銀河英雄伝説・次代篇 ~英雄の残光~   作:銀河の灯守

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第二次バーミリオン星域の会戦まで、あと三話。



第六十話「北辰大軍議(前編)―― 帝国 side」(新帝国暦二十四年一月中旬)

【新帝国暦二十四年一月中旬 帝都レーヴェンシュテルン・獅子の泉(ルーヴェンブルン)「北辰の間」】

 

建国の日のタナトス星域や、年末のロフォーテン星域の会戦など一連の敗戦で何が起きたのか。

帝国政府がひととおりの分析を終えたのは年が明けた一月半ばのことである。

 

皇帝アレクサンデル・ジークフリード・フォン・ローエングラムが帝都へ帰還した翌朝、獅子の泉(ルーヴェンブルン)の「北辰の間」に、枢密院と元帥会議の構成員、それに軍務、財務、内務、輸送、産業を担当する高官たちが集められ、枢密院と元帥会議が招集する緊急大軍議が開かれた。

 

後世に『北辰大軍議』と呼ばれる会議である。

 

議長席には二十歳の皇帝が座った。

皇太后ヒルデガルドは枢密顧問として文官席の先頭に座り、その向かいには宇宙艦隊司令長官ミッターマイヤー元帥をはじめ、軍務尚書ケスラー、ワーレン、ミュラー、ビッテンフェルト、メックリンガー、アイゼナッハら『獅子の泉の七元帥』が並んでいた。

統帥本部総長ザルツマン大将は、ずらりと並んだ数十人の参謀団の先頭の席に着いた。

ザルツマンの少し後ろでは、軍務省兵站監部次長アルブレヒト・フォン・ミュッケンベルガー少将が眠そうな顔で兵站表を開いていた。

参謀席の末席では、統帥本部作戦局のハインリヒ・フォン・アイゼンベルク中尉が説明資料の最終確認をしていた。

 

アレクは一度、席に並ぶ者たちを見渡した。

「諸卿には心配をかけた。余は戻った。留守を支えてくれたことに礼を言う」

それから卓上の戦況図へ目を落とした。

「だが、戻らなかった者も多い。今日はその理由を聞く。そして、次にどうするかを決める」

わずかな沈黙のあと、顔を上げた。

「まずは統帥本部から報告を始めよ」

 

ザルツマンが手元の資料を開き、参謀席の末席へ目を向けた。

「アイゼンベルク中尉。報告を」

 

ハインリヒが立った。皇帝とともに帝都へ戻ったのはつい先日のことである。

 

「まず、タナトス方面です。建国放送直後、辺境分艦隊司令ザントフォス中将は周辺の帝国軍約五千隻を糾合し、叛乱鎮圧のため惑星エコニアへ急行しました。同星系宙域に展開していた教国軍の親衛艦隊一万隻と交戦。ザントフォス分艦隊はその後ほぼ壊滅し、生還艦は僅少です」

 

辺境分艦隊とは、一つの地域に留まって基地や警備部隊を統轄する軍管区とは異なり、複数の星系を巡回して哨戒や緊急出動に当たる機動部隊である。

 

卓上の星図に、ザントフォス分艦隊の進路と、最後まで確認された帝国艦の位置が重ねられた。

 

「交戦初期、帝国軍は、敵を建国宣言に呼応した反乱勢力として処理しています。しかし、敵は統制された艦隊運動を示し、戦闘開始後まもなく帝国側受信系へ鐘音を流入させました。その後、広域電子妨害を実施しています」

 

表示が切り替わった。主中継を示す符号が消え、別の場所で第一予備の通信量が跳ね上がる。その三分後には、教国艦の一群が進路を変えていた。

 

「ザントフォス分艦隊ではさらに第一予備喪失後、指揮を継承した艦についても同様の傾向が確認されています」

 

ビッテンフェルトが表示を拡大した。

「敵は通信艦を順番に狙っているな」

 

「はい。主中継、予備中継、指揮継承後に送受信量の増加した艦の順に、敵小集団の進路が変化しています」

 

メックリンガーが訊いた。

「我が軍の暗号を読んでいた形跡はあるのか」

 

「現在までの解析では確認されておりません。敵は通信内容ではなく、発信位置と送受信量の変化を捉えていた可能性が高いと考えられます」

 

アレクは表示をしばらく見てから、ミュラーへ顔を向けた。

「ミュラー元帥。卿は建国の日に敵の第一聖団と戦っているな。現場ではどう見えた」

 

ミュラーはすぐには答えず、ザントフォス分艦隊の通信記録を見た。

「報告書では電子妨害と記すしかありません。ですが現場の感覚とは少し違います」

 

「どう違う」

 

「敵は、こちらの通信をただ切ろうとしていたのではありません。切ったあと、こちらがどこで立て直すかを見ていました。予備回線へ移れば、そこが次の標的になる。指揮を引き継いだ艦が通信を増やせば、今度はその艦へ攻撃が寄ります」

