だがゲーム開発部へ引き合わされた『王女』をめぐる争乱をきっかけに、ユリと彼女が持つ設計図の運命が大きく動き出すことになる。
ちまちま書いてたはいいが先駆者が現れたので出すか迷ってました。
なぜ既にブルーアーカイブ×ジェガンオリ主ものが2つ(筆者調べ)もある……?
「あ……どうも、シャーレの先生さん」
ミレニアムサイエンススクールの一角──エンジニア部の部室に訪れた"シャーレの先生"を出迎えたのは、やや気だるげな振る舞いをする少女だった。ダンボールに腰掛け、手持ち無沙汰な片手の金槌でツボ押し器よろしく肩に圧をかけるその様は、彼女がこの空間の勝手知ったる住人であることを物語っているようだった。
"やあ、ユリ。お邪魔するよ"
無難に応えた先生に、少女──
「……それで、ご用件は?」
特に誘った自覚がないからだろう、ユリの口から出たのはそんな言葉だった。実際、ここで会うまでに『モモトーク』と呼ばれるメッセージアプリで彼女と先生が交わしたのは、簡単な挨拶と「機会があれば部室に遊びに来て欲しい」といったような社交辞令程度だったからだ。
"なに、ユリに会いに来ただけさ"
その先生の言葉を受けたユリは、空いている方の手で自身を指差してきょとんとしたが、先生の顔つきから冗談でないことを汲んだのだろう、顔に向けていた指でこめかみを掻いた。
「部長ほど面白い話はできないと思いますけど」
そうエンジニア部の長──白石ウタハを引き合いに出したユリだが、他の生徒が全員出払っていたことで諦めをつけたのか、立ち上がって数歩先生の方へ近づくと、手にしていた金槌で明後日の方向へ指し示した。
"あれは……"
示された先で「HANGER」と表記されたゲートの向こうには、おおよそ自身の何倍もの大きさの機械があった。
「自分が作ってるのはアレです」
淡いグリーンを基調としたそれは、よく見れば人型ロボットの胸像のような印象を受けた。胴体に見立てた部分には側面に「肩」が生えてくることがイメージできるジョイント機構を備えており、前面にはコクピットハッチらしき赤いパーツが存在を主張していたほか、この上に乗る頭にあたる部位に、そのロボットの目──正確にはそれを覆う形だが──であることを示すような青いセンサーパーツが取り付けられていたからだった。
「Juliet-class Equipment General Armament Node……略して、『
つらつらとそれらしい単語を並べた末に告げられた名に、先生の興奮は最高潮まで導かれる。見えているものは全体像ではないのだろうが、人が乗り込めるだけの巨大ロボットとは全人類が憧れるものだと考えていたからだ。
"どんなロボットなの?"
「……量産型のロボットです」
問いかけにそう応えたユリへ向け、先生は首を傾げた。量産型──その意味が解せない訳ではない。だが、部長を筆頭に「ロマン」を追い求め制作へ心血を注ぐイメージの強かったこの部活にしては、小さく纏まった響きに聞こえたからだ。
「意外ですか? ……そんなものにロマンを見出す人がいる、というのが」
"……いや、そんなことはないよ"
やや卑屈な声色に聞こえるユリの発言をかわした先生が、いま一度ジェガンを見やる。すると、ユリはおもむろにこう続けた。
「見上げられるほど大きいロボットが、何体もズラリと並んでる……そんな光景って、きっとロマンに溢れてると思うんです」
そう聞いて先生は、目の前のジェガンの完全版が格納庫いっぱいに並ぶ様を想像した。
"そうだね。うん、そう思うよ"
「ちょっと食い気味じゃないですか……?」
いくらか上向いたように聞こえる声色で応える先生へ、気味悪げに溢すユリ。熱が籠りすぎただろうか、と先生が自省する暇もなく、「でも」と口ごもったユリは、手近に置いてあったタブレットを拾い上げる。画面にいくらか操作を加えたのち、彼女は設計図らしき画像を表示させ先生に差し出していた。
「これが全身なんですけど……現状を見ての通り、ちょっとどん詰まりになっちゃってて」
そうユリが言った通り、画面に映されているのは件の胸像にまんま手足を生やしたジェガンの姿。
手足のモールドの少なさ故だろう、全体像となると思いの外つるんとしたデザインに見えるそのメカは、確かに「量産機」と形容されるのも頷けるシンプルさだった。
「一応、腰や腕にグレネードやサーベルを仕込めたりとか、ビームのライフルを持てたりとか色々あるらしいんですけど……このサイズの武器なんて何も用意できてなくて」
頭を掻きながら続けられたように、付近を見回してもそれらしいものの一切は作り出されていないようだった。およそ20mにも昇る全高を誇るという、かの機体に見合うサイズの爆弾や銃などそう用意できるものではないのだろう。言及された以外のものも含めれば最も小粒に思えた「バルカン・ポッド・システム」ですら、発射に60mm口径の弾丸を要する始末だ。もちろんそれも製作にまで至っていないらしく、図上で取り付けられているはずの側頭部はバルカン接続用のジョイントが露わとなっているに留まっていた。
「だから、最近はもっぱらコクピットの操作シミュレーターをいじくってばっかりなんです」
そう言ってユリは胸部を指し示す。赤いハッチの向こうにあるのだろうコクピットへ向けて。
予算がないんですね、と彼女が自虐的に笑んだのちに、しばらく微妙な雰囲気が流れた。
「……乗ってみます?」
"え、いいの!?"
