とある勘違いの次元移動   作:優柔不断

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二十四話

俺は今、過去最高にイラついていた。

それは何故か……。

 

三徹を越えて四徹に突入しようとしているから?

突然家にダイナミックエントリーしてきた人達に問答無用で攻撃されたから?

その人たちがまさかの敵の筈の魔術師と、主人公である当麻君だったから?

それとも、俺が彼等の共通の敵として認識されて共同戦線を敷かれたから?

もしかして、この顔のせいでクズ野郎呼ばわりされたからかな?

あるいは、寝込んでるせいで俺を助けてくれる気配が一切無いインデックスちゃんのせいなのかも…?

 

だが、あえて言おう……全部だよ!

 

いったい!どこで!どう間違えたらこうなるんだよ!?

 

俺はただインデックスちゃんを助けて、当麻君と仲良くなろうと思ってただけなのに。

だから寝不足で辛い中、魔術師の連中からインデックスちゃんを守ったのに。

何がどうなったら、当麻君と魔術師が手を組んで俺を潰しにかかってくるんだよ!こんなん予想できるか!?

 

でも、そこから先は俺の落ち度なのは確かだろう。

 

イラつきから殺気だった俺は、彼等をエミヤの固有結界の中に引きずり込んだ。

その時、当麻君個人を飛ばそうとしたけど無理だったため、ならばと、当麻君と俺達を含めた空間まるごと飛ばすという荒業で対処した。

 

その時俺は、ムカつく彼等に一発ぶん殴ってやろうと頭が一杯で、逃げる事なんて頭に無かった。

だって今まで苦労してやってきたことが全て裏目に出たんだもん、そりゃあキレるでしょ。

 

けど、俺の暴走も次の瞬間には終わりを迎えた。

 

これは木原さんとの実験で予期せぬアクシデントが起きた際に言われたことだ……

 

『テメェは、頭でキッチリ理解して能力を使ってる訳じゃねぇ。本能的に感覚に頼って使ってるだけだ。

そんなんだから、ちょっと感情が揺らいだだけで能力がテメェの手から外れて暴走なんてするんだ。いいか?二度と力任せに振るうんじゃねぇぞ。

じゃねぇと、いつかテメェは、自分自身の能力に殺される事になるぞ。そんぐらい危険なんだよ、分かったな……』

 

あの時の言葉をもう少し真面目に聞いておけば良かったと今更ながらに思う。

俺の頭を埋め尽くす、彼等をぶっ飛ばすと言う感情に対して『次元移動(ディメンジョネイター)』が、自動で作動したのだ。

 

『随分な歓迎だね』

 

次元の裂け目から現れたその姿を見て、俺は全身に冷水をぶっかけられたかのように竦み上がった。

 

「…………」

(いや確かに怒ってたけど……けど!憤怒のホムンクルス(大総統)は駄目だろー!)

 

まさかの大総統の登場で一気に冷静になった俺は、このままだとおそらく物語の主要人物である彼等を殺してしまうのではないかと思ってしまった。まして当麻君は主人公。こんな所で死なれては、こっから先の生きる希望が失われてしまう。

 

意図せずとは言え、此方から呼び出したばかりの大総統にお帰り願おうと思い、閉じた空間をもう一度開こうとした瞬間……

 

「まったく、呼ばれたから来てみれば、いきなり斬りかかってくるとはな」

 

ギクゥ!?

 

俺が能力を操作しようとしたら、戦っていた筈の大総統が俺を睨んできたのである。

 

(ば、バレてる……)

 

小心者の俺には、あんな覇気の籠った眼力で睨まれたらさっきまでやろうとしていた、強制送還を強行できるだけの度胸は無かった。

今後、もしハガレンの世界に行ったときどのツラ下げて会えばいいのかわからないし、下手したら殺されるかもだし。

 

結果、俺は大総統といつかの魔術師のお姉さんとの戦闘を見守るしかなかった。

 

だが、流石大総統。見ている限り、あのお姉さんも相当強いんだろうが、大総統が負ける様子は無かった。

これなら俺が彼等の相手をする必要は無さそうだけど、このまま行くと当初の想定通り彼等は大総統に斬り殺されるかも。

 

「うぅ……ケイ……ガン…」

 

魘されながら俺の名を呼ぶインデックスちゃんを見る。

可哀想だけどいっその事、寝込んでるインデックスちゃんを放置して逃げ出そうかな?