 

ミッターマイヤーが言った。

「鐘の音ばかりに目を奪われない方がいいな」

 

アレクがそちらを見る。

「鐘そのものはたしかに異様だ。だが、この連中は鐘がなくても、電子戦が上手いようだ。妨害して終わりではない。こちらが直した場所を見つけ、もう一度壊すところまで一続きでやっている」

 

ビッテンフェルトが鼻を鳴らした。

「祈っているだけの連中ならまだ楽だったということか」

 

「少なくとも、その方が相手はしやすいな」

ミッターマイヤーは答えた。

 

ザルツマンが次の資料を表示させた。

「次にロフォーテン星域の会戦へ移る。アイゼンベルク中尉、続けろ」

 

ハインリヒが星図を切り替えた。

「まず建国七星系の帝国軍地上基地が相次いで『聖騎士(ケルビム)』と呼ばれる敵の陸戦部隊に制圧された後、宇宙へ脱出した帝国軍艦艇は、ロフォーテン星系外縁部へ集結しました。ロフォーテン軍管区司令ギールケ中将は、現地の警備戦隊と各星系からの脱出艦を合わせ、およそ一万隻をその指揮下に置いています」

 

星図上に、七つの星系からロフォーテンへ帝国軍艦が集まった航跡が表示された。

 

「ただし、これはもともと一個の艦隊だった戦力ではありません。旧式の巡航艦、駆逐艦、損傷艦、輸送艦、工作艦が混在し、所属戦隊を失った艦や、別部隊の生存者を乗せた艦も多数含まれていました。ギールケ中将はこれを再編し、正規艦隊の到着まで戦力を保持する方針を採っています」

 

表示の正面に、新たな艦隊符号が現れた。

 

「その後、イリヤ・ラザレフ従聖将の率いる第四聖団〈ディス〉艦隊、約一万隻がロフォーテン方面へ進出。正面から圧力を加える一方、帝国軍後方では補給集積所、燃料船団、通信中継点への攻撃が相次ぎました」

 

ハインリヒは、後方から一本ずつ消えていった航路を表示した。

 

「ギールケ中将は戦線を維持しながら後退を開始しましたが、補給と通信を失うにつれ各戦隊の統制が低下します。最終的に、まとまった艦艇をケリム方面へ通せる経路として残ったのが、第三旧幹線でした」

 

ケリム第三旧幹線だけが明るく残った。

 

「ギールケ中将は途中で、この航路そのものが敵によって意図的に残されている可能性に気づいています。進入禁止命令も発令しました。しかし、その時点ではすでに多数が航路へ入り、後続艦も同じ方向へ流れ始めていました」

 

ハインリヒが表示を切り替えた。

第三旧幹線の出口側に、無数の敵艦を示す符号が現れた。

 

「その先に隠れて待ち伏せしていたのが、サミュエル・ホロウェイ従聖将率いる第四聖団〈レムレス〉艦隊、およそ一万隻です」

 

〈レムレス〉は会戦が始まってから帝国軍の背後へ回り込んだのではなかった。

建国宣言の日から、数隻、数十隻の単位でロフォーテン周辺へ分散浸透し、補給拠点、通信中継所、主要退路の周囲へ散開していた。ギールケ艦隊が正面の〈ディス〉に圧迫されて後退を始めたときには、包囲の大半はすでに完成していたのである。

 

「帝国軍がケリム方面への退却を開始すると、〈レムレス〉艦隊は散開状態から集結し、航路の側面から閉鎖して砲撃しました。正面からはラザレフの〈ディス〉艦隊が圧力を維持しています」

 

星図上で、帝国軍を示す符号が二つの敵艦隊の間へ押し込まれていった。

 

「結果として、ロフォーテンに集結していた約一万隻は包囲下に置かれ、壊走しました。現在まで生還を確認できた艦は二千九百余隻です」

 

同じ敗北でも、そこにはザントフォス分艦隊とは別の壊れ方があった。

 

「ケリムへの第三旧幹線への進入禁止が発令された時点で、帝国軍の隊形はすでに大きく崩れていました。命令未達艦が多数存在したほか、受信後も前方の損傷艦や他戦隊に阻まれ、進路を変更できなかった艦も確認されています」

 

ワーレンが星図を指した。

「この時点では、同じ戦隊の艦が三方向へ分かれている。命令を受け取れない艦と、受け取っても実行できない艦が混じった」

 

ビッテンフェルトが言った。

「退く命令は出た。だが、もう軍隊ではなかったということか」

 

「そこまでではありません」

ミュラーが答えた。

「帰還した艦もあります。ただ、一万隻を一つの意思で動かせる状態ではなかった。問題は、退却を決められなかったことではありません。退却を決めたあとも、軍隊の形を保ったまま退けなかったことです」

 

