でも行かないのも重要かもしれなくて。
ゲームセンターに先輩さんに会いに行って。
先輩さんにお気に入りの本を読んでもらいたくて。
少しのことがあって西通りに行くことになって……、そんなお話。
第25話は1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目の8回に分けて公開します。
また本作『友達ができた日(3日目)』は 第23話『仲間ができた日(3日目)』と「並行」しています。
こちらもご一読いただければ幸い。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した世界観を使って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
学生(主人公)・先輩、は女性、
店長、等々は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
3日目
ピピッ、ピピッ、ピピッ、
目覚まし時計の音で目が覚めました。
体を起こして、目覚まし時計を止めて。
ベッドから下ります。
朝、1日の始まりです。
今日こそ学校に……、行く。
何だか力が入りません。
ダメです!
今日こそ学校に行く!
自分に言い聞かせます。
制服に着替えて、かばんを持って、机に置いていた文庫本をかばんに入れて……。
?
本を持って行く、と言うことは先輩さんに会う、と言うことです。
じゃあ学校は……?
学校に行けたら学校に行く、ダメだったらゲームセンターに行く。
そう言うことにしました。
朝ごはんを食べ終わるとちょうど良い時間です。
お母さんのお弁当をかばんに入れて、
「行ってきまーす」
そう言って家を出ます。
バス停で少し待って、バスに乗って、空いていた席に座りました。
もちろん今日もバス停で止まるたびに制服姿が増えます。
学校まですぐのバス停に着いて、制服姿の全員がバスから降ります。
私も降りようと思って席から立とうとして……。
バスから降りない方が良い、そう感じました。
だから席から立ちませんでした。
これで良いのかな、と思って、迷います。
ドアが閉まってバスが走り始めて、ほっとしました。
これでゲームセンターに行けます。
終点の大公園でバスを降りました。
公園の中を歩きます。
ゲームセンター、昨日は少し早く着きすぎました。今日は少し遅くします。
野外ステージまで歩いてベンチに座りました。
かばんから本を取り出して表紙を見ます。
この本、私は最高に楽しいと思います。
でも先輩さんは……。
不安が少し出てきます。
じゃないです、先輩さんだったら絶対に大丈夫です。
表紙を見て、パラパラとページをめくって、そんな間に十分な時間がすぎました。
本をかばんに戻して。
よし!
ベンチから立ち上がってゲームセンターへと歩き始めました。
ゲームセンターに着くと十分に開店していました。
店に入って、店長さんがいます。
「おはようございます」
「おう、
おはよう」
店長さんが挨拶を返してくれました。
「おっはよー」
先輩さんの声です。声の方を向くともちろん先輩さんがいます。
「おはようございます」
ぺこりとおじぎをしました。
頭を上げて先輩さんの方へ。
先輩さんに言います。
「あの……、
今日は先輩さんにおねがいがありまして……」
言っても大丈夫か、言わない方が良いか、やっぱり迷います。
でも私は決めてます。
「うん、
じゃあ、とりあえず座ろう」
「あ、はい」
店内にならぶ筐体、その前の椅子、先輩さんはそのひとつに座りました。
私は先輩さんの前に座ります。
「で、おねがいって何なのかな?」
先輩さんは興味津々な様子です。
「えっとですね……」
かばんから文庫本を取り出します。
「……これ、なんですが、
先輩さんに読んでもらいたいなって……」
本を先輩さんに向けます。
「見せてもらって良い?」
「はい! もちろんです」
本を渡しました。
先輩さんは表紙を見て。
「これってどんな本なのかな?」
そう尋ねられました。
ためらう必要は何もありません。
でも少しためらいました。
「その……、BLのラノベです」
先輩さんは私を向きます。
「『BLのラノベ』って何なのかな?
初めて聞く言葉だ」
もう1回尋ねられました。
「あ、そうですね。
『BL』は『ボーイズラブ』で、『ラノベ』は『ライトノベル』です」
先輩さんは改めて表紙を見ます。
「つまり『ボーイズラブのライトノベル』ってことでおけ?」
私を見て先輩さんの問い。
「はい! そうです」
先輩さんはまた表紙を見て、でも表紙だけしか見なくって……。
「あの……、やっぱりダメですよね?」
失敗だったなって……、残念です。
そんな私に先輩さんが言います。
「表紙しか見てないから、かな?」
「それは……、はい」
その通りです。
「表紙しか見ないのは、
ほら、文庫本の裏表紙ってあらすじが書いてるのが多いっしょ。
それに中見ちゃったらそれこそネタバレになっちゃう。
そしたら楽しみが減っちゃうからね」
先輩さんの言葉にほっとしました。
ダメだって思ってた緊張が少し楽になりました。
でも先輩さんは本を私に向けて……、返ってきました。
「?
あの……、やっぱり……」
少し浮かび上がった気持ちがまた沈み始めます。
先輩さんがあわてて言いました。
「そうじゃなくて違うくて、
私ね、人から借りるの苦手なんよ」
気持ちがまた上がり始めました。
「だから今から買いに行きたいなって。
その本、面白そうだから。
売ってる本屋、教えてもらえないかな?」
先輩さんにそう言ってもらって、やっぱり先輩さんに薦めて良かった、って心の底からほっとしました。
でも……。
「それは良いですけど……、
でも、買うんだったらこれはやめた方が……」
声が小さくなります。
「どゆこと?」
「その、この本ってとがってるって言うか、通好みって言うか、人気作じゃないって言うか……」
先輩さんに答えますがやっぱり声が小さくなります。
「でも学生ちゃんは面白いんだよね?」
もちろんです!
