冒険と探検と日常と ~のびのびTRPG~   作:混沌野郎

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 機械屋さんが仕事のほとんど全部を引き受けたので、することがない先輩さん。
 少しの思いつきで先輩さんはゲーセンに行くことに。
 ゲーセンでゲームが上手い女の子と出会って。
 出会いから何かが起こりそうな予感がして……、そんなお話。

 第23話は1日目、2日目3日目4日目5日目6日目7日目8日目の8回に分けて公開します。
 また本話『仲間ができた日(1日目)』は 第25話『友達ができた日(1日目)』と「並行」しています。
 こちらもご一読いただければ幸い。

 本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
 ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した世界観を使って記した二次創作です。

 『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。

先に記しとく設定、
 先輩(主人公)・機械屋・学生、は女性、
 店長、等々は男性、
 作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
 と言うことで。

クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.


第23話 仲間ができた日 (1日目) [1/8] (日常回)

 私は先輩。

 王都の倉庫街にある工房でエントロピージェネレーターを開発してる。

 エントロピージェネレーターってのは『エントロピーの増大からエネルギーを取り出す機械』。

 簡単に言えば『永久機関』。

 どう考えてもありえない機械だけど理論上は全く問題ない。十分に可能。

 エントロピージェネレーターを考え始めたきっかけは登山。

 親しい連中とちょっとした登山をしたときに見つけたエメラルド色に光る石。

 石の光が気に入ったから家に持ち帰って机のすみに置いて光を見てた。

 ある日、家に帰ったら光が消えてた。

 ずっと光ってたら良いのに……。

 石を光り続けさせる方法を考えてるうちにエントロピージェネレーターの世界に足を踏み入れた。

 今はエントロピージェネレーターの開発はもちろんだけど、ほかの仕事もしてる。

 私の助手、って言うか、工房の従業員、って言うか、の機械屋ちゃんと毎日をすごしてる。

 

 5日くらい前から機械屋ちゃんが仕事に打ち込んでる。

 私の仕事もほとんど全部、機械屋ちゃんが引き受けてる。

 機械屋ちゃんが言うには、お気に入りの工具メーカーの創立100周年記念の限定工具セットを買いたい、とのこと。

 かなりの値段だけど値段相応の価値がある、って言ってた。

 でも値段が値段だったから予約をあきらめたらしい。

 だけど、人気がありすぎたから二次予約を受け付けるってアナウンスを知って、やっぱり後悔したくない、となった。

 工房の給料は歩合制だから仕事をすればするほど金が入る。

 そんな訳で機械屋ちゃんは仕事に打ち込んでる。

 金がいるんだったら「特別給与」とか「臨時賞与」とか適当に名前つけて工房の金を使えば良いっしょ、って言ったんだけど、機械屋ちゃんは「自分の金で手に入れてこその価値がある」って言って仕事に打ち込んでる。

 私にある仕事はすぐに終わった。

 エントロピージェネレーターの作業に集中しよう、って思ったけど、なんとなくそう言う気にはならない。

 結局、エントロピージェネレーターはいつも通りのんびり進めることにした。

 

 

 1日目

 

 今日も朝から暇。

 エントロピージェネレーターは昼からの作業の予定。

 午前中はすることがない。

 機械屋ちゃんは真剣に作業してるから話しかけられる雰囲気じゃない。

 ……ゲーセン行くか。

 ゲーセンに行ったら常連のがいるかもしれないし、少なくとも店長はいる。

 部屋に戻って作業着から普段着に着替えた。

 機械屋ちゃんに「ゲーセン行ってくる」って言って、工房を出た。

 行きつけのゲーセンまではちょっと歩く。

 夏の始まりを告げる風が流れてる。

 風を感じながら歩いた。

 