ミッターマイヤーは、並べて表示された二つの戦況図を交互に見た。

タナトスでは、指揮を立て直すたびにその場所を狙われた。

ロフォーテンでは、命令を出す頃には、その命令を一つの軍隊として実行するための形が崩れていた。

「タナトスでは頭を狙われた。ロフォーテンでは身体がばらけた」

ミッターマイヤーは言った。

「壊れ方は違う。だが、どちらも『命令を出せば艦隊が動く』という前提を敵に壊された」

 

アレクは二つの戦況図を見た。

「改めるべき部分は明白であろう」

元帥たちの視線が議長席へ戻った。

「通信を切られても止まらないこと。隊形が崩れても、もう一度軍隊の形を作れること。この二つだ。ザルツマン大将、至急統帥本部で案をまとめよ」

 

ザルツマンが頷いた。

「御意。タナトス会戦は電子妨害と指揮中枢への攻撃。ロフォーテン会戦は通信断絶後の部隊混成と撤退統制を重点項目とします。報告は二日以内に」

 

アレクは一度頷いた。

「続けよ」

 

 

***

 

 

帝国軍に撤退規定がなかったわけではない。指揮官喪失時の継承順位も、通信断絶時の行動も、後退時の集結も、教範には一通り定められていた。

 

ハインリヒが現行規定を説明すると、ミュラーは該当箇所を読み終えて言った。

 

「規定そのものに大きな欠落はありませんね」

 

「なぜロフォーテンでは機能しなかった」

ビッテンフェルトが訊いた。

 

ワーレンが答えた。

「今の我が軍では撤退規定を使ったことのある人間が少ない」

 

「撤退したことがない、と?」

 

「宇宙海賊や旧同盟軍残党などとの小規模の戦闘ならいくらでもある。だが艦隊戦で同数以上の大軍に押されながら、損傷艦を抱え、一個艦隊以上を軍隊の形のまま下げるとなれば話は別だ」

 

メックリンガーが戦歴一覧を眺めた。

「同盟との戦争が終わって、もう二十年以上になるか」

 

ミッターマイヤーが頷いた。

「そのくらいだ。教範を書いた世代と、読む側の経験が違う」

 

ビッテンフェルトは鼻を鳴らした。

「帝国が勝ち続けたつけか」

 

「勝ったことまで反省する必要はないだろう」

メックリンガーが言った。

「ただ、勝っている間には身につかない仕事もあるということだ」

 

そのとき、会議のあいだほとんど発言しなかったアイゼナッハが卓上の指揮系統図へ手を伸ばした。

 

既存の継承順位には触れず、その上へ通信系統を重ね、主中継と二つの予備中継へ順に印をつける。

 

ミュラーが図を見た。

「撃沈時の継承順位ではなく、発動条件ですか」

 

アイゼナッハが一度頷いた。

 

ワーレンが言った。

「順位そのものはもともと規定で決まっている。問題は、誰が死んだか分からんまま通信だけが切れた状態でどうするかだ。指揮権の継承を発動するのか、しないのか」

 

ビッテンフェルトがタナトス会戦の記録を呼び出した。

「しかも、こいつらは通信を切るだけではない。予備へ逃がせば予備を撃つ。指揮を継いだ艦が喋り始めれば、今度はそこへ火力を寄せる」

 

メックリンガーが通信量の推移を見た。

「暗号は読まずとも誰が喋り始めたかは見えるということか」

 

「その可能性が高いでしょう」

ミュラーが答えた。

「主回線を失ったら第一予備、第一予備を失ったら第二予備というだけでは、切り替えるたびに新しい目標を示すことになりかねません」

 

アレクが訊いた。

「では、指揮を継いだこと自体が敵に見えるのか」

 

「場合によっては」

 

「それでは、次の指揮官を決めておくだけでは足りないな」

 

「はい。艦隊全体の指揮継承と、通信断絶時の局地指揮を分けるべきでしょう」

 

「どう分ける」

 

「司令部との連絡を失った部隊が、ただちに艦隊全体の指揮権を継ぐのではありません。事前に定めた区域と順位に従い、その場にいる艦艇だけを暫定的にまとめます。所属戦隊が崩れていても、近隣の上級指揮官の下で行動を続けられるようにします」

 

ワーレンが頷いた。

「誰が艦隊司令官になったかを決める前に、まず目の前の艦をばらばらにしないわけだ」

 

「そうです」

 

ビッテンフェルトが訊いた。

「別の場所でも同じことをやれば、司令官が二人できるぞ」

 

「艦隊全体の指揮権ではありません。通信が回復するまで、その場の艦をまとめるための局地指揮です」

 

アイゼナッハが艦隊図を三つの区画に分け、それぞれに異なる集結点を置いた。

 

メックリンガーが図を見た。

「全員が一人の後継指揮官を探して立ち止まる必要はない、と」

 

アイゼナッハが頷いた。

 

