王都西一般教育学校に通うことになったんだけど、何となく学校に行けなくなって。
大公園にある図書館に行こうとしたところでゲームセンターを見つけて。
久しぶりにゲームセンターに入ることに。
ゲームセンターでなんだか不思議な女性に出会って。
何かが起こりそうな予感がして……、そんなお話。
第25話は1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目の8回に分けて公開します。
また本作『友達ができた日(1日目)』は 第23話『仲間ができた日(1日目)』と「並行」しています。
こちらもご一読いただければ幸い。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した世界観を使って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
学生(主人公)・先輩、は女性、
店長、等々は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
こんにちは、私は『学生』です。
少し前に王都に引っ越してきて王都西一般教育学校に通うことになりました。
引っ越しが決まったとき私は最っ高の気分になりました。
王都は王国でいちばん大きな都市です。
だから王都の繁華街はもちろん王国でいちばん大きな繁華街です。
王都の繁華街。
王都のメインストリートでブランドショップがならぶ大通り。
流行のファッション、流行のスイーツ、そんな店が集まる東通り。
インフォメーション端末ショップ、ブックストア、ゲームショップ、ホビーショップ、そんな店がたくさんの西通り。
そんな繁華街がある街に住む。最高としか言えません。
繁華街。
私にとっていちばん大事なのはもちろん西通りです。
西通りには、引っ越す前の街でよく行っていたブックストアの本店があります。
『全てが手に入る店』、そんな言われ方がされるくらい大きな店です。
新しい家に落ち着いて、学校の手続きも終わって、ひと段落ついたところで私は西通りに行きました。
西通り、私の想像のはるかに上でした。
とてつもなく大きな街です。
街の雰囲気を感じつつブックストアの本店に行きました。
本店は大きなビルの1階から3階までです。
店の中、とても広いフロアを見てまわって『全てが手に入る店』に納得しました。
もちろん私が欲しいって思ってる本は全部ありました。
何冊か買おうかなって思いました。
でもこれからはいつでも来られる。
だからこのときは買うのはがまんして家に帰りました。
学校。
今の私には少しつらいです。
王都西一般教育学校に転校して新しい学校にどきどきしながら通い始めました。
通学にはバスを使います。
家がある住宅街のバス停で大公園行きのバスに乗って、乗り換えとかはなしで、学校の近くのバス停で降りる、です。
学校は楽しくて、授業も楽しくて、毎日わくわくで学校に行きました。
でも少しして、学校が何だかつまらなくなってきて、つまらないなって思いながら学校に行きました。
そのうちに学校に行くのが苦しくなってきて、苦しいのをがまんして学校に行きました。
最後に学校に行けなくなりました。
家を出て、バスに乗って、学校のバス停で……、降りられなくなりました。
バスは終点の大公園へ。
大公園でバスを降りて、午前中は公園のベンチで本を読んで、お昼くらいにお母さんが作ってくれたお弁当を食べて、午後は公園にある図書館で勉強する。
そんなのが何日か続きました。
何日かの後、私が学校に行ってないって学校から家に連絡が入って、学校に行ってないのが両親にバレました。
すぐに両親と話をすることになりました。
ダイニングテーブル、両親がならんで座って向かいに私が座りました。もちろん叱られるのを覚悟して、です。
でも話し始めると私が思っていたのとはぜんぜん反対でした。
両親は何も叱らず逆にできるだけ優しく、『学校に行きたくなったら行けば良いから』って言ってくれました。
叱られなかったのにはほっとしました。でも……、両親の言葉、何かが心に引っかかりました。
