転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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祝! 400話!
というのに仕事のシフトの関係で深夜アップです(泣

誰か読んでくれると良いけど……

とりあえず、前話のあとがきとかで予告した通り、このエピソードでとりあえずイタリア篇は終了です♪
なので、やや糖度高めな感じでw

いや~、本当に長かったです(遠い目






第400話 戦いが過ぎ去ったローマにて、恋人たちは逢瀬を楽しむ。それが「戦争が終わる」ということなのかもしれない。

 

 

 

 アオスタ王が統治する事になった新生イタリア王国、その王都のローマは翌日に控えたクリスマス・イヴに備えてお祭りムード一色だった。

 さて、キリスト教最大の年中行事とも言える”聖誕祭(クリスマス)”だが、前夜祭とも言えるイヴまでなぜ盛り上がるのか皆さんは知っているだろうか?

 日本的な感覚だと、本当に前夜祭という感じだが……実は時計が普及する前の時代、かつての一日の基準というのは午前零時に切り替わるというより「日の出から日の入りまで」という感じだったのだ。

 故に12月24日の日没後からクリスマスの始まりという感じで間違いではない。

 そもそも、”イヴ”とは”イブニング”の略で、クリスマス・イヴは本来は「クリスマスの夜」という意味で、25日の日没後は「26日(クリスマスの翌日)の夜」という認識だったようだ。

 さて、そんな薀蓄を披露しているというのも……

 

 

【挿絵表示】

「中々立派なクリスマスツリーじゃない♪」

 

 ここはローマ市内有数の観光地である”スペイン広場”。大きなクリスマスツリーが毎年立つことことで有名だった。

 

 さて、明日のローマはイベント目白押しだ。

 まず、バチカン市国、サン・ピエトロ大聖堂にてアオスタ新王の戴冠式という最大のビッグイベントがある。

 法的には、赤色叛徒の手により先王のヴァレンティーノ・エマヌエーレⅢ世と第一王位継承権を持つ王太子(兄弟はおらず姉妹のみ)がギロチンの露に消えたその時より、正当な王位継承権第二位を持つ”アルヴァトーレ・ディ・サヴォイア=アオスタ”改めアルヴァトーレ・ディ・アオスタ公爵はイタリア王国の新国王(=アオスタ王朝の誕生)であった。

 しかし、上記の理由で正規の手続きで王位継承(王位の禅譲)が行えなかった為に、クリスマスに合わせてバチカンでの戴冠式の予定が組まれた。

 少なくともこれで対外的にも内政的にも「新王の即位」の格好はつく。

 流石に時節的な物や準備期間の関係でお約束の軍隊の壮麗なパレードというのはないが。

 いや、むしろ未だイタリア国内に少数潜伏していると思われる”北イタリア社会主義共和国”残党が「最後の抵抗」を試みる可能性があるため、アオスタ王が総司令官を務めたかつて”イタリア解放軍(リベリツォーネ・イタリアーノ)”を中核とする新生イタリア王立軍は、厳戒態勢を敷いており、そんな余裕はないだろう。

 

 無論、皇国軍や皇国治安機構の特殊なセクションや、昭和の御世に脈々と受け告げられているローマに潜伏している御庭番衆(Gジャン)っ娘もきっちりかっちり治安活動に暗躍している事だろう。

 

 さて、その戴冠式のサブイベントとして企画されているのが、王宮の改めて指定されたクイリナーレ宮殿(エマヌエーレⅢ世はここを居城としていなかった)にて日本皇国親王天草宮和仁と先王の孫娘であるベルゴロ伯爵令嬢マリアンナの”婚約式”である。

 これまでも”Project Roman Holiday(ローマの休日計画)”あるいは”デート・ア・ライブ作戦”で散々と「仲睦まじい姿をプロパガンダ目的で晒してきた」が、この度、公式に婚約と相成るのだ。

 また、現在の二人の住居としている”ポーリ宮殿(トレヴィの泉の背景でよく映ってる宮殿)”も正式に「新サヴォイア公爵夫妻の居城」となることも合わせて発表される予定だった。

 

 

 えっ? 元々”婚約者(フィアンセ)”じゃないのかって?

 イタリア人の一般認識はそうだし、意図的にそうしてきたが……公的(日伊の公文書的)には1943年のクリスマス・イヴに「正式な婚約」ということになる。

 まあ、お互いに国家上位のハイソ(ビッグネーム)であり、「プロパガンダの為に既成事実」は確かに積み上げたが、実際には「和仁が親王の座を捨て(事実上の皇族離脱をし)、その代わり新たなサヴォイア公爵家の開祖となる」訳であり、実はこれでもかと根回しと下準備が必要なとんでもなく大事なのだ。

 その為に今まで時間がかかったというか……皇国今上天皇照仁陛下の後押し(勅とも言う)があったからこそ、大合意のもとで米ソを筆頭に他国から変な横槍を入れられる前に日伊両政府が馬車馬のように働き短期間で成し遂げたという感じだ。