アレクはしばらく図を見ていた。

「それでも、命令を出す艦には通信が集まるのではないか」

 

アイゼナッハが中央の大きな通信節点を消し、代わりに複数の小さな節点を置いた。

 

「なるほど、アイゼナッハ。一隻へ集めない、ということだな」

メックリンガーがその意図を読んだ。

 

ミュラーも頷いた。

「指揮権が一人にあっても、通信まで一隻へ集中させる必要はありません。中継を分散し、送信時間を短くする。あらかじめ決められる任務は戦闘前に与え、通信断絶後も一定時間は各部隊が動けるようにする」

 

ワーレンが言った。

「集結点も一つにするな。一つ決めれば、そこを待たれる」

 

アレクはザントフォス分艦隊の最後の戦況図を見た。

「通信が生きていることを前提に教範を作るな」

 

ミュラーが皇帝を見る。

「陛下?」

 

「教国軍と戦えば、通信は切られることを前提とせよ。連中は鐘を我が軍の受信系へ入れてくるだけではない。電子妨害もする。中継艦も撃つ。こちらが指揮系統を立て直せば、その場所を探してまた撃ってくる」

アレクは指揮系統図へ目を戻した。

「通信途絶を事故として扱うな。必ず起こるものとして作れ」

 

数秒、誰も口を挟まなかった。

 

ミュラーが最初に頷いた。

「通常時、通信制限時、完全断絶時の三段階での指揮手順を宇宙艦隊司令部で早急にまとめます。完全断絶時でも、事前命令と局地指揮だけで戦闘、撤退、集結を一定時間継続できる形にします」

 

ミッターマイヤーが言った。

「通信を守る案と、通信がなくても動く案を両方作れ。どちらか一つでは足りん」

 

ザルツマンが参謀席へ指示を回した。

「通信科、航法科、各艦隊司令部から要員を出せ。統帥本部でも教範改訂案と訓練要領を同時に作る」

 

ハインリヒが資料を一枚繰った。

「もう一点あります。教国艦隊の光と鐘、それに発砲時刻です」

 

星図の脇に時系列が表示された。祈燈の増光、受信系へ入った鐘、火器管制系の活性化、斉射。完全には重ならないが、似た間隔が何度か繰り返されている。

 

「ロフォーテンでは、祈燈の増光から鐘、火器管制反応、発砲までに一定の並びがある可能性があります。斉射間隔にも、おおむね七十秒前後の反復が見られます。ただし、全例ではありません」

 

ビッテンフェルトが訊いた。

「鐘が砲撃命令なのか」

 

「分かりません」

ハインリヒは即答した。

「鐘が命令なのか、準備の合図なのか、あるいは別のものなのかは判定できません。ただ、光、鐘、敵艦の運動、斉射時刻を同じ時間軸へ置くと、偶然とは言い切れない規則性があります」

 

メックリンガーが言った。

「なら、意味を決める前に記録を揃えるべきだな」

 

ミュラーも頷いた。

「現在は光学、通信、射撃管制で記録が分かれています。別々に見ていては比較に時間がかかります」

 

アレクが訊いた。

「各艦に専任を置けないか」

 

ミッターマイヤーが皇帝を見る。

「各艦に?」

 

「旗艦だけでは遅い。通信を切られる相手だ。観測した艦の中で、光と鐘と斉射を同じ時計に並べられるようにしたい」

 

ミュラーが考えた。

「小規模な観測班なら可能でしょう。光学観測、電磁受信、敵艦運動、火器管制反応、発砲時刻を一つの記録へまとめる。距離による光行差の補正も必要です」

 

「意図まで読ませる必要はない」

メックリンガーが言った。

「見えたものと、変わったものだけを拾わせればいい。敵が何を考えているかは、その上で参謀と指揮官が決める」

 

ザルツマンが訊いた。

「班の呼称は」

 

メックリンガーは少し考えた。

「〈光電徴候〉でよかろう。光と電波を拾い、意味ではなく徴候を記録する」

 

ミッターマイヤーが頷いた。

「それでいけ。各戦闘艦に置く。まず生還艦の観測員を集めて暫定要領を作れ」

 

ザルツマンが参謀席のハインリヒへ視線を向けた。

「光電徴候班の編制、記録様式、教育課程を三日以内に作戦局の案として起案しろ」

 

「承知しました」

 

北辰の間で決まったのは、鐘の意味ではなかった。

 

光がいつ変わったか。鐘がいつ届いたか。敵がいつ動き、いつ撃ったか。意味が分からなくても、測れるものはある。

 

後に〈光電徴候〉と呼ばれて全艦に実装されることになる帝国軍の戦術観測制度は、この瞬間から始まった。

 

 

***

 

 

昼を過ぎる頃、ようやく星図が卓全体へ広げられた。

教国が支配下に置いた七つの星系が西方に並び、その内側にはこれと接する帝国領のバーミリオン、リューカス、ガンダルヴァ、さらにジャムシード、マル・アデッタ、ランテマリオが続いている。