おもむろな提案に、先生は今日一番張りのある声を上げた。
しかし、このときの彼は──おそらくユリすらも──知らなかった。目の前にある機体が、遠くない未来に完成を迎えることを。そして、あることを忘れていた。この部が作り出す発明品が、何事も引き起こさずに済んでくれるはずがないということを。
──要塞都市・エリドゥ。
キヴォトスに破滅をもたらすとしてミレニアムサイエンススクールを束ねる生徒会長・調月リオに連れ去られたゲーム開発部の生徒・天童アリスの救出に向かったシャーレの先生たちは、一行にとって二度目となる巨大兵器に行く手を阻まれていた。
『動かないでください……皆さんを撃ちたくはない』
今しがた機能を停止させたアバンギャルド君──リオ謹製の戦闘ロボである──を庇うように降り立った三機のいずれかから発されるそのパイロットの声は、先生や、そこに帯同するエンジニア部の三人にとって聞き馴染みのあるものだった。
"助けに来てくれたってワケじゃなさそうだね……ユリ"
初めて見たときと違い純白のカラーリングに身を染めていたが、その機体たちは間違いなく、エンジニア部にて梶江ユリが手がけていたロボット・ジェガンだった。それが自分たちに銃口を向けているということは。
「感心しないな。
『すみません。先生、部長……まだ、この世界が惜しいんです』
アバンギャルド君との戦闘の疲れからだろう、息絶え絶えにになじるエンジニア部の部長・白石ウタハへ、装甲越しに詫びたユリの口振りから、彼女がリオにつく身だということは明白だった。よく見れば、ユリが駆るジェガンが先生らに向けているバズーカやライフルは、先ほどまでアバンギャルド君が保持していたものと同型であると思えた。
"そこをどいてくれユリ! 私たちはアリスを連れ戻しにきただけなんだ!"
何にせよ、予断を許さない状況であることは確かだ。そう先生は説得を試みる。
『嫌です。絶対に嫌です。聞いてないんですか? あの娘がキヴォトスを破滅に導く存在だって』
"違う! アリスはゲーム開発部の大切な仲間なんだ! それを奪う権利なんて誰にもない!"
『その仲間に傷つけられたのは誰ですか! 生徒を傷つける存在を放っておいて、何が先生です!?』
ひたすらに繰り広げられるのは装甲越しの応酬。少し前にリオとぶつけ合った気もする答えを吐き出しながら先生は諭したが、ユリにも引く気はないようだった。
『私たちだって、こんなこと好き好んでやってるワケじゃ……!』
"じゃあどうして!"
後ろめたいように溢したユリへ先生が問いかけると、コクピット越しに短く唸ったのちこう返された。
『そんなこと言ったって、これしかないんですよ! 今こうしている間にも……あの娘が、世界が持たんときが来ているかもしれないのに……!』
"だからって、アリスのヘイローを破壊するなんて間違ってる!"
ヘイロー──それは、キヴォトスに住まう生徒たちの頭上へ浮かぶ実体なき光輪であり、生命の象徴。それを砕くことは殺人と同意義である。ユリ、ひいてはアリスを誘拐したリオ一派がしようとしていることをはっきりと糾弾する先生だったが、それを受けたユリは堪忍袋が切れたのかこう叫んだ。
『だったら、今すぐ私たちに叡智を授けてみせてくださいよ! あの娘を破壊せずに済む方法を!』
"……っ!"