 ゲーセンに着く。

 店の正面、いちばん目立つところに置かれてる筐体、『カウボーイ・ショット3』、ガンシューティング、私のお気に入りのゲーム。

 ズボンのポケットを探ったら100ダリル玉が何枚か入ってた。

 筐体の前に立って、すーはー、と呼吸を整える。

 100ダリル玉を投入口に入れた。

 このゲーム、私が本気でプレイするとスコアが入りすぎて4thステージが始まったところでエラーが出て、画面の表示がめちゃくちゃになってゲームを続けられなくなる。

 だからエラーが出ないように狙ってゲームを進める。

 ファイナルステージをクリアした時点でエラーが出ないぎりぎりのスコアを狙う。

 だけどそう簡単にはいかない。

 6thステージをクリアして7thステージに入ったところでエラーが出た。

 こうなるとどうにもならない。店長にリセットしてもらうしかない。

 店に入って、店の奥、カウンターの向こうに店長がいた。

「店長ー、こんちはー」

 店長はすぐに気づいてくれた。

「おう、先輩ちゃん、

 こんな時間からどうした?」

「それがさー」

 店長の声に答えようとして、その前にすることがある。

「って、違うくて、

 『カウボーイ・ショット』エラー出ちゃった、

 リセットおねがい」

「ったく、またか。

 先輩ちゃん、あんまり本気出すなよ」

 そう言いつつもこっちに来てくれる。

 一緒に『カウボーイ・ショット』の前へ。

 店長がしゃがみこむ。

 ポケットから鍵の束を取り出してそのひとつで筐体の正面のパネルの鍵を開けた。

 パネルを開けていくつか並んでるボタンのひとつを押した。

 乱れてた画面が消えて真っ黒になった。

 少し間をおいて、画面にメーカーのロゴが表示された。

 続いて『カウボーイ・ショット』のデモが始まる。

 直ったと言うこと。

 パネルを戻して店長が立ち上がった。

「まったく、

 ほどほどにしてくれ」

「あ、それは大丈夫、

 今日は満足したから」

 店長とふたり、カウンターに向かう。

 店長はカウンターの向こうに戻って、私はカウンターの前。

「で、今日はどうしたんだ?」

「機械屋ちゃんに仕事全部取られちゃってね」

 店長の言葉に答える。

「限定品の工具セット欲しいんだって。

 だから金が要る、って」

「ああ、そう言うことか。

 でもよ、先輩ちゃんのとこだったら適当に理由つけて金出せるだろ?」

 その通りなんだけど。

「自分で働いた金で買いたいんだって」

 私の言葉に店長は納得してくれた。

「機械屋ちゃんらしいな」

「うん、機械屋ちゃんらしい」

 そんな感じで店長と話してると時々聞くメロディが流れてきた。

 『ファイティング・カグヤ4』、人気の格ゲー、のファイナルステージ開始のメロディ。

 どんなプレイしてるのか気になる。

「ちょっと見てくるね」

 カウンターを離れて『ファイティング・カグヤ』の筐体へ。

 プレイしてたのは16歳か17歳かくらいの女の子。

 女の子の後ろに立つ。

 画面に集中してる。

 私に気づかない。

 それくらい集中してる。

 1戦目。

 ファイト開始!

 女の子は上手に『みーこ』、『ファイティング・カグヤ』の定番キャラ、を操作。

 1撃目が入ったらその後はコンボをつなげて。

 ラスボスのパワーゲージがどんどん減ってく。

 ノーダメージでK.O.した。

 2戦目。

 ファイト開始!