【星図】

 

【挿絵表示】

 

 

ミッターマイヤーが最初の航路を示そうとしたところで、アレクが文官席の先頭へ視線を向けた。

 

皇太后ヒルダはアレクの親政開始とともに摂政としての役割を終え、以後は帝国枢密顧問として国政の場に陪席していた。議決権も発議権も持たず、意見を述べるのは皇帝から求められたときに限られる。

 

「枢密顧問。意見を聞きたい」

 

朝からほとんど発言していなかったヒルダに視線が集まった。

ヒルダは一度だけ星図を見てから答えた。

「では、一つだけ。どこで戦うかを決める前に、この戦争で何を達成すれば帝国が勝ったと判断するのか、その認識を揃えておく必要があるように思います」

 

ビッテンフェルトが答えた。

「敵に奪われた七星系を取り返す。それでよかろう」

 

ケスラーが言った。

「領土だけを基準にするのであれば、そうだろう」

 

ビッテンフェルトはそちらを見る。

「何が足りん」

 

「七星系を取り戻したとき、帝国艦隊が戦力を失い、財政が破綻し、国内秩序を維持できなくなっていたとしても、それを国家としての勝利と呼べるかという問題だ」

 

「帝国臣民もいる」

ワーレンが言った。

 

ミュラーは星図の奥、帝都へ続く航路を見た。

「敵の帝国中枢への進出を阻止することも必要です。それができなければ、七星系の奪還以前の問題になります」

 

メックリンガーは七つの敵星系を順に見た。

「それに、我々はまだ敵の戦い方を一つ、二つ見ただけだ。タナトスとロフォーテンで見たものが教国軍のすべてだと考えるには早い」

 

ミッターマイヤーは議長席へ目を向けた。

アレクはしばらく星図を見ていた。

「失った七星系は、帝国領であり続ける」

最初にそう言った。

「放棄しない。だが、今日取り返すことと、取り返すことを諦めないことは同じではない」

アレクは七つの星系を見たまま続けた。

「七星系を取り返すために十の星系を荒廃させ、二十の星系から人と物資を吸い上げ、最後に帝国そのものを弱らせるなら意味がない。余が取り返したいのは単なる星図の色ではない」

 

文官席の空気がわずかに動いた。

 

「そこに住む者が、再び帝国の法と行政の下で暮らせる状態を取り戻す。そのためには敵を退ける軍が要る。そして、その軍を支え続けられる帝国が要る」

一度言葉を切った。

「どちらかを使い潰して得る勝利は、余の欲しい勝利ではない」

 

ヒルダは何も言わなかった。

ミッターマイヤーが、若い皇帝の言葉を軍事の言葉へ引き取った。

「そのための時間を作りましょう」

バーミリオン、リューカス、ガンダルヴァの三点が明るくなった。

「この三つの星系では決戦をしない」

 

文官席の一人が訊いた。

「放棄、ということでしょうか」

 

「違う。決戦をしないと言った」

ミッターマイヤーはバーミリオンから内側へ伸びる航路を示した。

「使える間は使う。住民を運び、軍需物資を引き、敵の進路を観測する。時間を稼ぐ。ただし、この三つの星系を保持するために艦隊を失うことはしない」

 

ワーレンが続けた。

「後送順位を決めておけ。民間避難、傷病者、軍需品、修理不能艦の乗員。戦闘艦は最後まで残すが、最後まで戦わせるという意味ではない」

 

ミュラーが手元の端末を開いた。

「軍の撤退条件も事前に設定したいと思います」

 

「条件?」

 

「隣接拠点との通信が二系統とも一定時間途絶した場合、敵戦力が守備側の所定比率を超えた場合、退路の安全度が一定水準を下回った場合などです。条件の組み合わせは詰める必要があります」

 

参謀が確認した。

「その条件に達した場合、現地司令官に撤退を許可する、ということでしょうか」

 

「違う」

ミュラーは首を振った。

「許可ではない。撤退を命じるのだ」

 

ビッテンフェルトがすぐに反応した。

「待て、ミュラー。帝都の机で、現地司令官が退く時刻まで決める気か」

 

「そこまでは決めません」

 

「では何を決める」

 

「残ってよい限界を明確にします」

 

ビッテンフェルトの眉がわずかに動いた。

「限界に達する前は、撤退させんのか」

 

「違います。限界に達する前でも、現地司令官の判断で退くことを妨げません。敵の動きを見て、早めに退く必要があると判断することもあるでしょう」

 

「限界に達した後は」

 

「残ることを一切認めません」

 

ワーレンがそこで訊いた。

「では、現場の指揮官は何を決める」

 

ミュラーは少し考えた。

「退く経路、順序、後衛をどこへ置くか、どこまで敵を拘束するかです。退くかどうかの判断は、現場指揮官には選ばせません」

 