それからまた何日か後、両親は先生と話をしに学校に行きました。
先生が言うには、『学校に来たくなったら来れば良いから』だったそうです。
先生の言葉、良かったって思いました。でも、上手く言えない何かがやっぱり心に引っかかりました。
1日目
今日も学校を目指します。
今日こそ学校に行きたいって思います。
だから、制服を着て、かばんを持って、部屋を出て、ダイニングへ。
朝ごはんを食べて、時計を見るとちょうど良い時間です。
お母さんが作ってくれたお弁当をかばんに入れて。
「行ってきまーす」
そう言って玄関へ向かいます。
お母さんの、
「行ってらっしゃい」
の声を受けながら家を出ます。
バス停で少し待って、バスが来ました。
バスに乗ります。
このバスは始発から近いのでだいたいいつも席が空いていて、今日も空いてる席がありました。その席に座ります。
このバスを使うのは王都西一般教育学校の生徒がほとんど全部です。
だからバス停に止まるたびに制服姿が増えます。
そんな光景が続いた少し後、学校にいちばん近いバス停に止まりました。
制服姿の全員が次々にバスを降ります。
私は……、やっぱり降りられませんでした。
バスが動き出して制服を着てるのは私ひとり。
悲しいって言うか、悔しいって言うか、……落ち込んでしまいます。
落ち込んでる私を乗せてバスは終点の大公園に着きました。
降りるしかないのでバスから降ります。
「ふぅ」
ため息が出ました。
今日もやっぱりダメでした。
でも気持ちを切り替えて、いつも通りベンチに座って本を読んで……、と言う気持ちにはなぜかなりません。
だから、公園の中をのんびりと歩き始めました。
大公園はもちろん大きな公園です。
私はいつも図書館の近くにしかいなかったので、今日はほかのところを歩くことにしました。
少し歩いて、野外ステージがありました。
そこからまた歩くと公園の端に着きました。
公園から道路に出て、公園に沿って道路を歩きます。
すぐ近くだったのに来たことがなかったところ。新鮮です。
図書館の方に戻ろうとして、道路の向かい側にゲームセンターがありました。
新しい発見です。
前に住んでた街ではときどきゲームセンターに行ってました。
でも王都に来てからはゲームセンターに入ったことはありません。
だから久しぶりに。そんな気持ちになりました。
ゲーム、『ファイティング・カグヤ』シリーズ、人気の格ゲー、には自信があります。
とは言えお金は……。
財布を取り出して中を見ると100ダリル玉が2枚入ってました。
インフォメーション端末にはもういくらかお金が入ってますが、使わない方が良いでしょう。
道路をわたってゲームセンターの前に立ちます。
制服姿はどうかなって思いましたが覚悟を決めて店に入りました。
筐体を順番に見ながら歩いて。ありました『ファイティング・カグヤ4』。
画面の前に座ります。
『で、今日はどうしたんだ?』
『機械屋ちゃんに仕事全部取られちゃってね』
『限定品の工具セット欲しいんだって。
だから金が要る、って』
『ああ、そう言うことか』
店の奥から話し声が聞こえてきました。
でも今の私には『ファイティング・カグヤ』です。
100ダリル玉を投入口に入れると画面が変わってキャラセレクト。
選ぶのはもちろん『みーこ』です。
まずはファーストステージ。
1戦目、
1撃目を入れてそこからコンボに入ってノーダメージでWin。
2戦目、
1撃目を入れてそこからコンボに入ってノーダメージでWin。
ファーストステージ、クリア。
セカンドステージから先はクリアはできるものの少しずつ厳しくなります。
ゲームセンターに来てなかった間に腕が落ちたみたいです。
次がファイナルステージ、のところで負けてゲームオーバーになりました。
でもゲームの感覚は十分に戻りました。
もう1回。
100ダリル玉を投入口へ。
キャラはやっぱり『みーこ』。
今度は順調に進みます。
ノーダメージでステージクリアを続けます。
やっぱり調子が戻ってます。
何回かのステージクリアの後、ファイナルステージに着きました。
ファイナルステージスタートのメロディが流れます。