 今度も同じ。

 ダメージを受けることなくK.O.。

「おー、すげー」

 ちょっと感動する。

 その声で女の子は私に気づいてくれた。

 振り返って私を見る。

 見てちょっと困った様子になる。

 女の子は思い切って、そんな感じの言葉。

「あの、学校に行かないでゲームセンター、って変だと思いませんか?」

 気づいてなかった。

 女の子の言葉で気がついた。

 王都西一般教育学校の制服。

 でも私は変だと思わない。

「じゃあ、仕事しないでゲーセン、変だと思わない?」

「それは……」

 女の子はちょっとばかり困惑。

「人それぞれだからね」

 笑顔で言った。

 私の言葉に女の子はいくらか落ち着いてくれた。

「あ、そだ、

 せっかくだから自己紹介、いいかな?」

「えと、はい」

 OKと言うことで自己紹介。

「私は『先輩』、よろしくね」

 女の子は、

「はいっ」

 と笑顔。

 続いて、

「私は『学生』です。

 よろしくおねがいします」

 なるほど。

「『学生ちゃん』で良いかな?」

 女の子は大きくうなづいてから、

「おねがいします。

 じゃあ私は……、『先輩さん』で良いですか?」

「うんうん、良い良い!」

 こくこくとうなづく。もちろん笑顔で。

「あ、そだ、

 学生ちゃんって『カグヤ』上手いんだね」

「それは……、『カグヤ』しかしないので……」

 学生ちゃんはちょっとうつむいた。

「でもすごいよ、

 ファイナルステージ、ノーダメージクリアって、うん。

 そだ、初めから見せてくれない?」

 ポケットを探って……、

 あった、100ダリル玉を取り出して、

「はい、これ」

 学生ちゃんに渡す。

「あの、これは?」

「えっとね、『おねがいした方が金出す』、

 この店のローカルルール」

 ちょっと「?」な学生ちゃんに説明。

「なるほど、

 じゃあ、いただきます」

 学生ちゃんは分かってくれたんだけど、そこに店長の声。

「先輩ちゃん、

 勝手にローカルルール作るな」

「店長、ほら、今回だけだから、

 おねがいっ」

 両手を合わせて「おねがい」のポーズ。

「まったく、今回だけだぞ」

 店長はOKしてくれた。

「じゃあ、始めます」

 学生ちゃんは100ダリル玉を投入口に入れて、ゲームスタート。

 キャラ選択は『みーこ』、『カグヤ』の定番キャラ。

『ファーストステージ、ファイト!』

 1戦目開始。

 相手に1撃入れて、後はコンボをつないで余裕で勝利。

 2戦目もさくっと勝利。

 その先も勝利が続いて、いよいよファイナルステージ。

 やっぱり十分に余裕がある勝利。

「うわー、やっぱすげー、

 学生ちゃん、強いよ」

「えと、ありがとうございます」

 学生ちゃんはちょっと恥ずかしそうに、でも笑顔でぺこりと頭をさげてくれた。

 私も笑顔になる。

「これ良い勝負できるよ!

 ね、店長」

 店長も興味を持ってくれた。

「ん? 『格闘野郎』か?

 『カグヤ』ノーミス、……ワンチャンあるな」

「でしょ!」

 店長と軽く盛り上がってると学生ちゃんの声。

「あの、『格闘野郎』と言うのは……」

 何だか困った感じ。

 てか、学生ちゃん放置してた。

「あ、放置しちゃった。

 ごめんね」

「いえ、大丈夫です」

 余計に困らせちゃったかな。

「って、『格闘野郎』、説明しなきゃね。

 『格闘野郎』ってのは格ゲーのエキスパートって言うのかな。

 ここの格ゲー全部ノーミスでクリアしたヤツなんよ」

「全部、ですか……」

 学生ちゃんはちょっと呆然になった。

「うん、

 でも学生ちゃんだったら良い勝負できるかな、って」

「私で、大丈夫でしょうか……?」

 不安げな表情になる。

「そうじゃなくて違うくて、

 ゲームなんだから気楽で良いよ」

「……そう、ですよね」

 少し考えてから、学生ちゃんは言ってくれた。

「もし面白そう、って思ってくれたら、休みの日の昼すぎに来て。

 それくらいの時間に常連、だいたい集まるから」

「はい、面白そうです。

 来たいです」

 学生ちゃんは笑顔になった。

 その後は私と学生ちゃんと店長でゲームの話。

 そんな感じのうちに昼前になった。

 昼前、学生ちゃんは大公園でおべんと食べて、昼からは図書館で勉強する、ってこと。

 だから私もそろそろ帰るね、となって、解散、になった。

 




 新キャラ登場の「学生ちゃん」、
 人気の格ゲー『ファイティング・カグヤ』のスペシャリスト? です。
 先輩さんに絡む以上「訳あり」なキャラで、この先で明らかになります。

 あと、『ファイティング・カグヤ』は第8話『傷つく役目 (前編)』で出てきた『カグヤ』とつながってます。

 次回は『仲間ができた日 (2日目)』です。
 では、今後ともご贔屓のほどよろしくお願い致します。
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