「なら良い。現場での退き方の判断までは奪うなよ」

 

ミュラーは頷いた。

「はい、現地裁量の範囲も明記します」

 

ワーレンはそのままミュラーの条件表を引き寄せた。

「退路の余裕を入れろ」

 

「入れるつもりです」

 

「つもりでは困る。退路が閉じて始めてから退くのでは遅い」

 

アイゼナッハが星図上の二本の退路を指し、そのうち一本を消した。

メックリンガーがそれを見た。

「退路が一本になった時点で、撤収準備へ移る?」

 

アイゼナッハは頷いた。

ミュラーも図を見て言った。

「使えます。撤退命令そのものより一段前の条件にしましょう。通信、敵戦力、退路の三つを別々に見るのではなく、段階を設定する」

 

ビッテンフェルトは腕を組んだまま考え、やがて言った。

「なるほど。現地司令官の勇気を縛る話ではないわけだ」

 

メックリンガーが答えた。

「帰れるうちに帰らせる話だな」

 

「そういうことです」

ミュラーが言った。

そのとき、アレクが訊いた。

「条件に達したあと、それでも現地司令官が残ると言ったらどうする」

 

卓の何人かが皇帝を見た。

ミュラーが答えた。

「命令違反になります」

 

「戦果を挙げてもか」

 

「はい」

 

「……ならばそれを明記せよ」

数秒黙った後、アレクは言った。

「結果として戦果を挙げても、撤退命令を無視して残ることを美談にするな」

 

ワーレンが皇帝を見た。

ミュラーもわずかに表情を変えた。

 

アレクはそれ以上説明しなかった。

その言葉がどこから来たのかを、この部屋にいる何人かは知っていた。

 

ミッターマイヤーは条件表へ目を戻した。

「採る。細部は明日までに詰めろ」

 

 

***

 

 

保持をしない遅滞圏は、バーミリオン、リューカス、ガンダルヴァに決まった。

次はその内側でどこで戦って守るかを決めなければならない。

 

ミッターマイヤーは星図を拡大した。

「戦場をこちらで絞る」

最初にジャムシードを指した。

「北」

次にマル・アデッタ。

「中央」

最後にランテマリオ。

「南。この三つを主防衛線の支点とする」

 

【星図】

 

【挿絵表示】

 

 

 

ミュラーは北側へ目を移した。

「ジャムシードはケリムから支援できます。バーラトの非武装地位が維持される限り、北西側の圧力もある程度は制限されます」

 

「ケリムに主力は置かん」

ミッターマイヤーは言った。

「支援と収容、北方警戒の拠点にする。北翼の主力はジャムシードだ。ここに正規艦隊を一つ置く」

 

ビッテンフェルトはランテマリオの上に置かれた艦隊符号を見た。

「一番敵が来そうなのはランテマリオか」

 

「敵が正面から来るならな」

 

「よし、俺をランテマリオに置け」

 

「まだ配属の話はしていない」

 

「先に言っておいただけだ」

 

メックリンガーがわずかに笑った。

「卿は二十年前から変わらんな」

 

ビッテンフェルトはそちらを見た。

「卿もだ、メックリンガー。変える必要のないところを変えてどうする」

 

ミッターマイヤーがランテマリオから北へ視線を移した。

「ビッテンフェルト、敵まで二十年前と同じ軍略で動くと思うな。ランテマリオへ素直に来るとも限らん。主要航路はないが、リューカスやガンダルヴァからはマル・アデッタへの直接進出も可能だ」

 

「ではランテマリオでなくともよい。敵が一番来そうなところに、俺を置け」

 

主防衛線の後ろにはルンビーニが置かれた。補給、損傷艦の整理、交代部隊、予備集結のための後詰めである。星系規模や施設からシュパーラではなくルンビーニが選ばれた。

さらに帝都側、ポレヴィトとバラトプールには最終防衛圏の準備が命じられた。

 

「ポレヴィトにバラトプールだと?帝都の目と鼻の先ではないか。ここまで下がることを前提にするのか」

ビッテンフェルトの質問に、ミッターマイヤーは首を振った。

「いざ必要になってから陣地を作り始めても遅い。準備はしておく。だが作戦は、ここまで下がらないことを前提に立てる」

 

アレクが星図を見ながら訊いた。

「主防衛線のジャムシード、マル・アデッタ、ランテマリオ。三支点のうち一つが抜かれた場合、他の二つはどうなる」

 

ミッターマイヤーが皇帝を見る。

「どこが抜かれるかによります」

 

「それは、失う前に考えておけるか」

 

ミッターマイヤーはミュラーへ目を移した。

「三通り作る。ジャムシード、マル・アデッタ、ランテマリオ。それぞれ一支点を失った場合の再編案だ」

 

「承知しました」

 

ミュラーが星図を操作した。三点のうち中央だけを消す。

航路の形が一気に歪む。

 