 ぶっちゃけ政治的力技である。

 

 また、いきなり結婚式ではないのは、「慣例的に皇族と貴族の婚姻なのに婚約期間をおかずに即結婚はいかがなものか?」という意見が各所から出たからであった。

 まあ、昔ほど「高貴なる身分同士の婚前(性)交渉云々」はうるさくないとはいえ、仮にもカソリックの総本山を抱える国だ。「デキ婚を疑われないための予防線」くらいは張っておきたいという思惑もあるのだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 だからこそ、和仁とマリアンナの二人は、忙しくなること確実な明日に備えて英気を養うために、”イヴイヴデート”と洒落こんでいたのだ。

 まあ、この二人に関しては、もはやプロパガンダもへったくれもないだろうが……

 

「それにしても奇跡的な光景にも思えるな」

 

「何が?」

 

「いや、その被害が北部に集中してると言っても実際、前世の3倍くらいイタリア人は戦死しているだろ? 無血開城して比較的戦災は軽微とはいえ、ローマでこうして平穏無事なクリスマスが迎えられてる事がさ」

 

「そういえば、私たちのお城(ポーリ宮殿)も襲撃されたっけ……信緑郎(ロック)さんと双子が大暴れして蹴散らされてたけど」

 

 少し遠い目をするマリアンナに、

 

「まあ、良くも悪くも『イタリア人にとっての戦争』は終わったってことなんだろうな。最近は北部の外れでさえも、戦闘自体が小康状態というよりほぼ沈静化してるらしいし」

 

 まあ、大体正解。

 確かに国内に潜伏してる「状況が見えない跳ねっ返り」もいるだろうが……それはもう組織だっての行動が困難なほど少数派だ。

 むしろ、今増えてるのは赤化した政治的・思想的信条というより、とりあえず糊口をしのぐための「ちんけなコソ泥」らしい。

 

 蛇足ながら”国籍剝奪並びに破門通知。および指名手配書(Avviso di privazione della cittadinanza e di scomunica e manifesto di ricercato)”でリストアップした300有余名のうち、最終的に身柄を「生死を問わず(・・・・・・)確認」できたのは、最終的にその半分強程度だったとされる。

 無論、状態を問わずに”生け捕り”にされた者や命からがら”投降”できた者は更に少ない。

 残りの半分はどうなったかと言えば……無論、ユーゴスラヴィアなどに逃げおおせた者も少なからずいるだろう。

 しかし、それが多数派と考えるのは楽観的だ。

 国内に潜伏し、再起の機会を伺っている者も0ではないだろう。

 しかし……”本人の判別ができないほど損壊(・・)”している状態も考慮すべきだ。

 

「いわゆる”クリスマスまでに戦争は終わる”?」

 

「それが歴史上稀なことに実現された事が素晴らしいのさ。まあ、誰も『クリスマスまでに』発言をしなかった事が良かったのか、あるいは”戦争じゃなくなった”のが功を奏したのか……微妙な所だな」

 

「あっ、まあ、日本と戦争状態にあったのはお爺様だしね」

 

 ちょっと微妙な表情になるマリアンナだったが、

 

「いずれにせよ、戦争から足抜けできるのは国民にとっては慶事だ。今の時代、”戦争状態に無い”ってだけで幸せなことさ」

 

 まあ、その通りなのだが……

 ややこしいのは、多くの諸兄もお気づきだろうが、「イタリアとの戦争」は”勝者が居ない”のだ。

 何度も出てきたネタだし、おさらいになってしまうが……

 日本皇国と戦争状態にあったのはあくまでイタリア王国先王のエマヌエーレⅢ世とムッソリーニ率いるファシスト政権であり、それらがイタリア北部へ逃亡して、叛旗を翻した赤色イタリア人勢力に討たれるという顛末になった。

 そして、新たなイタリア国王のアオスタ王は、そもそもが日本皇国が支援していた「反ムッソリーニ・イタリア人勢力の頭目なのだ。

 つまり、道義的に「イタリアを敗戦国にすることは不可能(・・・)」なのだ。

 なので、現在の日本皇国のイタリアに対するスタンスは、「戦勝国の敗戦国に対する復興義務」ではなく、「親日的なイタリア新王朝と友好国になるだろう新制イタリア王国に対する復興支援」なのだ。

 

 似てるようで意味は全く違う。

 史実の「良くも悪くも戦後にアメリカが日本へやったような行為」はできないのだ。

 皇国は元々、戦後イタリアを「自分に都合の良いように作り変える」気などなかったが、同時に「地中海の安定化、できれば日英の聖域化」は切望していた。

 昨今のリアルでは、ホルムズ海峡がホットスポットとなっているが、この時代の日本皇国においてイランもサウジアラビアも”レンドリース船団のペルシャ湾ルート”絡みの米ソの拠点化という観点を除けば領土的に大きな関心は無く(むしろ英国にはあった)、リビア三国連合(トリニティ)にシリアといった産油国を含む地中海沿岸諸国と皇国を結ぶ、紅海やスエズ運河の方が遥かに価値があった。

