続きはない。ないったらない。
「……さて、何か弁解はありますか?」
呆れと諦観を言外に滲ませながら、ため息を飲み込み問いかける。
目の前には何も言っていないのに正座をする4人。反省していますというポーズを取るスピードだけが日に日に速くなってはいるが、それが見かけだけであるという事を今までの経験上、彼女は把握している。
故に、彼らがどのような反応を返すかも予測できていた。
「「俺(私)は悪くない!」」
見なかったことにした。見たくなかった。己が敬愛している人と、その彼に並んで数多の英雄と友誼を結ぶ人類を救う役割を背負ったマスター二人が、みっともなく責任逃れする為の言い訳をするところなど。
彼らが馬鹿な事をやらかそうと普段の重圧と功績があるため、多少は目を瞑ろうと思っていた。
だが、流石にここ最近の暴走は擁護できない。彼ら二人、いや主犯に同調して共にふざけ倒す残り二人も同罪だ。
それ故のこの場である。
「カドック、説明を」
「なぜ僕なんだ!?」
「いいから、客観的に報告しなさい。藤丸とキリシュタリア様では主観が強すぎて話になりません」
「「辛辣ぅ!!」」
騒ぐ馬鹿2人を横目に、苦い顔を浮かべながら、なぜこのような状況になっているかを説明するためいやいや数時間前の記憶を呼び起こす。
「……事の発端は、藤丸が定規落としをやろうと持ちかけてきた事から始まったんだ」
なんてことはない。藤丸が、地元の学校で流行っていた定規を落とし合う遊びで過去一度も負けなしだった事を話し、4人の中で誰が一番強いかを競おうと持ちかけてきた。
それに対して、まず真っ先に参加を表明したのはキリシュタリア。当然である。次にデイビットがキリシュタリアに乗る形で参加し、カドックが最後に三人に煽られたため渋々参加。
ここまではまぁ普通にある話だ。学生4人が童心に帰って遊ぶ。それは結構である。
だが、それで終わらないのが四馬鹿クオリティ。
「始めは普通に遊んでいたんだ。だが、あまり認めたくはないが……僕たちは藤丸にボコボコにされた」
完敗であった。まさにその実力は圧倒的であり、優秀な魔術師(笑)三人を相手にまさしくマスターとしては古今無双(草)の力を見せつけた。だがそれがいけなかった。三人は魔術師であるため己の実力にある程度は誇りを持っている。
端的に言えば、彼らは負けず嫌いであった。
「最初に仕掛けたのはキリシュタリアだった。軽く定規に魔術をかけたんだ。だけど、それが不味かった」
かけた魔術は定規の硬さと重さを強化する程度のものであったが、それでもなお藤丸に勝てなかった。
あとはもう分かるだろう。
勝てないなら更に強い魔術を、と際限なくヒートアップしていったのだ。
「定規をひたすら強化し、藤丸の定規の妨害をしながら僕らは何とか勝った。勝ってしまった」
藤丸に突きつけられた敗北の二文字。
それを彼が潔く受け取るかというとそんな訳がなく。
「一度負けてからの藤丸は、ハッキリ言葉を濁さず言えば、イかれていた。コイツ頭おかしいんじゃないかと思った程だ」
「酷すぎない!?」
オブラートに包むことをせずに罵倒してのけたカドックに対し、すかさず突っ込む藤丸。だが、それに対して「いや、これはカドックに同意だね」「妥当な評価だな」とこれまたノータイムで突っ込むキリシュタリアとデイビット。ブーメランが刺さっているんじゃないかって?そんな事を気にする奴らだったら定規落としに魔術なんぞ使わないという話。神秘の秘匿はどこ行った。
「そもそもの話、魔術をかけたのはキリシュタリアだが、ここまでの騒ぎの元凶は藤丸がサーヴァントを呼び出したことに起因する」
「デイビット……あなたもテスカトリポカ神を呼び出していたと聞いていますが?」
「あれが勝手に出てきただ…「おいおい俺は公平な闘争をしたいというマスターの意思に従っただけだぜ?」……テスカトリポカ。俺はお前を呼んでいないのだが?」
「いやいやデイビットよぉ、この俺が悪いように言うのは流石に駄目だとテスカトリポカ思うわけ」
「そこの主従は話が進まないので静かにしてください。いいですね?」
「「……わかった」」
流石の戦乙女。南米の主神であっても一切臆することなく、むしろ気配で圧倒しながら黙らせる。というより過去に何度もお仕置きされているため、黙るしかなかったという最悪の経験則による物である。情けなさすぎんだろ…
「カドック、続きを」
「えぇ…この流れでか?」
「カドック」
「………はぁ。と言っても後はデイビットが言った通りだ。藤丸が自分は魔術が使えないからと、よりにもよってキャスター連中を呼んで、それに対抗する形でこちらも契約しているサーヴァントを呼んだ結果、定規落としはある種の魔術戦争みたいな状況に陥った」
「……………もう少し詳しく説明して下さい」
「藤丸が呼び出したキャスター……一部他のクラスも混じっていたが、彼らが定規にありったけの魔術をかけた」
ちなみに、藤丸が声をかけたのは悪ノリしてくれそうなサーヴァント達のみである。真面目なルーラー達や悪ノリより先に良識が来てしまうサーヴァント達はこの場には合わない(というよりむしろ止められる可能性がある)という判断によるものである。
なんでそういうところばかり頭が回るのか。小賢しさの極みである。
「当然僕らも負けてられないから僕らが呼んだサーヴァントも含めた六人がかりで藤丸に対抗した。その結果……爆発して床が抜けた」
「一体何が当然なのか私には何一つ理解できていないのですが、まぁ分かりました。カドック、デイビットはあくまで事の元凶と発端は藤丸とキリシュタリア様にあると、そう言いたいのですね?」
「「そうだ」」
カドックとデイビット、両名とも馬鹿2人を切り捨てる事にかけらも躊躇いがない。そういうことしてるから四馬鹿と一括りにされてるとは思いもよらないのだろう。バカだから。
「「ちょっと待て!!」」
そしてすかさず口を挟む2人。
「たしかに、定規落としをやろうと言い出したのは俺だよ?ちょっと熱くなってサーヴァント達を呼び出したのも俺……なんだけど!それでも最初に遊びに対して三人がかりで魔術使ってきたカドック達も悪いと思わない!?」
「そうだそうだ!私が最初に魔術を使ったのは認める。だが、カドックとデイビットも共に藤丸を倒そうと魔術を使い、サーヴァントを呼び出していたのは紛れもない事実だ!」
この2人、既に弁明は不可能と悟っている。しかし、往生際が悪いとはまさにこの事。
自分たちだけ罰を受けるのは癪なので、まだギリギリ巻き込まれたと弁明出来そうな(出来てない)カドックとデイビットも道連れにしようとしているのだ。汚い。
「………あのですね。予め言うのを忘れていたのですが、貴方達は既に処罰が確定していて、それでも何か事情があってのことかもしれないので申し開きを聞いていただけなのですよ」
「「「「…………」」」」
「なのに貴方達ときたら、いつも通り言い訳に夢中でしたね?特に藤丸とキリシュタリア様?」
「「「「…………」」」」
「カドックとデイビットも、共に問題を起こしたのは間違いないのに2人が悪いの一点張り」
「「「「…………」」」」
「四人とも、覚悟はできていますね?」
四馬鹿の明日はどっちだ…!?
否、明日はない。首をだせい。