俺の事を助けてくれるのを期待していたけど、この様子じゃ無理そうだしなぁ。

 

と、そんな事を考えていると戦況が動きを見せた。

押されだしたお姉さんに赤髪のエセ神父が加勢したのだ。

だが瞬間的に二対一になるもそれでも負けない大総統に、場違いにもカッコいいと思うと、エセ神父が大総統と己を閉じ込めるように炎の壁で包んでしまった。

 

となると

 

「お前、何でインデックスを拐ったんだ」

「………」

 

やはりと言うべきか、今まで空気だった当麻君が俺の方にやって来て見当違いの質問をしてきた。

 

「黙ってないで答えろよ」

 

なんだろう、一度は冷静になったものの、こうやって改めて敵意をぶつけられると、ムカつきがだんだんと再燃してくる。

そもそも、なんでコイツは敵である筈の魔術師と手は組んで、インデックスを助けた恩人である俺をこんなに敵視してくるんだよ。いったいどんな勘違いしてんだ?

 

「お前は知らねぇかもしれないけど、ソイツは自分の持つ完全記憶能力のせいで、一周年周期で記憶を消さないと生きていけないだ……」

 

はぁ?なに言ってんだコイツ?

 

恐らくインデックスちゃんが苦しんでる理由を今言ったんだろうけど、そんな訳ないだろ。

完全記憶能力の事は確かに知っている。前にインデックスちゃんが教えてくれたからな。

そしてその後、俺も個人的に完全記憶能力に関する資料を調べたさ。だが俺が知っている限り、完全記憶能力が理由で記憶を消す必要がある何て症例は無かった筈だ。

 

もし本当に消さなければいけないのならば、それはインデックスちゃんが有する十万三千冊の魔道書が関係しているんだろうけど……。

 

「……でも!学園都市なら魔術ではどうにもなら無かったことも解決できるかもしれねぇんだ!頼む、インデックスを返してくれ!」 

 

いやだから、そもそも記憶を消す必要が何処にあるのかがわかんないし、そもそも俺はインデックスちゃんを監禁してた訳でもないから!

 

いい加減、要領を得ない会話に内心キレそうになるけどそれをグッと堪える。

だが、俺の我慢強さを試すように当麻君に援軍が現れた。

 

「……ええ、彼の言い分は兎も角、おとなしく彼女を引き渡してください。もう貴方を守る人はいません」

「神裂……」

 

お姉さん、神裂さんか……そもそもあんたらが妙な事を当麻君に吹き込んだからこんなことになってんじゃねぇのか?

みんなしてよって集って俺を責めるけどよ、俺がなにしたって言うんだよ……。

 

「……くだらん」

「何だと!?」

 

もう全てが面倒になってきた。

寝不足で頭が回らないし、コイツらの相手するのもいい加減うんざりだ。

何とか誤解が解けないかと考えたけど、もういい。

素直にインデックスちゃんを渡してここから消えよう。

 

そう結論を出した俺は、眠ったままのインデックスちゃんに手を伸ばした。

 

「ッ待てぇ!」

 

そうすると何をまた勘違いしたのか、当麻君が突っ込んできた。

しかし、彼の突き出した右手は前回とは違い、透過した俺の体に触れることはできず、そのまま通過してしまう。

 

この時、極限までイラついた俺は、学園都市に来る前の不良をボコっていた癖で通過しきった当麻君の横っ面を殴り飛ばしてしまった。

 

(あ…………やっちまった…………)

 

もうこりゃ、いよいよもって取り返しがつかないな。

放物線を描きながら吹き飛ぶ当麻君を眺めながら、達観したようにそう思った。

 

「貴様ッ!」

 

まぁ、そうなるよな。

 

当麻君を殴り飛ばした俺に、激昂したお姉さん事、神裂さんが斬りかかってくる。

普段ならこのまま透過して避けるところだが、彼女の長刀を見るにここで避けたら、側で寝ているインデックスちゃんが一刀両断されることになってしまう。

 

何処か遠くの俺が知らないところでなら兎も角、目の前で死なれるには流石に忍びない。

だから俺は仕方なく、近くに刺さっていた剣を抜き、彼女の刀を受け止めた。

 

(って、力つよっ!)

 

「な、受け止めた!?バカな……」

 

バカなって言いたいのは此方の方だから。この人、女のくせして何て力だよ、腕力には結構自信あったのに、俺と同等かそれ以上の力だ。

 

て言うか、それ以上押してくんな!インデックスちゃんが怪我してもいいのかよ?

つか怖ぇ!今まで透過してたから多少麻痺してたかもしれないけど、いざこうやって凶器を振り下ろされるのメチャクチャ怖いんだけど!?

 

「聖人である私と互角の力……まさかそんな……」

 

向こうも向こうで何か驚いてるけど、聖人って何の事だよ?

 

一進一退の鍔迫り合いが続く中、突如大総統を包んでいた筈の炎の壁が風に吹かれて消化されたかのようにして、消え去った。

 

そしてそこから現れたのは、所々軍服が焼け焦げ、右手に焦げ付いた直剣を持った無傷の大総統と、血まみれで倒れ伏すエセ神父だった。

 

「ステイル!?」

 

その時、一瞬だが気をとられた神裂さんを押し返し、インデックスちゃんに気を使わなくて言いように少し離れたところに移動した。

 

「ふむ、私の出る幕は無さそうだね」

「………」

 

(いやそんなこと無いです、今すぐ助けてください!)