 

 地中海という場所の平定は、日本皇国の繫栄や、その繫栄の基盤である日英同盟の根幹となる日英を繋ぐシーレーンにとってあまりにも重要な意味を持っていたのだ。

 そして、新たに増えた友好国がこの地域に集中しているのはその過程と結果に過ぎない。

 

 無論、イタリアもその重要な一角で在り、敗戦国と戦勝国という体裁を取れないからこそ、「新王の即位と皇国親王と旧王家の血を引く令嬢との婚姻」という分かりやすい慶事をもって、『イタリア王家との皇室外交の復活』を宣言する手筈になっていた。

 

 無論、皇国の政治構成はそこで終了ではなく、最終的には「イタリアの国際社会、並びに国際連盟(・・・・)への早期復帰」を狙っていた。

 英国王室は日本皇室ほど前のめりではないが、

 

”(英国が占領している)シチリアの自治権譲与を条件に英国王室との王室外交を復帰させてもよい”

 

 という言質は得ているので、反対はしないだろうというのが皇国政府の判断だ。

 というか英国の態度は、『マルタ島やらスエズ運河のあるエジプトやらシチリア島やらの要所は押さえるが、地中海情勢は日本に丸投げ』する気満々にしか見えないのは何故だろうか?

 まあ、イタリアにも領土問題が残ってないわけではないが、今更”未回収のイタリア”を回収する余力もなく、残った本土を何とか維持・復興するのが精一杯だろう。

 

「少なくとも、『戦争が終わった』っていうのは老若男女を問わず、イタリア人への最高のクリスマス・プレゼントになるんじゃないか?」

 

 言ってしまえば戴冠式も婚約式も、それを大々的にアピールして国民に周知する為のイベントだ。

 

「それはそうね♪」

 

 本来は生まれた身分の高さと戦争がきっかけで出会った和仁とマリアンナ、そんな二人の転生者だったが……

 

(それが終戦のシンボルとなるのは、歴史の皮肉を感じるな)

 

 戦争は政治の一形態に過ぎない。

 それは和仁ととて理解している。政略結婚が国家間対立の解決手法として使われる事は、歴史を紐解けばよくあることだ。

 欧州の貴族階級がもとをただせば”大きなくくりでは皆親戚”というのは偶然じゃないのだ。

 

(当面、皇国は終戦宣言が出せる状況じゃないっていうのに)

 

 本来の婚約の目的は、「イタリア北部制圧の円滑化」の一つであるプロパガンダだ。

 だが、今の和仁は……

 

(こうしてマリアンナと恋人つなぎで街を歩くのも悪くないと思ってしまっている……我ながら現金な物だ)

 

「あるいは、これも惚れた弱みってやつかな?」

 

「ん? カズヒト、何か言った?」

 

「いや、なにかこう……良いなってな」

 

「へんなの。ねぇ、カズヒト……」

 

 彼女は満面の笑みで、

 

 

【挿絵表示】

「あなたと出会えて、私、幸せだよ♡」

 

「俺もだよ。マリアンナ」

 

 

 

 こうして”戦いが過ぎ去った”ローマの、恋人たちの夜は更けてゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シモヘイと小鳥遊君、チトーと幣原翁を書き終えた後だと、和仁とマリアンナがやけに爽やかで初々しく見えるのは何故だろう?(挨拶

いや~、ようやく終わりましたよイタリア篇!
予告通り、400話ピッタリで終わらせられて良かった~。
先ずは休載挟んで時間的にも話数的にも長いこの章に最後までお付き合いくださりありがとうございました!!

いや、ホントはクリイベを入れる予定だったんですけど、ちょっと43年のクリスマスには、いくつかの視点を入れてみたくなりまして……
なので23日、和仁とマリアンナの”イヴイヴのツリー見学ナイトデート”でイタリア篇を終わらせていただきます。

史実の3倍ほどのイタリア人の被害が出ましたが、まあ、かなりの部分が北部の”赤化した不穏分子”だったので、「王国としては」そこまでダメージはないかなぁ~などと。

作中でも出てきましたがポーリ宮殿などを含めた”ちょっとした争乱”はありましたが、無血開城したローマの被害は比較的軽微、まあ、皇国の裏表の治安機関も出張ってますし、「親王と伯爵令嬢が市民に紛れてお忍び(になってるか?)ナイトデート」できるくらいには復興と治安回復してるみたいです。

サブタイにも入れましたが、きっと「戦争が終わる」というのはこういうことなのかもしれませんね?

さて、次章はいくつかのクリイベを交えて、「激戦の44年」の呼び水になりそうなエピソードを入れて行こうかと思ってます。


それでは皆様、ここまでご愛読ありがとうございました!
次章もどうかよろしくお願いいたします!!




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