「マル・アデッタが抜かれる場合が最も厄介です」

 

ワーレンが言った。

「北と南が直接支えにくくなる」

 

「だからルンビーニの役目が大きくなる。シュパーラでは補給を支えられん」

ミッターマイヤーが答えた。

 

アレクは頷いた。

「ルンビーニは後詰めだけではないということか。線が切れたときに線をつなぎ直す場所でもあるわけだな」

 

ミッターマイヤーは少しだけ笑った。

「そういうことになります」

ミュラーが答えた。

「一支点喪失後の再編案も、撤退規定と一緒に詰めます」

 

ザルツマンはその項目を統帥本部の翌日提出案件へ加えた。三つの支点を守る計画だけでなく、一つを失ったあとにも残る二つを機能させる計画が必要だった。

 

***

 

それから星図の北西にあるバーラト自治領が拡大された。

軍務尚書のケスラーが資料を開いた。

「現在、バーラト自治領について、軍務省では戦時特例として軍事通過権を要求する案が上申されています。帝国編入協定の非武装条項を一時停止し、教国勢力圏までの軍用経路として利用する案です」

 

「却下する」

アレクが即答した。

 

「理由を伺ってもよろしいでしょうか」

 

「こちらが軍事通過のためにバーラトの非武装の地位を崩せば、敵にもそれを尊重せよとは言えなくなる。帝国が自分で結んだ協定を、戦争になったからという理由で破ることも認めない」

 

軍務省側から別の案が出た。

「形式上は民間輸送として、軍需物資だけを通過させる方法もあります」

 

アレクはそちらを見た。

「協定が禁止しているのは軍艦だけか」

 

「いえ。軍事利用全般について制限があります」

 

「であれば同じことだ。名前を変えて通せば協定を守ったことになる、という話ならば余は採らない。道義的な問題だけではない。教国軍もバーラトを通過できなければ、ケリム方面の北西航路からの侵攻ルートがひとつ消え、守りやすくなる」

アレクはヒルダへ視線を向けた。

「枢密顧問の意見も聞きたい。バーラト自治政府にどう対応するか」

 

ヒルダが答えた。

「現在は、協定を守ること自体が北西航路の安定に寄与しています。バーラトを軍事通過路に変えないという帝国側の意思は、自治政府にも早めに伝えた方がよいでしょう」

 

メックリンガーは星図を見ながら言った。

「艦隊も砲台もないのに、航路を一本狭くしてくれる。妙な城壁だな」

 

ケスラーが答えた。

「城壁ほど信用はできません。ただ、こちらから穴を開ける理由もありません」

 

医療品、通信機材、機関部品、民間輸送については、既存協定と通常契約の範囲で調達を続けることになった。軍事通過の抜け道として民間利用を偽装することも禁じられた。

 

 

***

 

 

この日の午後、星図上に一本の防衛構想がほぼ完成した。ただし、これは明日ただちに五個以上の艦隊をすべて西方へ並べるという意味ではない。回航と交代が進み、正規六個艦隊の枠を西方戦域へ配分できる段階で、どの任務へどれだけを割り当てるかという設計だった。

 

ミッターマイヤーがアルブレヒトへ言った。

「即時配置ではなく、第一期の任務配当として出せ。いま西方へ出せる艦だけで帳尻を合わせるな。回航と交代が済んだところから埋めればいい。とはいえ、バーミリオン、リューカス、ガンダルヴァの遅滞圏にはただちに正規艦隊を一つ置いて撤退を支援する。ワーレン艦隊がよいだろう」

 

その構想を艦隊枠へ直す仕事は、軍務省兵站監部次長アルブレヒト・フォン・ミュッケンベルガー少将に回された。彼はしばらく無言で端末を操作し、何度か数字を入れ替えたあと、眠たげな声で言った。

「五個と三分の二ですねぇ」

 

ビッテンフェルトが顔を上げた。

「三分の二とは何だ」

 

「三分の二です」

 

「だからそれは何だ!」

 

アルブレヒトは気にした様子もなく星図に数字を重ねた。

「バーミリオン、リューカス、ガンダルヴァの遅滞と撤収にワーレン艦隊を分割配置。北翼はジャムシードを主とし、ケリム支援を含めて一個。中央マル・アデッタに一個。南翼ランテマリオに二個。ルンビーニ、最終防衛圏、主要交通路の防護に三分の二個相当。第一期はこれで五個と三分の二です」

 

六個目の艦隊枠のうち、三分の一だけがどの戦線にも置かれずに残った。

ビッテンフェルトがそれを指して訊いた。

「残りの三分の一はどこに置く」

 

「置きません」

 

「遊ばせるのか」

 

「遊ばせます」

 

「ならば、俺によこせ」

 