 

俺の現状を見て、何故かそう判断した大総統。

俺の心の叫びは届きそうに無かった。

 

「うぅ……」

 

だがそこでタイミング悪くも目を覚ました当麻君を見つけた大総統は、完全に俺を助けようとはせず、そちらの方に歩いて行ってしまった。

 

 

 

 

 

「うぅ……」

 

上乃に殴られ吹き飛ばされた上条は、口の端から血を流しながら何とか起き上がった。

 

「随分とボロボロだね、手を貸そうか?」

 

身体中から鈍い痛みが走るなか、何とか立ち上がった上条の前には、先刻炎の壁に閉じ込められてステイルと戦っていた筈の男が此方に向かって歩いてきていた。

 

だとするならばと、周囲を見渡せばステイルが血まみれの状態で倒れ伏していたのだ。

 

「ステイル!?テメェ……!」

 

ステイルのあまりの惨状に、怒りに震える上条は右拳を後ろに引いて、身構えながらブラッドレイを睨み付ける。

 

「やる気かね?見たところ君はただの少年だろう、君では私には勝てんぞ。おとなしく受け入れたまえ」

「そんなの、やってみなきゃ分かんねぇだろうが!

それに、ここで俺が引いたらインデックスはどうなる!負けるわけにはいかねぇんだ!」

 

上条は分かっていた、自分ではどうやったって目の前の男には敵わないと。

しかし、勝てないからと言って、戦う前から逃げ出す臆病者になったつもりはないし、元よりインデックスという引けない理由が上条にはあった。

 

「……くだらん、人はそれを蛮勇と呼ぶのだよ」

 

しかし、上条の覚悟はブラッドレイには響かなかった。

上条の目前まで迫ったブラッドレイは、そう吐き捨てる。

それでも、上条の瞳から輝きは失われなかった。

 

「確かに蛮勇かもしれない。

俺じゃあ逆立ちしたってアンタには敵わない。

でもだからって、それが諦める理由にはならねぇだろ!

自分以外に誰も信じられない状況で、誰も味方がいない状況でも、インデックスは諦めようとはしなかった。

十万三千冊の魔道書なんて途方もない代物をあの小さな体に無理矢理教え込まれて……あげくの果てには、その魔道書が原因で一年周期で記憶を消さなきゃならねぇなんて……そんな理不尽が許されていいわけねぇだろ!

ステイルの野郎もあんなになるまで諦めなかった。

俺は絶対に諦めねぇ、それでもまだ俺に負けを受け入れろって言うなら……そんなふざけた幻想は、俺がぶち殺す!」

 

高らかにそう宣言する上条。右拳を血が滲む程に強く握りしめ、全力で飛び出す。

武道を習っているわけでもない、なんの型も無い、喧嘩仕込みの右ストレートがブラッドレイの顔面に目掛けて打ち込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━くだらん。

 

 

「がああぁぁぁッ!!?」

 

ブラッドレイ目掛けて打ち込まれた上条の拳は、無情にもブラッドレイに届くことはなかった。

ブラッドレイがその手に持つ剣で、上条の右腕を貫いたのだ。

 

「ただ激情に任せただけの攻撃が届く筈なかろう」

「グゥゥ……ッッうぉぉ!!」

 

右腕に剣が突き刺さっても、それでも尚諦めない上条は、残った左腕を打ち込もうとするが、足払いをくらい、仰向けで倒れこんだ事で不発に終わった。

そして倒れた勢いのまま、ブラッドレイは上条の右腕を剣で地面に縫い付ける。

 

「貴様は言ったな、そんな理不尽が許されていいわけがない、と。

何とも青臭い理想論だ、ヘドがでる」

 

侮蔑の籠った眼で見下すブラッドレイは、上条の意気込み、その信念とも言える覚悟を嘲笑う。

 

「なにも知らない子供が偉そうな事を吠えるな。

どのような理不尽であろうと、それが起きたのであればそれは現実。

いかな不条理であろうと、一度起きた事を無かったことにはできん」

 

ブラッドレイは、右腕に突き刺した剣を更に深く、捩じ込むように押し込む。

 

「あ“あ”あぁぁ!?」

「どうだ……この痛みは幻想かね?いや違う、これこそが現実だ。いつ如何なる時代であろうと、世界とは残酷なのだよ。

貴様が言っているのは、ただの幼稚な綺麗事だ!

あの娘もその一人、ありふれた不幸を偶然被っただけのこと……事情を察するに兵器に変えられた娘が、製造時に枷を付けられたのであろうが、私としては順当な手段だと思うがね」

 

倒れ、痛みにもがく上条の瞳を覗き込むように、ブラッドレイが最後に言い放つ。

 

「貴様は……世界の広さ(怖さ)を知らん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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