画面に神経を集めて、ファイナルステージスタート。
1戦目、
余裕を持って『みーこ』を動かして、攻撃を入れてコンボをつなげてWin。
2戦目もタイミングを計って攻撃を入れてコンボに入ってWin。
これでゲームクリアです。
「おー、すげー」
後ろから声がしました。誰かが見てたみたいです。
振り返ると女の人がいました。
私は制服姿です。どうしたら良いか少し困って、でも言いました。
「あの、学校に行かないでゲームセンター、って変だと思いませんか?」
女の人は、ん? って感じで。
もしかして……、制服に気づいてなかったみたいです。
私の制服を確かめて。
「じゃあ、仕事しないでゲーセン、変だと思わない?」
そう言われると。
「それは……」
確かにその通りです。
言葉が続かない私に女の人が笑顔で言います。
「人それぞれだからね」
女の人の笑顔が私を落ち着かせてくれました。
なんだか安心できる。そんな気がします。
次に、
「あ、そだ、
せっかくだから自己紹介、いいかな?」
とのことで。
もちろん悪くなんかなくて良いことです。
「えと、はい」
私の言葉を確認して女の人が言います。
「私は『先輩』、よろしくね」
もちろん笑顔です。
つられて私も笑顔になります。
「はいっ」
笑顔で返事をして次は私の番です。
「私は『学生』です。
よろしくおねがいします」
私の声にすぐに声が返ってきました。
「『学生ちゃん』で良いかな?」
もちろんです。だからうなずいて言います。
「おねがいします。
じゃあ私は……、『先輩さん』で良いですか?」
「うんうん、良い良い!」
女の人、先輩さんはやっぱり笑顔でこくこくとうなずきました。
続いて何かに気づいた感じで、少し真面目な表情になって話し始めました。
「あ、そだ、
学生ちゃんって『カグヤ』上手いんだね」
言われると痛いところです。
「それは……、『カグヤ』しかしないので……」
表情を見られないようにか少しうつむいてしまいます。
「でもすごいよ、
ファイナルステージ、ノーダメージクリアって、うん。
そだ、初めから見せてくれない?」
先輩さんはズボンのポケットを探って……、100ダリル玉を取り出しました。
「はい、これ」
先輩さんの手から私の手に、自然な感じで100ダリル玉が移りました。
えっと、どう言うことかな? と思います。
「あの、これは?」
私の質問に先輩さんはすぐに答えてくれました。
「えっとね、『おねがいした方が金出す』、
この店のローカルルール」
納得できました。
「なるほど、
じゃあ、いただきます」
先輩さんに言ったタイミングで店の奥、カウンターの向こう側にいた大柄な男の人からの声。
「先輩ちゃん、
勝手にローカルルール作るな」
先輩さんはすぐに男の人を向きました。
「店長、ほら、今回だけだから、
おねがいっ」
両手を合わせて『おねがい』のポーズをして言います。
「まったく、今回だけだぞ」
あきれた声で男の人、店長さんが言いました。
えっと……、OKみたいです。
「じゃあ、始めます」
私の声に先輩さんは私の斜め後ろに立ちました。
画面に向かって、心を落ち着かせて。
先輩さんにもらった100ダリル玉を投入口に入れます。
キャラセレクトはもちろん『みーこ』を選びます。
『ファーストステージ、ファイト!』
バトルスタートです。
1戦目開始。
相手に1撃を入れて後はコンボをつないでWin。
2戦目も余裕を持って勝てました。
その後もWinが続きますが少しずつ難しくなってきます。でも調子が戻ってきてるのでどうにかなります。
ノーダメージでファイナルステージに来ました。
ファイナルステージの1戦目。
バトルスタートから相手の動きを見て、タイミングを合わせて攻撃開始。コンボに入ってWin。
2戦目も同じ要領でWin。
ノーダメージでゲームクリア、です。
「ふぅ」とひと息ついたところに先輩さんの声。
「うわー、やっぱすげー、
学生ちゃん、強いよ」
そう言ってもらうとちょっと嬉しくて、ちょっと恥ずかしくて。
「えと、ありがとうございます」
でも、だから、笑顔でぺこりと頭を下げました。
「これ良い勝負できるよ!