だから、
「はいっ」
即答しました。
「じゃあ大丈夫!
それと……、
そだね、学生ちゃんの本と、あと、今の流行ってのかな?
人気のを教えてよ」
「もちろんです!」
小さくなってた声、元に戻って元気が入った声で返事しました。
「それじゃ、行こっか」
「はいっ!」
店長さんに挨拶をして先輩さんと一緒にゲームセンターを出ました。
先輩さんとならんで西通りを目指します。
「でさ、どこの本屋に行くの?」
そう言えば言ってませんでした。
「西通りの店です」
私の言葉に先輩さんはすぐに納得してくれました。
ふたりで話をしながら歩いて西通りに入りました。
店が開き始めて、人通りが増え始めて、そんな時間です。
西通りを少し歩いて、ブックストア、本店の前で止まりました。
「ここです」
先輩さんを向いて言います。
「えっと、ここ?」
少し戸惑う感じの言葉です。
「この店、そんなのもあったんだ……」
もしかして上に行ったことないのかな?
なんだか先輩さんらしくないなって思います。
先輩さんだったらもちろん知ってるって思ってました。
「こっちです」
店内を歩いて階段へ向かいます。
「?
2階って男向けじゃなかったっけ?」
先輩さんの問い。
2階に上がったことはあるみたいです。
問いに答えます。
「はい、2階は『紳士フロア』で3階が『乙女フロア』、女性向けです」
「3階があったのか、なるほど」
私の言葉を飲み込んだ先輩さんと階段を上がって3階へ。
3階のフロア、私にはいつものフロアですが先輩さんには新鮮みたいです。
先輩さんを確認して歩き始めます。
私のすぐ後ろを先輩さんが歩きます。
平積みされてる本と大きな棚のひとつの前に立ちました。
棚の上に『ボーイズラブ』とあります。
先輩さんが私にならびました。
「このあたりがBLのコーナーでして……」
「うんうん」
私の言葉に先輩さんがうなずきます。
「私のは……」
大きな棚、先輩さんに見てもらった本を探します。
ありました。
見つけた1冊を取ります。
「これです」
私の手から先輩さんの手に移ります。
「うん、だね」
表紙を見て確認する感じです。
「それで流行のは……」
今度は平積みされてるのを順番に見ます。
積まれてるのは基本的に流行の本、人気の本です。
その中から特に人気があるのを選びました。
「これがいちばんだと思います」
平積みから1冊を手に取って、今度も先輩さんの手へ。
先輩さんは手にある2冊を見比べます。
「これってやっぱりぜんぜん違うのかな?」
もちろんです。
「はい、ぜんぜん違います。
『通好み』と『万人受け』かなって思います」
先輩さんはもう一度2冊に目をやりました。
「なるほど」
分かってもらえたみたいでちょっと嬉しいです。
先輩さんが本を持ち直して、ふたりでレジへ向かいました。
お金を払って文庫本2冊が入った黒い袋を受け取って階段へ。
1階に下りて店から出ました。
店の前に出たところで先輩さんは腕時計を見ました。
私も腕時計をちらりと見ます。
お昼時になってました。
「あ、もうこんな時間。
学生ちゃん大丈夫?
これから大公園でしょ?」
先輩さんは私を気遣ってくれます。
「はい、そんなに急がなくて大丈夫ですから。
それに……、とっても楽しかったです」
自然と笑顔になりました。
私を見てか先輩さんも笑顔になります。
「私も楽しかった。
帰ったらすぐ読むね」
その後はもう少しだけの時間、軽く話をして先輩さんと別れました。
大公園。
木漏れ日の下、ベンチに座ってお弁当を食べます。
先輩さんとのやりとりを思い出します。
ゲームセンターで話をして、西通りに歩いて、本を買って。
それだけなのに楽しい時間でした。
昼からは図書館で勉強しました。
静かな空間の中で教科書とノートに集中して夕方までをすごしました。
夜。
お風呂で肩までお湯につかって、ふと思いました。
先輩さんは本に興味をもってくれて、読むって言ってくれました。
でも……。
昨日の夜に悩んだことを思い出しました。
面白くないとか、楽しくないとかだったら……。
不安になります。
そんな不安を全力で打ち払います。
先輩さんです。
絶対に大丈夫です。
自信が出てきます。
うん、大丈夫。
絶対に大丈夫。
自分に言い聞かせてお風呂を済ませました。
お布団に包まって。
明日はどんな話ができるのかな。
先輩さんに会うのが楽しみで、本の話ができたら嬉しいなって思って。
そんなことを考えてるうちに意識が眠りに入りました。
続
先輩さんは人を否定しない人です。
加えて何にでも興味を持つ人です。だから楽しいことを探すのが上手いです。
そんな先輩さんに出会って、学生さんは「変わる」のではなく「本来の学生さんに戻る」のだと思います。
学生さんおすすめのラノベを読んだ先輩さんの反応は……、次回の話です。
最後に、本作『友達ができた日(3日目)』は 第23話『仲間ができた日(3日目)』と「並行」しています。
こちらもご一読いただければ幸いです。
次回は『友達ができた日 (4日目)』です。
では、今後ともご贔屓のほどよろしくお願い致します。