「ですから、よこしません」

アルブレヒトは平然と答えた。

「宇宙艦隊司令長官直轄の機動予備です。ランテマリオへ増援が要るなら南へ、北ならジャムシードへ、敵が想定外の航路へ出ればそちらへ回します」

 

ビッテンフェルトは鼻を鳴らした。

「予備の意味くらい知っている。ただ、前に出せる艦があるのに後ろに置くのが俺は気に入らん」

 

「安心しました。閣下が気に入る配置なら、たぶん予備とは呼びません」

 

一瞬の静寂のあと、最初に笑ったのはメックリンガーだった。何人かが続き、一番大きく笑ったのはビッテンフェルト本人である。

「いいだろう。だが予備を使うときは迷うなよ、ミッターマイヤー」

 

「当然だ。そのために残す」

 

「ならいい」

 

笑いが収まると、アレクがアルブレヒトへ訊いた。

「一つ確認する。その三分の一を使ったあと、予備はなくなるな」

 

「はい」

 

「その次はどうする」

 

アルブレヒトはそこで初めて少し考えた。

「現状では、交代に入る部隊か、遅滞圏から撤収した戦力を再編して次を作るしかありません」

 

ミッターマイヤーが言った。

「予備を使う条件だけでなく、使ったあとにどこから次を作るかも決める。時間の目安も出せ」

 

「予備の再生ですねぇ」

 

「そうだ。一度使ったら終わりでは困る。この戦争が一度や二度の会戦で終わる保証はない。それなら必要だ」

 

アレクも頷いた。

 

「御意」

アルブレヒトが答えた。

ビッテンフェルトも今度は異を唱えなかった。

「予備を使い切った翌日に敵が来ました、では笑い話にもならん」

 

アルブレヒトが眠たげに言った。

「閣下にも予備というものを大切にしていただけそうで安心しました」

 

ビッテンフェルトがそちらを見る。

「お前はさっきから俺を何だと思っている」

 

「予備を差し上げると、すぐ前へ持っていかれる方だと」

 

「分かっているなら、最初から俺によこせ」

 

「ですから、よこしません」

 

メックリンガーが笑い、ミッターマイヤーも口元を緩めた。アレクもわずかに笑った。

それに気づいたビッテンフェルトは皇帝へ一礼した。

「失礼いたしました、陛下」

 

「構わない」

アレクはまだ少し笑っていた。

「予備を使わずに済むなら、その方がいい」

 

「それには賛成できませんな」

ビッテンフェルトは真顔に戻った。

「使うべき時には、存分にお使いください」

 

そのあとアルブレヒトは、防衛線を維持しながら反攻へ回せる戦力を作るまでの概算を示した。

「艦の修理、補充、人員の交代まで含めれば、本格的な反攻余力が出るまで二年は見ていただきたいですねぇ」

 

ビッテンフェルトの笑いが消えた。

「二年か。長いな」

 

「目安です。短くなる可能性はありますが、数字を作るために短く申し上げるつもりはありません」

 

ビッテンフェルトはしばらく星図を見ていた。ランテマリオの向こうに、教国が支配する七つの星系が並んでいる。

「俺は今すぐ行きたい」

 

それから、少し間を置いて続けた。

「だが、黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレイター)を敵の答え合わせに使う気もない。勝てる図を作れ。できたら最初は俺が行く」

 

ミッターマイヤーは答えた。

「取り返す。二年後に、まとめてだ。そのとき空いていればな」

 

「空けておけ」

 

「知らん」

ビッテンフェルトは鼻を鳴らしたが、それ以上は言わなかった。

 

北辰大軍議初日の軍事的な骨格は、その日のうちに各方面軍へ送られ始めた。だが会議そのものは、まだ三分の一も終わっていなかった。

 

 

 

 

 




――「十二個艦隊という看板を守るために、中身のない艦隊を作るようになれば本末転倒だ。余が必要なのは十二という数字ではない。戦える艦隊だ」

次回、『北辰大軍議(後編)』


【星図】
新帝国暦二十四年一月中旬・北辰大軍議後
帝国西方防衛構想

【挿絵表示】



【〈光電徴候班〉について】
今回の北辰大軍議で設けられた〈光電徴候班〉。
ここから、のちに艦内で「光電士官」と呼ばれる専門職が生まれます。航法、機関、砲術、通信などと同じように、各艦で専門の担当者が観測を受け持ちます。
見るのは、祈燈や鐘、通信量、敵艦の動き、射撃管制の反応など。
大事なのは、鐘の意味を当てることではありません。

 何時何分に光った。
 その何秒後に鐘が鳴った。
 敵艦がどう動いた。
 そのあと何が起きた。

まずはそこまでを記録します。
建国戦や、ロフォーテン会戦で帝国軍が見たものは、この時点ではまだほとんど意味が分かっていません。
分からないなら、せめて測って残しておこう。
〈光電徴候班〉は、そこから始まりました。

【図像資料:帝国軍・光電士官徽章(後期型)】

【挿絵表示】





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