ね、店長」
先輩さんはにこにこで店長さんに言います。
すぐに店長さんから言葉が返ってきました。
「ん? 『格闘野郎』か?
『カグヤ』ノーミス、……ワンチャンあるな」
「でしょ!」
先輩さんと店長さんが何だか軽く盛り上がり始めて少し入りにくい雰囲気になりました。
でも、私も入った方が良いかな? 入らない方が良いかな? って考えて、入ることにしました。
「あの、『格闘野郎』と言うのは……」
入らない方が……、良かった、かな?
そんな私に先輩さんが反応してくれました。
「あ、放置しちゃった。
ごめんね」
先輩さんはすまなさそうで。でも私は、
「いえ、大丈夫です」
本当だから言いました。
そんな私に先輩さんが『格闘野郎』の説明をしてくれました。
「って、『格闘野郎』、説明しなきゃね。
『格闘野郎』ってのは格ゲーのエキスパートって言うのかな。
ここの格ゲー全部ノーミスでクリアしたヤツなんよ」
「全部、ですか……」
すごいです! すごすぎです!
何も言えなくなってる私に先輩さんの言葉が続きます。
「うん、
でも学生ちゃんだったら良い勝負できるかな、って」
『格闘野郎』さん、すごすぎる人と私……。
「私で、大丈夫でしょうか……?」
不安しかありません。
私の表情を見て先輩さんはあわてて言ってくれました。
「そうじゃなくて違うくて、
ゲームなんだから気楽で良いよ」
先輩さんはやっぱり笑顔で。そんな先輩さんを見たらどうにかなりそうな気持ちになってきました。
「……そう、ですよね」
先輩さんの言葉が続きます。
「もし面白そう、って思ってくれたら、休みの日の昼すぎに来て。
それくらいの時間に常連、だいたい集まるから」
何だか面白そう、って言うか先輩さんの言ってることわくわくしかしません。だから言いました。
「はい、面白そうです。
来たいです」
私は自然と笑顔になりました。
その後は先輩さんと店長さんと私とでゲームの話になりました。
話の中、店長さんの言葉に驚きました。
先輩さんは『カウボーイ・ショット』のトップランカーなのだそうです。
でも上手すぎるって言う理由で店長さんから『カウボーイ・ショット禁止令』が出てるとのことです。
そんな話が続いてるうちにお昼前になりました。
私は大公園でお弁当食べて、昼からは図書館で勉強するって言いました。
その言葉に先輩さんも、そろそろ帰るね、となりました。
先輩さんと私は店長さんにお礼を言って店を出ました。
店から出たところで先輩さんが、
「またね」
と言ってくれました。
私は、
「おねがいします」
と、ぺこりと頭を下げました。
先輩さんと別れて大公園に向かいます。
大公園へと歩きながら、特別な何かを考えてた訳ではありません。
でも、何かが動き始めた。そんな気がしました。
続
これにて『友達ができた日(1日目)』は閉幕です。
今回の話は「作者が一度は作りたかった話」でして。
『仲間ができた日』から、「ひとつの物語をふたりの主人公から見る話」になってます。と言う訳で「行動」や「セリフ」が『仲間ができた日(1日目)』と同じです。
これは高千穂遙の『ドルロイの嵐』と『ダーティペアの大乱戦』で用いられてる手法で、この2冊を読んだ際に、作家なる人物はこれほど緻密な文章を書けるのか、と衝撃を受けました。
以降、作者が文章を書くようになって「一度は使いたい手法」になっていて、ようやく描くことができました。
今作『友達ができた日』では、学生ちゃんと先輩さんが一緒にいる『5日目』まで、このスタイルで話が進みます。6日目以降はふたりが別々に行動と言うことで、『仲間ができた日』で描いていない「学生ちゃん側の話」になります。
6日目以降に学生ちゃんに何があったのか?
学生ちゃんの「友達」とは?
が明らかになります。
次回は『友達ができた日 (2日目)』です。
では、今後ともご贔屓のほどよろしくお願い致します。