怒気のすべてが籠ったユリの問いに、先生は言葉を詰まらせた。その沈黙を受けて調子づいたかのように、ユリは続ける。
『貴方ほどためらいすぎもしなければ、世界を滅ぼす機械に希望も持っちゃいない!』
激情のままに言い切った彼女に、居心地の悪い静寂が広がった。だが、それを打ち破ったのは、ユリに馴染み深い人物の声だった。
「言うじゃないか! あのレールガンをアリスに与えたとき、エンジニア部の女神と彼女を讃えたその口でっ!」
そう言い返したウタハに、ユリは装甲越しにでも分かるほどの狼狽を見せた。
『……見る目がなかった間抜けな後輩と笑ってください。キヴォトスを守るためには……あの娘を破壊するしかないんです!』
「……そうか。ならばエンジニア部の長として、君の根性を叩き直さなければならないね」
問答を終え戦意を露わにするウタハ。すると、その両脇に部を同じくするもうふたりが並んだ。
「もう指一本動かしたくないけど……いつも色々機能付けを止められてる分の仕返し、しておかないとね」
「先輩の悲願、あとで余すところなく解説できるようお相手いたしますっ!」
部長に続けて1年生である猫塚ヒビキと豊見コトリが啖呵を切ると、先生含む他の面々の戦意も持ち直される。
『……残念です』
そう溢したユリのジェガンがバズーカを構え直したのをきっかけとしたかのように、周囲に張り詰める空気がピリピリとしたものに切り替わる。
静観を続けていたもう二機も武装を携え前に出てきたのを見て、先生の心の内にそこはかとない不安が芽生えるものの、それは間もなく入ってきた通信によって取り去られることになる。
『先生、三機のうちの二機……つまりあのエンジニア部の娘が乗ってない機体は、AIの自動操縦になってる』
それはミレニアム屈指のハッカー集団『ヴェリタス』を束ねる生徒・各務チヒロからのアナライズ。
『三機まとめて相手するのは厳しいと思う……どれか一機でも足を止められるか、試してみるね』
"……わかった!"
先ほど機能を停止させたアバンギャルド君に対しても逆転のきっかけを作った彼女の言葉に、張りが戻った先生の声が返される。
──新たな戦いが、いま始まる。
続き……出るかなぁ……。
端的に言うと将来的に「ミノフスキー粒子がないとMSはデカい的」問題にぶち当たるだろうと思ってます。無から粒子を生やすべきか、キヴォトスにMSぶち抜ける超遠距離ミサイルなんてそんなないから、と開き直るべきか……。
以下筆者の自慰設定
梶江ユリ
オリ主。どこかから『ジェガン』の設計図を拾ってきたので造ろうとしている、ミレニアムサイエンススクールの2年生。学生生活の最初の1年を捧げる程度にはジェガンに入れ込んでおり、それを知っていたリオに融資と共同戦線を持ちかけられ了承する形で先生の敵に回ることになるが、本人の判断基準的にはジェガンの完成よりもリオの掲げるキヴォトス守護の方に重きが置かれている。
アリス抹殺については、裏で「相手がアンドロイドなら人間じゃないんだ(アムロ並感)」と自己暗示をかけて罪悪感をごまかす程度には後ろめたく思っている。
バクロニム(アルファベット版あいうえお作文)好きということ以外キャラ付けはまだされていない。
ジェガンA型
本話に登場した機体。梶江ユリが所持していた設計図をもとに、調月リオの融資によって複数機がロールアウト。
シルエットは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場した同名の機体と変わらないが、装甲材にアバンギャルド君用のものを流用されているため、ユリ機含めカラーリングは白となっている。武装面は頭部のバルカン・ポッド・システムや腰部のハンド・グレネードを装備しているものの、まだビーム・ライフルやビーム・サーベルといったMS大のビーム兵器が実現に至っていないため、携行武装はアバンギャルド君が運用するライフル・バズーカなどの実弾兵器を流用している。
また、僚機である二機には無人制御用に独自の「発展型論理・非論理認識装置」を用いる案があったものの、学習が間に合わなかったことと開発中のペットネームが原因でユリの独断を以て搭載が流れたため、簡易的なAIによって自動操縦を行わせるに留まっている。
なお、開発時にリオに出資者特権という名目で「アバンギャルド君」にネーミングを準ずるようごねられた経緯があるが、結局型式にそのイニシャルのみを冠する妥協案で決着した。