどね）、装飾的な文はここぞというところにとっておいたらいかがでしょう。

「朝食」
【何光年も先にある太陽から放たれた赤が……】
これ、何かの比喩表現なのかと思って考え込んでしまいました。グーグル先生によれば地球から太陽までの距離は0.00001581光年らしいですよ。

「朝潮」
【涙を流しながらトリガーの押しボタンを引いた】
確かに構造的にトリガーは「押しボタン」と言えなくもないですが……ここは普通に、「トリガーを引いた」で良いんじゃないでしょうか。

「武器商人」
【理由をお聞きになっても？】
理由を聞きたいのは武器商人なんですから、「伺っても？」もしくは「お聞きしても？」ですよね。

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当時の帝国海軍の大型艦(特に戦艦)は、新兵に対する先輩方のシゴキがすさまじいのは確かです

当時の言葉にはこんなのがありました

「鬼の山城、地獄の金剛、音に聞こえた蛇の長門 日向行こうか、伊勢行こか、いっそ海兵団で首吊ろか」
「地獄榛名に鬼金剛、羅刹霧島、夜叉比叡 、乗るな山城、鬼より怖い」


特に日本海軍の戦艦「山城」は、しごきがすごいことで有名。名前が入っていない陸奥ですら、「第三砲塔爆沈の原因はシゴキに耐えかねた新兵の自殺」って説があるぐらい酷いらしい 。ゼロ戦のエースパイロットの坂井三郎も、戦艦に乗っていた頃はボコボコにされたとか(大空のサムライに書かれている)。余りの酷さを見かねた海軍のお偉いさんが、「私的制裁の一切を禁止」という、おふれを出しましたが止むことはなく、逆に巧妙かつ陰湿になったそうです

　ただ、あくまで訓練だけの話であって、24時間365日厳しかった訳でもないらしい
当時の資料でも内容も、訓練の厳しさは伝わってくるものの、艦内生活はかなり楽しそうなことが多かった事があったとの事

伊勢では相撲大会が、赤城加賀など航空甲板で海兵達は短距離走をやっていたなど、それなりにスポーツがありました

また軽巡や駆逐艦、そして潜水艦では艦長から下っ端の水兵まで仲良く過ごしていたとの事です

艦が小さければ家族的な雰囲気が強く、逆に戦艦など大型艦になれば風紀に厳しくなりがちだったようです

当時では厳しいのがあったものの、現代ではリンチは流石に時代遅れになって廃れました。軍隊の厳しさは、当時と現代では雲泥の差です。時代が変わったのとリンチしても社会的問題になるだけ、というのが大きな原因かも知れません

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